アイスランドの不思議な世界
シガーロスの音楽にはドローンの上に乗った優しいノイズミュージックのような印象を持っている。
1997年のファーストアルバムは、何曲かを除くとほとんどアンビエントだった。教会のような声と静かなノイズをベースとしたポストロック。
セカンドアルバムは歌寄りになり、その後は少しずつ歌ものの比重が増えたり減ったりしながら、ある意味で安定したオリジナリティのある音楽を作り続けている。
シガーロスに対する世間の評価についてはよく知らないのだが、とても複雑につくりあげたアルバムはもちろんとても良いけれど、それよりもライブ音源のほうが良いと個人的には思っている。
演奏は独得だがジャムバンドみたいな感じがするし、音楽がダークになりすぎないところが良い。
その中でも自然の中で演奏している音と映像が気に入っている。牧歌的なのかエコロジーなのか実験的なのか、アンビエントなのかポストロックなのか。ポップだがポップスではない音楽という感じ。
この映像では、いろいろな楽器といろいろな属性の人たちの、ピクニックみたいなライブ映像が幸せな雰囲気を醸し出している。アイスランドは不思議な国だな。
Hoppípolla & Með blóðnasir
シガーロスのアルバムは聞いたことはあったのだが、その本当の良さに気が付いたのはヴォーカルのヨンシーが2010年に出した最初のソロアルバム「Go」を聞いた後だった。
正直に言うとシガーロスのどの録音されたアルバムよりも、ヨンシーの最初のソロは好みに合う。とても分かりやすく、実験的で、個人的な精神性が宿っている。
シガーロスのアルバムの多くは、英語でないどころか一般的に理解でない言語?だったり、アイスランド語で歌われているのだが、このアルバムでは多くの曲に英語の歌詞が付いている。
きみは生き残れるし、驚くことを止めたりしない
きみと夜明けは、決して沈んだりはしない
ぼくたちは、いつだって何だってできるさ
やってみようよ!
Go Do
もう1曲、そのアルバムから聞いてほしい。シガーロスの感覚に近い曲で、これもライブバージョン。
最初にオルゴールや鉄琴みたいな音をメンバー皆で出して始まり、感情的だがどこか無機質な盛り上がりとクールダウンが繰り返され、最後はヨンシーの静かな声で終わる。
Tornado
彼らの音楽は、人工的な印象と同時に何か自然さを感じるのが不思議だと思う。実験的な軽やかさと、ノイズを含むシンプルな音と、人間的な静かな温かさが共存しているところが、そう思わせるのかもしれない。
このシガーロスのライブは、2006年7月アイスランドのイーサフィヨルズゥルで行われたものらしい。アルバム作品としてはヨンシーのファーストアルバムが好きだが、このバンドのライブはもっと好きだな。
Sé Lest
2つのシガーロスの映像は、2006年のアイスランドツアーでの演奏を収めたライブDVD『Heima』からのものになっている。この作品を見ると、何かの奇跡を体感しているような気分になる。
それはバンドの個性なのか、それともビョークにもあるアイスランドの個性なんだろうか。もしかするとシガーロスにとっても純粋でいることができた最後の時代だったからなのかもしれない。
こんな感覚にどこまで馴染めるかどうか自信がないのだが、一生に一度だけでもアイスランドでシガーロスのライブを体験してみたいと思う。