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「好き」という言葉を使えなかったのは、
今更、こんな年齢にもなって使う言葉でもないだろうという恥ずかしさと
その言葉を使うことで、彼がどんな反応をするのか見たくないという気持ちからだった。
自分が傷つく事への怖さから少しでも逃げられるように
自分を守りつつ、自分の気持ちを伝えた。
彼は、それまで話していた口調とは違って、ゆっくり言葉を探しながら、
私について知っている事は、きっと表面的なものだけで、
自分は相手のことをよく知ってから付き合うようにしていると、言った。
そうなんだ、なんか変なことを言って困らせたみたいでごめんねと、私は言って、彼に背を向け車から降りようとした。
ドアに手をかけ、開けようとした時
本当に言いたかったことは言えたの?
そう、彼に言われて、私は振り返って彼を見た。