七転八起
X-JAPANの曲で、
そのまんまズバリ「X」というタイトルの曲がある。
サビのとこで
『X!感じてみろ! X!叫んでみろ!』
と連呼する、ファン以外には意味不明のドグラマグラな曲だが、
この『X!』というところで客は腕をクロスさせ、ジャンプする。
いわゆるXジャンプ、というやつだ。
僕の場合、心のどっかに
「俺は素晴らしいアーティストの一つとしてX-JAPANを評価している」
という驕りがあった。
「Xジャンプなんて、そおんな。狂信的ファンみたいなこと!」
と、ちょっとバカにしていた。
いや、跳びましたね。誰よりも高く。
「えーっくすっ!!」
と、四十前男特有の塩っ辛いダミ声で叫びながら。
気持ちいー。
また、X-JAPANのメンバーが
『ウィーアー?』
と叫ぶと、客は呼応し
「えーっくすっ!」
と叫び返す。
上記したような驕りがある僕は
「ウィーアーって言われても、そおんな。俺Xじゃねえし」
と思っていた。
いや、叫びましたね。誰よりも大声で。
『ウィーアー?』
「えーっくすっ!」
『ウィーアー?!』
「ええーっくすっ!」
『ユーアー?!!』
「えぃえーっっくすっ!!」
『そうだ!俺達がエックスだ!お前らがエックスだっ!!』
ウオオオン。(客席の返事、そして僕の返事)
うわあ。俺、エックスなんだ。エックスでいていいんだ。
なんて思いながら泣きましたね。
もう一つ感動したこと。
本編終了からアンコールまでが結構長かった。
二十分くらいか。
その間、スタンドにいたどう見ても二十歳くらいの男の子が何回も、
「ウィーアー?!!」
と叫んでいた。立ち上がって。うちわで音頭を取りながら。
もちろん僕達はそのたびに、
「えーっくすっ!」
と叫んで返した。
もう、何度も何度も何度もやるのだ、「ウィーアー?!!」を。
その子、汗だくで声もがらがらになっている。
もういいよ、そんなに一生懸命にならなくても、と思った。
明日も仕事あるだろうにな、とも思った。
でもかっこいいじゃないか、君。
こういう場所でなりふりかまわず、
明日のことも考えずに全力投球できるなんて。
かっこいいよ。
そして嬉しかったね。
二十歳くらいということは、
僕がX-JAPANを聞き始めたころに生まれている。
こんな若い子達にも届いているんだな、この色褪せない無敵の音楽は。
そしてこの子達がまた次の世代に
「なあなあ! X-JAPANってすげえバンドがいるんだぜ!」
って伝えてくれるんだろうな。
嬉しいな。
コンサート終了後、僕は嬉々としてツアーTシャツを買った。
黒地に赤で「X-JAPAN」。でかでかと書かれたTシャツだ。
ファンじゃなかったらちょっと恥ずかしい。
もちろん僕はニコニコしながら会社に着ていった。
断言できる。
X-JAPANのファンであることは、僕の誇りだ。
Stay free my misery.
正直、開演前はかなり気持ちが落ち着いていた。
X-JAPANに熱くなっていたのは学生時代である。
実に二十年前だ。
二十年間で数多の音楽を聴いた。耳も肥えた。
「さあ、心技体ともに充実したX-JAPAN。どんな音を聴かせてくれるのか?」
みたいな感じで、ちょっとハスに構えていたのだ。
そして開演予定時間から約五十分が過ぎ(これもいつものことである)、
SEが流れた。
途端にアリーナ、スタンドの全員が立ち上がる。
「うおおおおおおっ!」
「ヨシキぃぃぃぃぃ!」
「トシぃぃぃぃぃぃ!」
「エックスぅぅぅぅ!」
絶叫とも怒号ともつかない大音声がスタジアムをすっぽり包んだ。
それは津波のように寄せては返し、ステージにぶつかって砕けた。
あれ? 俺、いつの間に立ち上がったんだろ?
僕は周囲のオーディエンス同様に立ち上がり、
両腕を大きくクロスして「X」の文字を作っていた。
もし客観的に見たら(もはや客観的に見ることなどできなくなっていたけど)、
それは凄まじく異様な光景だったに違いない。
そこいら辺にいる大人五万人くらいが全員、
両腕をクロスしてステージに向かい絶叫しているのだ。
「ヨシキぃぃぃぃぃ!」
を
「教祖様ぁぁぁぁ!」
に変えたらそのまんま宗教である。
でもそんなもんどうでもいい。
宗教、上等。教祖様、最高。
いやあ、叫んだね。ええもう叫びましたとも。
二曲目「Rusty Nail」の荘厳なイントロが流れた瞬間、
腰から下がしゅわわわわ、と痺れた。
齢三十七にして失禁したのでは!? と一瞬びびったが、
ただトリハダが総出で立っただけだった。
曲が終わり、ボーカルのToshiが、
『……ぅおまえらっっ!(お前ら)』
と客席に向かいシャウトした。
なんという声量。
なんというハイトーン。
間違いない。
Toshiは、ボーカリストになるために生まれた人だ。
『ぅおまえらっっ!気合いれろおェェェェェ!!』
ウオオオン。(客席の返事)
『お前らの声っ!聞ぃかせてくれおェェェェェ!!』
ウオオオン。(客席の返事)
『聞ぃこえねえぞおェェェェェェェェ!!』
ウオオオン。(客席の返事)
……っていうか、
普段僕のブログを読んでくれている皆様、すみません。
これ、好きな人じゃないとつまんないですよね?
でも書かずにおれなかったんです。
オーロラビジョンにでかでかと、
今は亡きhideの映像が流れたんです。
だってまだYOSHIKIは、
hideが脱退したと思ってないからね。認めてないからね。
ええ、叫びましたとも。
ノドも裂けよ、と僕は叫んだ。
「ひぃぃぃぃでぇぇぇ~~っ!」
……あら。なんだこの涙は。
二十年間で数多の音楽を聴いたんだ。耳も肥えたんだ。
なのに。
なんでこんなに感動してんだ?
っていうか、いいじゃないか。こんな三十七がいてもさ。
僕の前にいたでっぷりしたおじさんは、
一曲目からアンコールまでずっと泣いていた。
熱狂的な声を上げなかったし、
踊ったりもしなかった。
でも、ただひたすら曲を聴き、涙を流していた。
どんな思いでステージを見てたんだろうな。
それを見て僕もまた泣いてしまった。
……で、今これを書きながら、
ウィキでついhideのことを調べてしまい、泣いた。
<つづく>
夢の中にだけ生きて。
横浜の日産スタジアムに行った。
X-JAPANのコンサートチケットが手に入ったのだ。
たまたま手に入ったので、
横浜までの運賃もかかるが、喜んで行くことにした。
何せ学生時代大好きだったバンドだ。
いまさら語る必要もないかもしれないが、あえて少しだけ。
その存在は日本のロックシーンにおいて
「X以前、X以降」
という言葉さえ誕生させている。
X-JAPANがいなかったら、
今活動している(もしくは90年代に多く活躍していた)
ビジュアル系ロックバンドはほとんど存在していなかった、
といっても過言ではない。
例えば、今使った「ビジュアル系」という言葉さえ、
X-JAPANの誕生をきっかけに生まれた。
メイン・コンポーザーのYOSHIKIは2000年の再結成を約束し、
97年に解散表明した。
しかしギタリスト・hideの急逝によって、
再結成は白紙化した……はずだったのだ。
ところが2007年、HP上で再結成を告知。
まったく突然のことだ。
僕は我が目を、耳を疑った。
「だってだって、hideがいないのに! 誰がギター弾くの?」
心配はいらない。
新生X-JAPAN“六人目のメンバー”として名乗りを上げたギタリストは、
あの元LUNA-SEAのSUGIZOだった。
これまた、その辺りが好きな人にとっては垂涎のメンバーだ。
僕も大いに頷き、
「確かなギタリストとしてのスキル。
そして技術に裏づけされたパフォーマンスの華々しさ。
彼にならhideの後任を任せられる!」
と、なんか偉そうに納得した。
そして再結成したものの、
いつまた活動休止するかわからないバンドでもある。
「このチャンスを逃したら、肉眼でX-JAPANを見る機会は永遠にないかも」
と思った。
いや、おおげさな話ではないのだ。
なんせアルバムを作るのに五年もかけるバンドである。
作品にかける熱意とこだわりはハンパじゃない。
納得のいくものが作れなければ、
「X-JAPAN、突然の無期限活動休止!」
なんてことをペロっと実行しちゃうのである。
伝説のロックスター恐るべし。
なんだかいろんなところを強引に端折っているが、
かくして僕は奥さんと二人、
横浜行き夜行バスに飛び乗った。
<つづく>