Ψ(さい)のつづり
窓の外にいる
やもりに
しろっぽい色と
くろっぽい色の
赤ちゃんがうまれて
網戸の内側で
安全に修行中
昼間は上手にかくれんぼ
夕方からは神出鬼没
踏まないように
ご用心
庭の主の
ねこちゃんたちには
縄張りがあって
それぞれの持ち場で暮らしている
それを
平気で踏み荒らすのは
飼い猫の逃げねこ
我が物顔で
地域ねこの
縄張りを荒らす
本来なら
地域ねこが強いはずなのに
身体の大きい
逃げねこがくると
みんな
無用の争いを避けて
かくれんぼ
普段はのぼらない
木にものぼる
もういいかい
まあだだよ
ずうっとずっと
まあだだよ

空に
輝く
雲は
世界に
メッセージを
発信しているかのよう
こころを
開いて
まっさらにすれば
きっと
受取ることが
できるに
違いない
いつも
ひとりぼっちだった
わたしは
空を見上げて
何度
救われただろう
今の空と
昔の空は
きっと
つながっているに
違いない
どこかの
雲に
わたしの
泣き顔が
映っているかもしれない
いまの雲には
わたしの
笑い顔が
映っているね
しあわせでも
やっぱり
泣いてしまうから
泣き笑い顔だね
いま
こうして
ここにいられることに
ありがとう
見守って
育ててくれた
地球さんに
ありがとう

ミンミンゼミが
もうちょっと
ぼくらの季節を
楽しもうと
過ぎゆく夏を
大声で盛り上げる
いつの間にか
ツクツクボウシが
そっとうまれて
つくつくと
合いの手を入れる
日暮れが近くなると
ヒグラシが
かなかな
夜には
ウマオイが
すいっちょん
秋のお知らせを
届けてくれる
一日だって
同じ日はない
運命の輪のように
季節は巡る
わたしたちを
乗せて
わたしたちにできるのは
みんなのように
命を輝かせること
それが
振り落とされないために
必要なこと

雨がたくさん降ってきて
外にいたら
雷鳴が轟き
稲妻が山に突き刺さった
でも
家に入ったら
雨にもぬれず
山のおかげで
風にもあたらず
雷鳴も
窓をとおして
ジェントルにきこえる
こんな風に
守られて
生きる幸せ
やもりのこども
網戸の内側で
大きくなあれ

わたしの頭の中を
図書館に例えれば
機能しているのは
おびただしい数の本のうち
わたしが読んだことがある本
くらいに
ほんのわずかに違いない
知らないことが
多すぎて
まごついてしまうけれど
少しでも
頭を使いたいから
氣になった本を毎日時間をとって
読んでみようと思った
名前はもともと知っているのに
その作家の本は
はじめて手にとった
本そのものが古いため
漢字が古い字体で
仮名遣いも違って
読めるかどうか
自信がなかったけれど
内容は深く
趣があって
栄養を吸収するように
読み始めたら止めるのが
難しくなった
戦後すぐの作品でも
いいまわしが
古風で
会話文も
美しい
まるで古典を読んでいるように
錯覚しそうになるけれど
さすがに
意味はわかるところが
ありがたい
ファウストや
狭き門も
とても好きだけれど
翻訳のフィルターを
通していない
日本語で書かれた本は
多くのことを
教えてくれる
どうして
いままで
そのことに
氣がつかなかったんだろう
これから
日々文豪に
直接教えを乞おう
書かれた文字のおかげで
時間を
超越して
作品はいまに残る
そして
文豪との
対話を
可能にしてくれる


