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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

法学教室 2023年7月号(No.514) ◆特集 刑法 議論が深まった論点を押さえる

 

有斐閣

2023年06月28日 発売

定価  1,650円(本体 1,500円)

 

雨の降り続く梅雨にあっては早い梅雨明けを願いながら、いざ本格的な夏が始まるとその厳しい暑さに目が眩みます。熱中症などにならぬよう、涼しい部屋で本誌をお楽しみください。

 

今月号の特集は「刑法 議論が深まった論点を押さえる」です。本年度の共通テーマが「理論や実務で進展があった学習上の重要テーマ」であるため、やや高度で硬質な論稿が並びます。でも、「なんか難しそう」で終わらせてしまうのはもったいない。各論稿に挑むための心構えが、特集の扉ページに書かれています。「よし、頑張って読んでみよう!」という気持ちにさせてくれる、編者からのメッセージです。ぜひご一読ください。

 

「新法解説」では、令和4年民法改正と霊感商法関連新法を取り上げます。いずれも重要かつ世間の耳目を集めた法律です。法改正により、どのような問題が克服され、いまだ残る課題はどのようなものであるのか。両法の専門家にご解説いただきました。

 

 

◆特集 刑法 議論が深まった論点を押さえる

Ⅰ 自招侵害・自招危難をめぐる近年の議論…照沼亮介……10

 

Ⅱ 実行の着手…城下裕二……15

 

Ⅲ 共謀の射程…十河太朗……20

 

Ⅳ 住居侵入罪…齊藤彰子……26

 

Ⅴ 詐欺罪における実質的法益侵害…松原芳博……31

 

Ⅵ 死体遺棄罪…嶋矢貴之……36

 

 

コメント

刑法は「弟子が恩師の最大委の論敵となる」という諺があるくらいです。

学説は、判例を説明できる道具であるという理解でも良いかもしれません。

 

民法第557条第1項にいう「契約ノ履行ニ著手」した場合にあたるとされた事例

 

 

              所有権移転登記等請求事件

【事件番号】      最高裁判所大法廷判決/昭和37年(オ)第760号

【判決日付】      昭和40年11月24日

【判示事項】      1、民法第557条第1項にいう「契約ノ履行ニ著手」した場合にあたるとされた事例

             2、解約手附の授受された売買契約の履行に着手した当事者からの解除の許否

【判決要旨】      1、解約手附の授受された第三者所有の不動産の売買契約において、売主が、右不動産を買主に譲渡する前提として、当該不動産につき所有権を取得しかつ自己名義の所有権取得登記を得た場合には、民法第557条第1項にいう「契約ノ履行ニ著手」したときにあたるものと解するのを相当とする。

             2、解約手附の授受された売買契約において、当事者の一方は、自ら履行に着手した場合でも、相手方が履行に着手するまでは、民法第557条第1項に定める解除権を行使することができるものと解するのを相当とする。(反対意見がある)

【参照条文】      民法557-1

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集19巻8号2019頁

 

 

民法

(手付)

第五百五十七条 買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。

2 第五百四十五条第四項の規定は、前項の場合には、適用しない。

 

 

前訴において1個の債権の一部についてのみ判決を求める旨が明示されていたとして、前訴の確定判決の既判力が当該債権の他の部分を請求する後訴に及ばないとされた事例

 

 

              損害賠償請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/平成18年(受)第1985号

【判決日付】      平成20年7月10日

【判示事項】      前訴において1個の債権の一部についてのみ判決を求める旨が明示されていたとして、前訴の確定判決の既判力が当該債権の他の部分を請求する後訴に及ばないとされた事例

【判決要旨】      Xが、Yに対し、県が買収を予定していた土地上の樹木についてYがした仮差押命令の申立ての違法を理由として、本案訴訟の応訴等に要した弁護士費用相当額の賠償を求める前訴を提起した後に、同一の不法行為に基づき、県からの買収金の支払が遅れたことによる損害の賠償を求める後訴を提起した場合において、Xは、前訴において、上記仮差押命令の申立てがXによる上記土地の利用と買収金の受領を妨害する不法行為であるとして、買収金の受領が妨害されることによる損害が発生していることをも主張していたものということができるなど判示の事情のもとでは、Xが前訴において請求する損害賠償請求権と後訴において請求する損害賠償請求権とは1個の債権の一部を構成するものではあるが、前訴において1個の債権の一部についてのみ判決を求める旨が明示されていたものと解すべきであり、前訴の確定判決の既判力は後訴に及ばない。

【参照条文】      民事訴訟法114

【掲載誌】        金融法務事情1856号26頁

 

 

民事訴訟法

(既判力の範囲)

第百十四条 確定判決は、主文に包含するものに限り、既判力を有する。

2 相殺のために主張した請求の成立又は不成立の判断は、相殺をもって対抗した額について既判力を有する。

 

第1次更正処分を取り消す第2次更正処分をし、更に同日付で第3次更正処分(第1次更正処分の瑕疵を補正するためした更正処分)をした場合の各更正処分の関係

 

 

法人税更正処分取消請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷/昭和46年(行ツ)第61号

【判決日付】      昭和50年9月11日

【判示事項】      1 第1次更正処分を取り消す第2次更正処分をし、更に同日付で第3次更正処分(第1次更正処分のかしを補正するためした更正処分)をした場合の各更正処分の関係

             2 更正処分の取消処分における不可変更力の存否

【判決要旨】      1 更正理由の欄に「当初更正処分を取消します」「更正または決定の金額」欄に確定申告の金額を各記載した第2次更正処分をし、更に同日付で同1事業年度につき第3次更正処分をした場合においては、第2次更正処分は、第1次更正処分を取り消した行政処分であり、第3次更正処分は、第1次更正処分とは別個になされた新たな行政処分と解するのが相当である。

             2 更正処分を処分庁自ら取り消した行政処分には、不可変更力が認められない。

【参照条文】      国税通則法24

【掲載誌】        訟務月報21巻10号2130頁

             税務訴訟資料82号711頁

 

 

国税通則法

(更正)

第二十四条 税務署長は、納税申告書の提出があつた場合において、その納税申告書に記載された課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従つていなかつたとき、その他当該課税標準等又は税額等がその調査したところと異なるときは、その調査により、当該申告書に係る課税標準等又は税額等を更正する。

 

 

実況見分調書の証拠能力

 

 

業務上過失致死傷被告事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和36年(あ)第149号

【判決日付】      昭和36年5月26日

【判示事項】      1、実況見分調書の証拠能力

             2、実況見分調書における立会人の供述記載とその署名押印の要否

             3、立会人の供述を記載した実況見分調書を証拠とすることと立会人喚問の要否

【判決要旨】      1、捜査機関が任意処分として行う検証の結果を記載したいわゆる実況見分調書は、たとえ被告人側においてこれを証拠とすることに同意しなくても、検証調書について刑訴第321条第3項に規定するところと同一の条件の下に、これを証拠とすることができる。

             2、実況見分の手段として被疑者、被害者その他の者をこれに立ち会わせ、立会人の指示説明としてそれらの者の供述を聴きこれを記載した実況見分調書には右供述者の署名押印を必要としない。

             3、右実況見分調書は、あらためてその立会人を公判期日において尋問する機会を被告人に与えなくても、これを証拠とすることができる。

【参照条文】      憲法37-2

             刑事訴訟法321-3

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集15巻5号893頁

 

 

憲法

第三十七条 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。

② 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。

③ 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。

 

 

刑事訴訟法

第三百二十一条 被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り、これを証拠とすることができる。

一 裁判官の面前(第百五十七条の六第一項及び第二項に規定する方法による場合を含む。)における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は供述者が公判準備若しくは公判期日において前の供述と異なつた供述をしたとき。

二 検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異なつた供述をしたとき。ただし、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る。

三 前二号に掲げる書面以外の書面については、供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明又は国外にいるため公判準備又は公判期日において供述することができず、かつ、その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものであるとき。ただし、その供述が特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限る。

② 被告人以外の者の公判準備若しくは公判期日における供述を録取した書面又は裁判所若しくは裁判官の検証の結果を記載した書面は、前項の規定にかかわらず、これを証拠とすることができる。

③ 検察官、検察事務官又は司法警察職員の検証の結果を記載した書面は、その供述者が公判期日において証人として尋問を受け、その真正に作成されたものであることを供述したときは、第一項の規定にかかわらず、これを証拠とすることができる。

④ 鑑定の経過及び結果を記載した書面で鑑定人の作成したものについても、前項と同様である。

 

本件は,訴外亡Aの子である原告らが,亡Aの葬儀を行った社会福祉法人である被告に対し,被告は原告らに対し亡Aの葬儀において「納棺の儀」を実施するかについて意向確認をせず,原告らが依頼した「旅支度」をあえて実施しないなど,原告らの宗教感情を著しく毀損する不法行為を行ったと主張して,慰謝料,弁護士費用及び遅延損害金の支払を求める事案である。

 

 

              損害賠償請求事件

【事件番号】      東京地方裁判所判決/平成30年(ワ)第17407号

【判決日付】      令和元年8月20日

【掲載誌】        LLI/DB 判例秘書登載

 

 

民法

(不法行為による損害賠償)

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

(財産以外の損害の賠償)

第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

 

 

 

       主   文

 

 1 被告は,原告X1に対し,11万円及びこれに対する平成27年5月23日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。

 2 被告は,原告X2に対し,11万円及びこれに対する平成27年5月23日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。

 3 原告らのその余の請求を棄却する。

 4 訴訟費用は,これを15分し,その1を被告の負担とし,その余を原告らの負担とする。

 5 この判決は,前記第1項及び同第2項に限り,仮に執行することができる。

 

       事実及び理由

 

第1 請求

   被告は,原告らに対し,それぞれ165万円及びこれに対する平成27年5月23日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。

第2 事案の概要

\

 1 前提事実(争いのない事実又は各項掲記の証拠等により容易に認定することのできる事実)

  (1)当事者等

   ア 原告らの父である訴外亡A(以下「亡A」という。)は,平成27年5月17日,死去した。亡Aは,清瀬市から生活保護費を受給していた。

   イ 被告は,大正8年11月6日に設立され,多様な福祉サービスがその利用者の意向を尊重して総合的に提供されるように創意工夫することにより,利用者が,個人の尊厳を保持しつつ,自立した生活を地域社会において営むことができるよう支援することを目的として,助葬事業の経営,特別養護老人ホームの経営等を行う社会福祉法人である。

  (2)被告は,社会福祉法上の社会福祉事業として,生活保護法の被保護者に対し,生活保護法18条1項の「葬祭扶助」に基づいて,葬祭援助事業を行っていた(乙4,以下,この助葬事業による葬儀を「生活保護葬」という。)。生活保護葬においては,通夜等の儀式的なことは行われず,基本的に火葬のみが実施されることとなっていた(乙4,証人B)。

  (3)原告X1は,平成27年5月17日,被告に対し,亡Aについて生活保護葬の実施を依頼し,同月18日,清瀬市から生活保護葬の承認がされたことから,被告は,原告らに対し,これを実施する旨連絡した(以下,被告が亡Aについて行った葬儀を「本件生活保護葬」という。)。原告らは,同日,被告に対し,亡Aの遺体に旅支度(納棺の儀の一環として,故人が四十九日の旅に出るために,慣習として白装束等を着せるといった支度を行うこと。)を施すことを依頼した。これに対し,被告担当者のBは,遺体の着せ替えはできないので,上からかけるだけとなる旨回答した。

    また,原告X1は,被告に対し,自らの出捐で,献花,遺影の作成,初七日法要の実施を依頼した。

  (4)被告は,平成27年5月23日,東京都府中市のC葬祭場で,亡Aの葬儀を運営したが,それまでに納棺の儀は実施されず,亡Aの遺体に旅支度はされておらず,亡Aはそのまま火葬された。

民法第597条第2項但書(使用貸借の終了)の類推適用により土地使用貸借の解約が有効とされた事例

 

 

建物収去土地明渡請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和42年(オ)第821号

【判決日付】      昭和42年11月24日

【判示事項】      民法第597条第2項但書の類推適用により土地使用貸借の解約が有効とされた事例

【判決要旨】      父母を貸主とし、子を借主として成立した返還時期の定めがない土地の使用貸借であつて、使用の目的は、建物を所有して会社の経営をなし、あわせて、右経営から生ずる収益により老父母を扶養する等判示内容のものである場合において、借主はさしたる理由もなく老父母に対する扶養をやめ、兄弟とも往来をたち、使用貸借当事者間における信頼関係は地を払うにいたつた等原判決確定の事実関係があるときは(原判決理由参照)、民法第597条第2項但書を類推適用して、貸主は借主に対して使用貸借を解約できるものと解すべきである。

【参照条文】      民法597-2

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集21巻9号2460頁

 

 

民法

(期間満了等による使用貸借の終了)

第五百九十七条 当事者が使用貸借の期間を定めたときは、使用貸借は、その期間が満了することによって終了する。

2 当事者が使用貸借の期間を定めなかった場合において、使用及び収益の目的を定めたときは、使用貸借は、借主がその目的に従い使用及び収益を終えることによって終了する。

3 使用貸借は、借主の死亡によって終了する。

(使用貸借の解除)

第五百九十八条 貸主は、前条第二項に規定する場合において、同項の目的に従い借主が使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、契約の解除をすることができる。

2 当事者が使用貸借の期間並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも契約の解除をすることができる。

3 借主は、いつでも契約の解除をすることができる。

 

 

大学病院における医療事故経過報告書に対する文書提出命令の申立てについて,事情聴取部分については,民事訴訟法220条4号ニ所定の除外文書に当たるとしてその申立てを却下したが,報告提言部分については,同条号ニ所定の除外文書に当たらないとしてその申立てを認めた事例


文書提出命令申立一部却下決定に対する抗告事件,附帯抗告事件
【事件番号】    東京高等裁判所決定/平成15年(ラ)第831号、平成15年(ラ)第900号
【判決日付】    平成15年7月15日
【判示事項】    大学病院における医療事故経過報告書に対する文書提出命令の申立てについて,事情聴取部分については,民事訴訟法220条4号ニ所定の除外文書に当たるとしてその申立てを却下したが,報告提言部分については,同条号ニ所定の除外文書に当たらないとしてその申立てを認めた事例
【参照条文】    民事訴訟法220
【掲載誌】     判例タイムズ1145号298頁
          判例時報1842号57頁


民事訴訟法
(文書提出義務)
第二百二十条 次に掲げる場合には、文書の所持者は、その提出を拒むことができない。
一 当事者が訴訟において引用した文書を自ら所持するとき。
二 挙証者が文書の所持者に対しその引渡し又は閲覧を求めることができるとき。
三 文書が挙証者の利益のために作成され、又は挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成されたとき。
四 前三号に掲げる場合のほか、文書が次に掲げるもののいずれにも該当しないとき。
イ 文書の所持者又は文書の所持者と第百九十六条各号に掲げる関係を有する者についての同条に規定する事項が記載されている文書
ロ 公務員の職務上の秘密に関する文書でその提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの
ハ 第百九十七条第一項第二号に規定する事実又は同項第三号に規定する事項で、黙秘の義務が免除されていないものが記載されている文書
ニ 専ら文書の所持者の利用に供するための文書(国又は地方公共団体が所持する文書にあっては、公務員が組織的に用いるものを除く。)
ホ 刑事事件に係る訴訟に関する書類若しくは少年の保護事件の記録又はこれらの事件において押収されている文書

 

新証拠による旧証拠の証明力減殺が,他の旧証拠の証明力に関する評価を左右する関係にあるとはいえず,それらの再評価を要することになるものではないとされた事例

 

 

再審請求棄却決定に対する即時抗告棄却決定に対する特別抗告事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷決定/平成30年(し)第76号

【判決日付】      令和3年4月21日

【判示事項】      新証拠による旧証拠の証明力減殺が,他の旧証拠の証明力に関する評価を左右する関係にあるとはいえず,それらの再評価を要することになるものではないとされた事例

【判決要旨】      新証拠によるMCT118型鑑定の証明力減殺は,同鑑定の手法が改善されたことによるものであるのに対し,HLADQα型鑑定並びにミトコンドリアDNA型鑑定及びHLADQB型鑑定の証明力は,鑑定資料のDNA量や状態の不良,更にはこれらの鑑定自体の特性等に基づいて評価されるべきものであって,MCT118型鑑定の証明力減殺が,HLADQα型鑑定並びにミトコンドリアDNA型鑑定及びHLADQB型鑑定の証明力に関する評価を左右する関係にあるとはいえないから,それらの再評価を要することになるものではなく,原々決定がこれらの鑑定の証明力を再評価しなかったことに誤りはない旨判示した原決定の判断は正当である。

【参照条文】      刑事訴訟法435

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集75巻4号389頁

 

 

刑事訴訟法

第四編 再審

第四百三十五条 再審の請求は、左の場合において、有罪の言渡をした確定判決に対して、その言渡を受けた者の利益のために、これをすることができる。

一 原判決の証拠となつた証拠書類又は証拠物が確定判決により偽造又は変造であつたことが証明されたとき。

二 原判決の証拠となつた証言、鑑定、通訳又は翻訳が確定判決により虚偽であつたことが証明されたとき。

三 有罪の言渡を受けた者を誣告した罪が確定判決により証明されたとき。但し、誣告により有罪の言渡を受けたときに限る。

四 原判決の証拠となつた裁判が確定裁判により変更されたとき。

五 特許権、実用新案権、意匠権又は商標権を害した罪により有罪の言渡をした事件について、その権利の無効の審決が確定したとき、又は無効の判決があつたとき。

六 有罪の言渡を受けた者に対して無罪若しくは免訴を言い渡し、刑の言渡を受けた者に対して刑の免除を言い渡し、又は原判決において認めた罪より軽い罪を認めるべき明らかな証拠をあらたに発見したとき。

七 原判決に関与した裁判官、原判決の証拠となつた証拠書類の作成に関与した裁判官又は原判決の証拠となつた書面を作成し若しくは供述をした検察官、検察事務官若しくは司法警察職員が被告事件について職務に関する罪を犯したことが確定判決により証明されたとき。但し、原判決をする前に裁判官、検察官、検察事務官又は司法警察職員に対して公訴の提起があつた場合には、原判決をした裁判所がその事実を知らなかつたときに限る。

 

 

 

橋梁架設工事中に橋げたが道路上に落下したため作業員や通行中の自動車の運転手らが死傷した事故について、元請会社の工事部長、現場代理人らの過失責任が認められた事例


業務上過失致死傷被告、重過失致死傷被告事件
【事件番号】    広島地方裁判所判決/平成4年(わ)第222号
【判決日付】    平成8年3月28日
【判示事項】    一 橋梁架設工事中に橋げたが道路上に落下したため作業員や通行中の自動車の運転手らが死傷した事故について、元請会社の工事部長、現場代理人らの過失責任が認められた事例
          二 重過失致死傷罪で起訴された下請会社派遣の職員は現場監督の地位にはなく、同人には本件事故発生の予見可能性及び結果回避可能性のいずれも認められないとして無罪が言い渡された事例
          三 元請会社の現場代理人に対し、禁錮二年六月の実刑判決が言い渡された事例
【参照条文】    刑法211前段
          刑法211後段(平3法31号改正前)
【掲載誌】     判例タイムズ949号97頁


刑法
(業務上過失致死傷等)
第二百十一条 業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。



       主   文

 被告人Aを禁錮二年に、被告人Bを禁錮二年六月に、被告人Cを禁錮二年六月に処する。
 この裁判確定の日から、被告人Aに対し三年間、被告人Cに対し四年間それぞれその刑の執行を猶予する。
 訴訟費用はこれを四分し、その各一を被告人A及び被告人Cの各負担とする。
 被告人Dは無罪。