控訴人(源泉徴収義務者,原審原告)が,従業員及び外注先従業員らの慰安旅行(マカオ)に係る費用(1人当たり24万円余)を全額負担したところ,税務署長が,各従業員に対する本件旅行に係る経済的利益の供与は所得税法(以下,法)28条1項の「給与等」の支払に該当するとし,源泉所得税に係る納税告知及び不納付加算税の賦課決定(以下,本件納税告知等)をしたため,本件納税告知等の各取り消しを求めた事案。原審は控訴人の請求を棄却したため,控訴人が控訴した。
所得税納税告知処分等取消請求控訴事件
【事件番号】 東京高等裁判所判決/平成25年(行コ)第31号
【判決日付】 平成25年5月30日
【判示事項】 控訴人(源泉徴収義務者,原審原告)が,従業員及び外注先従業員らの慰安旅行(マカオ)に係る費用(1人当たり24万円余)を全額負担したところ,税務署長が,各従業員に対する本件旅行に係る経済的利益の供与は所得税法(以下,法)28条1項の「給与等」の支払に該当するとし,源泉所得税に係る納税告知及び不納付加算税の賦課決定(以下,本件納税告知等)をしたため,本件納税告知等の各取り消しを求めた事案。原審は控訴人の請求を棄却したため,控訴人が控訴した。
控訴審も,本件各従業員分旅行費用の負担は法28条1項の「給与等」の支払に該当する等とし,原判決は正当であるとして,控訴を棄却した事例
【掲載誌】 税務訴訟資料263号順号12222
LLI/DB 判例秘書登載
【評釈論文】 税研175号92頁
所得税法
(給与所得)
第二十八条 給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下この条において「給与等」という。)に係る所得をいう。
2 給与所得の金額は、その年中の給与等の収入金額から給与所得控除額を控除した残額とする。
3 前項に規定する給与所得控除額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
一 前項に規定する収入金額が百八十万円以下である場合 当該収入金額の百分の四十に相当する金額から十万円を控除した残額(当該残額が五十五万円に満たない場合には、五十五万円)
二 前項に規定する収入金額が百八十万円を超え三百六十万円以下である場合 六十二万円と当該収入金額から百八十万円を控除した金額の百分の三十に相当する金額との合計額
三 前項に規定する収入金額が三百六十万円を超え六百六十万円以下である場合 百十六万円と当該収入金額から三百六十万円を控除した金額の百分の二十に相当する金額との合計額
四 前項に規定する収入金額が六百六十万円を超え八百五十万円以下である場合 百七十六万円と当該収入金額から六百六十万円を控除した金額の百分の十に相当する金額との合計額
五 前項に規定する収入金額が八百五十万円を超える場合 百九十五万円
4 その年中の給与等の収入金額が六百六十万円未満である場合には、当該給与等に係る給与所得の金額は、前二項の規定にかかわらず、当該収入金額を別表第五の給与等の金額として、同表により当該金額に応じて求めた同表の給与所得控除後の給与等の金額に相当する金額とする。
第三十六条 その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもつて収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。
2 前項の金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額は、当該物若しくは権利を取得し、又は当該利益を享受する時における価額とする。
3 無記名の公社債の利子、無記名の株式(無記名の公募公社債等運用投資信託以外の公社債等運用投資信託の受益証券及び無記名の社債的受益権に係る受益証券を含む。第百六十九条第二号(分離課税に係る所得税の課税標準)、第二百二十四条第一項及び第二項(利子、配当等の受領者の告知)並びに第二百二十五条第一項及び第二項(支払調書及び支払通知書)において「無記名株式等」という。)の剰余金の配当(第二十四条第一項(配当所得)に規定する剰余金の配当をいう。)又は無記名の貸付信託、投資信託若しくは特定受益証券発行信託の受益証券に係る収益の分配については、その年分の利子所得の金額又は配当所得の金額の計算上収入金額とすべき金額は、第一項の規定にかかわらず、その年において支払を受けた金額とする。
主 文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は,控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 豊島税務署長が平成21年11月25日付けで控訴人に対してした同年1月分の源泉徴収に係る所得税の納税告知及び不納付加算税の賦課決定をいずれも取り消す。
第2 事案の概要
1 本件は,土木建築工事の請負を業とする株式会社であり,所得税法(平成22年法律第6号による改正前のもの。以下同じ。)6条の源泉徴収義務者である控訴人(原告)が,豊島税務署長(処分行政庁)から平成21年11月25日付けで国税通則法36条1項2号の規定に基づく同年1月分の源泉徴収に係る所得税の納税告知(本件納税告知)及び不納付加算税の賦課決定(本件賦課決定。本件納税告知と併せて本件納税告知等)を受けたため,本件納税告知の原因とされた平成21年1月10日から同月12日までの間に実施した控訴人の従業員らの旅行(本件旅行。本件旅行に参加した控訴人の従業員を本件各従業員)に係る経済的利益の供与は所得税法28条1項の「給与等」の支払に該当するものではなく,控訴人は上記経済的利益について源泉徴収義務を負うものではないのであって,本件納税告知等は違法であると主張し,処分行政庁の所属する被控訴人(被告)に対して,本件納税告知等の各取消しを求める事案である。
2 本件の争点は,本件納税告知等が違法かどうか,具体的には,本件各従業員に対する本件旅行に係る経済的利益の供与は所得税法28条1項の「給与等」の支払に該当するか否かである。
3 被控訴人は,本件各従業員に対する本件旅行に係る経済的利益の供与は所得税法28条1項の「給与等」の支払に該当し,控訴人は,同法183条1項の規定により,上記経済的利益について源泉徴収義務を負ったものであるところ,この経済的利益は同法186条1項の「賞与」に該当するから,控訴人がこれについて本件各従業員から徴収し納付すべき源泉所得税額は合計34万7472円であると主張した。
これに対し,控訴人は,本件各従業員は,本件旅行について,参加するか否かの選択,旅程の選択,自由行動の幅といういずれの観点からも自由を与えられていなかったのであって,反射的に利益を受けることはあっても,この利益を自由に処分することはできなかったことなどによると,流入性,価値の保有性及び金銭的評価の可能性の要件を満たしておらず,本件各従業員分旅行費用相当の本件旅行に係る経済的利益は所得税の課税対象とされる経済的利益には当たらず,本件各従業員分旅行費用の負担は所得税法28条1項の「給与等」の支払に該当するものではないと主張した。
4 原審は,以下のとおり判断して,本件各従業員分旅行費用の負担は所得税法28条1項の「給与等」の支払に該当するとし,控訴人の請求を棄却した。