最高のファーストアルバム
シェリル・クロウがデビューしたのは1993年だった。彼女のデビューアルバム『Tuesday Night Music Club』は当時とても気に入ってよく聞いていた。
アメリカの伝統的なフォーク、ブルース、カントリーをベースにしながら、ヒップポップっぽいところもあり、古くて新しい感覚が面白かった。その後の彼女の曲をそれほど積極的に聞いているわけではないのだが、このアルバムはいまでも聞き返している。
シェリル・クロウが最初に注目された曲は「All I Wanna Do」だった。どこかヒップポップぽい感じがあるこの曲をラジオで聞いて、すぐアルバムを買いに行った。
All I Wanna Do
シェリル・クロウの本当のファーストアルバムが別にあることは、少しだけ有名かもしれない。
メジャーレーベルと契約して作成した最初のアルバムは、ポリスやフィル・コリンズなどで有名なヒュー・パジャムがプロデュースをしていて、打ち込み中心の聞きやすい売れ線ロックという感じだったようだが、結局リリースされることがなかった。
多分このアルバムがリリースされて売れていたら、ぼくが彼女の曲を聞くことはなかっただろう。
実際のファーストアルバムは、当時の洗練だけされたつまらないロックとは違って、伝統に根ざしたバンドサウンドを中心に、新しい試みを加えた音になっている。
このアルバムで一番好きな曲は1曲目に入っている「Run, Baby, Run」だった。ロックバンドのサウンドと、父親からの「走り続けろ」というメッセージの両方が素晴らしい。
だから走れベイビー、走れ
昔の懐かしい顔ぶれや古臭いやり方から
見知らぬ人との安らぎへ
さよならを言われる前に抜け出していけ
おまえは走るのが好きだから
Run, Baby, Run
このアルバムはサウンドも含めて好きなので、ライブではなくてプロモーションビデオを紹介している。
ただシェリル・クロウは、ライブではギター、ピアノ、ベースなどの楽器を弾きながら歌うことも多い。基本的には録音よりもライブパフォーマンス中心のミュージシャンだと思う。
ファーストアルバムに入っている「Strong Enough」のスタジオライブでは、シェリルはアコーディオンを弾きながら歌っている。
Strong Enough
『Tuesday Night Music Club』は、まだ無名時代のシェリル・クロウが、当時の彼氏が参加していた「チューズデイ・ミュージック・クラブ」というジャム・セッションに加わり、そのメンバーとシェリルが一緒に作曲や演奏をしながら制作されている。
このアルバムは、関係者全員にとっても特別なタイミングで起こったマジックみたいな作品なのかもしれない。
シェリルは、この後「チューズデイ・ミュージック・クラブ」から離れてアメリカを代表するスーパースターになっていった。まるで「Run, Baby, Run」の歌詞のように。
オマケ)キャット・ステーブンスのカバー「The First Cut Is The Deepest」
The First Cut Is The Deepest