17
その後、仕事の終わりが同じ時間になると、彼は車で送ってくれるようになった。
会社では、よく上司の送り迎えをやらされるから、苦にはならないと彼は言った。
車の中で話をするにつれ、自分のことだけで頭がいっぱいになってしまった。
手を繋がれるのは断ったのに、彼の話に動揺したり。
よくよく冷静に聞けば、ちょっと親しい友人に話す内容で、自分は過敏に反応しすぎているだけなのかもしれない。
誰でも、あまり関係ない人にこっそり本音を話して、消化するときもあるし。
なんて、思うのは彼は自分をそれ以上に見ていないことを表しているようで
あぁ、やっぱりと確信を持った考えとそんなの嫌だと反抗する考えが頭の中を占領していた。
どうして、こんなに1人で考えを思い巡らせてばかりなんだろう。
なんだか疲れる。
いや、疲れた。
16
頭の中で考えていたことよりも、現実はもっと衝撃の強いものだったりする。
今まで生きてきて、抱えきれない衝撃に出会ったら、
最初は戸惑い、押しつぶされてしまって動けなくなることだってある。
今度はそんな事になりたくはないから、出来るだけの予防策を考える。
でも、それは衝撃を受け止めることよりも強くはなくて、
氾濫する川に堤防を高く作るように、積み重ねても、どこかに作り損ねがあったり、作り方がおかしくて、絶対に流れ出ないことはない。
ちょっと前から感じていたけれど
彼は、人をもう一度信じられるようになるきっかけを与えてくれた人だと、今はとても強く感じる。
でも、それは自分の中での大きな出来事でしかなくて、
彼の思っていることは他にある。
それを知っていても、感じていても、自分を分かって欲しいと思う気持ちは、伝えたいと思う気持ちは
自分のわがままなのかな。
自分は甘えているのかな。
15
2人で並んで歩いている間、不思議な空気が流れていた。
この前まで、会って話していた時と違って、会話もぎこちない。
いつもなら、最近興味のあったサッカーとか、最近観たDVDとか、いくらでも出てくるのに
それは言ってしまえば、どこかで飲んでいて意気投合した相手と当たり障りなくしている会話と大差ないのかもしれないけれど
今は、それとは全く違うことを話している。
自分のこと、仕事のこと、恋のこと
私は、あぁ、彼ときちんと向き合って話さないといけないんだ、と感じた。
どこかで逃げていた私は、もう逃げられなくなってきているのを感じた。
彼からも、自分からも