記事「OUTPUT→INPUTの正統性~間違いの効果」に続き、『脳が認める勉強法』(原題『How We Learn』Benedict Carey[著]・花塚恵[訳]:ダイヤモンド社)

の内容を、司法試験系をはじめとする試験対策に適用・応用していく記事の第2弾です。

(以下、ページ番号引用は上記書籍から。)

 

結論としては、

自分で自分をテストする」OUTPUTの方が、INPUT「よりも効果が高い。

それも、本番の試験までの期間が長ければ長いほど、その差は顕著になる。

(いずれもP140

 

この結論を導き出した実験は、このようなものだった。

2006年、カービックとローディガーは、120人の大学生に科学に関係する2種類の文章を勉強させた。太陽に関する文章と、ラッコに関する文章だ。学生たちは、どちらか一方の文章を7分ずつ2回」INPUTした。「もう一方の文章については、7分間」INPUTし、「次の7分で思いだせるだけの文章を書きだした」(=OUTPUT)。「要するに、太陽かラッコのどちらかの文章は2回の学習時間の2回とも」INPUTし、「残ったもう一方は、2回の学習時間のうち1回しか」INPUTせず、「もう1回の時間で思いだせるだけ書く」OUTPUTを行った。

カービックとローディガーは学生を3グループに分け、グループ1の学生にはそれぞれの学習時間の5分後、グループ2には学習時間の2日後、グループ3には学習時間の1週間後に確認テストを実施した。結果は次ページのグラフのように一目瞭然だった。

(いずれもP139~140

 

この「次ページのグラフ」とは、

1.まず、本試験「まであいた時間」が5分の場合にグループ1で「思いだせた文章の割合」は、

(1)2回ともINPUTした学生は0.8

(2)1回INPUT・1回OUTPUTした学生は0.75

だが、

2.本試験「まであいた時間」が2日のグループ2になると、「思いだせた文章の割合」は、

(1)2回ともINPUTした学生は0.5強
(2)1回INPUT、1回OUTPUTした学生は0.7弱

さらに、

3.本試験「まであいた時間」が1週間のグループ3になると、「思いだせた文章の割合」は、

(1)2回ともINPUTした学生は約0.4
(2)1回INPUT、1回OUTPUTした学生は約0.55

というものである(P141)。

 

これによると、

①一夜漬けなど本試験の本当に本当に直前の勉強の場合には、INPUT>OUTPUT(これは私も中高の定期テストでくり返し実感していた)だが、

②週どころか月・年単位で本試験までの時間が空く多くの試験(もちろん司法試験系も含む)においては、記憶のためにも、OUTPUT>INPUTとなる。

 

というわけで『4A基礎講座』も、OUTPUTに当たる4A論文解法パターン講義が全体の約3分の2を占める。

 

また、4A条解講義を含むあらゆるINPUT講義を普段の勉強として受ける効果は、短答・論文過去問を自力で解く(OUTPUT)ハードルを下げる程度と考えている(cf.記事「4A条解講義(知識集中完成講義)について」)…それよりも、短答・論文過去問を自力で解くこと(OUTPUT)による教育効果の方がバカでかい。

そして、短答・論文過去問を自力で解く(OUTPUT)ハードルを下げる効果は、短答・論文過去問で登場する用語・条文等を「なんか見た・聞いたことがある」状態にすれば得られる以上、普段の勉強としてINPUT講義を受ける際には、この状態に達するのに必要な限度で足りる(それ以上は無駄になりかねない)。例えば、講義を2倍速にして聞き“流す”だけで上記の状態に達する人も多いだろう…INPUT講義で“記憶”“理解”などする必要は全くないのだ(もちろん、それらを求めて受ける人もまだまだ多いので、それらに役立つ情報をこれでもかと詰め込んではいるのだが、それでもだ)。

くり返しOUTPUTをしているだけで、自然と、しかもOUTPUTに最適な形で“記憶”や“理解”ができちゃうのだから(cf.記事「くり返し解くと覚えてしまう」、記事「不自然な記憶・理解」)。

 

ただ、4A条解講義を含むINPUT講義も、本試験超直前のまとめとして一気に聞き直す際には、上記①に近づく上、これまでにやったOUTPUTを想起する「自己テスト」としても機能するのではないか。

とすると、INPUT講義は、本試験超直前のまとめとして一気に聞き直せる分量にとどめなければならない(cf.4A条解講義は7科目を約100時間で、司法試験系合格に必要な知識を網羅しているが、2倍速なら約50時間)。