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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

第6章 電気通信事業法の主な改正項目

主な改正項目は以下の3点です。

改正項目

目的

 

情報通信インフラの提供確保

国内どこでも・誰でも利用できるユニバーサルサービスの確保

安心・安全で信頼できる通信サービス・ネットワークの確保

誰もが安心・安全に利用できる環境の整備

電気通信市場を巡る動向に応じた公正な競争環境の整備

事業者の公正な競争環境と低廉なサービスの実現

 

出典:総務省「電気通信事業法施行規則等の一部改正について」

 

上記のうち、特に大きな影響を与えると考えられている「安心・安全で信頼できる通信サービス・ネットワークの確保」に関する変更点を3つ紹介します。

 

近年は、デジタル技術を活用したサービスの普及が拡大しています。

 

デジタル技術の拡大に一役買っているブロードバンドサービスは、もはやインフラとして欠かせません。人の集まる地域だけでなく、山岳地帯などの不採算地域にも安定して提供する必要があります。

 

しかし、デジタル技術を活用したサービスの拡大に伴い、情報漏えいなどのリスクが高まっています。サービスを提供する事業は、保有するデータをより一層適切に取り扱わなければなりません。

 

第4章 電気通信事業法の改正内容

改正法は、ネットワークが普及した現代の「デジタル社会」の実現のため、通信サービス・ネットワークが安心・安全で信頼され、継続的・安定的かつ確実に提供できる場を確立するために公布されました。

 

直近で始まった問題ではありませんが、通信サービス・ネットワークを管理運営する電気通信事業者(法2条5号)において、利用者の個人情報の漏えい事が発生し、海外のサーバーなどを通じ、これらのデータにアクセス可能な状態となってしまうなど、通信サービスを利用する上で起こるリスクが徐々に顕在化しています。

 

また、情報漏えいだけでなく、電気通信事業者に対するサイバー攻撃により、通信サービスの提供の停止に至る事や、通信設備に関するデータが外部に漏えいした恐れのある事など、サイバー攻撃による被害も深刻化しています。

 

このような状況を受け、電気通信事業者のサイバーセキュリティ対策とデータの取り扱い等に係るガバナンス確保の在り方が検証されました。

 

そして、デジタル時代の安心・安全で信頼できる通信サービス・ネットワークの確保を目的に、電気通信事業法の改正が行われました。

 

 

 

第5章 改正電気通信事業法の公布日・施行日

改正の根拠となる法令名は、「電気通信事業法の一部を改正する法律」です。公布日と施行日は、以下のとおりです。

 

公布日・施行日

公布日|2022年6月17日

施行日|2023年6月16日

 

※ただし、73条の2(媒介等の業務の届け出等)関連の改正は2022年9月1日より施行

 

 令和5年1月16日には、電気通信事業法施行規則等の一部を改正する省令(令和5年総務省令第2号)が公布されています。

また、同年5月18日には、関係する規定の解釈等を示した「電気通信事業における個人情報等の保護に関するガイドライン」および「電気通信事業における個人情報等の保護に関するガイドラインの解説」の改訂版が確定・公表されました。

 

第2章 電気通信事業法の改正

2022(令和4)年6月に電気通信事業法の一部を改正する法律(令和4年法律第70号)が可決・成立しました。

 

今回の電気通信事業法改正では、電気通信事業を取り巻く環境変化を踏まえ、サービスの円滑な提供・利用者保護を図るため、さまざまなルール変更が行われます。

 

 

第3章 電気通信事業法改正の目的

 

今回の電気通信事業法改正の目的は、インターネットなどを利用した電気通信事業を取り巻く環境の変化を踏まえ、サービスの円滑な提供・利用者の利益の保護を図るため、必要な規制や制度を追加することにあります。

 

今回改正の主軸となったのは以下の3点です。

 

情報通信インフラの提供確保

安心・安全で信頼できる通信サービス・ネットワークの確保

電気通信市場を巡る動向に応じた公正な競争環境の整備

参考:総務省「利用者に関する情報の外部送信の際の措置について」

 

「1. 情報通信インフラの提供確保」は、ブロードバンドサービスの契約数が年々伸び、整備に加え、「維持」の重要性も高まっていることから、一定のブロードバンドサービスを「基礎的電気通信役務(ユニバーサルサービス)」に位置付け、ブロードバンドサービスの安定した収益と提供を確保するための項目です。

 

次に、「2. 安心・安全で信頼できる通信サービス・ネットワークの確保」では、情報通信サービスの多様化やグローバル化に伴い、中事業者が保有するデータの適正な取り扱いが不可欠とし、大規模な事業者が取得する利用者情報について適正な取扱いを義務付け、事業者が利用者に関する情報を第三者に送信する場合、利用者に確認の機会を付与する義務付けを行いました。

 

最後に「3. 電気通信市場を巡る動向に応じた公正な競争環境の整備」は、携帯大手3社・NTT東・西の指定設備は広範囲の事業者に提供される一方、利用料金が高額であると指摘されていたため、MVNOなどとの協議の適正化を図るため、卸役務の提供義務及び、料金算定方法などの提示義務を課しました。

 

 

控訴人会社が,被控訴人(控訴人の労働組合・以下「被控訴人組合」)に対し,被控訴人組合がホームページに控訴人がセクハラを隠蔽したなどの記事を掲載したことが名誉毀損に当たるとして,損害賠償を求めるとともに,控訴人(控訴人会社の執行役員等)が被控訴人組合及びその執行委員長(以下「被控訴人」)に対し慰謝料等の支払を求めた事案の控訴審。

 

東京高等裁判所判決/平成30年(ネ)第2571号

平成30年10月4日

損害賠償請求控訴事件

【判示事項】    控訴人会社が,被控訴人(控訴人の労働組合・以下「被控訴人組合」)に対し,被控訴人組合がホームページに控訴人がセクハラを隠蔽したなどの記事を掲載したことが名誉毀損に当たるとして,損害賠償を求めるとともに,控訴人(控訴人会社の執行役員等)が被控訴人組合及びその執行委員長(以下「被控訴人」)に対し慰謝料等の支払を求めた事案の控訴審。

控訴審は,上記記事の掲載や株主総会における発言は,各控訴人の社会的評価を低下させるもので,名誉毀損に該当するが,真実性または真実相当性が認められ,組合活動の一環として被害者救済及びセクハラの再発防止等を目的とし,表現態様も相当なこと等を考慮して正当な組合活動として社会通念上許容される範囲内であり,違法性が阻却され不法行為は成立しないとして,控訴人らの請求をすべて棄却した原判決を支持して控訴を棄却した事例

【掲載誌】     LLI/DB 判例秘書登載

 

法学セミナー  2024年1月号[特集1]ポストコロナと労働法

 

 

2024年1月号 通巻 828号

 

 

毎月12日発売

定価:税込 1,540円(本体価格 1,400円)

 

発刊年月              2023.12

雑誌コード          08069

判型       B5判

ページ数              128ページ

 

内容紹介

コロナ禍を経て浮き彫りとなった労働法の課題は何か。時代を見据えた雇用と働き方を考える。

 

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特集= ポストコロナと労働法

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企画趣旨……和田 肇 

 

パンデミック下の職場での健康確保……石﨑由希子 

 

コロナ禍における非正規雇用と労働法上の課題……國武英生 

 

経営危機と解雇・休業……鈴木俊晴 

 

コロナ禍・ポストコロナ禍における在宅テレワークと労働法

  ……細川 良 

 

フリーランスのセーフティネットに関する一考察――労働法学の観点から

  ……河合 塁

 

学生アルバイトと業務上の損害・費用負担および休業時の賃金保障

  ……細谷越史 

 

コロナ禍における労働弁護士の働き方……竹村和也

 

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コメント

本特集は、論点の提示、裁判例ともに有益でした。

 

電気通信事業法の令和4年改正

 

第1章 電気通信事業法とは

電気通信事業法では、以下の3点を主軸としています。

電気通信事業法の3つの主軸

・ 公正競争の促進

・ 電気通信役務の円滑な提供確保

・ 利用者利益の保護

上記を主軸に誰もが安心・安全に利用できる安定したネットワークと、安価で多種多様なサービスの提供の実現を目指しています。

 

電気通信事業法は簡潔にいうと、電気通信の健全な発達と国民の利便性の確保を図るために制定された法律です。

 

中間省略の登記を求める請求の許否

 

 

所有権移転登記等請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/昭和39年(オ)第985号

【判決日付】      昭和40年9月21日

【判示事項】      中間省略の登記を求める請求の許否

【判決要旨】      不動産の所有権が甲乙丙と順次移転したのに、登記名義は依然として甲にある場合において、丙が甲に対し直接自己に移転登記を請求することは、甲および乙の同意がないかぎり、許されない。

【参照条文】      民法177

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集19巻6号1560頁

             最高裁判所裁判集民事80号435頁

             判例タイムズ183号102頁

 

民法

(不動産に関する物権の変動の対抗要件)

第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

 

駐車場の収益については、親が所有者であり、使用貸借契約を締結した子である被控訴人X1及び同X2は単なる名義人であって、その収益を享受せず、所有者である亡Aがその収益を享受する場合に当たるというべきである。

 

 

一審判決・請求認容

              所得税更正処分等取消請求事件

【事件番号】      大阪地方裁判所判決/平成31年(行ウ)第51号

【判決日付】      令和3年4月22日

【判示事項】      1 駐車場として賃貸されている土地の所有者がその子らに対して当該土地を無償で使用収益させる旨の使用貸借契約の成立が認められた事例

             2 所有者がその子らに対して無償で使用収益させている土地の駐車場収入が,所得税法上,当該土地使用借人に帰属するとされた事例

【判決要旨】      1 駐車場として賃貸されている土地の所有者がその子らに対して当該土地を無償で使用収益させる旨の使用貸借契約書の基本的な内容を認識した上で当該契約書に署名・押印したこと,当該契約書の記載どおりの行為がされたとの経験則を妨げる特段の事情が見当たらないことなど判示の事実関係の下では,当該使用貸借契約が成立したものと認められる。

             2 所有者がその子らに対して無償で使用収益させている土地の駐車場収入は,使用借人が当該土地の使用収益権に基づき第三者との間で駐車場に係る賃貸借契約を締結して当該駐車場収入を得ていること,当該所有者は当該駐車場収入を得ていないことなど判示の事実関係の下では,所得税法上,所有者ではなく,当該使用借人に帰属する。

【掲載誌】        LLI/DB 判例秘書登載

【評釈論文】      税理65巻6号92頁

             税理65巻15号120頁

             同志社法学74巻3号1235頁

             税務弘報71巻1号142頁

 

       主   文

 

 1 本件訴えのうち次の部分をいずれも却下する。

  (1) 枚方税務署長が平成29年3月23日付けで原告に対してした平成26年分の所得税及び復興特別所得税の更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分の取消しを求める部分

  (2) 枚方税務署長が平成29年3月23日付けで原告に対してした平成26年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分のうち,不動産所得の金額1804万5491円,納付すべき税額(予定納税額控除前のもの)472万7600円を超えない部分の取消しを求める部分

 2 枚方税務署長が平成29年3月23日付けで原告に対してした平成26年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分のうち,不動産所得の金額1804万5491円及び納付すべき税額(予定納税額控除前のもの)472万7600円を超える部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。

 3 訴訟費用はこれを10分し,その1を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。

 

       事実及び理由

 

第1 請求

 1 枚方税務署長が平成29年3月23日付けで原告に対してした平成26年分の所得税及び復興特別所得税の更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分を取り消す。

 2 枚方税務署長が平成29年3月23日付けで原告に対してした平成26年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分のうち,不動産所得の金額1794万1297円,納付すべき税額(予定納税額控除前のもの)468万4700円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。

第2 事案の概要

 1 事案の要旨

   本件は,原告が,平成26年分の所得税及び復興特別所得税(以下,両税を併せて「所得税等」という。)について,収入の計上誤り等を理由とする更正の請求(以下「本件更正請求」という。)をしたところ,処分行政庁から,更正すべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」という。)を受けたほか,原告の子らの名義で賃貸された土地の賃料に係る収益は原告に帰属するとして,増額更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」といい,本件更正処分と併せて「本件更正処分等」という。また,本件通知処分と本件更正処分等を併せて「本件各処分」という。)を受けたことから,被告を相手に,本件各処分の取消しを求める事案である。

 2 関係法令等の定め

  (1) 国税通則法の定め

   ア 更正の請求

     国税通則法23条1項(平成27年法律第9号による改正前のもの。以下同じ。)は,納税申告書を提出した者は,当該申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより,当該申告書の提出により納付すべき税額(当該税額に関し更正があった場合には,当該更正後の税額)が過大であるとき(同項1号)等には,当該申告書に係る国税の法定申告期限から原則として5年以内に限り,税務署長に対し,その申告に係る課税標準等又は税額等(当該課税標準等又は税額等に関し同法24条〔更正〕又は26条〔再更正〕の規定による更正があった場合には,当該更正後の課税標準等又は税額等)につき更正をすべき旨の請求をすることができる旨規定する。

   イ 更正

     国税通則法24条は,税務署長は,納税申告書の提出があった場合において,その納税申告書に記載された課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったとき,その他当該課税標準等又は税額等がその調査したところと異なるときは,その調査により,当該申告書に係る課税標準等又は税額等を更正する旨規定する。

  (2) 所得税法12条(実質所得者課税の原則)の定め

    所得税法12条は,資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であって,その収益を享受せず,その者以外の者がその収益を享受する場合には,その収益は,これを享受する者に帰属するものとして,所得税法の規定を適用する旨規定する。

  (3) 所得税基本通達12-1の定め

    国税庁長官の発出した昭和45年7月1日付け直審(所)30(例規)「所得税基本通達」12-1(資産から生ずる収益を享受する者の判定,以下「所得税基本通達12-1」という。)は,所得税法12条の適用上,資産から生ずる収益を享受する者が誰であるかは,その収益の基因となる資産の真実の権利者が誰であるかにより判定すべきであるが,それが明らかでない場合には,その資産の名義者が真実の権利者であるものと推定する旨規定する。

 3 前提事実

   以下の事実は,当事者間に争いがないか,又は,掲記の各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる。

  (1) 当事者等

   ア 原告・A・B

     原告(昭和▲年▲月▲日生まれ)は,平成25年頃当時,大阪府枚方市で農業に従事していた者であり,同市内を中心に多数の不動産を所有し,賃料収入等を得ていた。A(昭和▲年生まれ。以下「A」という。)は,原告の長男であり,製造業の会社に勤務する者である。Aは,原告の自宅と同じ敷地内にある別棟の建物に居住している。B(以下「B」という。)は,原告の長女(Aの妹)である。Bは,大阪府枚方市に居住している。原告の妻は既に死亡しており,原告の子はA及びBのみである。

     原告は,平成26年1月頃当時,82歳であり,通常の加齢に伴う物忘れ等はみられたものの,意思能力に格別の問題はなかった(なお,原告は,その約2年3か月後である平成28年4月頃にアルツハイマー型認知症の初期症状と診断され,同年7月頃に敗血症で入院したことを機に通帳の管理をAに委ねた。原告は,令和2年当時,要介護3の認定を受けていた。)。

    (以上につき,甲1,2,9,10,11の1・2,16,19の1・2,23,証人A)

   イ 本件各不動産管理業者

     株式会社C(本店・大阪府寝屋川市。以下「C」という。),有限会社D(本店・大阪府枚方市。以下「D」といい,Cと併せて「本件各不動産管理業者」という。)は,いずれも不動産管理業者である(弁論の全趣旨)。

   ウ 本件税理士法人

     税理士法人E(以下「本件税理士法人」という。)のF税理士(以下「F税理士」という。)は,平成25年11月以降,Aから,原告が所有する不動産に関する租税や相続税の節税対策について相談を受けた(甲19の1・2,23,証人A)。

  (2) 本件各土地

   ア 原告の各土地の取得等

     原告は,昭和41年から平成15年にかけて,下記の各土地をそれぞれ売買又は相続により取得した(括弧内は地積及び取得の原因。乙2の1~4)。

         記

     ① 大阪府枚方市(住所省略)(374平方メートル,平成▲年▲月▲日売買)

     ② 大阪府枚方市(住所省略)(1157平方メートル,持分3分の2を昭和▲年▲月▲日相続,持分3分の1を同年▲月▲日相続)

     ③ 大阪府枚方市(住所省略)(977平方メートル,平成▲年▲月▲日売買)

     ④ 大阪府枚方市(住所省略)(823平方メートル,平成▲年▲月▲日売買)

   イ 本件各土地の利用状況

     原告は,平成16年頃以降,上記アの①~③の土地(ただし,②の土地については一部〔510.6平方メートル〕。以下,これらを合わせて「G等土地」という。)及び④の土地(以下「H土地」いい,G等土地と併せて「本件各土地」という。)を造成するなどした上で,駐車場として賃貸して,賃料収入を得るようになった(以下,本件各土地についての賃料収入を「本件各駐車場収入」という。)(乙3の1~3,4)。

   ウ G等土地

    (ア) 賃貸借契約

      原告は,平成16年頃以降,複数の個人又は法人との間で,次の約定で,G等土地を所定の区画ごとに駐車場として賃貸する旨の契約(契約書上の名称は「自動車保管場所使用契約」)を締結した(甲4の1~3,21の1,乙3の1~3)。

     a 賃貸期間 1年

     b 更新 1年ごとに,当事者双方の異議がなければ賃貸期間を更新する

     c 賃料 1区画1か月6000円又は7000円

    (イ) 駐車場管理契約

      原告は,平成16年頃以降,Cとの間で,次の約定で,G等土地を駐車場として賃貸する業務(以下,この業務を「駐車場管理業務」という。)についての委任契約(駐車場管理契約)を締結した(乙5の1~3)。

     a 業務内容 原告と各賃借人との間の賃貸借契約(自動車保管場所使用契約)の締結に関する事務,賃料等の受領,日常クレーム処理,日常清掃等の業務

     b 報酬等 Cは,代理受領した賃料から,Cが得る報酬(賃料等の総額の8%)を控除し,これを原告名義の預金口座に振り込む

   エ H土地

    (ア) 賃貸借契約

      原告は,平成15年1月23日,医療法人I(以下「I」という。)との間で,次の約定で,H土地をIの職員の駐車場用地として賃貸する旨の契約を締結した(乙4)。

     a 賃貸期間 平成15年1月23日から平成17年1月31日まで

     b 更新 2年ごとに更新する

     c 賃料 1か月19万9000円

    (イ) 駐車場管理契約

      原告は,平成15年1月23日,Dとの間で,次の約定で,H土地の駐車場管理業務についての委任契約(駐車場管理契約)を締結した(乙6)。

     a 業務内容 賃貸借契約の締結・更新,賃料の代理受領等の業務

     b 報酬等 Dは,代理受領した賃料から,Dが得る報酬(賃料の10%)を控除し,これを原告名義の振込口座に振り込む

  (3) 本件税理士法人に対する相談等

    Aは,平成25年11月18日以降,原告の意向を受けて,F税理士に対し,原告が所有する不動産の節税対策等について相談をし,助言を受けるようになった(甲19の1・2,23,証人A)。

  (4) 本件各使用貸借契約書

   ア G等土地使用貸借契約書

     原告とAを作成者とする,平成26年1月25日付けの,G等土地についての「使用貸借契約書」と題する契約書が存在する(同契約書の原告の署名・押印は真正なものである。)(甲1,弁論の全趣旨。以下,同契約書を「G等土地使用貸借契約書」といい,G等土地使用貸借契約書による契約を「G等土地使用貸借契約」という。ただし,G等土地使用貸借契約書の真正な成立の有無,G等土地使用貸借契約の成否・内容については,後記争点(3)のとおり当事者間に争いがある。)。

   イ H土地使用貸借契約書

     原告とBを作成者とする,平成26年1月25日付けの,H土地についての「使用貸借契約書」と題する契約書が存在する(同契約書の原告の署名・押印は真正なものである。)(甲2,弁論の全趣旨。以下,同契約書を「H土地使用貸借契約書」といい,H土地使用貸借契約書による契約を「H土地使用貸借契約」という。ただし,H土地使用貸借契約書の真正な成立の有無,H土地使用貸借契約の成否・内容については,後記争点(3)のとおり当事者間に争いがある。また,H土地使用貸借契約書とG等土地使用貸借契約書を併せて「本件各使用貸借契約書」といい,G等土地使用貸借契約とH土地使用貸借契約を併せて「本件各使用貸借契約」という。)。

   ウ 本件各使用貸借契約書の記載内容

     本件各使用貸借契約書には,要旨,次の内容が記載され,原告及びA又はBの署名・押印がされている(甲1,2)。

    (ア) 第1条(目的) 原告は,A又はBに対し,G等土地又はH土地を賃貸し,A又はBはこれを駐車場用地の目的として賃借する。

    (イ) 第2条(賃貸借期間) 賃貸借期間は,平成26年2月1日から平成36年1月31日までの10年間とする。期間満了後の更新については,別途協議する。

    (ウ) 第3条(賃料) 賃料は,1か年,G等土地又はH土地の各年の固定資産税及び都市計画税(以下「固定資産税等」という。)の合計額相当額とする。当該金額を12で除した金額を,A又はBは毎月末日限り翌月分を原告に支払う。

    (エ) 第4条(転貸承諾等) A又はBは,原告の承諾により,G等土地又はH土地を転貸又は賃借権譲渡等をすることができる。

    (オ) 第5条(公租公課の負担) G等土地又はH土地に係る固定資産税等の公租公課は,原告の負担とする。

    (カ) 第6条(その他) 本契約が満了したとき又は中途解約されたときは,A又はBは,原告に対し,G等土地又はH土地を明け渡すこととする。

    (キ) 第7条(その他) 上記に定めのない事項については,その都度別途協議するものとする。

   エ 原告は,平成26年1月25日頃,Aに対しG等土地を引き渡し,また,Bに対してH土地を引き渡した(甲1,2,弁論の全趣旨)。

  (5) 本件各贈与契約

    原告は,平成26年1月25日,A又はBとの間で,G等土地上に敷設されたアスファルト舗装・車止め・フェンス又はH土地上に敷設されたアスファルト舗装(以下,これらを併せて「本件舗装等」という。)を贈与する旨の各贈与契約を締結した(乙8の1・2,33の1・2。上記各贈与契約を「本件各贈与契約」といい,本件各贈与契約に係る各贈与契約書を「本件各贈与契約書」という。ただし,本件各贈与契約の効力等については,後記争点(3)のとおり当事者間に争いがある。)。

    なお,本件各贈与契約書には,贈与物件(本件舗装等)上において営む「駐車場賃貸借契約」については,A又はBがその地位を引き継ぐこととし,原告は,「当該賃借人各人からの預り保証金全額」をA又はBに現金で引き渡した旨の記載がされ,原告とA又はBの署名・押印がされている。

  (6) A又はBが締結した本件各賃貸借契約・本件各駐車場管理契約

   ア G等土地

    (ア) G等土地賃貸借契約

      Aは,平成26年2月1日以降,G等土地の各区画の賃借人が賃貸借契約の更新又は変更をする際,それらの賃借人との間で,賃貸人をAとする賃貸借契約又は賃貸借変更契約を締結した(甲5の1~8。以下,これらの契約を「G等土地賃貸借契約」という。)。

    (イ) G等駐車場管理契約

      Aは,平成26年1月30日,Cとの間で,委任者を原告としていたG等土地の駐車場管理契約(上記(2)ウ(イ))について,同年2月1日から,委任者をAに変更し,賃料等の振込先をA名義の預金口座に変更する旨の契約を締結した(甲3。以下,この契約を「G等駐車場管理契約」といい,G等駐車場管理契約に係る契約書を「G等駐車場管理契約書」という。)。

   イ H土地

    (ア) H土地賃貸借契約

      Bは,平成26年1月31日,Iとの間で,H土地の賃貸人をB,賃借人をIとし,賃貸借期間を同年2月1日から2年とし,以後2年ごとに更新する旨の賃貸借変更契約を締結した(甲6,乙21。以下,この契約を「H土地賃貸借契約」といい,G等土地賃貸借契約と併せて「本件各賃貸借契約」という。)。

    (イ) H駐車場管理契約

      Bは,平成26年2月1日付けで,Dの間で,委任者を原告としていたH土地の駐車場管理契約(上記(2)エ(イ))について,同日から,委任者をBに変更し,賃料等の振込先をB名義の預金口座に変更する旨の契約を締結した(甲8,乙22。以下,この契約を「H駐車場管理契約」といい,H駐車場管理契約に係る契約書を「H駐車場管理契約書」という。また,G等駐車場管理契約とH駐車場管理契約を併せて「本件各駐車場管理契約」といい,G等駐車場管理契約書とH駐車場管理契約書を併せて「本件各駐車場管理契約書」という。さらに,本件各使用貸借契約,本件各贈与契約,本件各賃貸借契約及び本件各駐車場管理契約を「本件各取引」という。)。

  (7) 本件確定申告

    原告は,平成27年3月9日,枚方税務署長に対し,平成26年分の所得税等について,別表「課税の経緯」の「確定申告」欄のとおりの金額等を記載した確定申告書(以下「本件確定申告書」といい,本件確定申告書による確定申告を「本件確定申告」という。)を提出した。原告は,本件確定申告の際に提出した収支内訳書の「不動産所得の収入の内訳」欄において,本件各土地の賃貸契約期間が,いずれも平成26年1月の1か月間であるとして不動産所得に係る収入を算定していた。(乙9)

  (8) 本件調査

    枚方税務署の調査担当者(以下「本件調査担当者」という。)は,平成27年9月8日,原告の所得税等の調査のため,原告の自宅を訪問して原告と面談をし,その後も原告,A及びF税理士と電話や面談をするなどして調査を行った(以下,原告の平成26年分の所得税等についての調査を「本件調査」という。)(乙11,19)。

 

 

 

控訴審判決・腹判決取消・国側敗訴取消

              所得税更正処分等取消請求控訴事件

【事件番号】      大阪高等裁判所判決/令和3年(行コ)第64号

【判決日付】      令和4年7月20日

【掲載誌】        LLI/DB 判例秘書登載

【評釈論文】      T&Amaster970号24頁

             税務事例55巻5号86頁

             税研229号102頁

             税経通信78巻7号157頁

 

       主   文

 

 1 原判決中、控訴人敗訴部分を取り消す。

 2 上記取消しにかかる被控訴人らの請求をいずれも棄却する。

 3 訴訟費用は、第1、2審とも、被控訴人らの負担とする。

 

       事実及び理由

 

第1 当事者の求めた裁判

 1 控訴の趣旨

   主文と同旨

 2 控訴の趣旨に対する答弁

   本件控訴を棄却する。

第2 事案の概要

 1 控訴に至る経緯等

  (1)本件は、承継前一審原告A(以下「亡A」という。)が、平成26年分の所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」と総称する。)について、収入の計上の誤り等を理由とする更正の請求(以下「本件更正請求」という。)をしたところ、処分行政庁から、更正すべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」という。)を受けたほか、亡Aの子である被控訴人X1(以下「被控訴人X1」という。)及び同X2(以下「被控訴人X2」という。)を賃貸人として第三者に賃貸された亡A所有土地の賃料に係る収益は亡Aに帰属するとして、増額更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」といい、本件更正処分と併せて「本件更正処分等」という。また、本件通知処分と本件更正処分等を併せて「本件各処分」という。)を受けたことから、控訴人に対し、本件各処分の取消しを求める事案である。

  (2)原審は、本件訴えのうち、①本件通知処分の取消請求に係る部分及び②本件更正処分のうち更正の請求額を超えない部分(不動産所得の金額1804万5491円及び納付すべき税額(予定納税額控除前のもの)472万7600円を超えない部分)の取消請求に係る部分について、いずれも訴えの利益を欠く不適法なものであるとして却下し、③本件更正処分の取消請求のうち本件更正請求における請求額(不動産所得の金額1804万5491円、納付すべき税額(予定納税額控除前のもの)472万7600円)を超える部分及び本件賦課決定処分の取消請求についてはこれらを認容する判決(原判決)を言い渡したところ、控訴人が敗訴部分を不服として控訴した。

 

同一の債権について差押通知と確定日付のある譲渡通知との第三債務者への到達の先後関係が不明である場合における差押債権者と債権譲受人との間の優劣

 

 

供託金還付請求権確認請求本訴、同反訴事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/昭和63年(オ)第1526号

【判決日付】      平成5年3月30日

【判示事項】      一 同一の債権について差押通知と確定日付のある譲渡通知との第三債務者への到達の先後関係が不明である場合における差押債権者と債権譲受人との間の優劣

             二 同一の債権について差押通知と確定日付のある譲渡通知との第三債務者への到達の先後関係が不明である場合と当該債権に係る供託金の還付請求権の帰属

【判決要旨】      一 同一の債権について、差押通知と確定日付のある譲渡通知との第三債務者への到達の先後関係が不明である場合、差押債権者と債権譲受人とは、互いに自己が優先的地位にある債権者であると主張することができない。

             二 同一の債権について差押通知と確定日付のある譲渡通知との第三債務者への到達の先後関係が不明であるため、第三債務者が債権額に相当する金員を供託した場合において、被差押債権額と譲受債権額との合計額が右供託金額を超過するときは、差押債権者と債権譲受人は、被差押債権額と譲受債権額に応じて供託金額を案分した額の供託金還付請求権をそれぞれ分割取得する。

【参照条文】      民法467

             国税徴収法62

             国税徴収法67

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集47巻4号3334頁

 

民法

(譲渡制限の意思表示がされた債権に係る債務者の供託)

第四百六十六条の二 債務者は、譲渡制限の意思表示がされた金銭の給付を目的とする債権が譲渡されたときは、その債権の全額に相当する金銭を債務の履行地(債務の履行地が債権者の現在の住所により定まる場合にあっては、譲渡人の現在の住所を含む。次条において同じ。)の供託所に供託することができる。

2 前項の規定により供託をした債務者は、遅滞なく、譲渡人及び譲受人に供託の通知をしなければならない。

3 第一項の規定により供託をした金銭は、譲受人に限り、還付を請求することができる。

 

国税徴収法

(差押えの手続及び効力発生時期)

第六十二条 債権(電子記録債権法第二条第一項(定義)に規定する電子記録債権(次条において「電子記録債権」という。)を除く。以下この条において同じ。)の差押えは、第三債務者に対する債権差押通知書の送達により行う。

2 徴収職員は、債権を差し押えるときは、債務者に対しその履行を、滞納者に対し債権の取立その他の処分を禁じなければならない。

3 第一項の差押の効力は、債権差押通知書が第三債務者に送達された時に生ずる。

4 税務署長は、債権でその移転につき登録を要するものを差し押えたときは、差押の登録を関係機関に嘱託しなければならない。

 

(差し押えた債権の取立)

第六十七条 徴収職員は、差し押えた債権の取立をすることができる。

2 徴収職員は、前項の規定により取り立てたものが金銭以外のものであるときは、これを差し押えなければならない。

3 徴収職員が第一項の規定により金銭を取り立てたときは、その限度において、滞納者から差押に係る国税を徴収したものとみなす。

4 国税通則法第五十五条第一項から第三項まで(納付委託)の規定は、第一項の取立をする場合において、第三債務者が徴収職員に対し、その債権の弁済の委託をしようとするときに準用する。ただし、その証券の取り立てるべき期限が差し押えた債権の弁済期後となるときは、第三債務者は、滞納者の承認を受けなければならない。

 

 

 

 

応用美術であっても、実用性や機能性とは別に、独立して美的鑑賞の対象となるだけの美術性を有するに至っているため、一定の美的感覚を備えた一般人を基準に、純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を具備していると評価される場合は、「美術の著作物」として、著作権法による保護の対象となる場合があるものと解するのが相当である

 

大阪高等裁判所判決/平成16年(ネ)第3893号

平成17年7月28日

違約金等本訴請求,不当利得返還反訴請求控訴事件

【判示事項】    応用美術であっても、実用性や機能性とは別に、独立して美的鑑賞の対象となるだけの美術性を有するに至っているため、一定の美的感覚を備えた一般人を基準に、純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を具備していると評価される場合は、「美術の著作物」として、著作権法による保護の対象となる場合があるものと解するのが相当である

【参照条文】    著作権法2-1

          著作権法10-1

【掲載誌】     判例タイムズ1205号254頁

          判例時報1928号116頁

 

著作権法

第二条

 この法律にいう「美術の著作物」には、美術工芸品を含むものとする。

 

(著作物の例示)

第十条1項 この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。

一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物

二 音楽の著作物

三 舞踊又は無言劇の著作物

四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物

五 建築の著作物

六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物

七 映画の著作物

八 写真の著作物

九 プログラムの著作物

 

事案の概要

 1 本件は,「チョコエッグ」(チョコレートの中に入ったカプセルに精巧な動物等の模型(俗に「フィギュア」といわれる。)を封入した商品)などの菓子について,菓子業者と模型業者間に生じた紛争である。

 フィギュア製造業者であるXと菓子業者であるYは,フィギュア入り菓子を販売するに当たり,Xが各種のフィギュアの模型原型を製造し,Yに対して模型原型の著作権の使用を許諾し,Yは商品の製造販売個数に応じてロイヤルティを支払う旨の著作権使用許諾契約を締結していたが,YがXに対し製造販売個数を過少申告していたことが発覚したため,XがYに対してロイヤルティの2倍相当の約定違約金を請求したところ,Yが支払を拒否し,紛争が発生した。

 Xは,Yに対し,著作権使用許諾契約に基づき,未払のロイヤルティ及び違約金の支払を求めて本件訴訟を提起したところ,Yは,本件フィギュアの模型原型は,著作権法にいう著作物に該当しないから,著作権使用許諾契約は要素の錯誤により無効であるなどと主張して争った。

 なお,本件で問題になったフィギュアは,①実在の動物を,図鑑をもとに忠実に再現したもの(本件動物フィギュア),②空想上の妖怪を,江戸時代の絵師鳥山石燕の原画(角川ソフィア文庫刊『鳥山石燕・画図百鬼夜行全画集』に収録されており,容易に入手できる。)をもとに立体化したもの(本件妖怪フィギュア),③「不思議の国のアリス」等の登場人物を,原作のテニエルの挿絵に忠実に立体化したもの(本件アリスフィギュア)の3種類に分類される。

 2 原審(大阪地判平16.11.25判時1901号106頁)は,本件フィギュアの模型原型はいずれも著作物に該当しないと判断した(ただし,そうであるとしても要素の錯誤は成立しないとして,Xの請求の大部分を認容した)。

 これに対し,本件判決は,次のように判断して,本件妖怪フィギュアの模型原型につき著作物性を肯定した(なお,要素の錯誤については,原判決を引用して成立しないと判断した。)。

(1)美的創作物は,思想又は感情を創作的に表現したものであって,制作者が,当該作品を専ら鑑賞の対象とする目的で制作し,かつ,一般的平均人が,上記目的で制作されたものと受け取るもの(純粋美術)と,思想又は感情を創作的に表現したものであるけれども,制作者が,当該作品を上記目的以外の目的で制作し,又は,一般的平均人が上記目的以外の目的で制作されたものと受け取るものに分類することができる。いわゆる応用美術とは,後者のうちで,制作者が,当該作品を実用に供される物品に応用されることを目的(実用目的)として制作し,又は,一般的平均人が,当該作品は実用目的で制作されたものと受け取るものをいう。

 本件模型原型は,思想又は感情を創作的に表現したものではあるけれども,制作者が,当該作品を専ら鑑賞の対象とする目的ではなく,実用目的で制作したものであり,かつ,一般的平均人が,実用目的で制作されたものと受け取るものというベきであるから,応用美術に該当する。

(2)応用美術一般には著作権法による保護が及ばないが,実用性や機能性とは別に,独立して美的鑑賞の対象となるだけの美術性を有するに至っているため,一定の美的感覚を備えた一般人を基準に,純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を具備していると評価される場合は,「美術の著作物」として,著作権法による保護の対象となる場合がある。

 本件妖怪フィギュアは,江戸時代の絵画を原画とするものについても,随所に制作者独自の解釈,アレンジが加えられているなど,高度の創作性が認められ,また,極めて精巧なものであり,一部のフィギュア収集家の収集,鑑賞の対象となるにとどまらず,一般的な美的鑑賞の対象ともなるような,相当程度の美術性を備えているということができる。本件妖怪フィギュアに係る模型原型は,一定の美的感覚を備えた一般人を基準に,純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を具備していると評価されるものと認められるから,応用美術の著作物に該当する。

 しかし,本件動物フィギュア及び本件アリスフィギュアは,現実の動物や,原作の挿絵を忠実に再現,立体化したものであり,制作者の個性はさほど反映しておらず創作性の程度は低いから,応用美術の著作物に該当しない。

 3(1)著作権法は,美術の著作物に関しては「美術工芸品を含む」と規定するのみである(2条2項)ことから,いわゆる応用美術の定義及びその著作物性については以前から議論があったところである。