東映東京「人斬り与太・狂犬三兄弟」文太・邦衛・三谷昇。渚まゆみの「台詞無しの芝居」も見物! | 東映バカの部屋

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東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、おはようございます。


「日本晴れ」と迄は行かないものの先日の「寒々しい天気」が嘘の様な秋田市内…休み中日です。



昨日は久々に大好きな「狂犬文太」を堪能…



「人斬り与太・狂犬三兄弟」昭和47年10月25日公開。神波史男/松田寛夫の共同脚本・サクさん監督・東映東京製作。


VHS/DVD化作品です。








※KINENOTEの作品案内は此方から




好評を得た「現代やくざ・人斬り与太」の続編ですが、全てが新たに作り直されており関連性は一切有りません。



敵対組織の親分(須賀不二男)を殺傷した文太兄ぃが「派手な出迎えと金バッヂ」を期待して6年の「お勤め」を終え満期出所しましたが…


「時代の変化」「組織同士の内政不干渉」等々の為「地位も富も」与えられずに終わります。


しかし「考えが古いままかつ、自らの欲のままに行動する」文太兄ぃは組の金(みかじめ料)に手を付け「組のお荷物」となり「自分の金は自分で稼いでやる!」となりますが…


「もぐりの女郎屋(店主は松井康子)」を乗っ取ったり、或る工場の社長(河合絃司)の依頼で「借金取り」から守るものの逆に「高額の手間賃」を巻き上げたりと「暴走」!


更に過去に傷を付けた事で因縁を引き摺っている敵対組織の幹部(今井の健さん)との「再度の決斗」を繰り返した上遂に撲殺!


文太兄ぃの命を殺ろうと躍起になる敵対組織、そして遂に文太兄ぃを「見放した」親分…最後の場面に向かい、更に衝撃の展開が…



「仁義の墓場」(此方もサクさん監督)で渡社長が演じた石川力夫に匹敵する凶暴さ!


しかも「文太兄ぃが関わった人間は片っ端から惨殺されるか不幸のどん底に落ちる」展開!


「幸せな結末」ばかりが展開される現代の作品には殆ど見られなくなったこの流れは、見慣れない方々には案外新鮮に映るかもしれません。



しかし「無理矢理女郎に仕立てた田舎娘(渚まゆみ)が書いた母親への手紙を読み涙を流す文太兄ぃ」「まゆみさんのラーメンにチャーシューを分け与える文太兄ぃ(このラーメンが最後の場面に繋がる重要な小道具になっています)」「文太兄ぃを葬る様に命じられた弟分(邦衛さん)が組織に反旗を翻す為の金を無心に実家に行き、逆に実母(菅井きん)と実弟に殺された姿(殺人というより傷害致死)を見た文太兄ぃが「親が子を殺すのは無いよなぁ…」と仇討ちに親分(内田の朝さん)を殺す」の等々の「恋心」「感情移入」もきちんと入っているのだからさすがサクさん!



一般の評価は前作「現代やくざ・人斬り与太」の方が若干高いですが、俺は「人斬り与太・狂犬三兄弟」の出来も「ほぼ同等」と感じます。


前作の全てを捨てて新たな「人斬り野郎の狂犬ぶり」を徹底して描いた事が良かったかもしれません。



左から…「蛇使い」の三谷昇(一匹狼の筋金入りのヤクザ)・邦衛さん・文太兄ぃ。



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今回は「怪優・三谷昇」の芝居も大きな見所!


工場の社長の河合さんが「(高額の謝礼を要求されて)そんな金払えん!」と言うと「払えなければそれでもかまへん…火ぃ~点けたら火災保険が…」(この直後、河合さんの一人娘を見て文太兄ぃは「火ぃ~点けなくても良さそうやでぇ…」と返しています)この際の「台詞回し」が見事!


「癖の有る悪」を本当に楽しそうに演じているのが伝わって来る「三谷さんの芝居の中でも…恐らく三本指」に入るかと思います。


因みに劇中では「怖いモノ無しの狂犬・文太兄ぃも蛇は苦手」となっています。



まゆみさんの「台詞は絶叫・泣き声以外は無し。しかし表情と行動のみで感情を見せる…此方も恐らく渚さんの芝居では三本指」に入ると感じます。


派手な化粧をしての芝居が多いまゆみさんですが今回は素顔…


この「美しさ」も一つの見所でしょう。



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今井の健さんの「凶暴さ」も強烈!


頬に大きな傷(過去に文太兄ぃが付けたモノ)も更に凶悪度合いを引き上げています。



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文太兄ぃの親分でどちらかと言えば「小悪党」内田の朝さん(写真上)、今井の健さんの親分で毎度お馴染みの「義理人情何ぞ一切無し!冷血非情のインテリヤクザ」を演じ切ったナベさん!(写真下)


二人共相変わらずの「高い安定度で極悪非道ぶりを見せ付ける姿」がたまりません!



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他に…室田の日出さん・藤山浩二・稔侍さん・誠直也(文太兄ぃに師事していた誠さんが終盤で文太さんを仕留める切っ掛けを作ります。師弟ぶりを堪能出来る名場面)・日尾孝志・土山登士幸等々が出演。




最後に…終盤文太兄ぃが逃げ込んだ「廃墟と化した映画館」の表に立て掛けられていた看板の内の一枚は…サクさんが監督した「博徒外人部隊」のモノでした…