駐車場の収益については、親Aが所有者であり、使用貸借契約を締結した子である被控訴人X1及び同X2 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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駐車場の収益については、親が所有者であり、使用貸借契約を締結した子である被控訴人X1及び同X2は単なる名義人であって、その収益を享受せず、所有者である亡Aがその収益を享受する場合に当たるというべきである。

 

 

一審判決・請求認容

              所得税更正処分等取消請求事件

【事件番号】      大阪地方裁判所判決/平成31年(行ウ)第51号

【判決日付】      令和3年4月22日

【判示事項】      1 駐車場として賃貸されている土地の所有者がその子らに対して当該土地を無償で使用収益させる旨の使用貸借契約の成立が認められた事例

             2 所有者がその子らに対して無償で使用収益させている土地の駐車場収入が,所得税法上,当該土地使用借人に帰属するとされた事例

【判決要旨】      1 駐車場として賃貸されている土地の所有者がその子らに対して当該土地を無償で使用収益させる旨の使用貸借契約書の基本的な内容を認識した上で当該契約書に署名・押印したこと,当該契約書の記載どおりの行為がされたとの経験則を妨げる特段の事情が見当たらないことなど判示の事実関係の下では,当該使用貸借契約が成立したものと認められる。

             2 所有者がその子らに対して無償で使用収益させている土地の駐車場収入は,使用借人が当該土地の使用収益権に基づき第三者との間で駐車場に係る賃貸借契約を締結して当該駐車場収入を得ていること,当該所有者は当該駐車場収入を得ていないことなど判示の事実関係の下では,所得税法上,所有者ではなく,当該使用借人に帰属する。

【掲載誌】        LLI/DB 判例秘書登載

【評釈論文】      税理65巻6号92頁

             税理65巻15号120頁

             同志社法学74巻3号1235頁

             税務弘報71巻1号142頁

 

       主   文

 

 1 本件訴えのうち次の部分をいずれも却下する。

  (1) 枚方税務署長が平成29年3月23日付けで原告に対してした平成26年分の所得税及び復興特別所得税の更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分の取消しを求める部分

  (2) 枚方税務署長が平成29年3月23日付けで原告に対してした平成26年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分のうち,不動産所得の金額1804万5491円,納付すべき税額(予定納税額控除前のもの)472万7600円を超えない部分の取消しを求める部分

 2 枚方税務署長が平成29年3月23日付けで原告に対してした平成26年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分のうち,不動産所得の金額1804万5491円及び納付すべき税額(予定納税額控除前のもの)472万7600円を超える部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。

 3 訴訟費用はこれを10分し,その1を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。

 

       事実及び理由

 

第1 請求

 1 枚方税務署長が平成29年3月23日付けで原告に対してした平成26年分の所得税及び復興特別所得税の更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分を取り消す。

 2 枚方税務署長が平成29年3月23日付けで原告に対してした平成26年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分のうち,不動産所得の金額1794万1297円,納付すべき税額(予定納税額控除前のもの)468万4700円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。

第2 事案の概要

 1 事案の要旨

   本件は,原告が,平成26年分の所得税及び復興特別所得税(以下,両税を併せて「所得税等」という。)について,収入の計上誤り等を理由とする更正の請求(以下「本件更正請求」という。)をしたところ,処分行政庁から,更正すべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」という。)を受けたほか,原告の子らの名義で賃貸された土地の賃料に係る収益は原告に帰属するとして,増額更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」といい,本件更正処分と併せて「本件更正処分等」という。また,本件通知処分と本件更正処分等を併せて「本件各処分」という。)を受けたことから,被告を相手に,本件各処分の取消しを求める事案である。

 2 関係法令等の定め

  (1) 国税通則法の定め

   ア 更正の請求

     国税通則法23条1項(平成27年法律第9号による改正前のもの。以下同じ。)は,納税申告書を提出した者は,当該申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより,当該申告書の提出により納付すべき税額(当該税額に関し更正があった場合には,当該更正後の税額)が過大であるとき(同項1号)等には,当該申告書に係る国税の法定申告期限から原則として5年以内に限り,税務署長に対し,その申告に係る課税標準等又は税額等(当該課税標準等又は税額等に関し同法24条〔更正〕又は26条〔再更正〕の規定による更正があった場合には,当該更正後の課税標準等又は税額等)につき更正をすべき旨の請求をすることができる旨規定する。

   イ 更正

     国税通則法24条は,税務署長は,納税申告書の提出があった場合において,その納税申告書に記載された課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったとき,その他当該課税標準等又は税額等がその調査したところと異なるときは,その調査により,当該申告書に係る課税標準等又は税額等を更正する旨規定する。

  (2) 所得税法12条(実質所得者課税の原則)の定め

    所得税法12条は,資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であって,その収益を享受せず,その者以外の者がその収益を享受する場合には,その収益は,これを享受する者に帰属するものとして,所得税法の規定を適用する旨規定する。

  (3) 所得税基本通達12-1の定め

    国税庁長官の発出した昭和45年7月1日付け直審(所)30(例規)「所得税基本通達」12-1(資産から生ずる収益を享受する者の判定,以下「所得税基本通達12-1」という。)は,所得税法12条の適用上,資産から生ずる収益を享受する者が誰であるかは,その収益の基因となる資産の真実の権利者が誰であるかにより判定すべきであるが,それが明らかでない場合には,その資産の名義者が真実の権利者であるものと推定する旨規定する。

 3 前提事実

   以下の事実は,当事者間に争いがないか,又は,掲記の各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる。

  (1) 当事者等

   ア 原告・A・B

     原告(昭和▲年▲月▲日生まれ)は,平成25年頃当時,大阪府枚方市で農業に従事していた者であり,同市内を中心に多数の不動産を所有し,賃料収入等を得ていた。A(昭和▲年生まれ。以下「A」という。)は,原告の長男であり,製造業の会社に勤務する者である。Aは,原告の自宅と同じ敷地内にある別棟の建物に居住している。B(以下「B」という。)は,原告の長女(Aの妹)である。Bは,大阪府枚方市に居住している。原告の妻は既に死亡しており,原告の子はA及びBのみである。

     原告は,平成26年1月頃当時,82歳であり,通常の加齢に伴う物忘れ等はみられたものの,意思能力に格別の問題はなかった(なお,原告は,その約2年3か月後である平成28年4月頃にアルツハイマー型認知症の初期症状と診断され,同年7月頃に敗血症で入院したことを機に通帳の管理をAに委ねた。原告は,令和2年当時,要介護3の認定を受けていた。)。

    (以上につき,甲1,2,9,10,11の1・2,16,19の1・2,23,証人A)

   イ 本件各不動産管理業者

     株式会社C(本店・大阪府寝屋川市。以下「C」という。),有限会社D(本店・大阪府枚方市。以下「D」といい,Cと併せて「本件各不動産管理業者」という。)は,いずれも不動産管理業者である(弁論の全趣旨)。

   ウ 本件税理士法人

     税理士法人E(以下「本件税理士法人」という。)のF税理士(以下「F税理士」という。)は,平成25年11月以降,Aから,原告が所有する不動産に関する租税や相続税の節税対策について相談を受けた(甲19の1・2,23,証人A)。

  (2) 本件各土地

   ア 原告の各土地の取得等

     原告は,昭和41年から平成15年にかけて,下記の各土地をそれぞれ売買又は相続により取得した(括弧内は地積及び取得の原因。乙2の1~4)。

         記

     ① 大阪府枚方市(住所省略)(374平方メートル,平成▲年▲月▲日売買)

     ② 大阪府枚方市(住所省略)(1157平方メートル,持分3分の2を昭和▲年▲月▲日相続,持分3分の1を同年▲月▲日相続)

     ③ 大阪府枚方市(住所省略)(977平方メートル,平成▲年▲月▲日売買)

     ④ 大阪府枚方市(住所省略)(823平方メートル,平成▲年▲月▲日売買)

   イ 本件各土地の利用状況

     原告は,平成16年頃以降,上記アの①~③の土地(ただし,②の土地については一部〔510.6平方メートル〕。以下,これらを合わせて「G等土地」という。)及び④の土地(以下「H土地」いい,G等土地と併せて「本件各土地」という。)を造成するなどした上で,駐車場として賃貸して,賃料収入を得るようになった(以下,本件各土地についての賃料収入を「本件各駐車場収入」という。)(乙3の1~3,4)。

   ウ G等土地

    (ア) 賃貸借契約

      原告は,平成16年頃以降,複数の個人又は法人との間で,次の約定で,G等土地を所定の区画ごとに駐車場として賃貸する旨の契約(契約書上の名称は「自動車保管場所使用契約」)を締結した(甲4の1~3,21の1,乙3の1~3)。

     a 賃貸期間 1年

     b 更新 1年ごとに,当事者双方の異議がなければ賃貸期間を更新する

     c 賃料 1区画1か月6000円又は7000円

    (イ) 駐車場管理契約

      原告は,平成16年頃以降,Cとの間で,次の約定で,G等土地を駐車場として賃貸する業務(以下,この業務を「駐車場管理業務」という。)についての委任契約(駐車場管理契約)を締結した(乙5の1~3)。

     a 業務内容 原告と各賃借人との間の賃貸借契約(自動車保管場所使用契約)の締結に関する事務,賃料等の受領,日常クレーム処理,日常清掃等の業務

     b 報酬等 Cは,代理受領した賃料から,Cが得る報酬(賃料等の総額の8%)を控除し,これを原告名義の預金口座に振り込む

   エ H土地

    (ア) 賃貸借契約

      原告は,平成15年1月23日,医療法人I(以下「I」という。)との間で,次の約定で,H土地をIの職員の駐車場用地として賃貸する旨の契約を締結した(乙4)。

     a 賃貸期間 平成15年1月23日から平成17年1月31日まで

     b 更新 2年ごとに更新する

     c 賃料 1か月19万9000円

    (イ) 駐車場管理契約

      原告は,平成15年1月23日,Dとの間で,次の約定で,H土地の駐車場管理業務についての委任契約(駐車場管理契約)を締結した(乙6)。

     a 業務内容 賃貸借契約の締結・更新,賃料の代理受領等の業務

     b 報酬等 Dは,代理受領した賃料から,Dが得る報酬(賃料の10%)を控除し,これを原告名義の振込口座に振り込む

  (3) 本件税理士法人に対する相談等

    Aは,平成25年11月18日以降,原告の意向を受けて,F税理士に対し,原告が所有する不動産の節税対策等について相談をし,助言を受けるようになった(甲19の1・2,23,証人A)。

  (4) 本件各使用貸借契約書

   ア G等土地使用貸借契約書

     原告とAを作成者とする,平成26年1月25日付けの,G等土地についての「使用貸借契約書」と題する契約書が存在する(同契約書の原告の署名・押印は真正なものである。)(甲1,弁論の全趣旨。以下,同契約書を「G等土地使用貸借契約書」といい,G等土地使用貸借契約書による契約を「G等土地使用貸借契約」という。ただし,G等土地使用貸借契約書の真正な成立の有無,G等土地使用貸借契約の成否・内容については,後記争点(3)のとおり当事者間に争いがある。)。

   イ H土地使用貸借契約書

     原告とBを作成者とする,平成26年1月25日付けの,H土地についての「使用貸借契約書」と題する契約書が存在する(同契約書の原告の署名・押印は真正なものである。)(甲2,弁論の全趣旨。以下,同契約書を「H土地使用貸借契約書」といい,H土地使用貸借契約書による契約を「H土地使用貸借契約」という。ただし,H土地使用貸借契約書の真正な成立の有無,H土地使用貸借契約の成否・内容については,後記争点(3)のとおり当事者間に争いがある。また,H土地使用貸借契約書とG等土地使用貸借契約書を併せて「本件各使用貸借契約書」といい,G等土地使用貸借契約とH土地使用貸借契約を併せて「本件各使用貸借契約」という。)。

   ウ 本件各使用貸借契約書の記載内容

     本件各使用貸借契約書には,要旨,次の内容が記載され,原告及びA又はBの署名・押印がされている(甲1,2)。

    (ア) 第1条(目的) 原告は,A又はBに対し,G等土地又はH土地を賃貸し,A又はBはこれを駐車場用地の目的として賃借する。

    (イ) 第2条(賃貸借期間) 賃貸借期間は,平成26年2月1日から平成36年1月31日までの10年間とする。期間満了後の更新については,別途協議する。

    (ウ) 第3条(賃料) 賃料は,1か年,G等土地又はH土地の各年の固定資産税及び都市計画税(以下「固定資産税等」という。)の合計額相当額とする。当該金額を12で除した金額を,A又はBは毎月末日限り翌月分を原告に支払う。

    (エ) 第4条(転貸承諾等) A又はBは,原告の承諾により,G等土地又はH土地を転貸又は賃借権譲渡等をすることができる。

    (オ) 第5条(公租公課の負担) G等土地又はH土地に係る固定資産税等の公租公課は,原告の負担とする。

    (カ) 第6条(その他) 本契約が満了したとき又は中途解約されたときは,A又はBは,原告に対し,G等土地又はH土地を明け渡すこととする。

    (キ) 第7条(その他) 上記に定めのない事項については,その都度別途協議するものとする。

   エ 原告は,平成26年1月25日頃,Aに対しG等土地を引き渡し,また,Bに対してH土地を引き渡した(甲1,2,弁論の全趣旨)。

  (5) 本件各贈与契約

    原告は,平成26年1月25日,A又はBとの間で,G等土地上に敷設されたアスファルト舗装・車止め・フェンス又はH土地上に敷設されたアスファルト舗装(以下,これらを併せて「本件舗装等」という。)を贈与する旨の各贈与契約を締結した(乙8の1・2,33の1・2。上記各贈与契約を「本件各贈与契約」といい,本件各贈与契約に係る各贈与契約書を「本件各贈与契約書」という。ただし,本件各贈与契約の効力等については,後記争点(3)のとおり当事者間に争いがある。)。

    なお,本件各贈与契約書には,贈与物件(本件舗装等)上において営む「駐車場賃貸借契約」については,A又はBがその地位を引き継ぐこととし,原告は,「当該賃借人各人からの預り保証金全額」をA又はBに現金で引き渡した旨の記載がされ,原告とA又はBの署名・押印がされている。

  (6) A又はBが締結した本件各賃貸借契約・本件各駐車場管理契約

   ア G等土地

    (ア) G等土地賃貸借契約

      Aは,平成26年2月1日以降,G等土地の各区画の賃借人が賃貸借契約の更新又は変更をする際,それらの賃借人との間で,賃貸人をAとする賃貸借契約又は賃貸借変更契約を締結した(甲5の1~8。以下,これらの契約を「G等土地賃貸借契約」という。)。

    (イ) G等駐車場管理契約

      Aは,平成26年1月30日,Cとの間で,委任者を原告としていたG等土地の駐車場管理契約(上記(2)ウ(イ))について,同年2月1日から,委任者をAに変更し,賃料等の振込先をA名義の預金口座に変更する旨の契約を締結した(甲3。以下,この契約を「G等駐車場管理契約」といい,G等駐車場管理契約に係る契約書を「G等駐車場管理契約書」という。)。

   イ H土地

    (ア) H土地賃貸借契約

      Bは,平成26年1月31日,Iとの間で,H土地の賃貸人をB,賃借人をIとし,賃貸借期間を同年2月1日から2年とし,以後2年ごとに更新する旨の賃貸借変更契約を締結した(甲6,乙21。以下,この契約を「H土地賃貸借契約」といい,G等土地賃貸借契約と併せて「本件各賃貸借契約」という。)。

    (イ) H駐車場管理契約

      Bは,平成26年2月1日付けで,Dの間で,委任者を原告としていたH土地の駐車場管理契約(上記(2)エ(イ))について,同日から,委任者をBに変更し,賃料等の振込先をB名義の預金口座に変更する旨の契約を締結した(甲8,乙22。以下,この契約を「H駐車場管理契約」といい,H駐車場管理契約に係る契約書を「H駐車場管理契約書」という。また,G等駐車場管理契約とH駐車場管理契約を併せて「本件各駐車場管理契約」といい,G等駐車場管理契約書とH駐車場管理契約書を併せて「本件各駐車場管理契約書」という。さらに,本件各使用貸借契約,本件各贈与契約,本件各賃貸借契約及び本件各駐車場管理契約を「本件各取引」という。)。

  (7) 本件確定申告

    原告は,平成27年3月9日,枚方税務署長に対し,平成26年分の所得税等について,別表「課税の経緯」の「確定申告」欄のとおりの金額等を記載した確定申告書(以下「本件確定申告書」といい,本件確定申告書による確定申告を「本件確定申告」という。)を提出した。原告は,本件確定申告の際に提出した収支内訳書の「不動産所得の収入の内訳」欄において,本件各土地の賃貸契約期間が,いずれも平成26年1月の1か月間であるとして不動産所得に係る収入を算定していた。(乙9)

  (8) 本件調査

    枚方税務署の調査担当者(以下「本件調査担当者」という。)は,平成27年9月8日,原告の所得税等の調査のため,原告の自宅を訪問して原告と面談をし,その後も原告,A及びF税理士と電話や面談をするなどして調査を行った(以下,原告の平成26年分の所得税等についての調査を「本件調査」という。)(乙11,19)。

 

 

 

控訴審判決・腹判決取消・国側敗訴取消

              所得税更正処分等取消請求控訴事件

【事件番号】      大阪高等裁判所判決/令和3年(行コ)第64号

【判決日付】      令和4年7月20日

【掲載誌】        LLI/DB 判例秘書登載

【評釈論文】      T&Amaster970号24頁

             税務事例55巻5号86頁

             税研229号102頁

             税経通信78巻7号157頁

 

       主   文

 

 1 原判決中、控訴人敗訴部分を取り消す。

 2 上記取消しにかかる被控訴人らの請求をいずれも棄却する。

 3 訴訟費用は、第1、2審とも、被控訴人らの負担とする。

 

       事実及び理由

 

第1 当事者の求めた裁判

 1 控訴の趣旨

   主文と同旨

 2 控訴の趣旨に対する答弁

   本件控訴を棄却する。

第2 事案の概要

 1 控訴に至る経緯等

  (1)本件は、承継前一審原告A(以下「亡A」という。)が、平成26年分の所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」と総称する。)について、収入の計上の誤り等を理由とする更正の請求(以下「本件更正請求」という。)をしたところ、処分行政庁から、更正すべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」という。)を受けたほか、亡Aの子である被控訴人X1(以下「被控訴人X1」という。)及び同X2(以下「被控訴人X2」という。)を賃貸人として第三者に賃貸された亡A所有土地の賃料に係る収益は亡Aに帰属するとして、増額更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」といい、本件更正処分と併せて「本件更正処分等」という。また、本件通知処分と本件更正処分等を併せて「本件各処分」という。)を受けたことから、控訴人に対し、本件各処分の取消しを求める事案である。

  (2)原審は、本件訴えのうち、①本件通知処分の取消請求に係る部分及び②本件更正処分のうち更正の請求額を超えない部分(不動産所得の金額1804万5491円及び納付すべき税額(予定納税額控除前のもの)472万7600円を超えない部分)の取消請求に係る部分について、いずれも訴えの利益を欠く不適法なものであるとして却下し、③本件更正処分の取消請求のうち本件更正請求における請求額(不動産所得の金額1804万5491円、納付すべき税額(予定納税額控除前のもの)472万7600円)を超える部分及び本件賦課決定処分の取消請求についてはこれらを認容する判決(原判決)を言い渡したところ、控訴人が敗訴部分を不服として控訴した。