ウォッチメンズ⑧
大きな拍手の中、僕は壇上に上がった。
そして胸のポケットから今日のための原稿を入れた「i.pad.8181∞」を取り出すとマイクを手にした。
「歴史は人類の歩みです」
会場のざわめきが収まるのを待って僕は続けた。
「20世紀初頭まで『歴史』と言えば物証なき言い伝えや、残存する壁画や建築物からの推測という、極めてあやふやなものでした。
21世紀初頭になっても人類は土器や骨を掘り出しては『世紀の大発見』などと称し、『発掘調査』という名の下、税金による官民のブラックマネー作りを行ってきたのであります。
当然ながら発掘されたとされる物は全てゴミ以下の価値、それを『浄悶土器』や『シロマニョン人の骨』と呼び、仰々しく博物館などに展示していたのです。
余談ですが、かつてその一端を担ったA氏の証言によると貝塚を捏造するために一年間、毎日アサリのみそ汁を飲み続ける事を強要されたそうです。
つまり、国をあげての詐欺的な資金繰りを繰り返してきた結果、歴史はこの曖昧な石垣の上に鎮座し、捏造を繰り返し、本当の人類の歩みは闇の中に埋もれてきたのです。
例を挙げましょう。
教科書に列挙され、歴史とされているその裏側を。
ひとつ!
アメリカ大陸を発見したのはコロンブスでなくルパンである…
ふたつ!
地上最強の動物はウズラである…
みっつ!
ネス湖でしばしば目撃されるのはUボートの潜望鏡である…
…一例ですがこれが真実です。
本当の歴史と真実…これを知っているのはほんの一握り、僕はこの事実に警鐘を鳴らすべく告発したに過ぎません。
歴史とは憶測を物証で証明する事、物証の信憑性を限りなく上げる事、この繰り返しです。
物証…それは25世紀の今、古典的な現物ではありません。
この度のピューリツツァー歴史作品賞のきっかけとなった物証、それが皆さまご存知のこれです」
僕はそれをポケットから取り出すと高々と掲げた。
「これは21世紀初頭、某国の軍部が開発したナノ型ICチップです。野生のオニヤンマに装着されていたのをたまたま遺跡『エリア51』の近辺で捕獲したものです。私はこのメモリーから謎とされていた当時の文化や歴史を知りました」
一旦言葉を切った。
静寂が会場を包んだ。
「つまり当時は!」
僕は息を深く吸い込み、続けた。
「憶測どうり、ノーパンが文化だったのです! これが物証です!!」
会場の明かりが消えると同時にスクリーンに数百年前の女性の秘部がデカデカと映し出された。
「これが真実なんです!これが歴史なんです!!」
大喝采の渦の中、僕は静かにマイクを置いた…