日本縦断!人の和と輝く人生に乾杯! ~極彩色に囲まれて~ -11ページ目

ウォッチメンズ⑩


岩田巌は興奮冷めやらぬまま出社すると、デスクにたまった書類に決済印を押しはじめた。

しかしどんなに仕事に集中しようとしても、アタマに浮かぶのは今朝の女子高生。否、赤貝。ムフフ...

堅物らしくない半笑いのまま、彼は心ここにあらずのまま決済書類を量産し続けた。

もちろん、その中には普段の彼なら即却下するような怪しげな会社の監査報告書も含まれていた。

 

「有限会社ペーパーカンパニー」

俗物を自認するゼニゲバ法師、瀬戸外爆聴によるダミー会社もその中のひとつだ。

表向きは説法書籍の販売を謳っているが、その実、人身売買からシジミの密漁までこなすれっきとした闇商社である。

 

幸運にも岩田の監査を潜り抜けたころ、瀬戸外爆聴は自宅のソファで社運をかけた大取引の算段にアタマを悩ませていた。

う~ん...

つけたままのTVニュースからはテンションの高いアナウンサーの能天気な声が聞こえてくる。

「今朝、誤作動を起こした自動販売機が当たりを連発し・・」

うるせーなチクショー!

こちとらそれどころじゃねーんだよ!

彼はアタマをかきむしり仕事用の電話(特殊回線を使用した衛星電話)を手にとった。そして、腹いせさながらダイヤルボタンをメチャクチャに叩きつけた。

 

ヘンリー・グスタフソンは地上からの電波受信を知らせるアラーム音を聞くと右手の動きを止めた。

ようやく地球への帰還申請が受理されたのかと、期待混じりに通信モニターを覗きこんだ。

しかしそこには・・

「上上下下左右左右BA

なんだこれは?

見慣れぬ暗号のようなものが表示されている。

本来であれば無視すべきものである。

しかし、ひょっとしたら...

彼は帰還への藁にもすがる思いから、コントローラーを取り出すと暗号のとおりに入力を行った。

...

なんだ、何も起こらないじゃないか。

彼には宇宙船から無作為な怪電波が地上に発されたことなど、気づくよしもなかった。

 

その頃、国際テロ組織を追う弱冠17歳の若き司令官は自宅のロッキングチェアで読書に耽っていた。

"コバヤシ"という作家の世界的なベストセラーは架空の物語ながら示唆に富んでいる。

特に圧倒的な火力で敵をねじ伏せるくだりは、対テロ組織にも有効であることは否定できない。

バランタインのボーモア割を舐めコイーバの束をくゆらせながらそんなことを考えていると、、

ブッブッブッ

ケータイのバイブがメールの受信を知らせた。

そこには差出人の名はなく、地上の「座標」を示すかのような数字だけが表示されている。

所属機関でしばしば使われる暗号ではない。

しばらく訝しい視線を注ぎ思案したものの、恐らくこれは混線による怪電波の類だろう。

何かの拍子にデジタルデータに変換され、この端末がたまたまそれを受信したのだろう。

そう結論づけることにした。

、、しかし。

どうも釈然としない。

そして、もう一度ケータイに視線を送ると、虫の知らせによる直感に動かされ、座標地点の調査を部下に命じることにした..

 

 

 

そして、半年後...

 

 

 

ようやく地上への着陸許可を得たヘンリーの乗る宇宙船が流れ星のように大気圏を通過している頃、座標地点であった南米のジャングルで極秘作戦が成功しようとしていた。

 

 

 


 

 

 

全ての物事には理由がある。

それは決して偶然ではない。

 

ひとりの女子高生がパンツを履き忘れた_ことで、地球の裏側で伝説の国際テロ組織が壊滅した。

 

さらに、25世紀には現代はノーパン文化であったことが定説となった。

 

 

 

全ての物事は必然である。

 

しかしその理由は必ずしも窺い知り易いことばかりではない。

だからこそ、我々は想像しなくてはならない。

いま、その事象がどこから来てどこへ行くのかを。

その行為がどんな未来をつくるかを。

 

 

 


 

 

 

「あれ?今日はあの子もいるし、あの子もいる...。何で誰もご主人さまに履かれてないのかしら...?」

 

 

 

聞こえるだろうか。

今日もどこかからパンティーたちのヒソヒソ声がする。

 

 

 

 


想像してみませんか?

それがあなたに何をもたらすかを。

 

 

 

 

 

 

ロータリー戦記 第五章

「ウォッチメンズ」ー完ー


ウォッチメンズ⑨


「ダメだ!アイデアが何も浮かばねぇっっ!」



小林はそう絶叫すると書きかけの原稿用紙をクシャクシャに丸めて口に詰め、トイレで四つん這いになりながら頭を一心不乱にかきむしった。

作家である彼が執筆に息詰まった時におこす彼独特の癇癪である。


ロハスかつハードボイルドに描いた処女作「未来警察アポクリゲ」は発行部数3000万部を超える世界的な大ベストセラーだ。


主人公の名は「デビッドハッセルホフマン」。

ガトリングガンを携えて腰の周りに手榴弾とナパーム弾をぶら下げ、背中にRPGを背負ったホフマンがどんな危機も類い希な精神力と圧倒的火力でねじ伏せる勧善懲悪は読む者にとって新鮮な娯楽小説だった。

処女作でスマッシュヒットを飛ばした小林はもうひと山当てようとシリーズ化して、未来警察アポクリゲ「帝国の逆襲」、「ホフマンの復讐」と第二、第三弾を矢継ぎ早に世に送った。


しかし小林の意図に反し発行部数は伸び悩み、特にホフマンの復讐は1万部と全くの頭打ちとなる。


何故なら彼の小説は“落ち”が全て一緒だったのだ。

絶体絶命のピンチに追い込まれたホフマンが土壇場で「クールランニンッ!」の叫び声とともにRPGをぶっ放して敵を木っ端微塵にする。



全てその落ちなら最初からRPGを使えば良いじゃん、との至極ごもっともな非難を浴びたのだった。

そんな状況を打開すべく小林は違うジャンルに手を伸ばすが、何を書いても裏目に出る鳴かず飛ばずの袋小路に迷い込んでいた。




「クソっ、こんな筈じゃ。これじゃ祖父に合わす顔がない…」


トイレでズブ濡れになった小林はそう呟くと虚ろな目で遠くを眺めた。




~脱線するが彼の祖父はプロレトゥーリオ文学の最高傑作の呼び声高い、かの「蟹味噌工船」の著者小林多奇痔であり、小林家は代々多くの文豪を輩出している~



5分は経過したのだろうか。

ふと正気を取り戻した小林は、トイレットペーパーに向かって突然吠えた。

SF、スポ根、時代物に、恋愛小説…何をやってもこのままじゃダメなんだ!」


「否、こうなったらいっそのこと…」

何かを決心すると踵を返し、居間にあるパソコンを素早く立ち上げると、数あるフォルダの中から「CIA」と名付けられたパスワード付きフォルダを選び、アクセスした。




「パ、パツイチ逆転狙うなら、官能モノしかねぇ!」


題材を決めるべく、何かに取り憑かれたかのようにエロフォルダ内を血眼になって物色しているとある映像に目が止まった。


駅前の自販機にカメラを直結して録画している映像に、偶然にもノーパンで転ぶ女子高生の画像が写っていたのだ。





「日常の中のタナボタエロス。これはいける…」



右手の拳を振り上げながら一人高らかに勝利宣言をすると、そこには先ほどまでとはうって変わって凛とした小林がいた。

ウォッチメンズ⑧



大きな拍手の中、僕は壇上に上がった。


そして胸のポケットから今日のための原稿を入れた「i.pad.8181∞」を取り出すとマイクを手にした。


「歴史は人類の歩みです」


会場のざわめきが収まるのを待って僕は続けた。


「20世紀初頭まで『歴史』と言えば物証なき言い伝えや、残存する壁画や建築物からの推測という、極めてあやふやなものでした。

21世紀初頭になっても人類は土器や骨を掘り出しては『世紀の大発見』などと称し、『発掘調査』という名の下、税金による官民のブラックマネー作りを行ってきたのであります。

当然ながら発掘されたとされる物は全てゴミ以下の価値、それを『浄悶土器』や『シロマニョン人の骨』と呼び、仰々しく博物館などに展示していたのです。

余談ですが、かつてその一端を担ったA氏の証言によると貝塚を捏造するために一年間、毎日アサリのみそ汁を飲み続ける事を強要されたそうです。

つまり、国をあげての詐欺的な資金繰りを繰り返してきた結果、歴史はこの曖昧な石垣の上に鎮座し、捏造を繰り返し、本当の人類の歩みは闇の中に埋もれてきたのです。

例を挙げましょう。

教科書に列挙され、歴史とされているその裏側を。

ひとつ!

アメリカ大陸を発見したのはコロンブスでなくルパンである…


ふたつ!

地上最強の動物はウズラである…


みっつ!

ネス湖でしばしば目撃されるのはUボートの潜望鏡である…


…一例ですがこれが真実です。


本当の歴史と真実…これを知っているのはほんの一握り、僕はこの事実に警鐘を鳴らすべく告発したに過ぎません。

歴史とは憶測を物証で証明する事、物証の信憑性を限りなく上げる事、この繰り返しです。


物証…それは25世紀の今、古典的な現物ではありません。


この度のピューリツツァー歴史作品賞のきっかけとなった物証、それが皆さまご存知のこれです」


僕はそれをポケットから取り出すと高々と掲げた。


「これは21世紀初頭、某国の軍部が開発したナノ型ICチップです。野生のオニヤンマに装着されていたのをたまたま遺跡『エリア51』の近辺で捕獲したものです。私はこのメモリーから謎とされていた当時の文化や歴史を知りました」


一旦言葉を切った。
静寂が会場を包んだ。


「つまり当時は!」


僕は息を深く吸い込み、続けた。

「憶測どうり、ノーパンが文化だったのです! これが物証です!!」


会場の明かりが消えると同時にスクリーンに数百年前の女性の秘部がデカデカと映し出された。



「これが真実なんです!これが歴史なんです!!」



大喝采の渦の中、僕は静かにマイクを置いた…