「この役で初めて食えるだけのギャラを貰える様になった」らしい(と言ってもこれ以前も相当数の作品に出演されていましたが)「日本一の死体役」とも称された奥村公延は俺が住む秋田市生まれ。この奥村さんの死により初めて葬式の一切を取り仕切る事となった実子で俳優業の山崎努・女優業で女房の宮本信子の数日間を描いた作品。
特筆する様な特徴も無ければ、松田優作は「魚眼で全体を見ている様だ」等々と低評価を下した(これは各々ですし、右へ倣えの傾向が強い世の中にあってはっきりと自らの感想を言える姿勢を大いに買います)その手法により極一般的な葬式の風景を映し出す(勿論地域差・宗教及び宗派等々で細かな違いはありますし、普通は無いであろう浮気相手と喪服で青姦と云うサービス描写もありますが…)。しかし、抑揚の大きな芝居や演出・飛躍の論理等々を敢えて配した仕上がりこそが個性ですし、先述した様な雰囲気の作品が当時もそれより前も現在も非常に多い中で「東映・小沢茂弘監督からアイディアマンと高評価を得た伊丹監督が思い付いた、逆発想の思考ではなかったのか?」とも受け止められます。そして、死を主題として描かれる作品は過去も現在も恐らく今後も感動の押し売りが王道…そんな安易な手法が横行する制作者及び観客側に対する嫌悪感もこの演出に繋がったのだと。恐らくソクブン監督・マキノ監督も同様の想いを抱いていたと思います。