前訴において1個の債権の一部についてのみ判決を求める旨が明示されていたとして、前訴の確定判決の既判力が当該債権の他の部分を請求する後訴に及ばないとされた事例
損害賠償請求事件
【事件番号】 最高裁判所第1小法廷判決/平成18年(受)第1985号
【判決日付】 平成20年7月10日
【判示事項】 前訴において1個の債権の一部についてのみ判決を求める旨が明示されていたとして、前訴の確定判決の既判力が当該債権の他の部分を請求する後訴に及ばないとされた事例
【判決要旨】 Xが、Yに対し、県が買収を予定していた土地上の樹木についてYがした仮差押命令の申立ての違法を理由として、本案訴訟の応訴等に要した弁護士費用相当額の賠償を求める前訴を提起した後に、同一の不法行為に基づき、県からの買収金の支払が遅れたことによる損害の賠償を求める後訴を提起した場合において、Xは、前訴において、上記仮差押命令の申立てがXによる上記土地の利用と買収金の受領を妨害する不法行為であるとして、買収金の受領が妨害されることによる損害が発生していることをも主張していたものということができるなど判示の事情のもとでは、Xが前訴において請求する損害賠償請求権と後訴において請求する損害賠償請求権とは1個の債権の一部を構成するものではあるが、前訴において1個の債権の一部についてのみ判決を求める旨が明示されていたものと解すべきであり、前訴の確定判決の既判力は後訴に及ばない。
【参照条文】 民事訴訟法114
【掲載誌】 金融法務事情1856号26頁
民事訴訟法
(既判力の範囲)
第百十四条 確定判決は、主文に包含するものに限り、既判力を有する。
2 相殺のために主張した請求の成立又は不成立の判断は、相殺をもって対抗した額について既判力を有する。