渡哲也の凶暴さが際立つのは黒岩?大門?いやいや、石川力夫!東映東京「仁義の墓場」サクさん監督。 | 東映バカの部屋

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東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!





※東映公式・予告編動画。




皆様、おはようございます。


休み最終日、曇りですが比較的穏やかな秋田市内です。



さて…「渡哲也の凶暴さが際立つ役」…こう聞かれると石原プロ/NNN「大都会(パートⅡ以降)」の黒岩、石原プロ/ANN「西部警察」大門…と仰る方々が大半と思います。


映画でも石原プロ/東宝「ゴキブリ刑事」東映京都・サクさん監督「やくざの墓場・くちなしの花」を挙げる方が多いでしょう…




しかし俺は…「最も凶暴な渡哲也」はこの作品で演じた「実在のヤクザで極度のポン中毒」石川力夫が他を圧倒する凶暴さだと思います。


まぁ「東映ファン」は俺と同意見の方々が殆どかとは思いますが…



「仁義の墓場」昭和50年2月15日公開。藤田五郎原作(日活「無頼シリーズ」の原作者で元極道)・鴨井達比古脚本・サクさん監督・東映東京製作。


VHS/DVD化作品です。







※KINENOTEの作品案内は此方から



役柄の石川がポン中なモノだからもう滅茶苦茶!


「脱線してもそのまま町を破壊して走り続ける暴走機関車」とスパイダーマンの「レオパルドン」が一緒に街を破壊し尽してるみたいなモノ!



親分(ハナ肇)を刺した上に「そろそろ組を持ちたいんで金を二千万程くれませんか…」と言い放つわ、仲のいい親分(辰ちゃん)は平気で殺すわ、自分のスケ(多岐川裕美)に「旅に出なきゃならなくなった…身体売ってゼニ作って来い!」と叩き出すわ…(しかし多岐川さんには「寒いよぉ~!」「…何もしないよ…」といった「母性本能を擽りそうな仕草」「優しさ(計算された事でしょうが…)」も見せています)


出逢った人間を手当たり次第に地獄に叩き込む「痛快さ!」が素晴らしい!



この位徹底した演出ですので、寧ろ潔くて見た後スッキリします!



劇中で亡くなった多岐川さんの遺骨をポリポリ食う姿も「素晴らしい場面」!(勝新も若山先生の遺骨を心を込めて口にしていたのを思い出しましたが…当作と勝新の姿は本質が全く違いますので悪しからず…)


渡さんの役が「ポン中毒」ですから物語がどう進んで行くか「全く想像が付かない」作品ですが、脚本がきちんとしているのでその心配は無用…


流れに乗ってそのままお楽しみ頂けます!



映画秘宝ex「鮮烈!アナーキー日本映画史 1959~1979」を読むと…


サクさんはこの作品を企画する際、藤田先生の原作は「基盤程度に拝借」した程度…サクさんは原作を読んでも石川本人の姿が理解出来ず「取材」として戸籍や裁判調書を取り寄せたもののやはり「理解不能な事」ばかり…


「それならそのまま映画にしてしまえばいい!」となったそう…


そして当作を描く際に起点にしたのは「石川の幼少期を知る方の証言」…


「(幼少期は)何かあれば二時間三時間は泣いていた…」こんな男がそのまま大人になったら「限度を破壊し尽した甘えん坊」になり「人の善意を全て吸い尽くし、相手に拒まれた瞬間に逆上するのでは…」と考え、この様な作品に仕上がったそうです。


いやぁ…適確そのもの。さすがサクさん!



渡さんにとってはNHK大河ドラマ「勝海舟」を病気で途中降板し(代役は松方さん)長期療養を終えた直後の復帰第一作かつ「東映初出演」。(本当は「仁義なき戦い」の主役にも名が挙がっていたそうですが…此方も病気で出演出来ず、文太兄ぃが主役に…渡さんは「サクさんの作品に出演させて頂きたい」「映画を撮って頂きたい」と熱望していたとの事)


しかし当作の撮影中にも体調を悪化させ、終盤は点滴を打ちながらの芝居になったのだそうです。


「何が有ろうとも石川力夫を演じ切って見せる!」という渡さんの「執念」が画面から物凄く伝わって来ます。


そしてこの「執念」が「恐怖映画をも上回ると言われる凶暴性に一役買う事になり、屈指の実録ヤクザ映画として言い伝えられる事になった」と感じます。



出演は他に郷鍈治・高月忠・山城の新伍ちゃん・成田のミッキー・今井の健さん・池の玲子姐御・衣麻の遼子番長(遼子番長は東映京都常駐の女優でしたので東映東京作品への出演は珍しいです。他にソクブン監督の指名で「聖獣学園」に出ています)室田の日出さん・曽根の晴美ちゃん・土山登志幸・城春樹・邦衛さん・汐路章・芹明香・小林千枝・河合絃司・汐路章・玉川伊佐男・「怪優」三谷昇・関山耕司・浜田寅彦・近藤宏・安藤組長等々の「豪華版」です。