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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

食品衛生法第21条による食肉販売の営業許可を受けない者のなした食肉買入契約の効力

 

 

              売掛代金請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和33年(オ)第61号

【判決日付】      昭和35年3月18日

【判示事項】      食品衛生法第21条による食肉販売の営業許可を受けない者のなした食肉買入契約の効力

【判決要旨】      食品衛生法第21条による食肉販売の営業許可を受けない者のなした食肉の買入契約は無効ではない。

【参照条文】      食品衛生法21

             食品衛生法施行令

             民法90

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集14巻4号483頁

 

 

食品衛生法

第五章 食品添加物公定書

第二十一条 厚生労働大臣及び内閣総理大臣は、食品添加物公定書を作成し、第十三条第一項の規定により基準又は規格が定められた添加物及び食品表示法第四条第一項の規定により基準が定められた添加物につき当該基準及び規格を収載するものとする。

 

 

食品衛生法施行令

(法第二十六条第一項の検査)

第五条 法第二十六条第一項の規定による命令は、都道府県知事が同項に規定する者に食品衛生上の危害の発生を防止するため必要な措置を講ずべき旨の通知をした後において、二月を超えない範囲内で都道府県知事が定める期間内にその者が製造し、又は加工する食品、添加物、器具又は容器包装について、検査の項目、試験品の採取方法、検査の方法その他厚生労働省令で定める事項を記載した検査命令書により行うものとする。

2 法第二十六条第一項の規定により検査を受けようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、都道府県知事又は登録検査機関に申請書を提出しなければならない。

3 都道府県知事又は登録検査機関は、前項の申請書を受理したときは、検査命令書に記載されたところに従い、試験品を採取し、検査を行うものとする。

 

 

民法

(公序良俗)

第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告代理人高橋義一郎、同伊沢英造の上告理由第一点について。

 原判決が所論の訴外会社が本件当時食品衛生法による許可を受けて食肉販売業を営んでいたこと及び自衛隊に対し精肉の納入をしたのは同訴外会社であることを認定判示していることは所論のとおりである。しかし右事実があるからといつて、必ずしも本件売買の買主が右訴外会社であると認定しなければならないものというを得ないから、原判決には所論の違法は存しない。所論はひつきよう原審の専権に属する事実認定を非難するに帰着し、上告適法の理由となすを得ない。

 同第二点について。

 本件売買契約が食品衛生法による取締の対象に含まれるかどうかはともかくとして同法は単なる取締法規にすぎないものと解するのが相当であるから、上告人が食肉販売業の許可を受けていないとしても、右法律により本件取引の効力が否定される理由はない。それ故右許可の有無は本件取引の私法上の効力に消長を及ぼすものではないとした原審の判断は結局正当であり、所論は採るを得ない。

 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

     最高裁判所第二小法廷

「イオン歯ブラシの使用方法」という発明の特許出願について、その技術内容が人体の存在を必須の構成要件とするものであるから、特許すべきではないとした事例


    特許願拒絶査定に対する審判の審決取消請求事件
【事件番号】    東京高等裁判所判決/昭和43年(行ケ)第158号
【判決日付】    昭和45年12月22日
【判示事項】    「イオン歯刷子の使用方法」という発明の特許出願について、その技術内容が人体の存在を必須の構成要件とするものであるから、特許すべきではないとした事例
【参照条文】    特許法29
【掲載誌】     判例タイムズ260号334頁
【評釈論文】    別冊ジュリスト86号42頁


特許法
(特許の要件)
第二十九条 産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。
一 特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明
二 特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明
三 特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明
2 特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が前項各号に掲げる発明に基いて容易に発明をすることができたときは、その発明については、同項の規定にかかわらず、特許を受けることができない。


       判 決 理 由

 二、そこで、本件審決に原告主張のような違法があるか否かについて検討する。
(編注、本件審決理由の要旨次の通り)
 本件審決理由の要旨
 本願発明の要旨は、「直流電源の負極に接続する金属端子を、弗化物を塗布すべき歯刷子体の植毛部又はその附近に取付け、前記電源の正極を人体の適所に電気的に接続し得るようにしたイオン歯刷子の前記電源の電圧を三V以上となし、以て市販の弗素入り歯磨の弗化物が弗化カルシウムに変化したときにも、これを電解して弗素イオンを生じ得るようにしたことを特徴とするイオン歯刷子の使用方法。」にあるものと認められるにあるものと認められる。そして、右認定の要旨によれば、本願発明は、結局、人体への弗素のイオン化導入法を利用した歯刷子の使用方法であつて、これによつて、人体歯髄、腔内における乳酸菌等の発生とその繁殖力を抑制して、むし歯の発生を防止することを目的とするものであるから、本願発明にあつては、当然人体そのものが必須の構成要件とならざるをえない。このように、人体の存在を必須の構成要件とする発明は、たとえ、その構成要件中に「イオン歯刷子」という自然力利用の技術的手段があつたとしても、全体として、産業上直接利用できないものであるから、本願発明は、特許法第二九条に規定する特許要件を具備しないものである。)
 原告は、当初提出した本願明細書において、発明の各称を「イオン歯刷子」とし、発明の詳細な説明の項における本願発明の棒成の説明として、弗化物を含む歯磨中の弗化カルシウムを有効にイオン化し得るようにしたことを特徴とする「イオン歯刷子」の構成を示し、かつ実施例の説明において、これを使用した場合の効果を述べたうえ、特許請求の範囲の項の記載を、「直流電源の負極に接続する金属端子を弗化物を塗布すべき歯刷子体の植毛部又はその附近に取付け、前記電源の正極を人体の適所に電気的に接続し得るようにしたものにおいて、前記電源の電圧を二V以上となし、もつて前記弗化物を含む歯磨中の弗化カルシウムを有効にイオン化し得るようにしたことを特徴とするイオン歯刷子。」としていたこと、しかるに、昭和三九年八月五日付手続補正書を提出して、発明の名称を「イオン歯刷子の使用方法」と訂正したほか、発明の詳細な説明の項において、本願発明の構成についても、イオン歯刷子の構造を従前どおり(但し、電源電圧は三V以上とする)示したうえで、「以て、市販の弗素入り歯磨の弗化物が弗化カルシウムに変化したときにも、これを電解して弗素イオンを生じ得るようにしたことを特徴とするイオン歯刷子の使用方法」と訂正し、かつ、特許請求の範囲の記載を、「直流電源の負極に接続する金属端子を弗化物を塗布すべき歯刷子体の植毛部又はその附近に取付け、前記電源の正極を人体の適所に電気的に接続し得るようにしたイオン歯刷子の前記電源の電圧を三V以上となし、以て市販の弗素入り歯磨の弗化物が弗化カルシウムに変化したときにも、これを電解して弗素イオンを生じ得るようにしたことを特徴とするイオン歯刷子の使用方法。」と訂正したことを認めることができる。右認定の経過事実に〈書証〉を総合検討すると、原告は、当初「イオン歯刷子」という物の発明として出願した本願発明明を、補正により、人体への弗素のイオン化導入法を利用した「イオン歯刷子の使用方法」という方法の発明に変更したものであり、その要旨は、前掲当事者間に争いのない本件審決理由中の認定のとおりのものというべく、したがつて、本願発明は、方法の発明として、人体の存在を必須の構成要件とするものと解するのが相当である。他に、右認定を左右すべき証拠はない。
 そうすると、本件審決が本願発明の要旨の認定を誤り、ひいてその特許要件に関する判断を誤つたとする原告の主張は、すでにその前提において理由のないことが明らかである。
三 以上のとおりであるから、本件審決に原告の本訴請求を理由なしとして棄却・・・・・・する。
 

証券取引法第58条第1号にいう「不正の手段」の意義。

 

最高裁判所第3小法廷決定/昭和38年(あ)第2225号

昭和40年5月25日

詐欺、証券取引法違反、私印偽造

【判示事項】    証券取引法第58条第1号にいう「不正の手段」の意義。

【判決要旨】    証券取引法第58条第1号にいう「不正の手段」とは、有価証券の取引に限定して、それに関し、社会通念上不正と認められる一切の手段をいうのであつて、文理上その意味は明確であり、それ自体において、犯罪の構成要件を明らかにしていると認められる。

【参照条文】    証券取引法58

【掲載誌】     最高裁判所裁判集刑事155号831頁

          刑事裁判資料261号989頁

 

 

昭和二十三年法律第二十五号

金融商品取引法

第百九十七条 次の各号のいずれかに該当する者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

一 第五条(第二十七条において準用する場合を含む。)の規定による届出書類(第五条第四項の規定の適用を受ける届出書の場合には、当該届出書に係る参照書類を含む。)、第七条第一項、第九条第一項若しくは第十条第一項(これらの規定を第二十七条において準用する場合を含む。)の規定による訂正届出書(当該訂正届出書に係る参照書類を含む。)、第二十三条の三第一項及び第二項(これらの規定を第二十七条において準用する場合を含む。)の規定による発行登録書(当該発行登録書に係る参照書類を含む。)及びその添付書類、第二十三条の四、第二十三条の九第一項若しくは第二十三条の十第一項の規定若しくは同条第五項において準用する同条第一項(これらの規定を第二十七条において準用する場合を含む。)の規定による訂正発行登録書(当該訂正発行登録書に係る参照書類を含む。)、第二十三条の八第一項及び第五項(これらの規定を第二十七条において準用する場合を含む。)の規定による発行登録追補書類(当該発行登録追補書類に係る参照書類を含む。)及びその添付書類又は第二十四条第一項若しくは第三項(これらの規定を同条第五項(第二十七条において準用する場合を含む。)及び第二十七条において準用する場合を含む。)若しくは第二十四条の二第一項(第二十七条において準用する場合を含む。)の規定による有価証券報告書若しくはその訂正報告書であつて、重要な事項につき虚偽の記載のあるものを提出した者

二 第二十七条の三第一項(第二十七条の二十二の二第二項において準用する場合を含む。)、第二十七条の六第二項若しくは第三項(これらの規定を第二十七条の二十二の二第二項において準用する場合を含む。)、第二十七条の七第一項若しくは第二項(これらの規定を第二十七条の八第十二項並びに第二十七条の二十二の二第二項及び第六項において準用する場合を含む。)、第二十七条の八第八項(第二十七条の二十二の二第二項及び第二十七条の二十二の三第四項において準用する場合を含む。)、第二十七条の八第十一項(第二十七条の二十二の二第二項において準用する場合を含む。)、第二十七条の十第四項から第六項まで、第二十七条の十一第二項(第二十七条の二十二の二第二項において準用する場合を含む。)又は第二十七条の十三第一項(第二十七条の二十二の二第二項において準用する場合を含む。)の規定による公告又は公表に当たり、重要な事項につき虚偽の表示をした者

三 第二十七条の三第二項(第二十七条の二十二の二第二項において準用する場合を含む。)の規定による公開買付届出書、第二十七条の八第一項から第四項まで(これらの規定を第二十七条の二十二の二第二項において準用する場合を含む。)の規定による訂正届出書、第二十七条の十一第三項(第二十七条の二十二の二第二項において準用する場合を含む。)の規定による公開買付撤回届出書、第二十七条の十三第二項(第二十七条の二十二の二第二項において準用する場合を含む。)の規定による公開買付報告書又は第二十七条の十三第三項及び第二十七条の二十二の二第七項において準用する第二十七条の八第一項から第四項までの規定による訂正報告書であつて、重要な事項につき虚偽の記載のあるものを提出した者

四 第二十七条の二十二の三第一項又は第二項の規定による公表を行わず、又は虚偽の公表を行つた者

四の二 第二十七条の三十一第二項の規定による特定証券情報(同条第三項の規定の適用を受ける特定証券情報の場合には、当該特定証券情報に係る参照情報を含む。)、同条第四項の規定による訂正特定証券情報(当該訂正特定証券情報に係る参照情報を含む。)、第二十七条の三十二第一項若しくは第二項の規定による発行者情報又は同条第三項の規定による訂正発行者情報であつて、重要な事項につき虚偽のあるものの提供又は公表をした者

五 第百五十七条、第百五十八条又は第百五十九条の規定に違反した者(当該違反が商品関連市場デリバティブ取引のみに係るものである場合を除く。)

六 第百八十五条の二十二第一項、第百八十五条の二十三第一項又は第百八十五条の二十四第一項若しくは第二項の規定に違反した者

2 次の各号のいずれかに該当する者は、十年以下の懲役及び三千万円以下の罰金に処する。

一 財産上の利益を得る目的で、前項第五号の罪を犯して有価証券等の相場を変動させ、又はくぎ付けし、固定し、若しくは安定させ、当該変動させ、又はくぎ付けし、固定し、若しくは安定させた相場により当該有価証券等に係る有価証券の売買その他の取引又はデリバティブ取引等を行つた者(当該罪が商品関連市場デリバティブ取引のみに係るものである場合を除く。)

二 財産上の利益を得る目的で、前項第六号の罪を犯して暗号等資産等の相場を変動させ、当該変動させた相場により当該暗号等資産等に係る暗号等資産の売買その他の取引又は暗号等資産関連デリバティブ取引等を行つた者

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 

       理   由

 

 弁護人佐藤末野の上告趣意1について。

 所論は、証券取引法58条1号にいわゆる「不正の手段」の意義、内容は漠然としているので、同条号は憲法31条に違反する違憲無効の法規であると主張する。

 しかしながら、同条号にいう「不正の手段」とは、有価証券の取引に限定して、それに関し、社会通念上不正と認められる一切の手段をいうのであつて、文理上その意味は明確であり、それ自体において、犯罪の構成要件を明らかにしていると認められる(第1審判決の確定した事実によれば、本件は、被告人が、無価値の株券に偽装の株価をつけるため、証券会社の外務員二名と共謀の上、同人らをして、判示会社の株式につき、権利の移転を目的としない仮装の売買を行わせたというのであり、かような行為が、証券取引法58条1号にいわゆる「不正の手段」に該当することは明白である)。それゆえ、右違憲の主張は、前提を欠き適法な上告理由に当らない。

 その余の論旨は、事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、刑訴法四〇5条の上告理由に当らない。

 同二ないし四について。

 所論は、事実誤認、単なる訴訟法違反および量刑不当の主張であつて、刑訴法四〇5条の上告理由に当らない。

 また、記録を調べても、同法四11条を適用すべきものとは認められない。

 よつて、同法414条、386条1項3号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

  昭和40年5月25日

    最高裁判所第三小法廷

『台湾ビジネス法務』2022/12/16

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コメント

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〈主要目次〉

第1章 台湾ビジネス法に関連する基本的事項

第2章 台湾への投資規制

第3章 M&A、組織再編

第4章 会社・事業の運営―台湾の会社法

第5章 人事・労務

第6章 法規制とコンプライアンス

第7章 不動産法制

第8章 知的財産法

第9章 輸出入管理

第10章 撤退

第11章 民事紛争解決

第12章 台湾ビジネスの最新動向と関連法律・規制

第13章 その他

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第24章 消費者団体訴訟制度とは

内閣総理大臣が認定した消費者団体が、消費者に代わって事業者に対して訴訟等をすることができる制度をいいます。

民事訴訟の原則的な考え方では、被害者である消費者が、加害者である事業者を訴えることになりますが、1消費者と事業者との間には情報の質・量・交渉力の格差があること、2訴訟には時間・費用・労力がかかり、少額被害の回復に見合わないこと、3個別のトラブルが回復されても、同種のトラブルがなくなるわけではないことなどから、内閣総理大臣が認定した消費者団体に特別な権限を付与したものです。

具体的には、事業者の不当な行為に対して、内閣総理大臣が認定した適格消費者団体が、不特定多数の消費者の利益を擁護するために、差止めを求めることができる制度(差止請求)と、不当な事業者に対して、適格消費者団体の中から内閣総理大臣が新たに認定した特定適格消費者団体が、消費者に代わって被害の集団的な回復を求めることができる制度(被害回復)があります。

 

請負人が材料全部を提供して建築した建物が完成と同時に注文者の所有に帰するものと認められた事例

 

 

所有権確認等請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和45年(オ)第1117号

【判決日付】      昭和46年3月5日

【判示事項】      請負人が材料全部を提供して建築した建物が完成と同時に注文者の所有に帰するものと認められた事例

【判決要旨】      注文者の所有または使用する土地の上に請負人が材料全部を提供して建物を建築した場合において、請負契約は分譲を目的とする建物6棟の建築につき一括してなされたものであって、その内3棟は注文者ないしこれから分譲を受けた入居者らに異議なく引き渡されており、請負人は、注文者から請負代金の全額につきその支払のための手形を受領し、その際、6棟の建物についての建築確認通知書を注文者に交付したなど、原判示(原判決理由参照)の事実関係があるときは、右確認通知書交付にあたり、6棟の建物全部につき完成と同時に注文者にその所有権を帰属させる旨の合意がなされたものであり、したがって、いまだ引渡しのなされていない建物も完成と同時に注文者の所有に帰したものと認めることができる。

【参照条文】      民法176

             民法633

【掲載誌】        最高裁判所裁判集民事102号219頁

             金融・商事判例261号11頁

             判例時報628号48頁

 

 

民法

(物権の設定及び移転)

第百七十六条 物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。

 

(請負)

第六百三十二条 請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告代理人中野富次男、同木川恵章の上告理由について。

 上告人と訴外株式会社三伸との間の請負契約において、代金の支払と引換えに建物所有権を移転する旨の約定がなされたものとは認められないとした原判決の事実認定は、証拠関係に照らして肯認することができる。そして、建物建築の請負契約において、注文者の所有または使用する土地の上に請負人が材料全部を提供して建築した建物の所有権は、建物引渡の時に請負人から注文者に移転するのを原則とするが、これと異なる特約が許されないものではなく、明示または黙示の合意により、引渡および請負代金完済の前においても、建物の完成と同時に注文者が建物所有権を取得するものと認めることは、なんら妨げられるものではないと解されるところ、本件請負契約は分譲を目的とする建物六棟の建築につき一括してなされたものであって、その内三棟については、上告人は訴外会社ないしこれから分譲を受けた入居者らに異議なくその引渡を了しており、本件建物を完成後ただちに引き渡さなかったのも、右三棟と別異に取り扱う趣旨ではなく、いまだ入居者がなかったためにすぎなかったこと、上告人は請負代金の全額につきその支払のための手形を受領しており、それについての訴外会社の支払能力に疑いを抱いていなかったこと、上告人は、右手形全部の交付を受けた機会に、さきに訴外会社の代理人として受領していた右六棟の建物についての建築確認通知書を訴外会社に交付したことなど、原判決の確定した事実関係のもとにおいては、右確認通知書交付にあたり、本件各建物を含む六棟の建物につきその完成と同時に訴外会社にその所有権を帰属させる旨の合意がなされたものと認められ、したがって、本件建物はその完成と同時に訴外会社の所有に帰したものであるとする趣旨の原判決の認定・判断は、正当として是認することができないものではない。論旨引用の判例は、右のような合意の認められる本件とは事案を異にし、適切でなく、原判決に所論の違法はない。論旨は採用することができない。

 よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

証券取引法(平成16年改正前)17条に定める損害賠償責任の責任主体は同法にいう発行者等に限られるか


    損害賠償請求事件
【事件番号】    最高裁判所第2小法廷判決/平成18年(受)第2084号
【判決日付】    平成20年2月15日
【判示事項】    証券取引法(平成16年法律第97号による改正前のもの)17条に定める損害賠償責任の責任主体は同法にいう発行者等に限られるか
【判決要旨】    証券取引法(平成16年法律第97号による改正前のもの)17条に定める損害賠償責任の責任主体は,重要な事項について虚偽の表示があり又は重要な事実の表示が欠けている目論見書その他の表示を使用して有価証券を取得させたといえる者であれば足り,同法にいう発行者,有価証券の募集若しくは売出しをする者,引受人若しくは証券会社等,又はこれと同視できる者に限られない。
【参照条文】    証券取引法(平16法97号改正前)17
          金融商品取引法17
【掲載誌】     最高裁判所民事判例集62巻2号377頁


金融商品取引法
(虚偽記載のある目論見書等を使用した者の賠償責任)
第十七条 第四条第一項本文、第二項本文若しくは第三項本文の規定の適用を受ける有価証券又は既に開示された有価証券の募集又は売出しについて、重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは記載すべき重要な事項若しくは誤解を生じさせないために必要な事実の記載が欠けている第十三条第一項の目論見書又は重要な事項について虚偽の表示若しくは誤解を生ずるような表示があり、若しくは誤解を生じさせないために必要な事実の表示が欠けている資料を使用して有価証券を取得させた者は、記載が虚偽であり、若しくは欠けていること又は表示が虚偽であり、若しくは誤解を生ずるような表示であり、若しくは表示が欠けていることを知らないで当該有価証券を取得した者が受けた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、賠償の責めに任ずべき者が、記載が虚偽であり、若しくは欠けていること又は表示が虚偽であり、若しくは誤解を生ずるような表示であることを知らず、かつ、相当な注意を用いたにもかかわらず知ることができなかつたことを証明したときは、この限りでない。





       主   文

 原判決中被上告人らに関する部分を破棄する。
 前項の部分につき、本件を東京高等裁判所に差し戻す。

       理   由

 上告代理人外立憲治ほかの上告受理申立て理由について
1 原審が確定した事実関係の概要は、次のとおりである。
(1)上告人は、コール資金の貸借又はその媒介等を営む株式会社である。
 被上告人Y1(以下「被上告会社」という。)は、英国法人であるA社を中心とするAグループ(以下「Aグループ」という。)に属する会社であり、Aグループが日本において情報の収集、処理、分析及び提供業務を行うために設立した会社である。
 被上告人Y2は、現在、被上告会社の代表取締役であり、後記の有価証券の取引が行われた平成13年4月当時は被上告会社の取締役であった。
 被上告会社の代表取締役であるBは、平成13年4月当時も被上告会社の代表取締役であった。
(2)B及び被上告人Y2は、平成13年3月ころ、グレナダ法人であるC社(以下「C社」という。)を発行者とする証券取引法(平成16年法律第97号による改正前のもの。平成18年法律第65号により法律の題名が「金融商品取引法」と改められた。以下「法」という。)上の有価証券に当たる外国投資証券(以下「本件証券」という。)の募集のため上記会社の事業内容等に関する説明を記載した目論見書(以下「本件目論見書」という。)を、上告人に交付して、本件証券の取得をあっせんし、勧誘した。
 なお、C社は、Aグループに属する会社であり、B及び被上告人Y2は、C社やAグループの意向を受けて上記あっせん、勧誘を行ったものである。
(3)B及び被上告人Y2は、上告人からの質問に答えるなどして、C社とともに上告人に対して本件目論見書の内容について説明した。そして、上告人は、本件目論見書の記載と上記説明を基に本件証券を取得することを検討し、平成13年4月5日、C社から本件証券を30億円で取得した。
(4)本件目論見書の記載及びその内容に関するB、被上告人Y2及びC社の説明は、投資資金の送金先、資金の運用方法、担保・保証の有無等の多くの重要な点において、実際の資金の流れ、管理、資金運用の実態などと食い違っていた。
(5)本件証券の償還期限は平成14年4月4日であるが、原審の口頭弁論終結時である平成18年6月21日の時点でも上告人に対して全く償還がされていない。なお、C社については、平成14年7月25日、グレナダにおいて清算手続が開始されている。
2 本件は、上告人が、被上告人Y2に対して、重要な事項について虚偽の表示があり又は重要な事実の表示が欠けている目論見書その他の表示(以下「虚偽記載のある目論見書等」という。)を使用して有価証券を取得させた者の損害賠償責任を定めた法17条に基づき、被上告会社に対しては、その代表者であるBが法17条の責任を負うとして、商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)261条3項、78条2項、民法44条1項に基づき、本件証券の取得代金相当額30億円のうち1億円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める事案である。
3 原審は、次のとおり判断し、上告人の被上告人らに対する請求をいずれも棄却すべきものとした。
 法17条の責任主体である「有価証券を取得させた者」とは、その法文の趣旨から、発行者、有価証券の募集若しくは売出しをする者、引受人若しくは証券会社等又はこれと同視できる者(以下、併せて「発行者等」という。)に限られると解すべきである。
 B及び被上告人Y2は、C社やAグループの意向を受けて、上告人に本件証券を取得させるべく、情報提供のみならず、取得のあっせん、勧誘をしたことが認められるが、発行者であるC社と同視できる者であるとは認めることができず、法17条にいう「有価証券を取得させた者」には該当しないというべきである。
 したがって、被上告人Y2について同条に基づく損害賠償責任を認めることはできず、被上告会社の代表者であるBに同条の責任があることを前提とする被上告会社の責任も認めることができない。
4 しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
(1)原審は、法17条に定める損害賠償責任の責任主体になり得る者は発行者等に限定されると解しているが、同条には責任主体を発行者等に限定する文言は存しない。そして、法は、何人も有価証券の募集又は売出しのために法定の記載内容と異なる内容を記載した目論見書を使用し、又は法定の記載内容と異なる内容の表示をしてはならないと定めていること(13条5項)、重要な事項について虚偽の記載があり又は重要な事実の記載が欠けている目論見書を作成した発行者の損害賠償責任については、法17条とは別に法18条2項に規定されていることなどに照らすと、法17条に定める損害賠償責任の責任主体は、虚偽記載のある目論見書等を使用して有価証券を取得させたといえる者であれば足り、発行者等に限るとすることはできない。
(2)これを本件についてみると、前記確定事実によれば、B及び被上告人Y2は、Aグループに属する会社の代表取締役又は取締役として、上告人に対し、重要な事項について虚偽の表示がある本件目論見書を交付して本件証券の取得につきあっせん、勧誘を行い、あるいはC社とともに本件証券の内容について説明し、その結果上告人は本件証券を取得するに至ったというのであるから、法17条に定める損害賠償責任の責任主体となるというべきである。
5 以上によれば、B及び被上告人Y2は上記責任主体とならないとして被上告人らの責任を否定した原審の前記判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり、原判決のうち上告人の被上告人らに対する請求を棄却した部分は破棄を免れない。そして、B及び被上告人Y2について法17条ただし書の免責事由の存否等について更に審理を尽くさせるため、上記部分につき本件を原審に差し戻すこととする。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
    最高裁判所第二小法廷
 

いずれの都道府県の区域にも属さなかつた土地を県告示で市町村の区域に編入できるか。

 

 

              決定処分取消等請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷/昭和34年(オ)第301号

【判決日付】      昭和36年6月9日

【判示事項】      一、いずれの都道府県の区域にも属さなかつた土地を県告示で市町村の区域に編入できるか。

             二、登記所の管轄権の有無は判決時をもつて定めるべきか。

【掲載誌】        訟務月報7巻8号1622頁

             最高裁判所裁判集民事52号129頁

【評釈論文】      別冊ジュリスト71号24頁

             別冊ジュリスト125号18頁

 

 

地方自治法

第六条 都道府県の廃置分合又は境界変更をしようとするときは、法律でこれを定める。

② 都道府県の境界にわたつて市町村の設置又は境界の変更があつたときは、都道府県の境界も、また、自ら変更する。従来地方公共団体の区域に属しなかつた地域を市町村の区域に編入したときも、また、同様とする。

③ 前二項の場合において財産処分を必要とするときは、関係地方公共団体が協議してこれを定める。但し、法律に特別の定があるときは、この限りでない。

④ 前項の協議については、関係地方公共団体の議会の議決を経なければならない。

 

第六条の二 前条第一項の規定によるほか、二以上の都道府県の廃止及びそれらの区域の全部による一の都道府県の設置又は都道府県の廃止及びその区域の全部の他の一の都道府県の区域への編入は、関係都道府県の申請に基づき、内閣が国会の承認を経てこれを定めることができる。

② 前項の申請については、関係都道府県の議会の議決を経なければならない。

③ 第一項の申請は、総務大臣を経由して行うものとする。

④ 第一項の規定による処分があつたときは、総務大臣は、直ちにその旨を告示しなければならない。

⑤ 第一項の規定による処分は、前項の規定による告示によりその効力を生ずる。

 

平成十六年法律第百二十三号

不動産登記法

(申請の却下)

第二十五条 登記官は、次に掲げる場合には、理由を付した決定で、登記の申請を却下しなければならない。ただし、当該申請の不備が補正することができるものである場合において、登記官が定めた相当の期間内に、申請人がこれを補正したときは、この限りでない。

一 申請に係る不動産の所在地が当該申請を受けた登記所の管轄に属しないとき。

二 申請が登記事項(他の法令の規定により登記記録として登記すべき事項を含む。)以外の事項の登記を目的とするとき。

三 申請に係る登記が既に登記されているとき。

四 申請の権限を有しない者の申請によるとき。

五 申請情報又はその提供の方法がこの法律に基づく命令又はその他の法令の規定により定められた方式に適合しないとき。

六 申請情報の内容である不動産又は登記の目的である権利が登記記録と合致しないとき。

七 申請情報の内容である登記義務者(第六十五条、第七十七条、第八十九条第一項(同条第二項(第九十五条第二項において準用する場合を含む。)及び第九十五条第二項において準用する場合を含む。)、第九十三条(第九十五条第二項において準用する場合を含む。)又は第百十条前段の場合にあっては、登記名義人)の氏名若しくは名称又は住所が登記記録と合致しないとき。

八 申請情報の内容が第六十一条に規定する登記原因を証する情報の内容と合致しないとき。

九 第二十二条本文若しくは第六十一条の規定又はこの法律に基づく命令若しくはその他の法令の規定により申請情報と併せて提供しなければならないものとされている情報が提供されないとき。

十 第二十三条第一項に規定する期間内に同項の申出がないとき。

十一 表示に関する登記の申請に係る不動産の表示が第二十九条の規定による登記官の調査の結果と合致しないとき。

十二 登録免許税を納付しないとき。

十三 前各号に掲げる場合のほか、登記すべきものでないときとして政令で定めるとき。

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 本件上告理由は別紙のとおりである。

 論旨は、昭和三一年七月九日登記官史が職権によつてした本件仮登記抹消までの経過を述べ、右抹消の違法を主張するのであるが、原判決も説明するように、昭和二七年八月法律三〇六号による地方自治法の改正前においては、久六島のようにいずれの都道府県の区域にも属しなかつた土地を市町村の区域に編入することは都道府県の境界変更になるので地方自治法六条一項により法律をもつて定めることを要したものと解すべく、従つて昭和二六年九月二八日青森県告示にかかる久六島を深浦町の区域に編入する処分は無効といわなければならない。従つて昭和二七年一月本件仮登記の当時においては、久六島を管轄する法務局、地方法務局又はその支局、出張所は存在しなかつたのであつて、青森地方法務局深浦出張所は上告人の仮登記申請があつても、不動産登記法四九条一号に基き却下しなければならなかつたのである。従つて右申請を受理し登記を完了した後においても、登記官吏は同法一四九条ノニ乃至五により職権をもつて抹消すべく、右抹消を是認した原判決に、所論のように法律の解釈を誤つた違法はない。なお論旨は、法務局出張所の管轄権の有無は判決時をもつて定めるべき旨を主張するのであるが、昭和三一年九月一五日に久六島は深浦町に編入され、右深浦出張所が久六島を管轄するに至つたとはいえ、本件仮登記当時は勿論抹消当時においても右管轄権がなかつたのであるから、適法に抹消された後に管轄権が生じたからといつて本件抹消を違法とすべき理由はない。

 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

石鹸を指定商品とする商標「主婦の友」と商標法第2条第1項第11号

最高裁判所第3小法廷判決/昭和29年(オ)第251号
昭和30年7月5日
商標登録拒絶査定審決取消請求事件
【判示事項】    石鹸を指定商品とする商標「主婦の友」と商標法第2条第1項第11号
【判決要旨】    石鹸を指定商品とする商標「主婦の友」は株式会社主婦の友代理部取扱の商品と誤認を生ぜしめる虞があり商標法第2条第1項第11号にあたる。
【参照条文】    商標法2-1
【掲載誌】     最高裁判所民事判例集9巻9号1020頁


商標法
(定義等)
第二条1項 この法律で「商標」とは、人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。
一 業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの
二 業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)




       主   文

 本件上告を棄却する。
 上告費用は上告人の負担とする。

       理   由

 上告代理人鈴江武彦の上告理由第1点について。
 論旨は所論甲、乙の2つのことを前提として、原判決は商標権の範囲を不当に拡大して、商標法2条1項11号の適用を誤り、ひいて憲法13条、29条に違反するものであると主張する。すなわち論旨は先ず(甲)「石鹸等の雑貨については一般需要者は商標についての注意は重きをおかないことが一般経験則である。」と主張するけれども、そのような経験則は認められない。従って原判決が、「一般世人は原告の販売する石鹸を、株式会社主婦之友社代理部において取扱販売している商品と誤まり考え、その出所の混同を生ずる虞が多分にあるものといわなければならない、」とし、「石鹸のように広く一般家庭主婦が購買、消費する商品にあっては、これらの購買者について生ずる混同誤認のおそれは1層重視されなければならない」との理由を以て上告人の請求を斥けたのは相当であって、これを目して所論のように商標権の範囲を不当に拡大したものということはできない。また論旨は(乙)証人Aが「著名なのは雑誌だけだ」と述べていると主張するけれども、弁論調書にはそのような記載はない。従ってAの証言は所論のように明確な誤認のないことの反証とはならない。右の次第であるから、所論甲及び乙を前提とする違法違憲の主張はすべて理由がない。
 同第2点について。
 論旨は、原判決は、主婦之友社代理部の化粧品等の販売実績を具体的に示さず、また証拠によって認定していない、と主張する。しかし原判決は、判文上明らかなとおり、「右代理部における元年間の商品の取扱額は約1億2、3千万円、うち石鹸は大体百万円位である」ことを適法な証拠を綜合して認定しているのである。論旨は理由がない。
 同第3点について。
 論旨は判例違反を主張するけれども、援用の判例は本件とは事例を異にし適切でない。
 同第4点について。
 石鹸等の雑貨については一般需要者は商標についての注意は重きをおかないものであるという一般経験則のないことは前記のとおりである。このような一般経験則あることを前提とする論旨は採用できない。原判決は論旨援用の判例に反するものでないこと明らかである。
 同第5点について。
 論旨挙示の事例は多くは商品を異にしており、本件の先例とするに足りるものはない。援用の判例も「具体的に諸般の事情を観察してこれを判定すべき」ことを判示しているのであるから、原判決がこの判例に違背しているということはできない。
 同第6点について。
 論旨は主婦之友社がその取扱石鹸に商標を附していないのに、雑誌と石鹸との間に特別な関係があるとした原判決は違法であると主張する。しかし株式会社主婦之友社は雑誌「主婦之友」を発行しているかたわら代理部の名称を用いて、通信販売及び売場経営によって、図書、繊維製品、薬品、化粧品等の取扱販売をしているのであって、右取扱商品中石鹸は他社の製品であり、「主婦之友」なる商標を用いていないけれども、上告人の指定商品石鹸に「主婦の友」なる商標を使用すれば、主婦之友社取扱の商品と誤認せられる虞があることは明白であるといわなければならない。それ故原判決には所論のような違法はない。
 以上の理由によって、民訴401条、95条、89条に従い、裁判官全員1致の意見を以て、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第3小法廷

 

第23章 事業者の努力義務の明示

1 解釈に疑義が生じないよう配慮する義務

実際に使用されている消費者契約の条項の中には、例えば、単にAとBを読点で結んだだけで、「AかつB」とも「A又はB」とも解釈することができる条項など、不明確な条項が見受けられます。

改正法は、「事業者は、消費者契約の条項を定めるに当たっては、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容が消費者にとって明確かつ平易なものになるよう配慮する」よう努めなければならないことを規定した部分を改正し、「条項の解釈について疑義が生じない明確なもので、かつ、消費者にとって平易なものになるよう配慮する」よう努めなれければならないことを明らかにしました(改正法3条1項1号)。

 

2 事業者の努力義務の明示(3条1項)

事業者の努力義務として、契約条項を作成するに当たって契約内容について解釈に疑義が生じない明確なものとするよう配慮すべきことと、消費者契約の勧誘に際しては消費者契約の目的となるものの性質に応じて個々の消費者の知識および経験を考慮したうえで必要な情報を提供すべきことが定められました。

 

3 事業者の努力義務内容の明確化、具体化

情報提供の在り方は個別の消費者が契約内容等をどの程度理解しているのかによって変わり得るものですので、事業者の消費者に対する情報提供は、個別の消費者の事情についても考慮した上で実質的に行われるべきものです。改正前の消費契約法第3条第1項の規定からは、上記の点が必ずしも明らかではないことから、法文上で明示することとしました(改正法3条1項2号)。

 

改正法では、消費者と事業者との間には情報力や交渉力の格差があること、また知識や経験は消費者によって様々であることを踏まえた事業者の努力義務が追加されました。具体的には、①事業者は、契約条項を作成するにあたり、その解釈について疑義が生じない明確なもので、かつ平易なものとなるよう努めること、②事業者は、契約の目的となるものの性質に応じ、個々の消費者の知識・経験を考慮した上で必要な情報の提供に努めること、とされています(改正法3条1項)。

 

なお、『消費者法判例百選』(有斐閣、令和2年)32事件の解説も参照。