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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

公職選挙法129条・138条・142条の各規定と憲法21条

 

公職選挙法違反被告事件

【事件番号】 最高裁判所大法廷判決/昭和43年(あ)第2265号

【判決日付】 昭和44年4月23日

【判示事項】 公職選挙法129条・138条・142条の各規定と憲法21条

【判決要旨】 公職選挙法129条・138条・142条の各規定は、憲法21条に違反しない。

【参照条文】 公職選挙法129

       公職選挙法138

       公職選挙法142

       憲法21

【掲載誌】  最高裁判所刑事判例集23巻4号235頁

 

憲法

第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

② 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

 

公職選挙法

(選挙運動の期間)

第百二十九条 選挙運動は、各選挙につき、それぞれ第八十六条第一項から第三項まで若しくは第八項の規定による候補者の届出、第八十六条の二第一項の規定による衆議院名簿の届出、第八十六条の三第一項の規定による参議院名簿の届出(同条第二項において準用する第八十六条の二第九項の規定による届出に係る候補者については、当該届出)又は第八十六条の四第一項、第二項、第五項、第六項若しくは第八項の規定による公職の候補者の届出のあつた日から当該選挙の期日の前日まででなければ、することができない。

 

(戸別訪問)

第百三十八条 何人も、選挙に関し、投票を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて戸別訪問をすることができない。

2 いかなる方法をもつてするを問わず、選挙運動のため、戸別に、演説会の開催若しくは演説を行うことについて告知をする行為又は特定の候補者の氏名若しくは政党その他の政治団体の名称を言いあるく行為は、前項に規定する禁止行為に該当するものとみなす。

 

(文書図画の頒布)

第百四十二条 衆議院(比例代表選出)議員の選挙以外の選挙においては、選挙運動のために使用する文書図画は、次の各号に規定する通常葉書及びビラのほかは、頒布することができない。この場合において、ビラについては、散布することができない。

一 衆議院(小選挙区選出)議員の選挙にあつては、候補者一人について、通常葉書 三万五千枚、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に届け出た二種類以内のビラ 七万枚

一の二 参議院(比例代表選出)議員の選挙にあつては、公職の候補者たる参議院名簿登載者(第八十六条の三第一項後段の規定により優先的に当選人となるべき候補者としてその氏名及び当選人となるべき順位が参議院名簿に記載されている者を除く。)一人について、通常葉書 十五万枚、中央選挙管理会に届け出た二種類以内のビラ 二十五万枚

二 参議院(選挙区選出)議員の選挙にあつては、候補者一人について、当該選挙区の区域内の衆議院(小選挙区選出)議員の選挙区の数が一である場合には、通常葉書 三万五千枚、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会(参議院合同選挙区選挙については、当該選挙に関する事務を管理する参議院合同選挙区選挙管理委員会。以下この号において同じ。)に届け出た二種類以内のビラ 十万枚、当該選挙区の区域内の衆議院(小選挙区選出)議員の選挙区の数が一を超える場合には、その一を増すごとに、通常葉書 二千五百枚を三万五千枚に加えた数、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に届け出た二種類以内のビラ 一万五千枚を十万枚に加えた数(その数が三十万枚を超える場合には、三十万枚)

三 都道府県知事の選挙にあつては、候補者一人について、当該都道府県の区域内の衆議院(小選挙区選出)議員の選挙区の数が一である場合には、通常葉書 三万五千枚、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に届け出た二種類以内のビラ 十万枚、当該都道府県の区域内の衆議院(小選挙区選出)議員の選挙区の数が一を超える場合には、その一を増すごとに、通常葉書 二千五百枚を三万五千枚に加えた数、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に届け出た二種類以内のビラ 一万五千枚を十万枚に加えた数(その数が三十万枚を超える場合には、三十万枚)

四 都道府県の議会の議員の選挙にあつては、候補者一人について、通常葉書 八千枚、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に届け出た二種類以内のビラ 一万六千枚

五 指定都市の選挙にあつては、長の選挙の場合には、候補者一人について、通常葉書 三万五千枚、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に届け出た二種類以内のビラ 七万枚、議会の議員の選挙の場合には、候補者一人について、通常葉書 四千枚、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に届け出た二種類以内のビラ 八千枚

六 指定都市以外の市の選挙にあつては、長の選挙の場合には、候補者一人について、通常葉書 八千枚、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に届け出た二種類以内のビラ 一万六千枚、議会の議員の選挙の場合には、候補者一人について、通常葉書 二千枚、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に届け出た二種類以内のビラ 四千枚

七 町村の選挙にあつては、長の選挙の場合には、候補者一人について、通常葉書 二千五百枚、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に届け出た二種類以内のビラ 五千枚、議会の議員の選挙の場合には、候補者一人について、通常葉書 八百枚、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に届け出た二種類以内のビラ 千六百枚

2 前項の規定にかかわらず、衆議院(小選挙区選出)議員の選挙においては、候補者届出政党は、その届け出た候補者に係る選挙区を包括する都道府県ごとに、二万枚に当該都道府県における当該候補者届出政党の届出候補者の数を乗じて得た数以内の通常葉書及び四万枚に当該都道府県における当該候補者届出政党の届出候補者の数を乗じて得た数以内のビラを、選挙運動のために頒布(散布を除く。)することができる。ただし、ビラについては、その届け出た候補者に係る選挙区ごとに四万枚以内で頒布するほかは、頒布することができない。

3 衆議院(比例代表選出)議員の選挙においては、衆議院名簿届出政党等は、その届け出た衆議院名簿に係る選挙区ごとに、中央選挙管理会に届け出た二種類以内のビラを、選挙運動のために頒布(散布を除く。)することができる。

4 衆議院(比例代表選出)議員の選挙においては、選挙運動のために使用する文書図画は、前項の規定により衆議院名簿届出政党等が頒布することができるビラのほかは、頒布することができない。

5 第一項の通常葉書は無料とし、第二項の通常葉書は有料とし、政令で定めるところにより、日本郵便株式会社において選挙用である旨の表示をしたものでなければならない。

6 第一項から第三項までのビラは、新聞折込みその他政令で定める方法によらなければ、頒布することができない。

7 第一項及び第二項のビラは、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会(参議院比例代表選出議員の選挙については中央選挙管理会、参議院合同選挙区選挙については当該選挙に関する事務を管理する参議院合同選挙区選挙管理委員会。以下この項において同じ。)の定めるところにより、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会の交付する証紙を貼らなければ頒布することができない。この場合において、第二項のビラについて当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会の交付する証紙は、当該選挙の選挙区ごとに区分しなければならない。

8 第一項のビラは長さ二十九・七センチメートル、幅二十一センチメートルを、第二項のビラは長さ四十二センチメートル、幅二十九・七センチメートルを、超えてはならない。

9 第一項から第三項までのビラには、その表面に頒布責任者及び印刷者の氏名(法人にあつては名称)及び住所を記載しなければならない。この場合において、第一項第一号の二のビラにあつては当該参議院名簿登載者に係る参議院名簿届出政党等の名称及び同号のビラである旨を表示する記号を、第二項のビラにあつては当該候補者届出政党の名称を、第三項のビラにあつては当該衆議院名簿届出政党等の名称及び同項のビラである旨を表示する記号を、併せて記載しなければならない。

10 衆議院(小選挙区選出)議員又は参議院議員の選挙における公職の候補者は、政令で定めるところにより、政令で定める額の範囲内で、第一項第一号から第二号までの通常葉書及びビラを無料で作成することができる。この場合においては、第百四十一条第七項ただし書の規定を準用する。

11 地方公共団体の議会の議員又は長の選挙については、地方公共団体は、前項の規定(参議院比例代表選出議員の選挙に係る部分を除く。)に準じて、条例で定めるところにより、公職の候補者の第一項第三号から第七号までのビラの作成について、無料とすることができる。

12 選挙運動のために使用する回覧板その他の文書図画又は看板(プラカードを含む。以下同じ。)の類を多数の者に回覧させることは、第一項から第四項までの頒布とみなす。ただし、第百四十三条第一項第二号に規定するものを同号に規定する自動車又は船舶に取り付けたままで回覧させること、及び公職の候補者(衆議院比例代表選出議員の選挙における候補者で当該選挙と同時に行われる衆議院小選挙区選出議員の選挙における候補者である者以外のもの並びに参議院比例代表選出議員の選挙における候補者たる参議院名簿登載者で第八十六条の三第一項後段の規定により優先的に当選人となるべき候補者としてその氏名及び当選人となるべき順位が参議院名簿に記載されているものを除く。)が第百四十三条第一項第三号に規定するものを着用したままで回覧することは、この限りでない。

13 衆議院議員の総選挙については、衆議院の解散に関し、公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。)の氏名又はこれらの者の氏名が類推されるような事項を表示して、郵便等又は電報により、選挙人にあいさつする行為は、第一項の禁止行為に該当するものとみなす。

 

公正証書の内容となる法律行為の法令違反等に関する公証人の調査義務

 

 

損害賠償請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/平成6年(オ)第1886号

【判決日付】      平成9年9月4日

【判示事項】      公正証書の内容となる法律行為の法令違反等に関する公証人の調査義務

【判決要旨】      公証人は、法律行為についての公正証書を作成するに当たり、聴取した陳述により知り得た事実など自ら実際に経験した事実及び当該嘱託と関連する過去の職務執行の過程において実際に経験した事実を資料として審査をすれば足り、その結果、法律行為の法令違反、無効及び無能力による取消し等の事由が存在することについて具体的な疑いが生じた場合に限って、嘱託人などの関係人に対して必要な説明を促すなどの積極的な調査をすべき義務を負う。

【参照条文】      公証人法26

             公証人法執行規則(昭和24年法務府令第9号)13

             国家賠償法1-1

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集51巻8号3718頁

 

公証人法

第四章 証書ノ作成

第二十六条 公証人ハ法令ニ違反シタル事項、無効ノ法律行為及行為能力ノ制限ニ因リテ取消スコトヲ得ヘキ法律行為ニ付証書ヲ作成スルコトヲ得ス

 

公証人法執行規則

第十三条 公証人は、法律行為につき証書を作成し、又は認証を与える場合に、その法律行為が有効であるかどうか、当事者が相当の考慮をしたかどうか又はその法律行為をする能力があるかどうかについて疑があるときは、関係人に注意をし、且つ、その者に必要な説明をさせなければならない。

2 公証人が法律行為でない事実について証書を作成する場合に、その事実により影響を受けるべき私権の関係について疑があるときも、前項と同様とする。

 

国家賠償法

第一条 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

② 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。

 

事案の概要

 一 本件は、法律行為に係る公正証書作成の際の法律行為の内容の適法性に関する公証人の審査権、審査義務について、最高裁として初めての判断をしたものである。

 原告は、公正証書の内容の法令違背につき公証人に過失があるとして国家賠償を求める。

本件公正証書は、K協同組合を債権者、A(原告の子)を債務者、原告外一名を連帯保証人とする執行証書であり、AがK協同組合の加盟店から買い受けた衣類等の買掛代金268万2040円を準消費貸借の目的とし、元金分割払、利息年1割5分、遅延損害金3割という内容であった。

準消費貸借の旧債務のうち210万3195円は割賦販売法30条の3の適用を受ける立替払契約に基づくもので、これを準消費貸借にしても同条の適用があると解されるから、法定利率を上回る損害金等の約定は同条に違反していた。

 原判決は、公証人には、本件公正証書作成に用いられた公正証書作成嘱託委任状定型用紙についてK協同組合から司法書士を介して相談を受けた際に組合と顧客の取引関係について資料を提出させてこれを把握する義務があり、さらに、本件嘱託を受けた際に旧債務(加盟店から買い受けた衣類等の買掛代金)に同条の規制を受ける債務がないか確認することにより同条違反の本件公正証書の作成を避けることができたとして、これと因果関係のある損害4万円(K協同組合に対する請求異議訴訟の弁護士費用及び慰謝料)の賠償を被告国に命じた。

 二 本判決は、まず「公証人が公正証書の作成の嘱託を受けた場合における審査の対象は、嘱託手続の適法性にとどまるものではなく、公正証書に記載されるべき法律行為等の内容の適法性についても及ぶ」と説示し、公証人の調査義務の判断基準について判決要旨のとおり判示した上で、本件においては同条違反についての具体的疑いが生じたとはいえず、旧債務の内容等について積極的に調査する義務があったとはいえないと判断して、原判決中の被告国の敗訴部分を破棄して、原告の請求を全部棄却すべきものとした。

不動産の取得時効完成後に当該不動産の譲渡を受けて所有権移転登記を了した者が背信的悪意者に当たる場合

 

 

              所有権確認請求本訴,所有権確認等請求反訴,土地所有権確認等請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/平成17年(受)第144号

【判決日付】      平成18年1月17日

【判示事項】      不動産の取得時効完成後に当該不動産の譲渡を受けて所有権移転登記を了した者が背信的悪意者に当たる場合

【判決要旨】      甲が時効取得した不動産について,その取得時効完成後に乙が当該不動産の譲渡を受けて所有権移転登記を了した場合において,乙が,当該不動産の譲渡を受けた時に,甲が多年にわたり当該不動産を占有している事実を認識しており,甲の登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情が存在するときは,乙は背信的悪意者に当たる。

【参照条文】      民法162

             民法177

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集60巻1号27頁

 

民法

(所有権の取得時効)

第百六十二条 二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。

2 十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。

 

(不動産に関する物権の変動の対抗要件)

第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

 

事案の概要

 

 1 本件は,甲が専用通路として使用占有してきた土地について,これを時効取得した甲と,その取得時効の完成後に譲渡を受けて所有権移転登記を了した乙との間で,所有権取得の優劣が争われた事件である。

 2 本件事案の概略は,次のとおりである。

(1)乙は,鮮魚店を開業する目的で,徳島県鳴門市内の土地を購入し,所有権移転登記を了し,また,その間口を広げる目的で,その隣地である本件土地(地目ため池,地積52平方メートル)等を購入して所有権移転登記を了した。

(2)甲は,本件土地の西側に位置する土地を所有し,同地上に本件建物を所有している。

(3)本件通路部分は,コンクリート舗装がされており,現在,甲が公道(国道)から本件建物への進入路として利用している。本件通路部分は,甲の前主らが,乙による本件土地等の購入の22年前から専用進入路として使用占有し,9年前にコンクリート舗装したものである。

(4)原審の認定によれば,本件通路部分の大半は,乙の購入した本件土地等に当たる。

 3 本件本訴請求事件は,乙が,甲に対し,本件通路部分の一部が本件土地に当たると主張して,その所有権の確認を求めるとともに,コンクリート舗装の撤去を求めたものである。本件反訴請求事件は,甲が,乙に対し,本件通路部分について,主位的に所有権の確認を求め,予備的に通行地役権の確認を求めたものである。本件訴訟において,甲は,20年間本件通路部分を占有したことにより所有権又は通行地役権を時効取得したと主張したところ,乙は,甲の登記の欠缺を主張し,これに対し,甲は,乙が背信的悪意者に当たると主張した。

 4 原審は,「乙は,甲による取得時効の完成後に本件土地等を購入したものであるが,購入時,甲が本件通路部分をその専用進入路としてコンクリート舗装した状態で利用していること,甲が本件通路部分を利用できないとすると,公道からの進入路を確保することが著しく困難となることを知っていた。また,乙において調査をすれば甲が本件通路部分を時効取得していることを容易に知り得た」として,乙は甲が時効取得した所有権について登記の欠缺を主張する正当な利益を有しないと判断し,乙の本訴請求をほぼ全部棄却し,甲の反訴請求を全部認容した。

 5 乙から上告受理申立てがあり,論旨は,民法177条の解釈の誤り,判例違反等をいうものである。

 6 本判決は,乙において,甲が取得時効の成立要件を充足していることをすべて具体的に認識していなくても,背信的悪意者と認められる場合があるというベきであるが,その場合であっても,少なくとも,乙が甲による多年にわたる占有継続の事実を認識している必要があると解すべきであるとして,時効取得についての背信的悪意者に当たる要件について,「甲が時効取得した不動産について,その取得時効完成後に乙が当該不動産の譲渡を受けて所有権移転登記を了した場合において,乙が,当該不動産の譲渡を受けた時点において,甲が多年にわたり当該不動産を占有している事実を認識しており,甲の登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情が存在するときは,乙は背信的悪意者に当たるというべきである」と説示したものである。そして,「原審は,乙が甲による多年にわたる占有継続の事実を認識していたことを確定せず,単に,乙が,本件土地等の購入時,甲が本件通路部分を通路として使用しており,これを通路として使用できないと公道へ出ることが困難となることを知っていたこと,乙が調査をすれば甲による時効取得を容易に知り得たことをもって,乙が甲の時効取得した本件通路部分の所有権の登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する第三者に当たらないとしたのであるから,この原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある」として,原判決を破棄したものである。

取引相場のない株式の譲渡に係る所得税法59条1項所定の「その時における価額」につき,配当還元価額によって評価した原審の判断に違法があるとされた事例

 

 

              所得税更正処分取消等請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/平成30年(行ヒ)第422号

【判決日付】      令和2年3月24日

【判示事項】      取引相場のない株式の譲渡に係る所得税法59条1項所定の「その時における価額」につき,配当還元価額によって評価した原審の判断に違法があるとされた事例

【判決要旨】      取引相場のない株式の譲渡に係る所得税法59条1項所定の「その時における価額」につき、当該株式の譲受人が財産評価基本通達においてその株主が取得した株式は配当還元価額によって評価するものとされている株主に該当することを理由として、配当還元価額によって評価した額であるとした原審の判断には、同項の解釈適用を誤った違法がある。

【参照条文】      所得税法59-1

【掲載誌】        最高裁判所裁判集民事263号63頁

             裁判所時報1745号3頁

             判例タイムズ1478号21頁

             金融・商事判例1606号38頁

             金融・商事判例1602号10頁

             判例時報2467号3頁

             金融法務事情2155号66頁

 

所得税法

(贈与等の場合の譲渡所得等の特例)

第五十九条 次に掲げる事由により居住者の有する山林(事業所得の基因となるものを除く。)又は譲渡所得の基因となる資産の移転があつた場合には、その者の山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があつたものとみなす。

一 贈与(法人に対するものに限る。)又は相続(限定承認に係るものに限る。)若しくは遺贈(法人に対するもの及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものに限る。)

二 著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡(法人に対するものに限る。)

2 居住者が前項に規定する資産を個人に対し同項第二号に規定する対価の額により譲渡した場合において、当該対価の額が当該資産の譲渡に係る山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算上控除する必要経費又は取得費及び譲渡に要した費用の額の合計額に満たないときは、その不足額は、その山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算上、なかつたものとみなす。

 

 

所得税法施行令

(時価による譲渡とみなす低額譲渡の範囲)

第百六十九条 法第五十九条第一項第二号(贈与等の場合の譲渡所得等の特例)に規定する政令で定める額は、同項に規定する山林又は譲渡所得の基因となる資産の譲渡の時における価額の二分の一に満たない金額とする。

 

 1 事案の概要

 本件は,法人に対する株式の譲渡につき,譲渡人の相続人である被上告人らが,当該譲渡に係る譲渡所得の収入金額を譲渡代金額(1株当たり75円)と同額として所得税の申告をしたところ,当該代金額が所得税法59条1項2号に定める著しく低い価額の対価に当たるとして,更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を受けたことから,これらの各処分(東京国税局長の決定により一部取り消された後のもの。以下「本件各更正処分」という。)の取消し(更正処分については修正申告又は先行する更正処分の金額を超える部分)を求める事案である。

 争点は,当該株式の当該譲渡の時における価額であり,上告人(国)はいわゆる類似業種比準方式によって算定した1株当たり2505円を,被上告人らはいわゆる配当還元方式によって算定した1株当たり75円(譲渡における代金額と同額)を主張した。

共有に属する要役地のために地役権設定登記手続を求める訴えと固有必要的共同訴訟

 

 

              土地所有権移転登記手続請求本訴、土地明渡請求反訴事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/平成3年(オ)第1684号

【判決日付】      平成7年7月18日

【判示事項】      共有に属する要役地のために地役権設定登記手続を求める訴えと固有必要的共同訴訟

【判決要旨】      共有に属する要役地のために地役権設定登記手続を求める訴えは、固有必要的共同訴訟に当たらない。

【参照条文】      民事訴訟法62

             民法252

             民法280

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集49巻7号2684頁

             最高裁判所裁判集民事176号463頁

             裁判所時報1151号234

 

民法

(共有物の管理)

第二百五十二条 共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。

2 裁判所は、次の各号に掲げるときは、当該各号に規定する他の共有者以外の共有者の請求により、当該他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い、その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができる。

一 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。

二 共有者が他の共有者に対し相当の期間を定めて共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべき旨を催告した場合において、当該他の共有者がその期間内に賛否を明らかにしないとき。

3 前二項の規定による決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。

4 共有者は、前三項の規定により、共有物に、次の各号に掲げる賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(以下この項において「賃借権等」という。)であって、当該各号に定める期間を超えないものを設定することができる。

一 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等 十年

二 前号に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権等 五年

三 建物の賃借権等 三年

四 動産の賃借権等 六箇月

5 各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。

 

(地役権の内容)

第二百八十条 地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。ただし、第三章第一節(所有権の限界)の規定(公の秩序に関するものに限る。)に違反しないものでなければならない。

 

民事訴訟法

(共同訴訟の要件)

第三十八条 訴訟の目的である権利又は義務が数人について共通であるとき、又は同一の事実上及び法律上の原因に基づくときは、その数人は、共同訴訟人として訴え、又は訴えられることができる。訴訟の目的である権利又は義務が同種であって事実上及び法律上同種の原因に基づくときも、同様とする。

(共同訴訟人の地位)

第三十九条 共同訴訟人の一人の訴訟行為、共同訴訟人の一人に対する相手方の訴訟行為及び共同訴訟人の一人について生じた事項は、他の共同訴訟人に影響を及ぼさない。

(必要的共同訴訟)

第四十条 訴訟の目的が共同訴訟人の全員について合一にのみ確定すべき場合には、その一人の訴訟行為は、全員の利益においてのみその効力を生ずる。

2 前項に規定する場合には、共同訴訟人の一人に対する相手方の訴訟行為は、全員に対してその効力を生ずる。

3 第一項に規定する場合において、共同訴訟人の一人について訴訟手続の中断又は中止の原因があるときは、その中断又は中止は、全員についてその効力を生ずる。

4 第三十二条第一項の規定は、第一項に規定する場合において、共同訴訟人の一人が提起した上訴について他の共同訴訟人である被保佐人若しくは被補助人又は他の共同訴訟人の後見人その他の法定代理人のすべき訴訟行為について準用する。

 

第3章 改正の背景

2021年4月21日、参議院で「民法等の一部を改正する法律」と「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が可決成立し、4月28日に公布された。

これらの法律(以下「改正法」という)は、「所有者不明土地問題の解消」を主要なテーマとして行われた法制審議会民法・不動産登記法部会(以下「法制審部会」「部会」と略すことがある)での約2年にわたる議論を踏まえてできあがったものであり、不動産登記にかかる手続法レベルの改正にとどまらず、長らく抜本的な改正がされていなかった民法の物権法分野の規定にも大きな変更を加える内容となっている。

 

今回の改正案を審議した法制審議会の資料によれば、法務省の調査によると、最後の登記から50年以上経過している土地の割合は、大都市で約6.6%、中小都市・中山間地域においては約26.6%にも上っています。また不動産登記簿のみでは所有者の所在が確認できない土地の割合が約20.1%にもなっており、これは北海道の面積に匹敵する規模になっています。

 

このようなことから、土地の円滑・適正な利用に支障を来しており、今後、相続が繰り返される中で、この問題がますます深刻になるおそれのあることから、所有者不明地問題の解決は、喫緊の課題とされてきました。

 

今回の法改正は、以上の様な所有者不明地に関する諸々の問題を解決するためになされたものと言えます。

 

そのために、今回の改正は、その範囲が比較的広く、民法の改正部分としては、①相隣関係(お隣さんとの土地の利用に関する諸問題)の見直し、②共有物を利用するためには、共有者を個別に探索して交渉する必要があり、共有者の一部が不明である場合には、その者の同意をとることができず、土地の利用・処分が困難になることなどから、共有制度の見直し、③所有者不明土地の合理化を図るための財産管理制度の見直し、④現行法上は遺産分割に期間制限がなく,相続発生後に遺産分割がされずに,遺産共有状態が継続し,何回も相続が発生した場合に権利関係が複雑化し、また遺産分割がされないために相続登記がされないまま放置されることがあることから、遺産分割を促進するための方策の導入等がなされています。 

 

登録を受けていない自動車と民法192条(即時取得)

最高裁判所第2小法廷判決/昭和45年(オ)第827号

昭和45年12月4日

損害賠償請求事件

【判示事項】    登録を受けていない自動車と民法192条(即時取得)

【判決要旨】    道路運送車両法による登録を受けていない自動車については、民法192条の規定の適用がある。

【参照条文】    民法192

          道路運送車両法

        道路運送車両法(昭和44年法律第68号による改正前のもの)16

【掲載誌】     最高裁判所民事判例集24巻13号1987頁

 

民法

(即時取得)

第百九十二条 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。

 

道路運送車両法

第五条 登録を受けた自動車の所有権の得喪は、登録を受けなければ、第三者に対抗することができない。

2 前項の規定は、自動車抵当法(昭和二十六年法律第百八十七号)第二条但書に規定する大型特殊自動車については、適用しない。

 

(一時抹消登録)

第十六条 登録自動車の所有者は、前二条に規定する場合を除くほか、その自動車を運行の用に供することをやめたときは、一時抹消登録の申請をすることができる。

2 一時抹消登録を受けた自動車(国土交通省令で定めるものを除く。)の所有者は、次に掲げる場合には、その事由があつた日(当該事由が使用済自動車の解体である場合にあつては、解体報告記録がなされたことを知つた日)から十五日以内に、国土交通省令で定めるところにより、その旨を国土交通大臣に届け出なければならない。

一 当該自動車が滅失し、解体し(整備又は改造のために解体する場合を除く。)、又は自動車の用途を廃止したとき。

二 当該自動車の車台が当該自動車の新規登録の際存したものでなくなつたとき。

3 第十五条第二項及び第三項の規定は、使用済自動車の解体に係る前項の規定による届出をする場合について準用する。この場合において、これらの規定中「登録自動車」とあるのは、「一時抹消登録を受けた自動車」と読み替えるものとする。

4 一時抹消登録を受けた自動車(国土交通省令で定めるものを除く。)の所有者は、その自動車を輸出しようとするときは、当該輸出の予定日から国土交通省令で定める期間さかのぼつた日から当該輸出をする時までの間に、国土交通省令で定めるところにより、国土交通大臣にその旨の届出をし、かつ、次項の規定による輸出予定届出証明書の交付を受けなければならない。

5 国土交通大臣は、前項の規定による届出があつたときは、当該届出をした者に対し、当該自動車について輸出が予定されている旨が記載され、かつ、当該輸出の予定日までを有効期間とする輸出予定届出証明書を交付するものとする。

6 前条第三項及び第四項の規定は、一時抹消登録を受けた自動車の輸出に係る第四項の規定による届出があつた場合について準用する。この場合において、同条第三項中「輸出抹消仮登録証明書」とあるのは「輸出予定届出証明書」と、「輸出抹消登録を」とあるのは「その旨を自動車登録ファイルに記録」と、同条第四項中「第二項」とあるのは「次条第五項」と、「輸出抹消仮登録証明書」とあるのは「輸出予定届出証明書」と読み替えるものとする。

7 国土交通大臣は、前項において準用する前条第四項の規定その他の事由により輸出予定届出証明書の返納を受けたときは、その旨を自動車登録ファイルに記録するものとする。

 

民法761条と夫婦相互の代理権

 

 

              土地建物所有権移転登記抹消登記手続請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和43年(オ)第971号

【判決日付】      昭和44年12月18日

【判示事項】      1、民法761条と夫婦相互の代理権

             2、民法761条と表見代理

【判決要旨】      1、民法761条は、夫婦が相互に日常の家事に関する法律行為につき他方を代理する権限を有することをも規定しているものと解するのが相当である。

             2、夫婦の一方が民法761条所定の日常の家事に関する代理権の範囲を越えて第三者と法律行為をした場合においては、その代理権を基礎として一般的に同法110条所定の表見代理の成立を肯定すべきではなく、その越権行為の相手方である第三者においてその行為がその夫婦の日常の家事に関する法律行為に属すると信ずるにつき正当の理由のあるときにかぎり、同条の趣旨を類推して第三者の保護をはかるべきである。

【参照条文】      民法761

             民法110

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集23巻12号2476頁

 

民法

(代理権授与の表示による表見代理等)

第百九条 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。

2 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。

(権限外の行為の表見代理)

第百十条 前条第一項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。

 

(日常の家事に関する債務の連帯責任)

第七百六十一条 夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。

 

 

控訴人会社と納税者(控訴人会社の代表取締役)との間で譲渡された甲銀行の株式の時価につき、課税庁が甲銀行の持株会の買取価格または甲銀行の単位未満株の買取価格を基準として認定した価額は、譲渡当時の客観的な交換価値を上回るものではないとされた事例(原審判決引用)

 

 

              更正処分取消等請求控訴事件

【事件番号】      福岡高等裁判所宮崎支部判決/平成5年(行コ)第3号

【判決日付】      平成6年2月28日

【判示事項】      (1) 控訴人会社と納税者(控訴人会社の代表取締役)との間で譲渡された甲銀行の株式の時価につき、課税庁が甲銀行の持株会の買取価格または甲銀行の単位未満株の買取価格を基準として認定した価額は、譲渡当時の客観的な交換価値を上回るものではないとされた事例(原審判決引用)

             (2) 時価の意義(原審判決引用)

             (3) 時価が客観的な交換価値であることを考えれば、納税者が資本金を全額出資した控訴人会社と当該納税者との関係は、価格を任意に決定できる事情とはなりえても、その間の取引において、時価が一般の場合より低く定まるとする根拠とはならないとされた事例(原審判決引用)

             (4) 本件株式の譲渡は、会社とその代表者との間で行われたものであり、公開の市場において行われたものではないから、その譲渡が一四万株という多量のものであったとしても、その譲渡は客観的な交換価値である時価の形成には関係なく行われたものと認められる、とされた事例(原審判決引用)

             (5) 法人税法二二条二項(無償取引に係る収益の益金計上)の規定の趣旨(原審判決引用)

             (6) 法人税法二二条二項の無償譲渡には時価より低い価額による取引が含まれるとされた事例(原審判決引用)

             (7) 法人税法二二条二項は、無償取引からも収益が生ずることを擬制した創設的規定であり、外部からの経済的な価値の流入の有無は問題とならないから、本件株式の譲渡の対価は、相殺した債務の減少額であり、収益がないことをもって益金に算入される金額がない、ということはできないとされた事例(原審判決引用)

             (8) 法人税法二二条二項の適用は、単に時価より低い価格で譲渡されただけではなく、租税回避を目的とした場合か、異常に譲渡価格が低く、経済取引として不合理、不自然な場合に限られるとの控訴人会社らの主張が、同項の規定の趣旨から採用できないとされた事例(原審判決引用)

【判決要旨】      (1) 省略

             (2) 時価とは、正常な取引において形成された価額、すなわち客観的な交換価値をいうと解される。

             (3)・(4) 省略

             (5) 資産譲渡にかかる法人税は、法人が資産を保有していることについて当然に課税されるのではなく、その資産が有償譲渡された場合に顕在化する資産の値上がり益に着目して清算的に課税される性質のものであり、無償譲渡の場合には、外部からの経済的な価値の流入はないが、法人は譲渡時まで当該資産を保有していたことにより、有償譲渡の場合に値上がり益として顕在化する利益を保有していたものと認められ、外部からの経済的な価値の流入がないことのみをもって、値上がり益として顕在化する利益に対して課税されないということは、税負担の公平の見地から認められない。したがって、法人税法二二条二項は、正常な対価で取引を行った者との間の負担の公平を維持するために、無償取引からも収益が生ずることを擬制した創設的な規定と解される。

             (6) 法人税法二二条二項の趣旨及び同法三七条六項が資産の低額譲渡の場合に譲渡価額と時価との差額を寄付金に含めていることからすれば、法人税法二二条二項の無償譲渡には時価より低い価額による取引が含まれるものと解するのが相当である。

             (7)・(8) 省略

【掲載誌】        税務訴訟資料200号815頁

 

法人税法

第二款 各事業年度の所得の金額の計算の通則

第二十二条 内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする。

2 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。

3 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。

一 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額

二 前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額

三 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの

4 第二項に規定する当該事業年度の収益の額及び前項各号に掲げる額は、別段の定めがあるものを除き、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて計算されるものとする。

5 第二項又は第三項に規定する資本等取引とは、法人の資本金等の額の増加又は減少を生ずる取引並びに法人が行う利益又は剰余金の分配(資産の流動化に関する法律第百十五条第一項(中間配当)に規定する金銭の分配を含む。)及び残余財産の分配又は引渡しをいう。

 

(寄附金の損金不算入)

第三十七条 内国法人が各事業年度において支出した寄附金の額(次項の規定の適用を受ける寄附金の額を除く。)の合計額のうち、その内国法人の当該事業年度終了の時の資本金の額及び資本準備金の額の合計額若しくは出資金の額又は当該事業年度の所得の金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額を超える部分の金額は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

2 内国法人が各事業年度において当該内国法人との間に完全支配関係(法人による完全支配関係に限る。)がある他の内国法人に対して支出した寄附金の額(第二十五条の二(受贈益)の規定の適用がないものとした場合に当該他の内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入される同条第二項に規定する受贈益の額に対応するものに限る。)は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

3 第一項の場合において、同項に規定する寄附金の額のうちに次の各号に掲げる寄附金の額があるときは、当該各号に掲げる寄附金の額の合計額は、同項に規定する寄附金の額の合計額に算入しない。

一 国又は地方公共団体(港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)の規定による港務局を含む。)に対する寄附金(その寄附をした者がその寄附によつて設けられた設備を専属的に利用することその他特別の利益がその寄附をした者に及ぶと認められるものを除く。)の額

二 公益社団法人、公益財団法人その他公益を目的とする事業を行う法人又は団体に対する寄附金(当該法人の設立のためにされる寄附金その他の当該法人の設立前においてされる寄附金で政令で定めるものを含む。)のうち、次に掲げる要件を満たすと認められるものとして政令で定めるところにより財務大臣が指定したものの額

イ 広く一般に募集されること。

ロ 教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に寄与するための支出で緊急を要するものに充てられることが確実であること。

4 第一項の場合において、同項に規定する寄附金の額のうちに、公共法人、公益法人等(別表第二に掲げる一般社団法人、一般財団法人及び労働者協同組合を除く。以下この項及び次項において同じ。)その他特別の法律により設立された法人のうち、教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するものとして政令で定めるものに対する当該法人の主たる目的である業務に関連する寄附金(出資に関する業務に充てられることが明らかなもの及び前項各号に規定する寄附金に該当するものを除く。)の額があるときは、当該寄附金の額の合計額(当該合計額が当該事業年度終了の時の資本金の額及び資本準備金の額の合計額若しくは出資金の額又は当該事業年度の所得の金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額を超える場合には、当該計算した金額に相当する金額)は、第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入しない。ただし、公益法人等が支出した寄附金の額については、この限りでない。

5 公益法人等がその収益事業に属する資産のうちからその収益事業以外の事業のために支出した金額(公益社団法人又は公益財団法人にあつては、その収益事業に属する資産のうちからその収益事業以外の事業で公益に関する事業として政令で定める事業に該当するもののために支出した金額)は、その収益事業に係る寄附金の額とみなして、第一項の規定を適用する。ただし、事実を隠蔽し、又は仮装して経理をすることにより支出した金額については、この限りでない。

6 内国法人が特定公益信託(公益信託ニ関スル法律(大正十一年法律第六十二号)第一条(公益信託)に規定する公益信託で信託の終了の時における信託財産がその信託財産に係る信託の委託者に帰属しないこと及びその信託事務の実施につき政令で定める要件を満たすものであることについて政令で定めるところにより証明がされたものをいう。)の信託財産とするために支出した金銭の額は、寄附金の額とみなして第一項、第四項、第九項及び第十項の規定を適用する。この場合において、第四項中「)の額」とあるのは、「)の額(第六項に規定する特定公益信託のうち、その目的が教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するものとして政令で定めるものの信託財産とするために支出した金銭の額を含む。)」とするほか、この項の規定の適用を受けるための手続に関し必要な事項は、政令で定める。

7 前各項に規定する寄附金の額は、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもつてするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与(広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものを除く。次項において同じ。)をした場合における当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額によるものとする。

8 内国法人が資産の譲渡又は経済的な利益の供与をした場合において、その譲渡又は供与の対価の額が当該資産のその譲渡の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額に比して低いときは、当該対価の額と当該価額との差額のうち実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額は、前項の寄附金の額に含まれるものとする。

9 第三項の規定は、確定申告書、修正申告書又は更正請求書に第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入されない第三項各号に掲げる寄附金の額及び当該寄附金の明細を記載した書類の添付がある場合に限り、第四項の規定は、確定申告書、修正申告書又は更正請求書に第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入されない第四項に規定する寄附金の額及び当該寄附金の明細を記載した書類の添付があり、かつ、当該書類に記載された寄附金が同項に規定する寄附金に該当することを証する書類として財務省令で定める書類を保存している場合に限り、適用する。この場合において、第三項又は第四項の規定により第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入されない金額は、当該金額として記載された金額を限度とする。

10 税務署長は、第四項の規定により第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入されないこととなる金額の全部又は一部につき前項に規定する財務省令で定める書類の保存がない場合においても、その書類の保存がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるときは、その書類の保存がなかつた金額につき第四項の規定を適用することができる。

11 財務大臣は、第三項第二号の指定をしたときは、これを告示する。

12 第五項から前項までに定めるもののほか、第一項から第四項までの規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める

公正証書に記載される執行受諾の意思表示と民法第110条の適用ないし準用の有無

 

 

請求異議事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和31年(オ)第123号

【判決日付】      昭和33年5月23日

【判示事項】      公正証書に記載される執行受諾の意思表示と民法第110条の適用ないし準用の有無

【判決要旨】      公正証書に記載される執行受諾の意思表示には民法第110条の適用または準用はないものと解すべきである。

【参照条文】      民事訴訟法559

             民法110

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集12巻8号1105頁

             判例時報151号19頁

【評釈論文】      金融法務事情183号6頁

             民商法雑誌38巻6号108頁

 

民法

(代理権授与の表示による表見代理等)

第百九条 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。

2 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。

(権限外の行為の表見代理)

第百十条 前条第一項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告代理人近藤与一の上告理由第一点の論旨は、公正証書の作成につき消費貸借の実体上の効力と執行受諾の意思表示の効力に関し民法一一〇条の適用の有無を区別した原判決の判断は違法であると主張する。

 しかし、公正証書に記載される「直チニ強制執行ヲ受ク可キ旨」の意思表示は、公証人に対してなされる訴訟行為であるから、私人間の取引の相手方を保護することを目的とする民法一一〇条の適用又は準用のないものと解すべきことは当裁判所の判例とするところであつて、今これを変更する要を認めない(昭和三二、六、六日第一小法廷判決、集一一巻七号一一七七頁、なお大審院昭和一一、一〇、三日判決、集一五巻二〇三五頁、昭和一九、九、二九日判決、集二三卷五六三頁参照)。従つて原判決の判断は正当であつて、所論は採用できない。

 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

     最高裁判所第二小法廷