修羅しゅしゅしゅ | フライドチキンと海のおと。

修羅しゅしゅしゅ

先述した沖縄居酒屋『うりずなー』の名物おじい。
空手の達人だというのは書いた。


そしておじいには何人も弟子がいる。
そのうちの一人がクロさんだ。
僕より四つ年上で、身長は僕より少し低い。
しかしがっしりした体形で、
信じられないくらい力が強い。
屠場で働いているらしいのだけれど、
そこの同僚さんに聞いた話だと、
クロさんは九十キロくらいある豚を左肩に担ぎ、
もう一方の腕で六十キロくらいの豚を抱える。
それで階段をひょいひょいあがったりするらしい。
こないだ店で、五円玉を人差し指と親指で真っ二つに曲げていた。
で、そのあとまたまっすぐに伸ばして小銭入れにしまっていた。



そのパワーで空手の達人なものだから、
悪酔いしたら始末におえないらしい。
片手で人をぶん投げたり、
違法駐車しているいかついベンツを平気でひっくり返したりする。
今井雅之にちょっと似ている。
ニヒルに笑う。どうやっても顔が怖い。
飲むと話好きの兄ちゃんなのだけれど。
職場でも修羅のように恐ろしいらしい。
擬音にすると、


「どかん!」


という感じで怒鳴るのだとか。




クロさんの右手の人差し指と中指の間には、
股の部分から手首あたりまでにかけて大きな傷跡がある。
昔ヤクザと喧嘩して、
ドスでざっくり斬られたそうだ。
手のひらがぱっくり二つに割れた。


「そらおめえ、バルタン星人の手みたいだったぜ」


クロさんはそう言ったあと、


「ふぉっふぉっふぉっ」


とシビれるくらい似てないモノマネをやった。




でもそんなクロさんも、
おじいには頭が上がらない。
クロさん曰く、おじいと組み手をしたら、
翌日には両腕が腫れて仕事にならないらしい。
それほどおじいの技は苛烈なのだ。


おじいの拳骨はダイヤモンドより硬い。
おじいの蹴りは岩をも砕く。
そしておじいの舌はラフテーの塩加減を絶妙に間違える。


だから最強はつまりおばあなのだ。
そこんところがおもしろくて、
また今日もこの店でクダを巻いてしまう。
ま、泡盛は悪酔いしないけれどね。