Ψ(さい)のつづり -38ページ目
自分が本当にやりたいことが
ずっとずっと
わからなかった
性能の悪い
古いラジオみたいに
自分の魂の声に
うまくチューニングできずにいた
ごにょごにょいう雑音は
ただの
ノイズじゃなくて
いらない
助言
こうすべきの
社会通念
わたしが頭で考えた
目的と手段と目標
お勉強して
資格をとってという
ありきたりな道
そんな風に
やる氣を切り貼りして
つくった
張りぼては
時間とともに
よれよれになっていく
そんな
張りぼても
愛おしくはあるけれど
風雨に負けず
何百年も残っている
建造物のように
頑丈な土台を
まずは
つくっていこう

ほぎゃ~ってうまれたとき
あまりのまぶしさと
騒々しさに
びっくりして
大きな声で
泣きに泣いた
そのとき
身体ががちがちに
かたくなっちゃった
一番大きな声は
自分の声だったって
わかったころには
猛烈に
お腹がすいて
おへそからの
ごはんが来なくなったことを
知った
口をもぐもぐさせて
おっぱいに吸い付いてみたけれど
あんまりうまく飲めなかった
でも
美味しくて
もっと飲みたかったのに
すぐに
猛烈に眠くなった
そこで
ようやく
身体の力が
すうっとぬけて
眠りの世界に
ふわりふわり
飛んで行った

黒い出目金と
朱い金魚が
お祭りの
金魚すくいで
つかまって
ドジョウのおうちに
暮らすことになりました
あるじのドジョウは
だいたい地面に潜っていて
ご飯のときだけ
上にのぼってくるから
出目金と金魚は
おっとっと
ドジョウのくねくねぴしゃり
に気を付けて
波にゆらゆらしながらも
ご飯の争奪戦
ぱくぱくぱく
幸い
身体が小さかったから
ドジョウが置いていった
ご飯だけで十分
お腹いっぱい
出目金は金魚と
仲良しこよし
出目金は
黒だったけれど
だんだん色が薄くなり
全体は銀色に
それから
顔と背中は
朱くなり
まったく別の
朱い出目金に
へんげしました
朱い出目金と金魚は
逞しく
どんどん成長し
身体も大きくなりました
近々
黒いままのドジョウも一緒に
別のおうちへ
みんなで
おひっこし

ふるふると
古い
価値観を
ふるいにかけたら
いまの
時代に
必要な
ものの見方だけ
のこるかしら
自由?
もちろん残るだろうけれど
何をしてもいいなんていう
自由はない
安全?
もちろん残るだろうけれど
みんなと同じことをするのが
安全なんて時代は
とうにおわった
多様性?
いまの流行ワードかもしれないわね
これを言っておけば
安心っていう意味じゃなくて
ホンモノなら
残るんじゃないかな
希望?
それももちろん残るよね
パンドラのはこにだって
ちゃんと残っていたんだから
もちろん
でも
誰かが
与えてくれるんじゃなくて
自分で生み出して
まわりに
広げていくもの
さあて
他には
何が残っているかしら

大きな
世界の
ひろいひろい空に
星々が浮かんでいる
昼間はお日さまと
ときどきお月さま
それ以外は見えないけれど
それは
舞台に立つと
スポットライトをあびて
観客がよく見えないのと同じで
星々からは
きっと
わたしたちが
くっきり
はっきり
見えるに違いない
夜には
だいたい
寝てしまうわたしたちは
昼間にあちこち
動き回るし
さぞかしちょこまか
落ち着きがないことだろう
そこで生まれる
ドラマは
おもしろいかしら
そうだといいな
思いっ切り
息を吸い込んで
にっこり笑って
腕を広げ
空を
抱きしめる


