夏八木勲のデビュー作、しかも傑作!東映京都「骨までしゃぶる」加藤泰監督作品。 | 東映バカの部屋

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皆様、こんにちは。


今朝の夜勤明けから水曜日朝の始業時時迄の連休に入りました。


空模様は愚図ついていてもかなり暖かい秋田市内…早く暖房の必要が無い様になって貰いたいものです。灯油が高くて…



さて本日は…俳優養成所を修了してから数年間東映に籍を置いた故・夏八木勲のデビュー作…



「骨までしゃぶる」昭和41年6月12日公開。佐治乾脚本・加藤泰監督・東映京都製作・白黒作品。


未VHS/DVD化作品です。



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この記事の文章については「カルトムービー 本当に面白い日本映画 1945⇒1980」(桂千穂・著/メディアブックス・刊)を参照・一部引用します。


当作もこの本で「面白い一作」選ばれています。



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主演は…数多くの時代劇作品で「お姫様女優」として活躍していた「当時の東映女優陣のトップスター」の一人、桜町弘子。


初めて「汚れ役」に挑戦しています。



(左・夏八木勲/右・桜町弘子)



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※KINENOTEの作品案内は此方から



去年、東映chで放映された際に初めて見ましたが…さすが加藤監督!


傑作です!



明治後期を舞台に「貧しい農村の生活実態と人身売買(遊郭に娘を売り大金を得る)そして働けば働く程借金が増える実態を解り易く、明るく楽しく」描いています。



「金が稼げるから…」と田舎娘を東京の遊郭に売る両親…娘も「家族の為」と不安を抱えながら了承し上京…そのお陰で両親は大金を手にしますが…


「売られた娘」はというと…最初は遊郭側も親切に「豪華な食事」「綺麗な衣服」等々を与える上「この子はまだ男の身体を知らない初物」という「謳い文句」で一人でも多くの客を騙して多額の金を稼ぎます。


しかし…娘達に与えられる給料は極僅か…実は上京費用・食事代から衣装代、仕事で使う部屋の貸し賃、更に部屋の小物や布団等々の貸し賃から性病の検査・治療代迄全て「遊女の借金」として計上されます。


これが毎月課せられる上「初物」ではなくなると当然料金も下がる…結果、借金は増え続け…一生遊郭を抜け出せなくなる、という訳です。



弘子さんが或る客に「あたし初物と言ったのはこれで●回目!」とあっけらかんと言放った事で客と店が揉める場面は「可愛らしい上に面白おかしい」名場面!



しかし弘子さんは「遊郭を逃げ出そうとして失敗し悲惨な結末を迎えたり、店に酷使された挙句客に殺された先輩(久保奈穂子)」等々を見て、客として何度か来ていた上「自分を好きになってくれた」夏八木さんの協力を得て足抜けを計画・実行し見事に成功!


しかも「姉貴分の一人(宮園の純子姐御)から貰った公娼制度廃止を訴える救世軍のビラ(遊郭の違法性や脱出の方法、法的対抗策等々が書かれていたもの)を大事に持ち続けていた上、暗記する程読み続け知識を得ていた事」が功を奏し、警察署内での遊郭の主人との「対決」でも「法律を盾にして」見事にやり込め、最後は夏八木さんと新たな旅立ちを迎えて終わり…



夏八木さん、デビュー作とはいえ「当時の観客にその後の活躍を十分に予感させたであろう深い芝居」を見せています。


「まだ女や酒を余り知らない純情さ」と「いざという時の男気と度胸」が上手く噛み合った芝居。



更に「加藤監督の持ち味であるローアングルや屋外からの遠景ショットの巧みな使い方」「廃材のみを使って遊郭の街を再現したという東映京都の美術担当者の見事な手腕」も見逃せません。



本の著者の桂さんの一言が当作を締め括る言葉として最もだと思います。



「ハッピーエンドでこれほどスーっとする映画は無い」



他の出演者は桑原幸子・沢淑子・石井富子・菅井きん・三原葉子(遊郭の女将でこれまた腹黒)・三島雅夫(遊郭の主人で三原さんとは夫婦)・芦屋雁之助・芦屋小雁・エンタツさん(警察署長)・穂高稔…等々。



この作品はもし名画座や各局での上映/放映(期待は薄いものの)ソフト化がされたなら是非見て頂きたい傑作娯楽作品。


話の中身は「極めて重い」ですが悲壮感が全く無く、見終わった後「気持ちが完全に前向きになれる素晴らしい作品」です。