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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

控訴人(源泉徴収義務者,原審原告)が,従業員及び外注先従業員らの慰安旅行(マカオ)に係る費用(1人当たり24万円余)を全額負担したところ,税務署長が,各従業員に対する本件旅行に係る経済的利益の供与は所得税法(以下,法)28条1項の「給与等」の支払に該当するとし,源泉所得税に係る納税告知及び不納付加算税の賦課決定(以下,本件納税告知等)をしたため,本件納税告知等の各取り消しを求めた事案。原審は控訴人の請求を棄却したため,控訴人が控訴した。



    所得税納税告知処分等取消請求控訴事件
【事件番号】    東京高等裁判所判決/平成25年(行コ)第31号
【判決日付】    平成25年5月30日
【判示事項】    控訴人(源泉徴収義務者,原審原告)が,従業員及び外注先従業員らの慰安旅行(マカオ)に係る費用(1人当たり24万円余)を全額負担したところ,税務署長が,各従業員に対する本件旅行に係る経済的利益の供与は所得税法(以下,法)28条1項の「給与等」の支払に該当するとし,源泉所得税に係る納税告知及び不納付加算税の賦課決定(以下,本件納税告知等)をしたため,本件納税告知等の各取り消しを求めた事案。原審は控訴人の請求を棄却したため,控訴人が控訴した。
控訴審も,本件各従業員分旅行費用の負担は法28条1項の「給与等」の支払に該当する等とし,原判決は正当であるとして,控訴を棄却した事例
【掲載誌】     税務訴訟資料263号順号12222
          LLI/DB 判例秘書登載
【評釈論文】    税研175号92頁

所得税法
(給与所得)
第二十八条  給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下この条において「給与等」という。)に係る所得をいう。
2  給与所得の金額は、その年中の給与等の収入金額から給与所得控除額を控除した残額とする。
3  前項に規定する給与所得控除額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
一  前項に規定する収入金額が百八十万円以下である場合  当該収入金額の百分の四十に相当する金額から十万円を控除した残額(当該残額が五十五万円に満たない場合には、五十五万円) 
二  前項に規定する収入金額が百八十万円を超え三百六十万円以下である場合  六十二万円と当該収入金額から百八十万円を控除した金額の百分の三十に相当する金額との合計額 
三  前項に規定する収入金額が三百六十万円を超え六百六十万円以下である場合  百十六万円と当該収入金額から三百六十万円を控除した金額の百分の二十に相当する金額との合計額 
四  前項に規定する収入金額が六百六十万円を超え八百五十万円以下である場合  百七十六万円と当該収入金額から六百六十万円を控除した金額の百分の十に相当する金額との合計額 
五  前項に規定する収入金額が八百五十万円を超える場合  百九十五万円 
4  その年中の給与等の収入金額が六百六十万円未満である場合には、当該給与等に係る給与所得の金額は、前二項の規定にかかわらず、当該収入金額を別表第五の給与等の金額として、同表により当該金額に応じて求めた同表の給与所得控除後の給与等の金額に相当する金額とする。

 

(収入金額)

第三十六条  その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもつて収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。

2  前項の金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額は、当該物若しくは権利を取得し、又は当該利益を享受する時における価額とする。

3  無記名の公社債の利子、無記名の株式(無記名の公募公社債等運用投資信託以外の公社債等運用投資信託の受益証券及び無記名の社債的受益権に係る受益証券を含む。第百六十九条第二号(分離課税に係る所得税の課税標準)、第二百二十四条第一項及び第二項(利子、配当等の受領者の告知)並びに第二百二十五条第一項及び第二項(支払調書及び支払通知書)において「無記名株式等」という。)の剰余金の配当(第二十四条第一項(配当所得)に規定する剰余金の配当をいう。)又は無記名の貸付信託、投資信託若しくは特定受益証券発行信託の受益証券に係る収益の分配については、その年分の利子所得の金額又は配当所得の金額の計算上収入金額とすべき金額は、第一項の規定にかかわらず、その年において支払を受けた金額とする。



       主   文

 1 本件控訴を棄却する。
 2 控訴費用は,控訴人の負担とする。

       事実及び理由

第1 控訴の趣旨
 1 原判決を取り消す。
 2 豊島税務署長が平成21年11月25日付けで控訴人に対してした同年1月分の源泉徴収に係る所得税の納税告知及び不納付加算税の賦課決定をいずれも取り消す。
第2 事案の概要
 1 本件は,土木建築工事の請負を業とする株式会社であり,所得税法(平成22年法律第6号による改正前のもの。以下同じ。)6条の源泉徴収義務者である控訴人(原告)が,豊島税務署長(処分行政庁)から平成21年11月25日付けで国税通則法36条1項2号の規定に基づく同年1月分の源泉徴収に係る所得税の納税告知(本件納税告知)及び不納付加算税の賦課決定(本件賦課決定。本件納税告知と併せて本件納税告知等)を受けたため,本件納税告知の原因とされた平成21年1月10日から同月12日までの間に実施した控訴人の従業員らの旅行(本件旅行。本件旅行に参加した控訴人の従業員を本件各従業員)に係る経済的利益の供与は所得税法28条1項の「給与等」の支払に該当するものではなく,控訴人は上記経済的利益について源泉徴収義務を負うものではないのであって,本件納税告知等は違法であると主張し,処分行政庁の所属する被控訴人(被告)に対して,本件納税告知等の各取消しを求める事案である。
 2 本件の争点は,本件納税告知等が違法かどうか,具体的には,本件各従業員に対する本件旅行に係る経済的利益の供与は所得税法28条1項の「給与等」の支払に該当するか否かである。
 3 被控訴人は,本件各従業員に対する本件旅行に係る経済的利益の供与は所得税法28条1項の「給与等」の支払に該当し,控訴人は,同法183条1項の規定により,上記経済的利益について源泉徴収義務を負ったものであるところ,この経済的利益は同法186条1項の「賞与」に該当するから,控訴人がこれについて本件各従業員から徴収し納付すべき源泉所得税額は合計34万7472円であると主張した。
   これに対し,控訴人は,本件各従業員は,本件旅行について,参加するか否かの選択,旅程の選択,自由行動の幅といういずれの観点からも自由を与えられていなかったのであって,反射的に利益を受けることはあっても,この利益を自由に処分することはできなかったことなどによると,流入性,価値の保有性及び金銭的評価の可能性の要件を満たしておらず,本件各従業員分旅行費用相当の本件旅行に係る経済的利益は所得税の課税対象とされる経済的利益には当たらず,本件各従業員分旅行費用の負担は所得税法28条1項の「給与等」の支払に該当するものではないと主張した。
 4 原審は,以下のとおり判断して,本件各従業員分旅行費用の負担は所得税法28条1項の「給与等」の支払に該当するとし,控訴人の請求を棄却した。

金属マンガンは地方税法(昭和40年法律第35号による改正前のもの)489条1項2号所定の合金鉄に含まれるか(消極)

 

 

電気ガス税賦課決定取消請求上告事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/昭和50年(行ツ)第37号

【判決日付】      昭和53年7月18日

【判示事項】      1 金属マンガンは地方税法(昭和40年法律第35号による改正前のもの)489条1項2号所定の合金鉄に含まれるか(消極)

             2 租税法規における非課税規定は厳格に解釈すべきであるとして、金属マンガンにつき地方税法(昭和40年法律第35号による改正前のもの)489条1項2号の適用を排斥した事例

             3 非課税対象であるとする申告につき15年間にわたり何らの異議もさしはさまず、応答もしなかつた課税庁が、過年度分にさかのぼり課税しても、禁反言の法理ないし信義則に反しないとされた事例

             4 他の市町村が租税法の規定の解釈適用を誤つた結果非課税としている場合に、特定の市町村がその適正な解釈適用により課徴税をしても、課徴税平等の原則に反するものではないとされた事例

【参照条文】      地方税法(昭和40年法律第35号による改正前のもの)489-1

             憲法84

             行政実体法通則1

             憲法14

【掲載誌】        訟務月報24巻12号2696頁

 

憲法

第十四条  すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

2  華族その他の貴族の制度は、これを認めない。

3  栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。 栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

 

第八十四条  あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。

 

 

 

民事再生法174条2項3号所定の「再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき」には,再生計画案が信義則に反する行為に基づいて可決された場合が含まれるか

最高裁判所第1小法廷決定/平成19年(許)第24号
平成20年3月13日
再生計画認可決定に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件
【判示事項】    1 民事再生法174条2項3号所定の「再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき」には,再生計画案が信義則に反する行為に基づいて可決された場合が含まれるか
2 民事再生法172条の3第1項1号の趣旨を潜脱し信義則に反する再生債務者らの行為に基づいて再生計画案が可決されたとして,再生計画に同法174条2項3号所定の不認可事由があるとされた事例
【判決要旨】    1 民事再生法174条2項3号所定の「再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき」には,議決権を行使した再生債権者が詐欺,強迫又は不正な利益の供与等を受けたことにより再生計画案が可決された場合はもとより,再生計画案が信義則に反する行為に基づいて可決された場合も含まれる。
2 次の(1)及び(2)の判示の事情の下では,再生債務者Xについての再生計画の決議は,民事再生法172条の3第1項1号の少額債権者保護の趣旨を潜脱し信義則に反するXらの行為によって成立したものというべきであり,上記再生計画には同法174条2項3号所定の不認可事由がある。
          (1)民事再生手続による方が破産手続によるよりも債権の回収に不利な債権者がいて,再生計画案が可決されないことが見込まれていた状況の下で,Xが再生手続開始の申立てをする直前に,Xの取締役であってそれまでXに対する債権を有していなかったAが,回収可能性のないXに対する債権を譲り受け,その一部を同じくXの取締役であってそれまでXに対する債権を有していなかったBに譲渡した。
          (2)AとBが再生計画案に同意するものとして議決権を行使したことにより民事再生法172条の3第1項1号の要件を充足し,再生計画案が可決された。
【参照条文】    民事再生法38-2
          民事再生法174-2
          民事再生法172の3-1
【掲載誌】     最高裁判所民事判例集62巻3号860頁

民事再生法
(再生債務者の地位)
第三十八条  再生債務者は、再生手続が開始された後も、その業務を遂行し、又はその財産(日本国内にあるかどうかを問わない。第六十六条及び第八十一条第一項において同じ。)を管理し、若しくは処分する権利を有する。
2  再生手続が開始された場合には、再生債務者は、債権者に対し、公平かつ誠実に、前項の権利を行使し、再生手続を追行する義務を負う。
3  前二項の規定は、第六十四条第一項の規定による処分がされた場合には、適用しない。

第百七十二条の二  裁判所は、相当と認めるときは、再生計画案を決議に付する旨の決定と同時に、一定の日(以下この条において「基準日」という。)を定めて、基準日における再生債権者表に記録されている再生債権者を議決権者と定めることができる。
2  裁判所は、基準日を公告しなければならない。 この場合において、基準日は、当該公告の日から二週間を経過する日以後の日でなければならない。

(再生計画の認可又は不認可の決定)
第百七十四条  再生計画案が可決された場合には、裁判所は、次項の場合を除き、再生計画認可の決定をする。
2  裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合には、再生計画不認可の決定をする。
一  再生手続又は再生計画が法律の規定に違反し、かつ、その不備を補正することができないものであるとき。 ただし、再生手続が法律の規定に違反する場合において、当該違反の程度が軽微であるときは、この限りでない。
二  再生計画が遂行される見込みがないとき。
三  再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき。
四  再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反するとき。
3  第百十五条第一項本文に規定する者及び労働組合等は、再生計画案を認可すべきかどうかについて、意見を述べることができる。
4  再生計画の認可又は不認可の決定があった場合には、第百十五条第一項本文に規定する者に対して、その主文及び理由の要旨を記載した書面を送達しなければならない。
5  前項に規定する場合には、同項の決定があった旨を労働組合等に通知しなければならない。

 

第8章 電気通信事業法の適用を受ける事業者の要件

電気通信事業法の適用を受けるのは、以下の要件を全て満たす事業者です。

 

「電気通信事業」を行っていること

電気通信事業を「営んでいる」こと

適用除外に該当しないこと

 

各要件をそれぞれ解説します。

 

「電気通信事業」を行っていること

「電気通信事業」とは、電気通信役務を他人の需要に応じるために提供する事業を意味します(電気通信事業法2条4号)。関連する用語の定義は、以下のとおりです。

 

電気通信事業法の対象となる事業者

電気通信業法の対象となるのは、電気通信サービスの提供自体を事業としており、当該事業で利益を得ようとする事業者です。

 

ただし、以下の事業は、電気通信サービスを提供していても電気通信事業として該当せず、電気通信事業法は適用されません。

 

電気通信事業として該当しない事業の例

・ 企業・個人・自治会等のホームページ運営

・ 証券・金融商品等のオンライン販売

・ 物・商品のオンライン販売

・ 製造した商品のオンライン販売

 

出典:総務省「電気通信事業参入マニュアル ガイドブック」

 

 

電気通信事業を営む事業者で総務大臣の登録を受け、総務省令で定めるところにより届出をした者を「電気通信事業者」といいます。

 

たとえば、スマートフォンなどの携帯電話回線や、インターネット回線を提供する事業者です。

 

また電気通信事業を営む者は登録・届出が必要な「電気通信事業者」と、登録・届出が不要な「第3号事業者」にわかれます。

 

事業者

電気通信事業者

第3号事業者

登録・届出の有無

必要

不要

サービス例

・ 固定電話

・ 携帯電話

・ 電子メール

・ インターネット接続サービスなど          ・ SNS

・ 各種情報のオンライン提供

・ オンライン検索サービスなど

 

 

 

出典:総務省「電気通信事業参入マニュアル ガイドブック」

 

中間省略登記が中間取得者の同意なしにされた場合と中間取得者以外の者の抹消登記請求権


家屋収去土地明渡請求事件
【事件番号】    最高裁判所第2小法廷判決/昭和42年(オ)第205号
【判決日付】    昭和44年5月2日
【判示事項】    中間省略登記が中間取得者の同意なしにされた場合と中間取得者以外の者の抹消登記請求権
【判決要旨】    中間省略登記が中間取得者の同意なしにされた場合においても、中間取得者でない者は、右登記の無効を主張して、その抹消登記手続を求めることはできない。
【参照条文】    民法177
【掲載誌】     最高裁判所民事判例集23巻6号951頁

民法
(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

 

会社が役員及び従業員の全員で構成される福利厚生団体に対してした支出が、右団体が会社から独立した団体とはいえないとして、法人税法上は支出時の属する事業年度の損金の額を構成しないとされた事例

 

 

              法人税更正処分等取消請求各控訴事件

【事件番号】      大阪高等裁判所判決/昭和61年(行コ)第32号、昭和61年(行コ)第33号

【判決日付】      昭和63年3月31日

【判示事項】      1、会社が役員及び従業員の全員で構成される福利厚生団体に対してした支出が、右団体が会社から独立した団体とはいえないとして、法人税法上は支出時の属する事業年度の損金の額を構成しないとされた事例

             2、法人税法上の期末たな卸資産の評価につき、実際に採られた評価方法が予め選定し届け出られた総平均法とは異なるが、総平均法と基本的考え方を同じくし、同一性を有するとして、同法29条1項の「選定した評価の方法により評価しなかった場合」にあたらず、総平均法により評価すべきであるとされた事例

             3、会社が1人当たり3万円弱の費用を負担して行なわれた従業員の2泊3日の香港慰安旅行が社会通念上一般に行なわれているレクリエーション行事にあたるとして、会社の右費用負担は所得税法上課税されるべき給与の支払に当たらないとされた事例

【参照条文】      法人税法22-3

             法人税法29-1

             法人税法施行令31-1

             所得税法28-1

【掲載誌】        訟務月報34巻10号2096頁

             判例タイムズ675号147頁

             労働判例522号53頁

 

監獄法施行規則違法判決・監獄法施行規則(平成三年改正前)一二〇条及び一二四条の各規定の法適合性


面会不許可処分取消等請求事件
【事件番号】    最高裁判所第3小法廷判決/昭和63年(行ツ)第41号
【判決日付】    平成3年7月9日
【判示事項】    一、監獄法施行規則(平成三年法務省令第二二号による改正前のもの)一二〇条及び一二四条の各規定の法適合性
          二、拘置所長が未決勾留により拘禁された者と一四歳未満の者との接見を許さなかったことにつき国家賠償法一条一項にいう過失がないとされた事例
【判決要旨】    一、監獄法施行規則(平成三年法務省令第二二号による改正前のもの)一二〇条及び一二四条の各規定は、未決勾留により拘禁された者と一四歳未満の者との接見を許さないとする限度において、監獄法五〇条の委任の範囲を超え、無効である。
          二、拘置所長が監獄法四五条に違反して未決勾留により拘禁された者と一四歳未満の者との接見を許さない旨の処分をした場合において、右処分は監獄法施行規則(平成三年法務省令第二二号による改正前のもの)一二〇条に従ってされたものであり、かつ、右規則一二〇条及びその例外を定める一二四条は明治四一年に公布されて以来長きにわたって施行され、その間これらの規定の有効性に実務上特に疑いを差し挟む解釈がされなかったなど判示の事情があるときは、拘置所長が右処分をしたことにつき国家賠償法一条一項にいう過失があったということはできない。
【参照条文】    監獄法45
          監獄法50
          監獄法施行規則(平成3年法務省令第22号による改正前のもの)120
          監獄法施行規則124
          国家賠償法1-1
【掲載誌】     最高裁判所民事判例集45巻6号1049頁

平成十七年法律第五十号
刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律
(面会の相手方)
第百十五条 刑事施設の長は、未決拘禁者(受刑者又は死刑確定者としての地位を有するものを除く。以下この目において同じ。)に対し、他の者から面会の申出があったときは、第百四十八条第三項又は次節の規定により禁止される場合を除き、これを許すものとする。ただし、刑事訴訟法の定めるところにより面会が許されない場合は、この限りでない。

(面会に関する制限)
第百十八条 未決拘禁者の弁護人等との面会の日及び時間帯は、日曜日その他政令で定める日以外の日の刑事施設の執務時間内とする。
2 前項の面会の相手方の人数は、三人以内とする。
3 刑事施設の長は、弁護人等から前二項の定めによらない面会の申出がある場合においても、刑事施設の管理運営上支障があるときを除き、これを許すものとする。
4 刑事施設の長は、第一項の面会に関し、法務省令で定めるところにより、面会の場所について、刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上必要な制限をすることができる。
5 第百十四条の規定は、未決拘禁者と弁護人等以外の者との面会について準用する。この場合において、同条第二項中「一月につき二回」とあるのは、「一日につき一回」と読み替えるものとする。

 

「ファービー」事件

 

仙台高等裁判所判決/平成13年(う)第177号

平成14年7月9日

各著作権法違反被告事件

【判示事項】    育成型電子玩具「ファービー」のデザイン形態について著作物性を否定した事例

【参照条文】    著作権法2-1

          著作権法2-2

          著作権法113-1

          著作権法124-1

          著作権法119-1

【掲載誌】     判例タイムズ1110号248頁

          判例時報1813号145頁

【評釈論文】    知財管理52巻12号1863頁

 

著作権法

(定義)

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

二 著作者 著作物を創作する者をいう。

(中略)

2 この法律にいう「美術の著作物」には、美術工芸品を含むものとする。

 

(侵害とみなす行為)

第百十三条1項 次に掲げる行為は、当該著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。

一 国内において頒布する目的をもつて、輸入の時において国内で作成したとしたならば著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権の侵害となるべき行為によつて作成された物を輸入する行為

二 著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為によつて作成された物(前号の輸入に係る物を含む。)を、情を知つて、頒布し、頒布の目的をもつて所持し、若しくは頒布する旨の申出をし、又は業として輸出し、若しくは業としての輸出の目的をもつて所持する行為

 

第百二十四条 法人の代表者(法人格を有しない社団又は財団の管理人を含む。)又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。

一 第百十九条第一項若しくは第二項第三号から第六号まで又は第百二十二条の二第一項 三億円以下の罰金刑

二 第百十九条第二項第一号若しくは第二号又は第百二十条から第百二十二条まで 各本条の罰金刑

2 法人格を有しない社団又は財団について前項の規定の適用がある場合には、その代表者又は管理人がその訴訟行為につきその社団又は財団を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。

3 第一項の場合において、当該行為者に対してした告訴又は告訴の取消しは、その法人又は人に対しても効力を生じ、その法人又は人に対してした告訴又は告訴の取消しは、当該行為者に対しても効力を生ずるものとする。

4 第一項の規定により第百十九条第一項若しくは第二項又は第百二十二条の二第一項の違反行為につき法人又は人に罰金刑を科する場合における時効の期間は、これらの規定の罪についての時効の期間による。

 

事案の概要

 1 本件は、世界的大流行となった育成型電子玩具である「ファービー」という人形の模倣品を販売した卸売業者及びその役員が、著作権法違反(119条1号、113条1項2号、1241項1号)で起訴され、そのデザイン形態の著作物性が争われた刑事事件である。1審判決(山形地判平13・9・26判タ1079号306頁)は、ファービー人形のデザイン形態の著作物性を否定して、被告人らを無罪としたが、これに対し、検察官控訴があり、ファービー人形のデザイン形態は、鑑賞の対象となる美的特性を備えており、著作物に該当するとして、1審判決の法令解釈適用の誤りが主張された。

 本判決は、その控訴審判決であり、原判決を是認し、控訴を棄却したものである。

本件は、病院事業を営む原告が、株式会社A及びBから受けた総額24億1033万1186円の債務免除(以下「本件債務免除」という。)に係る債務免除益(以下「本件債務免除益」という。)を事業所得の総収入金額に算入せずに平成17年分の所得税の確定申告をしたところ、処分行政庁からその一部である10億2116万5891円を事業所得として総収入金額に加算する内容の更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」といい、本件更正処分と併せて「本件更正処分等」という。)を受けたため、本件債務免除益には所得税基本通達36-17の適用があるから上記加算は許されないと主張し、本件更正処分等の取消しを求めた事案である。

(納税者勝訴)

 

 

平成26年改正により新設された
所得税法
(免責許可の決定等により債務免除を受けた場合の経済的利益の総収入金額不算入)
第四十四条の二 居住者が、破産法(平成十六年法律第七十五号)第二百五十二条第一項(免責許可の決定の要件等)に規定する免責許可の決定又は再生計画認可の決定があつた場合その他資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合にその有する債務の免除を受けたときは、当該免除により受ける経済的な利益の価額については、その者の各種所得の金額の計算上、総収入金額に算入しない。
2 前項の場合において、同項の債務の免除により受ける経済的な利益の価額のうち同項の居住者の次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額(第一号から第四号までに定める金額にあつては当該経済的な利益の価額がないものとして計算した金額とし、第五号に定める金額にあつては同項の規定の適用がないものとして総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額を計算した場合における金額とする。)の合計額に相当する部分については、同項の規定は、適用しない。
一 不動産所得を生ずべき業務に係る債務の免除を受けた場合 当該免除を受けた日の属する年分の不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額
二 事業所得を生ずべき事業に係る債務の免除を受けた場合 当該免除を受けた日の属する年分の事業所得の金額の計算上生じた損失の金額
三 山林所得を生ずべき業務に係る債務の免除を受けた場合 当該免除を受けた日の属する年分の山林所得の金額の計算上生じた損失の金額
四 雑所得を生ずべき業務に係る債務の免除を受けた場合 当該免除を受けた日の属する年分の雑所得の金額の計算上生じた損失の金額
五 第七十条第一項又は第二項(純損失の繰越控除)の規定により、当該債務の免除を受けた日の属する年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額の計算上控除する純損失の金額がある場合 当該控除する純損失の金額
3 第一項の規定は、確定申告書に同項の規定の適用を受ける旨、同項の規定により総収入金額に算入されない金額その他財務省令で定める事項の記載がある場合に限り、適用する。
4 税務署長は、確定申告書の提出がなかつた場合又は前項の記載がない確定申告書の提出があつた場合においても、その提出がなかつたこと又はその記載がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるときは、第一項の規定を適用することができる。


    所得税更正処分取消等請求事件
【事件番号】    大阪地方裁判所判決
【判決日付】    平成24年2月28日
【掲載誌】     税務訴訟資料262号順号11893

       主   文

 1 処分行政庁が原告に対し平成20年5月2日付けでした原告の平成17年分所得税の更正処分のうち、総所得金額5765万2448円、納付すべき税額-1451万1239円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。
 2 訴訟費用は被告の負担とする。

       事実及び理由

第1 請求
  主文同旨
第2 事案の概要
  本件は、病院事業を営む原告が、株式会社A(以下「A」という。)及びB(Bの地位は独立行政法人Cに承継された。以下、承継の前後を問わず「C」といい、Aと併せて「A等」という。)から受けた総額24億1033万1186円の債務免除(以下「本件債務免除」という。)に係る債務免除益(以下「本件債務免除益」という。)を事業所得の総収入金額に算入せずに平成17年分の所得税の確定申告をしたところ、処分行政庁からその一部である10億2116万5891円を事業所得として総収入金額に加算する内容の更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」といい、本件更正処分と併せて「本件更正処分等」という。)を受けたため、本件債務免除益には所得税基本通達36-17の適用があるから上記加算は許されないと主張し、本件更正処分等の取消しを求めた事案である。
 1 関係法令等の定め
  (1) 所得税法36条の定め
   ア その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもって収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする(1項)。
   イ アにいう金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額は、当該物若しくは権利を取得し、又は当該利益を享受する時における価額とする(2項)。
  (2) 所得税基本通達(以下「基本通達」という。)の定め
   ア 所得税法36条1項に規定する「金銭以外の物又は権利その他経済的な利益」(以下「経済的利益」という。)には、買掛金その他の債務の免除を受けた場合におけるその免除を受けた金額に相当する利益が含まれる(基本通達36-15(5))。
   イ 債務免除益のうち、債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合に受けたものについては、各種所得の金額の計算上収入金額又は総収入金額に算入しないものとする。ただし、次に掲げる場合に該当するときは、それぞれ次に掲げる金額(次のいずれの場合にも該当するときは、その合計額)の部分については、この限りでない。(基本通達36-17)
    (ア) 当該免除を受けた年において当該債務を生じた業務(以下「関連業務」という。)に係る各種所得の金額の計算上損失の金額(当該免除益がないものとして計算した場合の損失の金額をいう。)がある場合 当該損失の金額
    (イ) 所得税法70条の規定により当該免除を受けた年において繰越控除すべき純損失の金額(当該免除益を各種所得の金額の計算上収入金額又は総収入金額に算入することとした場合に当該免除を受けた年において繰越控除すべきこととなる純損失の金額をいう。)がある場合で、当該純損失の金額のうちに関連業務に係る各種所得の金額の計算上生じた損失の金額があるとき 当該繰越控除すべき金額のうち、当該損失の金額に達するまでの部分の金額
 2 前提事実(争いがないか、各項掲記の証拠(書証番号には特に断らない限り枝番号を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実等)
  (1) 当事者
    原告は、平成2年10月1日から平成18年9月30日まで、原告肩書地においてD病院(以下「本件病院」という。)を開設していた医師である。
    原告は、平成18年5月11日、医療法人社団E(以下「本件医療法人」という。)を設立してその理事長に就任し、同年10月1日、本件病院に係る事業を本件医療法人に引き継いだ(乙5から7まで)。
  (2) 本件債務免除の経緯
   ア 原告は、本件病院の建築資金及び運営資金等として、Cから平成元年10月18日に4億5600万円を、株式会社F銀行から平成2年10月31日に7億5200万円、平成5年12月21日に7億4270万円を、それぞれ借り入れた(乙1、2)。株式会社F銀行の原告に対する上記各貸金債権は、平成8年1月に株式会社G銀行に営業譲渡によって承継され、平成11年3月23日にAに譲渡された(乙3)。
   イ 原告が、平成17年8月9日当時、上記アの借入れに基づきA等に対して負担していた債務の総額は29億1033万1186円(内訳は、以下のとおり)であって、いずれの債務についても期限の利益を喪失していた(甲5の1、弁論の全趣旨)。
    (ア) Aに対する債務
      合計24億0247万0418円
     a 平成2年10月31日付け借入れに係る債務
       11億0236万2811円
       (内訳)
        残元金   4億9500万円
        未払利息  2093万2382円
        遅延損害金 5億8643万0429円
     b 平成5年12月21日付け借入れに係る債務
       13億0010万7607円
       (内訳)
        残元金   6億8150万円
        未払利息  1138万1772円
        遅延損害金 6億0722万5835円
    (イ) C
      5億0786万0768円
      (内訳)
       残元金   2億9170万円
       未払利息  2億0931万4292円
       遅延損害金 684万6476円
   ウ 原告は、平成17年8月9日、株式会社H銀行(以下「H銀行」という。)から5億円を借り入れ、これを原資として、Aに対し2億0830万円(前記イ(ア)aの残元金の一部に充当)を、Cに対し2億9170万円(同(イ)の残元金全額に充当)を、それぞれ支払った。これを受け、A等は、同日、原告に対し、上記イの債務の残額(総額24億1033万1186円)を免除した(本件債務免除。甲2、3)。
  (3) 本件更正処分等の経緯
   ア 原告は、平成18年3月14日、平成17年分の所得税について、青色申告書を提出して、別紙「課税の経緯」の「確定申告」欄記載のとおり確定申告(以下「本件確定申告」という。)をした。本件確定申告において、原告は、本件債務免除益を、事業所得の金額の計算上収入金額に算入していなかった。(甲1)
   イ 処分行政庁は、平成20年5月2日、原告に対し、別紙「課税の経緯」の「更正処分等」欄記載のとおり、本件債務免除益のうち10億2116万5891円を原告の平成17年分の事業所得の金額に算入する内容の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(本件更正処分等)をした(甲4)。
   ウ 原告は、平成20年6月24日、国税不服審判所長に対し、本件更正処分等について審査請求をしたが、平成21年6月2日、審査請求を棄却する旨の裁決を受けた(甲5)。
  (4) 本件訴えの提起
    原告は、平成21年11月26日、本件訴えを提起した(顕著な事実)。
 3 本件更正処分等の根拠
   被告が本件訴訟において主張する本件更正処分等の根拠は、後掲5の被告の主張のほか、別紙「本件更正処分等の根拠及び適法性」のとおりである。
 4 本件の争点
   本件の争点は、本件更正処分等の適法性であり、具体的には以下のとおりである。
  (1) 本件債務免除益に基本通達36-17の適用があるか否か
  (2) 本件債務免除益の一部のみを算入したことの当否
  (3) 国税通則法65条4項の「正当な理由」の有無
 5 争点に関する当事者の主張
  (1) 争点(1)(本件債務免除益に基本通達36-17の適用があるか否か)について
   (原告の主張)
   ア 基本通達36-17の趣旨及び判断基準
    (ア) 趣旨
     a 事業所得者が経営不振により著しく債務超過の状態となったため債権者から債務免除を受けた場合、原則どおりこれを収入金額に算入すると、実質的には支払能力のない債務の弁済を免れただけであるのに、その年の事業損失を超える債務免除であったときは事業所得としてこれに課税が行われることとなる。しかしながら、当該債務免除益は単に形式上の所得であって、これによって担税力のある所得を得たものとはいえない。基本通達36-17は、経済的利益を課税の対象とする旨規定する所得税法36条を根拠とし、その解釈として、上記のような債務免除益について、経済的利益の価額がゼロであるとして収入金額に算入しない取扱いを明らかにしたものである。
     b 被告は、基本通達36-17ただし書が一定の損失額の範囲で収入金額に算入するものとしていることと整合しないと反論する。しかし、このただし書の規定は、結局、上記aのような場合は本来債務免除益に対する課税は生じないが、事業損失がある場合には、形式的に債務が存在するとした上で、その事業損失から当該形式的債務免除益を控除して事業損失を確定させることとしたものというべきである。また、基本通達36-17はあくまでも債務免除益課税の例外を定める規定であるところ、債務免除益課税の例外の適用を受けた者について、翌年以降に事業損失の繰越しを許容することは、必要以上の非課税を認めるに等しいため、政策的にただし書が設けられたと解される。
    (イ) 判断基準
      所得税法9条1項10号は、資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合における強制換価手続による資産の譲渡による所得その他これに類するものとして政令で定める所得については所得税を課さない旨規定し、所得税法施行令26条は、上記の「政令で定める所得」を、資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であり、かつ、強制換価手続の執行が避けられないと認められる場合における資産の譲渡による所得で、その譲渡に係る対価が当該債務の弁済に充てられたものと規定し、基本通達9-12の2は、上記各規定にいう「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難」である場合とは、債務者の債務超過の状態が著しく、その者の信用、才能等を活用しても、現にその債務の全部を弁済するための資金を調達することができないのみならず、近い将来においても調達することができないと認められる場合をいい、これに該当するかどうかは上記各規定に規定する資産を譲渡した時の現況により判定する旨規定する。
      基本通達36-17は、所得税法9条1項10号と同趣旨に出たものと解されるから、基本通達36-17にいう「債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合」とは、基本通達9-12の2にいう「債務者の債務超過の状態が著しく、その者の信用、才能等を活用しても、現にその債務の全部を弁済するための資金を調達することができないのみならず、近い将来においても調達することができないと認められる場合」と、基本的には同一である。
      この点、被告は、基本通達36-17が予定する場面を「誰の目から見ても資力を喪失し経済的破綻状態が客観的に明らかな場合であって、課税上不公平な結果を招くことのない状態をいう」と言い換えているが、そのような文言はどこにもなく、失当である。
    (ウ) 判定時期
     a 上記(ア)のとおり、基本通達36-17は所得税法36条の合理的な解釈を確認した規定であるというべきである以上、租税法律主義の下、基本通達36-17の適用要件は、文言に忠実に解釈されるべきであり、「債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合に受けた」債務免除に当たるか否かは、債務免除を受ける直前の状況から判断すべきである。このことは、基本通達36-17の趣旨(前記(ア))に加え、以下の点からも明らかである。
      (a) 貸倒損失に係る基本通達51-11(4)及び法人税基本通達9-6-1④は、「債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その貸金等の弁済を受けることができないと認められる場合において、その債務者に対し債務免除額を書面により通知した」場合には、債務免除額が貸倒損失として必要経費に算入されることとしている。基本通達36-17は、債務免除益という経済的利益の内容について実質的に評価するために、債務免除に伴う純資産の増加が実質を伴うものかどうかを問題としているところ、経済的利益の実質的価値の有無が問題となるのは、貸倒損失に関する基本通達51-11(4)も同様であるから、上記各通達と基本通達36-17との適用場面とは原則として共通するというべきである。
      (b) 所得税法9条1項10号について、財団法人M協会発行の「資産税質疑応答集」は、基本通達9-12の2にいう「債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合」の判断時点を、当該譲渡を行ったときの直前の状況と解説している。
      (c) 相続税法8条ただし書は、債務者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、当該債務の全部又は一部の免除を受けたときの債務免除益について、その債務を弁済することが困難である部分の金額については贈与又は遺贈により取得したものとはみなさない旨規定し、相続税法基本通達8-4が準用する同通達7-5は、上記の「債務を弁済することが困難である部分の金額」は、債務超過の部分の金額から、債務者の信用による債務の借換え、労務の提供等の手段により近い将来において当該債務の弁済に充てることができる金額を控除した金額をいうが、特に支障がないと認められる場合においては、債務超過の部分の金額を「債務を弁済することが困難である部分の金額」として取り扱っても妨げないと規定する。
        このように、相続税法も、債務免除益の担税力の有無を、債務免除を受ける直前の、債務者の、免除対象となった債務の弁済能力の有無という基準でもって規律している。
      (d) 米国の内国歳入法典108条は、債務免除が債務超過時に生じた場合には、当該債務免除益は総所得に算入されず、債務超過額については、債務免除直前の納税者の資産と負債を基準にして決定される旨規定しており、比較法的観点からも、基本通達36-17の適否の判断は、債務免除の直前と解釈するのが妥当である。
     b 被告の主張に対する反論
      (a) 被告は、基本通達36-17の適用の有無は、債務免除を受けた結果の現況において判断されるべきであると主張する。
        しかし、被告の主張に従うと、実務において、基本通達36-17の適用場面は全く想定できない。債務者が破産し、免責を受けた場合にも、支払義務がなくなっている以上、「債務者が債務免除を受けてもなお資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合」という状態ではないため、基本通達36-17の適用はないことになり、不合理である。
      (b) 個人事業者が多額の債務を負担していた場合、合理的な任意整理により債務免除を受け、事業再生を期したとしても、基本通達36-17の適用がないこととなるが、これは個人事業者について事業再生の道を事実上閉ざすものとなり、不当である。
      (c) 法人税法においては、債務免除益は益金として取り扱われる結果、債務免除益課税が法人の事業再建の障害となっていたため、同法59条等の規定の適用範囲が、度重なる改正により徐々に広げられてきた。これに対し、所得税法においては、債務免除益課税について特段の改正がされていないが、その理由は、基本通達36-17の規定があるからとしか考えられない。
        また、基本通達36-17の前身である昭和38年8月1日付け個別通達(昭38直審(所)70、直所1-62。以下「昭和38年個別通達」という。乙16)が、和議手続が開始された個人について、債務免除益を収入金額に算入しない旨明記している。
        さらに、昭和38年12月の税制調査会の答申(甲14)は、「債務免除益に対する課税については、破産の場合とのバランスもあり、債務超過ないし支払不能の場合につきなんらかの課税軽減の措置を講ずる必要があると認められるが、他方脱法行為をいかに防止するかの問題があるので、軽減の方向でその具体的方法について検討するものとする」としているところ、同答申は、事業の破綻が目の前に迫り事業継続のためには債務免除が必要不可欠であり、かつ、必要最小限の債務免除を受けた場合には債務免除益に課税しない、という措置を講ずることを目指すものと解すべきである。
        以上によれば、基本通達36-17は、事業再生を目的とする債務免除であるとの理由で、その適用が排除されるものではないというべきである。
   イ 本件事案の当てはめ
    (ア) 原告は、平成17年8月当時、A等に対し多額の負債を抱え、著しい債務超過の状況に陥っており、当時の原告の信用、才能等をもってしても、これらの負債を弁済することは到底不可能な状態であった。そのような中、原告は、A等との間で協議を重ねた結果、保証人2名を立てた上でH銀行からようやく5億円の融資を受け、これをA等に対する弁済に充てることで、残余の借入金債務につき本件債務免除を受けることができたものである。これらの判断は、利害の相反する者同士においてなされたものであって、そこには租税回避的要素は一切認められない。また、本件債務免除の前後の原告の資産及び負債の状況は、別表1のとおりであり、債務免除後もなお約3478万円の債務超過の状態になっている。
      そうすると、本件債務免除は、まさに、原告の債務超過の状態が著しく、原告の信用、才能等を活用しても、現にその債務の全部を弁済するための資金を調達することができないのみならず、近い将来においても調達することができないと認められる場合に該当することは明白であり、基本通達36-17が予定する典型的な場面であるというべきである。
    (イ) 被告は、原告が、医療法人化以降、月額250万円の役員報酬を得ていること等を指摘する。しかしながら、債務免除益が収入金額に算入されないという法律効果は、債務免除を受けた時点で発生する以上、被告が指摘するような本件債務免除から1年以上も経過した後の事情は、基本通達36-17の適用の有無の判断に、何らの影響を及ぼさないというべきである。また、原告は、医療法人化以降も、相変わらず資金的に余裕のない経済状況が継続している。
    (ウ) 仮に、被告の主張するとおり、基本通達36-17の要件の判断基準時を債務免除後としても、本件債務免除益には同通達が適用されるべきである。すなわち、本件債務免除益に課税された場合、その税額は、所得税が8億円、地方税が3億円強にも及ぶから、原告は、本件債務免除を受けた後においても、H銀行に対する借入金債務5億円の他に11億円強の租税債務を負担することとなる。しかるところ、原告は本件債務免除を受けた後においても、これら16億円強の負債を返済するだけの資力はないといわざるを得ないから、本件債務免除益に基本通達36-17が適用されるべきである。
   (被告の主張)
   ア 基本通達36-17の趣旨及び判断基準
    (ア) 課税減免規定は厳格に解釈すべきであること
      課税減免規定の解釈に当たっては、課税要件規定以上に、その法律の趣旨・目的に沿った厳格な解釈が要求されており、みだりに拡張、類推して解釈することは、慎まなければならない。包括的所得概念が採用されている我が国の所得税法の下においては、債務免除益は、原則として担税力を有する課税所得に当たると解されており、所得税法所定の非課税所得には該当しない。したがって、債務免除益を例外的に非課税とするためには、債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められ、およそ「担税力を有する経済的利益」という法概念には該当しない場合であることが必要である。担税力が(たとえ不十分であれ)未だ存在するのに、これを非課税とすることは、実質的には、減免規定がないにもかかわらず、独自の見解により減免規定を拡張、類推するのに等しく、法解釈として許されないというべきである。
    (イ) 趣旨
      事業所得者が、経営不振による著しい債務超過で経営破綻に陥っている状況で、債権者が債権放棄したなどの場合には、債務者は実質的には支払能力のない債務の弁済を免れただけであるから、当該債務免除益のうちその年分の事業所得の計算上生じた損失の額を上回る部分については、担税力を得た所得とみるのは必ずしも実情に即さず、かかる債務免除額に対して所得税法所定のとおり収入金額として課税しても徴収不能となることは明らかで、いたずらに滞納残高のみが増加し、また滞納処分の停止を招くだけであり、他方、上記のような事情にある明らかに担税力のない者について課税を行わないこととしても、課税上の不公平が問題となることはなく、むしろ課税をすることに一般の理解は得られないものと考えられる。基本通達36-17は、所得税法36条1項の特例として、かかる無意味な課税を差し控え、積極的な課税をしないこととしたものである。
    (ウ) 判断基準
     a 所得税法9条1項10号及び所得税法施行令26条は、原則として、強制換価手続等により資産が譲渡された場合であっても、その譲渡所得に対しては所得税を課すことを前提として、基本通達36-17と同一の文言である「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合」に限り、例外的に所得税を課さないこととしている。その趣旨は、強制換価等によって資産の譲渡が行われるのは、その資産の全部をもってしても債務の全部を弁済することができないような状態に陥って初めてなされる場合が多く、このような場合に譲渡所得に対する課税を行っても、その者には担税力がなく、結果的には徴収不能になることが明らかであることや、個人に対しては、その最低限度の生活を保障すべき憲法上の要請があることを考慮して一定の合理的な範囲で課税所得とすることを控え、個人の生計維持を図ったものと考えられる。
       そして、所得税法9条1項10号及び所得税法施行令26条に規定する「資力を喪失し債務を弁済することが著しく困難」の意義について、基本通達9-12の2は、「債務者の債務超過の状態が著しく、その者の信用、才能等を活用しても、現にその債務の全部を弁済するための資金を調達することができないのみならず、近い将来においても調達することができないと認められる場合をいい、これに該当するかどうかは、これらの規定に規定する資産を譲渡した時の現況により判定する。」と規定する。
     b 基本通達36-17と所得税法9条1項10号及び所得税法施行令26条において、それぞれ「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である」場合との文言が用いられているが、両者は同一の趣旨に出たものであることが明らかであり、同一の文言である以上、同様に解するのが合理的である。したがって、基本通達36-17にいう「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合」とは、「債務者の債務超過の状態が著しく、その者の信用、才能等を活用しても、現にその債務の全部を弁済するための資金を調達することができないのみならず、近い将来においても調達することができないと認められる場合」をいい、誰の目から見ても資力を喪失し経済的破綻状態にあることが客観的に明らかな場合であって、課税上不公平な結果を招くことがない状態をいうものと解すべきである。

第7章 電気通信事業とは

電気通信事業とは、電気通信事業法で「電気通信役務を他人の需要に応ずるために提供する事業」とされています。

 

 電気通信事業とは、電気通信役務を他人の需要に応ずるために提供する事業をいいます(法2条4号)。

電気通信役務とは、電気通信設備 1 を用いて他人の通信を媒介し、その他電気通信設備を他人の通信の用に供することをいいます(法2条3号)。

電気通信事業法の適用の有無および範囲を判断するには、順に、①「電気通信事業」への該当性、②営利性の有無、③適用除外規定(法164条1項)の適用の有無、④電気通信回線設備 2 の規模を検討する必要があります(下図参照)。

 

 

 

 「電気通信事業」の該当性が肯定された場合、その内容や規模によって、以下の3種類に分かれます。

 

(i) 登録(法9条)が必要な電気通信事業

(ii) 届出(法16条)が必要な電気通信事業

(iii) 登録および届出が不要な電気通信事業

 

 そして、登録または届出を行った事業者が「電気通信事業者」(法2条5号)として扱われることになります。

 たとえば、MNO 3 やFNO 4 については、通常、登録が必要な電気通信事業に該当しますが、MVNO 5 やFVNO 6 は、自ら電気通信回線設備を保有しないため、届出が必要な電気通信事業になります。

 

 近時は、利用者間でクローズドなチャットやメッセージを送りあえる機能を実装したアプリやオンラインサービスを目にすることが多いですが、このようなサービスも届出が必要な電気通信事業に該当します。

 

 他方で、クラウドやIoTをはじめとする各種のオンラインサービスについては、登録または届出が不要な電気通信事業に該当することが多いと思われますが、サービスの内容次第では、別の類型に当たる可能性もあり、ケースバイケースの検討が必要になります。