Ψ(さい)のつづり -38ページ目
日が暮れるまでには
まだまだ時間が
あるけれど
少しずつ
陽射しが和らいで
来た頃
自転車を
漕いでみたら
笑っちゃうくらい
氣持ちがいい
風が
髪を
ふわふわに
整えてくれる
飛ぶ鳥の雲があって
本物の鳥もいれば
鉄の鳥も
飛んでいて
漕ぐスピードが
助走するみたいに
ぐんと上がる
こんなにも
すてきな
空を
ひとりじめ
だって
誰も
空を見上げていないから
刻一刻
一瞬一瞬
どんどん表情が
変わっていく
空を追いかける
ちょっと待って
遠回りして
見晴らしの良い
ところで
眺めるから
自転車は
しばし
押していこう

むかしむかし
宇宙からながめた
瑠璃色の星が
あまりにきれいだったので
その星の仲間になろうと
思った
ちいさなちいさな
お星さまが
いました
ちいさなちいさな
お星さまは
力自慢の神様に
お願いして
えいやっと
瑠璃色の星めがけて
投げてもらいました
ちいさなちいさな
お星さまは
うわ~いと
飛んでいきました
ところが
瑠璃色の星に近づくと
熱くて
熱くて
自分がまっかっかに
燃え始めたので
おどろきました
だって
瑠璃色だから
ひんやりしてると思ったから
燃えて燃えて
ちいさなちいさなお星さまは
どんどん
どんどん
さらにさらに
ちいさくちいさくなってきて
自分が
なくなっちゃうかもしれないと
心配しながら
飛んでいきました
けれど
なんとか
途中で
燃え尽きずに
火の玉ボールになって
ぽすんと
瑠璃色の星に
ぶつかりました
瑠璃色の星は
あら
なんだか
くすぐったいわ
そうして
ちいさなちいさな
お星さまは
瑠璃色の星と
ひとつになりました
ぽすんとぶつかった
場所では
最初は
じわじわじわじわ
次第にこんこんと
美しい水が
湧き出てきました
いまでも
その
美しい泉は
大切に
大切に
お守りされています

たべることは
いのちをいただくこと
いただきます
は
日本固有の言霊
いただくことで
からだはつくられ
こころは癒される
たべものを
おいしくいただけるよう
愛をこめて
丁寧に
手を加える
台所は
くだもののような
カラフルな
ひかりあふれる聖域

わたしと
あなたは
かつては
似た者同士だったかもしれない
しかし
反逆児の
影は薄れ
絶対にそうはなるまいと
誓ったはずの
反面教師と
同じことをしている
あなたを
世間は
ようやく大人になったね
と誉めそやすのかもしれない
そういう意味では
わたしは
いついつまでも
子どものまま
なのかもしれない
けれど
世代を継ぐことは
進歩することなんだから
同じ轍を踏むことが
大人になることなら
わたしは
大人になんて
ならなくていい
ありがとう
これからは
わたしは
わたしだけの
道をゆく

わかりやすい勝利と
わかりやすい敗北
これみよがしに
着飾った者たちが
闊歩する中で
惨めな敗者は
そそくさと
帰路に就く
勝ち負けのために
やっていたわけじゃないのに
いつの間にか
巻き込まれ
いつの間にか
軌道がずれている
そうなると
何かと
ぶつかるしかなくて
伸るか反るかの
大勝負になってしまう
ぶつかる前に
降りると
逃げたのなんだの
言われるけれど
静かに
軌道修正する
勇氣を持つ
いまは何を言っても
遠吠えみたいだけれど
勝者はいとも簡単に
客寄せパンダに
仕立て上げられる
そうならずに
済んだことを
神に感謝する


