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物価高

 妻子が夏休みで実家に帰省中のため、外食する機会が多い。久しぶりに行った店で、値上げや量が減っていることに気づき、物価高の影響を実感している。

 まず、2玉まで同じ料金で提供してくれていたうどん屋が、大盛りの場合の追加料金を取るようになっていた。いつも腹がはちきれんばかりになりながら2玉を食べていたのに、なんだか寂しい。もっとも、健康のことを考えると、食べすぎに対する抑止力となる値上げなので、考え方によっては僕にとってはプラスとなるかもしれない。

 次に、たまに行く回転寿司屋さんから、取り放題のガリがなくなっていた。こちらも血圧が高めの僕にとっては、塩分が多そうなガリを食べ過ぎないですむので望ましいかもしれないが、やはりなんだか寂しい。石油高による影響かもしれないが、心なしか、回ってくる寿司ネタの数が減って、質も落ちているような気がした。ハンバーグや豚カルビなど、おいしいが、寿司としてはかなり邪道なものも増えていた。

 いつも新鮮な魚を出してくれる僕の大好きな店の、煮魚定食の魚も心なしか小さくなっていた。僕にとっては、山盛りのあら炊きの魚を、一心不乱に食べるのが、ささやかな贅沢だったので、これまたかなり寂しい。

 繰り返しになるが、僕のような代謝の低くなったおじさんにとっては、今回の物価高は腹八分目を実践するいい機会ともなり得るので、必ずしも悪いことではない。しかし、育ち盛りの子どもを持つ親としてはかなりつらい。牛乳の飲む量やパンを食べる量を減らせとも言えないし、何より食べ物に関してひもじい思いはさせたくない。一時的な原油高の影響ということであればよいが、今後慢性的な食料不足(世界を見渡せば常に食料不足は存在しているわけだが )とならないか、すごく不安だ。


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勝ち逃げ格好悪い

津田塾大学准教授の萱野稔人さんとワーキングプアの若者の窮状を描いた著書「生きさせろ! 難民化する若者たち」で有名な、雨宮処凛さんとの対談を中心に構成された「『生きづらさ』について」という本を読んだ。

現在の若者の厳しい状況とその支援活動がわかるすごくよい本だ。特に、社会的影響力のある人(会社の社長とか議員たち、そして若者の就職難の問題を社会構造上の問題ではなく、「若者に根性がない」とすぐに精神論に走る人達)にぜひ読んで欲しいと思った。職場などで肯定されることがない(所詮は代替可能な労働力としか見られない、採用試験で落ちまくっている、さらには職場でも肯定的な言葉を投げかけることがほとんどない、と言うさまざまな要因が複合的に絡み合っている)ことと、実際に現場で外国人労働者との競争にさらされているために、自分の数少ないよりどころとして「日本人である」ということにすがり、ナショナリズムに走る、という構図は説得力があった。

派遣労働者は住民票を移していないために、実質選挙権がない人が大半という事実も衝撃的だった。時間もあり、行動力もある高齢者に比べるとなかなか彼らの声が政治に生かされないのかもしれない。こういう状況を打開するために、彼ら自身が立ち上がり、社会運動として権利回復を訴え、少しずつ成果が出始めている点はかすかな希望と言える。

 彼ら自身の活動とは別に、彼らより上の僕たちの世代も積極的に支援に乗り出すべきだ。特に、景気悪化、国際競争激化などで、今後ますます「負け組」が増えていきそうな社会情勢の中で、「勝ち組」の「勝ち逃げ」が格好悪いという風潮を育んでおくべきだとふと思った。ノブレス・オブリージュほど高潔な姿勢まではいかなくても、エコ活動がファッションになったように「勝ち逃げ」しない生き方がファッションになればいいと思う。


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ダークナイト

大好きな監督であるクリストファー・ノーラン監督の新作、というよりもバットマンシリーズの新作「ダークナイト」を観た。アメリカではすでに、4億ドルを超えるヒットとなっていて、「スター・ウォーズ」を抜いて歴代2位のヒット(1位は「タイタニック」)となることが確実視されている。このような大ヒットとなったことも頷ける、ノーラン監督の力量がいかんなく発揮されたセンスが溢れる力作だ。

なんと言ってもヒース・レジャー演じるジョーカーの存在感がすばらしい。ジョーカーの持つ、壊れっぷり、残酷さ、利発さ、凄み、悲しみ、滑稽さが余すことなく演じられている。また、妙に雑なメイクがこの演技をいっそう引き立てている。

このメイク方法がティム・バートン版とクリストファー・ノーラン版の「バットマン」像の違いを象徴的に表しているような気がする。バートン版はジャック・ニコルソンの丁寧なメイクのように映画全体が非常に緻密にデザインされていた。プリンスの手によるテーマ曲、象徴的なロゴマーク、黒をこれでもかと強調した独特の映像、そして演技派として誰もが疑う余地のない、ジャック・ニコルソンによるジョーカー。ティム・バートン監督の頭の中をそのままに表現したかのような世界観とビジネスとしての映画がうまく整合が取れたトータルプロデュース力の勝利のような切れ味のよい映画だと思う。

 一方、ノーラン版は、ヒース・レジャーの荒々しいメイクのように、どちらかと言えば力技で押してくる。ヒリヒリと緊迫した心理戦を中心とした脚本、重厚な音楽、この映画で演技派としての確固たる地位を確立しようという野心的なヒース・レジャーの演技、原作により忠実でありながら、バートン色とも異なるスタイリッシュな映像を撮ろうとするノーラン監督の気概。鉈でぶった切られる様な気迫がみなぎる傑作に仕上がっている。


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