100nights+ & music

100nights+ & music

2020年の1年間に好きな音楽を紹介していました。2023年になっても見てくれる人がいたので、また書こうかと思います。
気に入ったら紹介した音楽を聴いてもらえると嬉しい、よろしく!

 

ビリー・アイリッシュ

 

 今回は現代の売れっ子ミュージシャン、ビリー・アイリッシュについて書いてみたい。もしかすると年寄りの独りよがりな感想かもしれない、ピント外れだと思ったら笑って忘れて欲しい。

 2001年生まれのビリー・アイリッシュは15歳くらいから音楽を続けている。もし自分が10代だったら絶対夢中になるだろうし、年齢とは関係なく音楽がとても素晴らしい。

 彼女の音楽は、4つ上の兄であるフィニアス・オコネルと2人で制作していて、「ビリー・アイリッシュ」というイメージ自体が、プロデューサーでもある兄貴と2人で作った作品のようなところもある。
 シンガーソングライター&ポップアイコン、繊細なパンクねーちゃん、緻密な人工物と生身の人間性の両立という印象で、最初はビョークやアヴィーチのような北欧の人かと思った。
 あとは、とても守られているニルバーナのカート・コバーンという感じもしたな。

 彼女は2017年頃のシングルで注目された。

 2018年にアメリカのシンガーソングライター、カリードとコラボした「lovely」という曲は、最初のピアノがフィリップ・グラス(最後にリンクを入れておきます)を思い出させてとても印象的だった。

Billie Eilish, Khalid  lovely


 ビリー・アイリッシュは、これまでに3枚のスタジオアルバムと2枚のEP、コラボレーションを含むたくさんのシングルをリリースしている。
 17歳のときにリリースした2019年のファーストアルバム『When We All Fall Asleep, Where Do We Go?』は、完璧な内容だと思う。現代人の何かを代表させながら、最先端の売れる音でパーソナルな曲を彩る能力があり、弱さと強さの微妙なバランスをうまく両立させている。

 このアルバムは最初に何か変な声の曲?があって、次に大ヒットした「Bad gay」が入っている。この曲は、とてもキャッチーなのに実験性の強いところが素晴らしい。

bad guy

 

 アルバムからのセカンドシングル「When the Party's Over」は兄が書いた曲で、とてもデリケートな曲調が印象的だ。
 ビデオはビリーがコップの不気味な黒い液体を飲み干し、それが彼女の体から染み出してくるという、何だか象徴的な映像になっている。

 もしかするとビリー自身には、パブリックイメージとは逆に自己主張はあまりないのかもしれない。ささやくような歌い方を聞いてどこかそう感じた。

静かに家に戻っていく私は
ただ一人ぼっち
私は嘘をつけばいい
「私はこれが好き、こういうのが好きなの」


when the party’s over

 

 2021年にリリースしたセカンドアルバムは売れ線の音をあまり入れない落ち着いたタッチになっていて、現代的でありつつも、どこか古典的なシンガーソングライターの作品のようだった。
 とても良いと思ったが、どこかダークで繊細すぎるこのアルバムが、10代のアメリカ人のあいだで最も人気のあるアーチストの2枚目で、それが世界中で広く受け入れられるということに後追いだが少し驚いた。

 その次の年には2曲入りのEP『Guitar Songs』をリリースした。音の感じはセカンドアルバムと似ている。
 ビリーの友人が事故にあって、そのちょうど1か月後の12月30日に書いた「The 30th」という曲は、わずか約半年後にはリリースされている。爆売れしている中で意識的にスピーディーに発表する感じも、現代のシンガーソングライターである彼女っぽい。

私を呼んだことを、あなたが覚えていないことは分かっている
でも私はあなたに、とても可愛いって言ったの
病院のベッドで、あなたが言ったことを覚えている
あなたは怖かったって
そう、私も怖いの


The 30th


 2024年にリリースした3枚目の『Hit Me Hard and Soft』も、とても良くできている。

 作品性が強く、昔のレコードのA面とB面みたいに前半5曲と後半5曲に世界が分かれている。後半はスターになりすぎた自分のことを歌っているのかもしれない。

 ビリー・アイリッシュは、ネット上のライブ映像が多い。どこか孤独な感じが拡大して見える巨大なスタジアムもあれば、親しみやすさが良く見える小さなスタジオの演奏もある。


 両方とも彼女の別の良さを出すことが出来ているが、ここではスタジオで少人数の前で演奏しているA面(笑)の「BIRDS OF A FEATHER」。
 兄貴のギターに加えて、ベース、ドラム、3人のコーラスでのビリーは、プロモーション映像とは違ってただ自然に音楽を演奏している。

BIRDS OF A FEATHER


 「ビリー・アイリッシュは、兄貴との作品だ」、みたいなことをビリーは言っているが、実際の彼女が壊れやすいだろう人だってことは、その部分をデフォルメした映像を見て世界中の人が知っているだろう。


 ビリーは2026年の時点でもまだ24歳だ。これからも良い音楽を作っていくに違いない。
 カレン・カーペンターやマイケル・ジャクソン、カート・コベインのようには下らない音楽ビジネスにスポイルされず、彼女なりの幸せな人生を永く歩んでいくことを祈っている。

 

BLUE

 

 

Philip Glass -静けさと生命力 

 

 

 

 

 



モモヨと彼の王国

 噂の映画「ストリート・キングダム」を見てきた。
 何だか走っているシーンが多くて「あいつらは多分、誰一人走ったりしないぞ」と思ったが、少年の頃の憧れだったミュージシャンのエピソードが分かりすぎてとても面白かった。
 彼らは自分より上の世代で、アルバム『東京ロッカーズ』や映画に出てくるバンドの音は少し後追いにはなったがほぼ聞いていたので、個人的な記憶と重なった部分も大きい。

 映画はフィクションとノンフィクションを混ぜていて、主人公は原作となった書籍「ストリート・キングダム」を書いた地引雄一とリザードのモモヨだった。
 リザードはとても好きなバンドだ。強いアンダークランドな雰囲気と独特だがポップなロックサウンド、アグレッシブで文学的な歌詞、モモヨのマーク・ボランみたいな歌い方に、ある時期、夢中だった。

 リザードの本体であるモモヨは、高校生の頃からバンドをはじめて1972年頃には紅蜥蜴という名称で活動をしていたらしい。
 オリジナリティの高い音楽を意識的に創っていた東京下町の天才児っぽい感じは、同時期にマンドレイクで活動していた平沢進に似ているかもしれない。

 紅蜥蜴がリザードに変わったのは1978年だった。
 1979年には、日本のポストパンク・バンドのオムニバス『東京ロッカーズ』と、ストラングラーズのジャン・ジャック・バーネルがプロデュースしたファーストアルバム『LIZARD』がメジャーレーベルからリリースされている。

王国

 

 1980年は、リザードにとって激動の1年になった。
 モモヨが自分でプロデュースしたセカンド『BABYLON ROCKER』に加えて、自主制作で攻撃的なシングル『SA・KA・NA』と紅蜥蜴の音源が入ったアルバム『けしの華』がリリースされている。

 『BABYLON ROCKER』は、ファーストのような工場地帯というイメージではなく下町のエネルギーが溢れた名作だった。
 歌詞にはメチャクチャにいろいろな要素が入っていて、サウンドはダブの加工が目立っていた。このポップでイカレた感じが最高に気に入り、「日本にこんなバンドがあるんだ」と急激にリザードに夢中になった。

ある夜、闇の彼方から 誰かが俺を呼んでるぜ
カモンベイビー それが浅草六区

仲見世通りを駆け抜けて 夢のカケラを探すのさ


浅草六区 

 

 その年の終わりごろ、ヘロイン中毒になったモモヨが逮捕されたことを新聞で知った。このあたりの事情は知らないが映画ではそれっぽく描かれている。
 少しして、モモヨを支援するSave Momoyoというイベントが開催されることをロック雑誌で読んだことを覚えている。

 Save Momoyoで発表された3曲とこの頃の未発表バージョン3曲のミニアルバム『LIZARD Ⅲ』が自主制作でリリースされたのは、かなり後の1983年だった。
 このアルバムの音が、もしかすると最も好きかもしれない。シンプルなロックサウンドと深く沈み込む感じがとても気に入っていた。ファーストアルバムに入っている「ASIA」は、このバージョンの方がずっと良い。

絶望を追い出せ 悲しみを追い出せ
死の影を追い出せ 俺たちの王国から


ASIA

 

 1981年には、メジャーレーベルから『ジムノペティア』がリリースされ、モモヨはゼルダのファーストアルバムもプロデュースしている。
 リザードやゼルダの自主制作などを買い始めたのは、1981年頃からだったと思う。(周りにこのタイプの音楽を話せる友人は誰もおらず、ラジオや雑誌で情報を探してはいつも一人で行動していた)

 『ジムノペティア』は、当時のモモヨの心象風景のような深くダークな雰囲気と音楽的な成熟や緊張感が感じられる名作。このアルバムには本物のスピリッツと芸術への思いがある。
 ほぼソロ・アルバムのような感じだが、世界レベルの作品だと当時から思っていた。この音を必要とする状況にかつての日本はなかった。いまだったらどうだろうか?

 アルバムの中にはカードが入っていて、それを送ると写真と歌詞が載ったブックレットが送られてきた。メジャーだろうが自主制作だろうが、自分の届けたい作品を届けるんだというモモヨの意思を感じながら何回も歌詞を読んだ。
 このアルバムに入っている「亡命者」は、モモヨの最高傑作だと思う。

赤の広場で 別れた子供たち
待ってておくれ いつか帰るよ
世界をぼくの 喜びに溢れた
きらめく音で 満たせるその時に
ああ子供たち きみの世界を照らしだすために
ぼくは地球へと舞い戻る


亡命者


 リザードはここで活動を停止した。1985年と1986年にモモヨは打ち込みのパーソナルな印象を受けるソロシングルを連続で3枚リリースし、その後にリザードとして2枚のアルバムを出し2009年にもアルバムをリリースしている。


 この文章は、何年か前に途中まで書きかけてスクラップにしたものを映画「ストリート・キングダム」を見て書き直している。 行き止まり感から抜け出せない文章になったことがスクラップにした理由だった。

 

 モモヨにも行き止まりの時期はあっただろうが、彼はいつだって「その次」を向いている人だった。
 セカンドアルバムの「まっぷたつ」みたいな感覚は、年齢とは関係なく人生のスタイルみたいなもので、それは10代の頃の自分の救いになっていたことを久しぶりに聞いて思い出した。

 

愛だなんて言葉に吐き気もよおし
変化を思えば眩暈がするぜ
それもすべてはこいつのせいさ
ゆがんだレンズがきみをコントロール

ぶちわれベイビー 君のビートで
ぶちわれベイビー ゆがんだレンズを
まっぷたつ


まっぷたつ

 

ZELDA -チホとサヨコの長い旅 

日本のアンダーグランド ‐裸のラリーズ、吉野大作、S-ken 

JAGATARA -30年後の世界

遠藤ミチロウ - 激しさと静けさと暗い情熱 

 

The Stranglers -硬派なヨーロピアン・パンク 

 

モモヨ|note

 


 

ドロレス・オリオーダン

 ザ・クランベリーズは1989年にアイルランドで結成された。
 ギターのノエル・ホーガン、ベースのマイク・ホーガン、ドラムのファーガル・ローラーに加えて、ボーカルのドロレス・オリオーダンが1990年に加入して生まれ変わったバンドは、1993年にリリースしたデビューアルバムでいきなりスターになった。

 ノエルとドロレスが共作した「Dreams」は、ドリーム・アカデミーの「Life In A Northern Town」のように、最初にできた一番の傑作だと思う。
 この音源は1990年のデモヴァージョンで、この頃のドロレスはまだどこかあどけない少女のようだ。

私の人生は、毎日、あらゆる方向に変わっていく
そして私の夢は、いつも思うようにいかない
だってあなたは、私にとっての夢なんだから


Dreams

 

 最初に傑作を作ったクランベリーズは、1994年にセカンドアルバム『No Need to Argue』をリリースした。
 セカンドアルバムがファーストアルバムを超えたバンドは多い。クランベリーズは特にそんな印象が強く、彼らのキャリアの中でも断トツの一枚だと思っている。

 良い曲揃いのアルバムの中で、ドロレスが一人で書いた「Zombie」は少しタイプが違っている。
 「Zombie」は北アイルランドのテロ事件で幼い子供が死亡したことをテーマにした政治的な内容で、レコード会社がシングルにするのを反対したにもかかわらずバンドの最大のヒット曲になり、彼らをアイルランドの国民的なバンドにした。

Zombie

 

 クランベリーズは、ドロレスの体調不良が続きながらも1996年、1999年、2001年と順調にアルバムをリリースした。
 ただサードアルバム以降も悪くはないのだが、それほど夢中になって聞くことはなくなっていた。ドロレスの強い自己主張と、その裏に見え隠れする脆く壊れかけた部分に、息苦しさを感じるようになったのかもしれない。
(自分のそういう部分が、いろいろあって終わりかけていた時期だったからなんだろうと今になって思う)

 バンドは、6枚目のアルバムを制作中だった2003年に活動を休止した。そのアルバムの続きを録音し、『Roses』としてリリースしたのは10年後の2012年になっていた。

 バンドを再開した2012年頃にどこかのテレビ局で演奏している当時の新曲「Tomorrow」のドロレスを見ると、エキセントリックだった顔立ちがすっきりしていて、10年のブランクは無駄ではなかったんだろうと思う。

 

明日では遅すぎるかもしれない

日付を変えることができたなら

明日では遅すぎるかもしれない

もしあなたが少しでも信じてくれれば

 

若すぎて、プライドが高すぎて、愚かすぎて

 

Tomorrow


 2017年頃にクランベリーズは、久しぶりに新曲ばかりのアルバムの準備を続けていた。その制作中だった2018年1月15日に、ドロレスはまるでジム・モリソンのような事故で亡くなってしまう。
 残されたメンバーは作っていたデモをもとに、アルバム『In the End』をちょうど1年後の2019年1月15日にリリースした。

 

 最後のアルバムは、最初期のような透明な緊張感と、どこか力の抜けた感じが同居する良いアルバムになった。
 偶然だろうが、彼女が最後に録音した曲は「In the End」だったそうだ。

変だよね
あなたの望んだすべては
あなたは望んでいなかった
最後には

変だよね
あなたが夢見たすべては
あなたは夢見ていなかった
最後には


In The End


 ドロレスは、どこか似た感じのあるサラ・マクラクナンやエイミー・マンのようには、うまく社会的に成熟をする方向へ行くことができなかったように思える。
 シネード・オコナーやカート・コバーンのように、スターシステムに馴染めない一方で、持っている傷が大きすぎて一般的な生活に馴染むこともできなかったのかもしれない。

 ただ、バンドメンバーとの仲が良かったことは彼女にとって幸福だった。クランベリーズの曲はドロレスが全ての歌詞を書き、メロディはドロレスとノエルが共作することが多く、それは最後まで変わらなかった。


 セカンドアルバムに入っている一番好きな曲、「Ode To My Family」をアコースティックで演奏している映像を見ると、少なくとも音楽と友人・家族は彼女に幸せを持ってきてくれたんだろうな、と少し安心する。

私のお母さん
彼女は私を抱いて外に出かけてくれた
私のお父さん
彼は私のことを好きでいてくれた
他の誰かは気にかけてくれる?


Ode To My Family

 

 

Dream Academy  -夢とトラッシュ 

Aimee Mann -クールで温かいストーリテラー

Sarah McLachlan -最も好きな女性ミュージシャン

 

 

 

 



自由な放浪者

 キャット・パワーは、1990年代半ばにデビューしたアメリカの女性歌手。やさぐれた独自の佇まいが気に入っている。
 音はフォーク&ブルースが基本になっていて、パンクやヒップポップの影響もある。ベック、ニック・ケイブ、ボニー“プリンス”ビリーなどと近い匂いがするし、人間味のあるニコっぽい感じもする。

 彼女は、基本的には静けさを持ったどこか不穏な音楽をつくる。

 分かりやすいメロディやポップさはあまりないので、あまり一般受けはしないかもしれない。でも世界中のある種の人には人気者のようだ。

 キャット・パワーの最初の名作は1998年にリリースした『Moon Pix』だと思う。ミニマムな音の中に彼女特有の緊張感がある。

Cross Bones Style


 2003年のアルバム『You Are Free』では、シンプルな中にもいろいろな音楽の影響が見え隠れしていている。
 キャット・パワーの声にはどこか孤立したニュアンスがあり、彼女には自分自身の個性は決して手放さないが、時代時代の音や雰囲気の影響は自然なかたちで受ける人という印象もある。

 「Good Woman」という曲のゲストでは、パールジャムのエディ・ヴェーダー、ニック・ケイブとも一緒にやっているバイオリニストのウォーレン・エリスなどが参加している。

私は良い女になりたい
そしてあなたも良い男でいてほしい
それがあなたから離れる理由
それが二度とあなたに会わない理由
私はあなたの心がとても恋しくなるでしょう
そして私はこの愛を永遠に愛し続けるでしょう


Good Woman

 

 2012年の『Sun』はそれまでとは大きくスタイルを変えながら、最大のヒット作になった。彼女のアルバムの中でこの作品は異質だが、実験性とエネルギーに溢れていて最高だと思う。
 アコースティックギターの音はほぼ聞こえず、エレクトロニクスを多用しながら作りこまれていてフォークっぽさは皆無、ほとんど一人で制作している。

 アルバムの制作資金は、作品に口を出させないためにキャット・パワーが自分で負担したそうだ。そんなエピソードだけでなく、いつもの長い黒髪を短く切って金髪に染め、どこかのパンク姉ちゃんのようになった姿も素晴らしい。


 「Cherokee」の映像は彼女自身が撮っている。

もしも私が、私の時より早く死んだら
さかさまに埋めて欲しい
チェロキー・キサメ
私が倒れるときには


Cherokee

 

 キャット・パワーはライブ・パフォーマーとしても素晴らしく、この頃の映像を見ると特にパンクな感じが強い。
 アルバムの最後に入っている「Peace and Love」のライブを見ると、ギターやピアノを演奏しながら歌っているときの彼女とは全く別の人のようにも見える。

Peace and Love

 

 『Sun』が売れたこともあってか、長く所属していたマタドール・レコードから売れるアルバムを出すように言われたキャット・パワーは、もちろん言われたことなんか聞かず、それどころかレーベルを辞めてしまった。
 次のアルバム『Wanderer』は、レーベルを移籍したこともあってか6年間のブランクの後の2018年にリリースされた。

 前のアルバムとはまた違って生音が中心となっていて、「放浪者」というタイトル通りの、どこか土っぽくブルース感覚の強い内容となっている。

私は出ていくよ
良いことは消えてしまった
私は出ていく
それは良いことさ

あなたが明日も留まればいいのに
あなたに留まってほしい
明日行ってしまわないで
どこにも行かないで


Me Voy


 この後のキャット・パワーは、2022年にカバーアルバム、2023年にボブ・ディランのロイヤルアルバートホールのライブ全曲を再演奏したライブアルバムを発表している。
 そろそろ多くの人が待っている、新曲ばかりのニューアルバムが出るころじゃないかな。

 キャット・パワーの音楽には、彼女の持つ強いアウトサイダーの感覚が、声と音にそのまま出ている。ザクっとしたこの音は唯一無二だと思う。

Metal Heart

 

 

ちょっと似ているかも

Aimee Mann -クールで温かいストーリテラー 

Nick Cave -キリストと死とパンク・ブルース

孤独な心 -Nick Drake とBonnie "Prince" Billy 

 

 

 

 

 

さまよえる楽団

 メトロファルスのヴォーカル、伊藤ヨタロウ氏が亡くなった。そのうち彼らのことも書こうと思っていたのだが、先延ばしにしているうちにこんなタイミングになってしまった。


 メトロファルスは1980年はじめから長く続いたバンドで、演劇っぽい独特のヴォーカル、どこか江戸っ子で文学的な歌詞、日本独自でありながら無国籍でニューウエイブ的な何でもありの音楽性は、社会一般で売れる感じはあまりしないがオリジナリティとクオリティはとても高い。


 彼らを好きになったのは、ライブハウスシーンでは有名になっていてアルバムも数枚リリースした後で、雑誌「宝島」がつくったキャプテンレコードから続けて出した3枚のアルバムの頃だった。
 この3枚は最初からそれぞれ音楽性を変えることを決めていたらしく、1986年の『PAST FUTURE ANIMATORS』はとてもポップな内容だった。
 そこに入っている「べろだし天使」には、ゲストでゼルダの小沢亜子とムーンライダーズの白井良明が参加している。

べろだし天使


 メトロファルスはヴォーカルの伊藤ヨタロウとギターの光永"GUN"巌は変わらないが、ほかのメンバーはけっこうよく変わる。

 この頃は、キーボード等がライオンメリィ、ベースがバカボン鈴木、ドラムは途中で変わったが岩瀬"チャバネ"雅彦と三原重夫だった。(このメンバーがどのくらい凄いかは調べてみてください)

 1987年の『STANDS』はプログレがコンセプトだそうで、シリアスで重めの曲が多い。その頃好きだった「ダモクレスの剣」は、いま聞いてもカッコいいな。

ダモクレスの剣が 俺の頭上に吊るされる
ヴェスビオスの炎に 君の体包まれる
真っ赤な炎が行く手を阻むが 俺は風来坊


ダモクレスの剣

 

 1988年には、バンドサウンドと宅録とアコースティックが良い感じに混ざった『GAIA』と、これまでの3枚を加工してライブを混ぜたりしたベスト盤『Can Do』 をリリースした。
 
 この頃はバブル真っ盛りで、東京を中心に日本中が金儲け主義に走りはじめ、地上げなどで風景が一変していく時代だった。
 メジャーで売れる日本のロックバンドが多くなると同時に、聞く気にならない歌謡曲まがいのロックが流れはじめた時期でもあった。
 その中でメトロファルスは明らかに異彩を放っていた。1989年に終わった昭和の色を強く引きずりながら、そこに留まらないパンク/ニューウエイブ的なスピリッツと音楽な豊かさが特徴だったと思う。

真昼の幻日(パレリオス)


 その後はメジャーレーベルに移って数枚のアルバムをリリースしたのだが何となくあまりハマらず、次に好きになったアルバムは1996年の『LIMBO島』だった。
 この時代は4DやP-modelのメンバーだった横川タダヒコが正式メンバーとして加入していて、バイオリンの演奏だけでなく作曲やプロデュースなどで大活躍している。

 『LIMBO島』は、アイリッシュ、ジプシーミュージック、江戸、プログレ、東京、あの世などなど多様な要素が混ざり、そこにヨタロウ独特のイカレたヴォーカルが乗っている最高のアルバムだ。
 混沌としながらも曲が粒ぞろいの名盤なので、「普通の日本のロック」を期待しないならこのアルバムを最初に聴くことをお勧めする。


 「蝙蝠翁」は、永井荷風をモデルにした『下町を徘徊する偏屈な老人を歌ったPop tune』だそうで、独特のコーラスはZABADAKにいた上野洋子がつくっている。

蝙蝠翁


 伊藤ヨタロウは若い頃に鈴木慶一が率いる「はちみつぱい」のローディをしていたらしく、ムーンライダーズとの縁も深い。
 その鈴木慶一が、『俺さま祭り』というアルバムの宣伝でこんな応援をしていた。大昔に見て何故だかちょっと感動したこのコメントは今でも覚えている。


 もし好ければ共に歩もう 

 不浄の昭和バンドよ
 日本の形をした陰ノウを持った馬鹿共よ 
 共に 共に 


 このアルバムに入っている「夜のポストリュード」は、メトロファルスと伊藤ヨタロウが好きな人はみんな大好きになるだろうと思う。

 

あと一歩のところで 俺は筆を置いて

神々と宇宙に 隙間をあける

 

こんな夜にはいつも思い出す

やるせなさで空を見上げて

朝もや立つ駅で君を待つ

あの頃を映しだす

夜のポストリュード


 もうライブを見ることは出来ないが、関心を持った人はぜひメトロファルスのアルバムを聞いてみて欲しい。日本にはメジャーでなくてもすごいバンドがいることが分かるだろう。

いでよ!来い!亡霊よ!ハラミタの橋渡れ
ハイウェイの橋ゲタで とんでもない世と笑い出せ!
うるせぇや癪のタネ ひと息に飲みなはれ
ハイウェイの橋ゲタの ここは地獄か天国か


Limbo島

 

 

(実はファンの)ライオンメリィが活躍しています

戸川純とヤプーズ ‐NOT DEAD LUNA 

あがた森魚 ‐「遠くにあった何か」への憧憬 

 

Moonriders -薔薇がなくちゃ 生きていけない 

 

METROFARCE/INDEX - メトロファルス オフィシャルサイト