フライドチキンと海のおと。 -45ページ目

ちょっと休憩して、と。

空気がさらさらになってきましたね。


深夜パソコンに向かっていると、
床をすべるように入ってくる夜気の冷たさに驚く。
何度も書いたが僕の家の周辺は緑が多いので、
昼夜の温度差がもろに夜気に響いてくるのだ。


虫の声もすごい。
やっとセミの声がやんだかと思ったら、
今度は鈴虫の声だ。
あちらこちらで、りりりりりと恋の歌声。
ほんのりしめった冷気に乗せるように、
ひかえめながらも


「わかるかい、僕はここにいるよ」


とささやいている。


風流よなあ。


そういえばもう季節的に終わってしまったが、
ひぐらしの声もほんとに素敵だ。
やつは日本の夏の美しさを際立たせる千両役者ですな。
ところが元々弱い品種だからか昨今の暑さが異常だからか、
個体数に減少の傾向が見られるらしい。


哀しいなあ。


まったくセミにしてもザリガニにしてもなんじゃかんじゃの動物全部、
なんで外来種ってでかくて強いんでしょうね?
なんで固有種って小さくて弱いんでしょうね?
あのアメリカザリガニの破廉恥極まりないフェラーリのように真っ赤なボディを見るたび、


「hahahahaha! hey,men? hey,men? The house in Japan is small!」


ってアメリカ人に笑われている気がする……というのは被害妄想か。



話は脈絡なくぶっとぶが、
欧米人は鈴虫の声やひぐらしの声が嫌いらしい。
これはもう人種の違いとしかいいようがないのだが、
なんでも脳の中にある音をキャッチするエリアがモンゴロイドと全然違ってて、
とにかく「がちゃがちゃした不快な音」としてしか認識できないそうな。
工事現場の音とか地下鉄の音とか、
ああいう部類の音と一緒くたに分類されるんだってさ。


そうか。それはしょうがない。
モンゴロイドが愛してやまない大豆系発酵臭にも、欧米人のほとんどは顔をしかめる。
でも僕達の鼻をもいでしまいそうなくらい臭いチーズを、彼らは平気で食べる。




えー……と。
空気がさらさらになってきました、ね。
何をしていたかと言うと。
小説を書いていたのでした。
こんなことばっかり書いているから進まないのであって。
ひたむきな虫達の恋の歌を見習おう。




ちぇ。進まねえなあ。

修羅しゅしゅしゅ

先述した沖縄居酒屋『うりずなー』の名物おじい。
空手の達人だというのは書いた。


そしておじいには何人も弟子がいる。
そのうちの一人がクロさんだ。
僕より四つ年上で、身長は僕より少し低い。
しかしがっしりした体形で、
信じられないくらい力が強い。
屠場で働いているらしいのだけれど、
そこの同僚さんに聞いた話だと、
クロさんは九十キロくらいある豚を左肩に担ぎ、
もう一方の腕で六十キロくらいの豚を抱える。
それで階段をひょいひょいあがったりするらしい。
こないだ店で、五円玉を人差し指と親指で真っ二つに曲げていた。
で、そのあとまたまっすぐに伸ばして小銭入れにしまっていた。



そのパワーで空手の達人なものだから、
悪酔いしたら始末におえないらしい。
片手で人をぶん投げたり、
違法駐車しているいかついベンツを平気でひっくり返したりする。
今井雅之にちょっと似ている。
ニヒルに笑う。どうやっても顔が怖い。
飲むと話好きの兄ちゃんなのだけれど。
職場でも修羅のように恐ろしいらしい。
擬音にすると、


「どかん!」


という感じで怒鳴るのだとか。




クロさんの右手の人差し指と中指の間には、
股の部分から手首あたりまでにかけて大きな傷跡がある。
昔ヤクザと喧嘩して、
ドスでざっくり斬られたそうだ。
手のひらがぱっくり二つに割れた。


「そらおめえ、バルタン星人の手みたいだったぜ」


クロさんはそう言ったあと、


「ふぉっふぉっふぉっ」


とシビれるくらい似てないモノマネをやった。




でもそんなクロさんも、
おじいには頭が上がらない。
クロさん曰く、おじいと組み手をしたら、
翌日には両腕が腫れて仕事にならないらしい。
それほどおじいの技は苛烈なのだ。


おじいの拳骨はダイヤモンドより硬い。
おじいの蹴りは岩をも砕く。
そしておじいの舌はラフテーの塩加減を絶妙に間違える。


だから最強はつまりおばあなのだ。
そこんところがおもしろくて、
また今日もこの店でクダを巻いてしまう。
ま、泡盛は悪酔いしないけれどね。

トイレのゴミ箱

職場の同僚に聞いた話。



昔、会社のトイレのゴミ箱に、
切った爪がペットボトル一本分くらい捨てられていたらしい。

寝言王ふたたび

寝言王Tの記事がことのほか好評だった。
コメントをくださった皆様、ありがとうございます。
なので、もっかいTのドグラマグラな寝言を発表させていただきます。




「お塩で食べたいね~」(マヨラーだろが)



「どっちかっつったら、まあアオレンジャータイプじゃん?」(どう見てもキレンジャーだよ)



「『食べるゆで卵』ってフレーズ、新しくねえ?」(そうでもねえよ)



「タテ、ヨコ、タテ、ヨコ、タテ、タテ、払ってチョン」(なんの字だよ)



「あっこんなとこに毛ぇ生えてる」(興味ねえよ)



「おい! 開けろ! 出らんねえだろ!」(ずっとそこにいろよ)



「あ……。そうするんだ……へえ」(何されてんだよ)



「ンー……ヘイ、ティーチャー?」(ネイティブスピーカー風巻き舌で)



「……バァイオ・ハザード……」(ネイティブスピーカー風巻き舌で)



「やだ! パンツ見えた?」(広末涼子風あまい舌ったらず声で)



「There will still be love in this world.」(たぶんこう言っていた)



とぅーでぃー

いきつけの沖縄料理居酒屋『うりずなー』に、
あいも変わらずよくタマっている。


以前も別の記事で書いたが、
ここの主人は沖縄空手有段者の、
正露丸のように色の黒いおじいだ。
齢七十にして超合金のような、
はたまたミケランジェロのダビデ像のような身体をしている。


このおじいは武勇伝にことかかない。
その昔、沖縄本土で米兵と喧嘩をしたらしい。
屈強の兵四人を、
そいつはもう国際問題になるんじゃないかというくらい、
徹底的に叩きのめしたという。
ついでに彼らが乗っていたジープも、
亀みたいにひっくり返した。


ボクシングのプロライセンスも間近だ、
というお客さんがお店に来た時も、


「ちょっと打ってきなさい」


と言い、しぶる彼に無理やりパンチを打たせた。
もちろん彼も老人相手のことなので手加減はしていたのだが、
それでも僕などには目にもとまらぬ拳の速さだった。
しかし寸止めで打った(はずの)ワンツーの先に、おじいの姿はなかった。
ボクサーの拳が動いた瞬間に、
おじいは雷光のようなスピードで彼の懐に入っていたのだ。
そして手刀を彼ののどのすぐ下に持ってきた。


「まだまだだねぇ」


おじいはボクサーにそう言ってかかか、と笑う。


大阪に来て間もない頃、リングに上がったこともあるという。
柔道家とプロレスラー相手に、
異種格闘技戦をしたらしいのだ。
おじいは彼らとの戦いっぷりを振り返って、
「彼らが本気でやっていると思えなかった」
と言う。
「スローモーションのように見えた」
とも言った。




沖縄空手の真髄のほどはわからないが、
その日もおじいはラフテーの味付けのことで、
おばあに烈火のごとく叱られていた。

うん、確かにあのラフテーはしょっぱかったな。
でも、


「こんのバカじじいー!」


は言いすぎだなぁ、ちょっと。