The Blue Aeroplanes  -ギターサウンドとスポークンワード | 100nights+ & music

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2020年の1年間に好きな音楽を100回紹介していました。
追記)2023年になっても見てくれる人がいて驚きました、感謝を込めて?気が向いた時にときどきまた書こうかと思います、よろしく!

 

言葉とダンスの不思議なギターバンド

 

 ブルー・エアロプレインズというバンドを知っているだろうか? 1980年代にイギリスのブリストルで結成され、売れたという話は聞かないが現在まで止まらずに活動を続けている。

 1990年頃にメジャーレーベルから何枚かのアルバムを出して、日本でも少しだけ話題になったこともあった。

 

 バンドと言ってもかなり変わった編成で、リードボーカルの代わりにスポークンワード(ラップじゃなくて詩をブツブツ語っている)を担当するジェラルド・ラングレイと、変な踊り(だけ)をしているダンサーが中心で、そこに複数のギターを重ねたバンドサウンドがついている。

 メンバーはアルバムによって頻繁に変わるので何人いるのかよく分からず、50人以上は在籍していたと思う。あるコンサートではギター担当が12人もいたという。

 文章ではどんなバンドなのかさっぱり分からないと思うので、とりあえず一曲聞いてみて欲しい。

 

カードを引けよ、どれでもいいぜ

ハズレだ

 

Jacket Hangs

 

 このバンドを知ったのは、『3×20(colours)』という新星堂が選曲した1980年代のU.K.インディーズ・レーベルのミュージシャンの曲が20曲ずつ3枚に入っている、1990年にリリースされたコンピレーション・アルバムだった。

 スミスから始まってロバート・ワイアットで終わるこのアルバムで知ったミュージシャンは多いので、そのうちまとめて紹介したいと思っている。

 

 その中に入っている「Ups」を聞いて、すぐこのバンドのことを気に入った。ディレイをかけたギターのピッキングが特徴的な曲で、バンドの演奏もスピード感があって最高にカッコいい。

 ここでギターを弾いているアンジェロ・ブルスキーニは、ブルー・エアロプレインズを入ったりやめたりしながらいろいろなバンドでギターを弾いていた。好きな曲は、だいたいアンジェロがギターを弾いている。

 ブルー・エアロプレインズを完全にやめてから同じブリストルのマッシブ・アタックのメンバーになったが、残念ながら昨年に病気で亡くなってしまった。

 

Ups

 

 ブルー・エアロプレインズには、もう一人、ロドニー・アレンというネオ・アコステック的でポップな曲を書いて自分でも歌う、才能のあるソングライター&ギタリストが入っていることもあった。

 ロドニーはチェリーレッド・レーベルからソロアルバムも出している。

 

 いくつかのアルバムでは、何曲か彼の曲が入っていてとても良いアクセントになっている(英語が良く分からないのにスポークンワードばかり聞くのも退屈だしね)。

 

Fun

 

 ブルー・エアロプレインズは、案外ポップで聞きやすく音楽的なレベルも高いギターバンドだが、ジェラルドのスポークンワードを中心としているので、まあ売れなかったのは仕方ないかもしれない。

 でも例えば「Cardboard Box/段ボール箱」という静かな曲などは、多くの人に受け入れられることはないかもしれないが、聞いて好きになる人は決して少なくないんじゃないかな。

 もしできれば小さな段ボール箱みたいなこのブログを切っ掛けに、ブルー・エアロプレインズを聞いてみる人が一人でも増えると良いと思っている。

 

この小さな段ボール箱の鍵はここにある

ぼくの心への鍵はここにある

 

Cardboard Box

 

 このバンドの本体は、サングラスをしている歌わないボーカルと、変なダンサー、あともう一人ボーカルの弟がいるらしい。ただメンバーが変わりすぎるし多すぎるので、サングラスと変なダンサーしか認識することができなかった。

 それでも現在まで続けていることは最高だし(映像を見るまで存在を忘れていたダンサーが結成以来ずっといるのも凄い)、最近もブリストルでライブをしている。

 

 ちょっと紹介する曲が多すぎるような気もするけど、最初で最後の機会だろうからあと2曲紹介しておく。 

 ブルー・エアロプレインズは前身がパンクバンドだったらしいが、何十人も変わっているプレーヤーの演奏レベルはライブでもとても高い。

 ドイツのテレビ局で演奏したらしい「...And Stones」を見れば、ハッピーマンデーズのべズや電気グルーブのピエール瀧みたいなダンサーを含めて、いかにいいバンドか分かってもらえると思う。

 

...And Stones

 

 ほとんど誰も知らない曲だと思うが、最後にスポークンワードも入っていないギターだけのシンプルな曲を聞いてほしい。アンジェロが弾く彼自身へのレクイエムのようになってしまった。

 ジェラルドの体調も不安定のようだが、ブリストルのどこかでこれからもバンドを続けて行って欲しいと思っている。

 

For Tim Collins