Ψ(さい)のつづり -8ページ目
いくつになっても
何回やっても
別れの時は
さみしいもんだ
いろんなことが
すべて
セロファンに
包まれて
少し焦点がぼやけて
つやっとした
きれいな
思い出にみえる
本当は
そんなことはなくっても
すべて水に流せば
区切りがつくんだ
いいことも
そうでないことも
理不尽なことも
ありがたかったことも
すべて
流れ流れて
自分とは
無関係なことになる
変わっていく
代わっていく
どっちも
いいこと
しがみついていたら
手や
足が
がちがちに
こわばってしまう
落ち着いて
いるときに
きれいに
別れるのが
一番いい

蜂くんと
ともに
暑い夏を
過ごした
蜂くんは
暑ければ
暑いほど
活発に
その金色の身体を
脱力させて
あちらこちらに
とびまわった
何かを手に入れ
巣に持ち帰り
また飛び立つ
働き蜂っていうことばのとおり
いや
それ以上の
働きぶりだった
でも
人間の働きバチとは違い
日が暮れるころには
ちゃんと巣に帰り
大きな身体には小さすぎる巣に
びっしりくっついて
お休みしていた
秋がきて
急に蜂くんは大人しくなった
巣をみると
ぎっしりの蜂くんが
何をするでもなく
飛び立つでもなく
ただもぞりもぞりと
存在していた
嵐のあと
巣をみたら
巣は壊れることなく
ちゃんとあって
蜂くんだけが
ちりぢりに
そこらへんの葉っぱに
団子になっていた
でもちゃんと生きていた
季節は冬に向かい
気温はどんどん下がり
寒い日が続いたあと
暖かい日がきて
蜂くんは
日の当たるところで
あきらかに
あったか~い
と
いかつい仮面に
似合わない
日向ぼっこをしていた
また寒くなり
暖かい日がきて
似合わない日向ぼっこを
しているはずの
蜂くんをさがしたら
跡形もなく
消えていた
いや
巣は残っていた
からっぽの空き家となって
あんなにたくさんいた
蜂くんは
消えた
まさに
消えたんだ
どこへいくとも告げず
かといって
死骸も残さず
きれい
さっぱり
消えてみせたんだ
巣もすでに
ぼろぼろで
土に還ろうとしはじめている
寒くて朽ちる前に
暖かい日に
消えるとは
想定外で
美しい
さりぎわ

からだよ
ありがとう
脚が太いとか
顔がいまいちだとか
なんだかんだと
なんくせつけたり
ないものねだりを
してきたけれど
そんなことは
意にも介さず
いままで
寒い日も
暑い日も
わたしを支えてくれて
本当に
ありがとう
暑い日に
冷たいものを飲んで
お腹をびっくりさせたり
西アフリカで
一週間も
お風呂に入れず
髪の毛がぐちゃぐちゃになって
ようやく入れた
一週間ぶりが
シャワーの行水だったり
なんだか
ずいぶん
ひどいことも
してきました
ごめんなさい
脚なんてほっといたって
細くなっていくし
顔もだんだん変わっていく
でもね
だれがなんといおうと
良い方に変わっていっている
だって
わたしは
アクエリアスピープル

束ねる
自分の意識を
思考を
木々を束ねながら
余計な雑念を
ふりはらう
庭いっぱいの緑から
空氣がおいしい
水を外で触っても
寒くない
おそらく今年最後の日
草を敷き詰めた
土は
水分を保持し
ふかふかして
やわらかい
よく肥えた土を掘り起こし
届いたクリスマスローズを
鉢に植える
寒さに強く
夏に休む
貴重な花を
はじめて
お迎えしたから
まだ
付き合い方が
よくわかっていない
とりあえず
家に入れたが
暖かすぎるかもしれない
土の中から
だんごむしが
春になったかと
もぞもぞ
出てきたから
庭の日当たりの悪い場所に
寝かしておいた
シクラメンが復活して
葉をつけたから
掘り起こして
鉢に植える
こちらは
暖かい部屋が
お似合い
赤い花を待とう
コーヒーの木は
ひとまわり大きな鉢へ
お引越し
ようやく根っこが
のびのびできる
白い埃虫に
これで
打ち克とう

かつて住んでいた
いまはもうない
お家のお庭に
鳥小屋があって
金鶏が
暮らしていた
キンケイの男子は
クジャクもびっくりの
とても
美しい羽根を持っていて
ゴージャスな兜をかぶっている武士のよう
それが
キンケイの女子に
対する
アピールポイント
なのだけれど
キンケイ男子はみんな同じ模様だから
結局のところ
最後は
どこが決め手なんだろう
毛ヅヤかしら
目ヂカラかしら
とはいえ
だいたいは
つがいで
飼われているから
よっぽどの
へなちょこでなければ
手近なところで
よしとするしか
ないのかもね


