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本当に言いたかったことは言えたの?
何を聞かれているのか、全く分からなかった。
彼に自分の思いは伝えた。好きという言葉は使ってないけれど。
そこに引っかかっているのかとも考えたけれど、よく分からなかった。
言いたいことは言えたよ。
そう言って、車を降りようとした。むしろ、彼の顔を見ずに降りたかった。
これからどうするの?と、彼はさらに尋ねてきた。
もう遅いから、家に帰るよ。私は答えた。
そうじゃなくて、こんなことしない方がいい?彼は、そう言ってきた。
そんなこと、考えられない。彼に思いを伝えただけで、もういっぱいいっぱいで、これ以上のことは何も考える余裕なんてなかった。
いまは考えられないから、あとで連絡する。
そう答えて、私は車を降りた。
19
「好き」という言葉を使えなかったのは、
今更、こんな年齢にもなって使う言葉でもないだろうという恥ずかしさと
その言葉を使うことで、彼がどんな反応をするのか見たくないという気持ちからだった。
自分が傷つく事への怖さから少しでも逃げられるように
自分を守りつつ、自分の気持ちを伝えた。
彼は、それまで話していた口調とは違って、ゆっくり言葉を探しながら、
私について知っている事は、きっと表面的なものだけで、
自分は相手のことをよく知ってから付き合うようにしていると、言った。
そうなんだ、なんか変なことを言って困らせたみたいでごめんねと、私は言って、彼に背を向け車から降りようとした。
ドアに手をかけ、開けようとした時
本当に言いたかったことは言えたの?
そう、彼に言われて、私は振り返って彼を見た。
18
彼が車で送ってくれるようになって、自分も自分の事を彼に話すようになった。
少しずつ、少しずつ。
私は臆病だ。
傷つくようなことは自分からは進んでしない。
今の状態も好きだから、今のままでいようとする。
けれど、疲れてしまったから、早くどうにかしたかった。
車が家の近くのICを降りたところで、
話がしたいと言って、車を止めてもらった。
何から話したのか、よく覚えていないけれど、彼が好きだという気持ちを「好き」という言葉を使わずに伝えた。
どうしても、その単語だけは使えなかった。
