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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

置き忘れられた現金在中の封筒を窃取したとされる事件について,封筒内に現金が在中していたとの事実を動かし難い前提として被告人以外には現金を抜き取る機会のあった者がいなかったことを理由に被告人による窃取を認定した第1審判決及び原判決の判断が論理則,経験則等に照らして不合理で是認できないとされた事例

 

 

              窃盗被告事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/平成27年(あ)第63号

【判決日付】      平成29年3月10日

【判示事項】      置き忘れられた現金在中の封筒を窃取したとされる事件について,封筒内に現金が在中していたとの事実を動かし難い前提として被告人以外には現金を抜き取る機会のあった者がいなかったことを理由に被告人による窃取を認定した第1審判決及び原判決の判断が論理則,経験則等に照らして不合理で是認できないとされた事例

【参照条文】      刑法235

             刑事訴訟法411

【掲載誌】        最高裁判所裁判集刑事321号1頁

             裁判所時報1671号64頁

             LLI/DB 判例秘書登載

【評釈論文】      法学教室441号127頁

             刑事法ジャーナル53号171頁

 

 

刑法

(窃盗)

第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

 

 

刑事訴訟法

第四百十一条 上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときは、判決で原判決を破棄することができる。

一 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。

二 刑の量定が甚しく不当であること。

三 判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。

四 再審の請求をすることができる場合にあたる事由があること。

五 判決があつた後に刑の廃止若しくは変更又は大赦があつたこと。

 

 

       主   文

 

 原判決及び第1審判決を破棄する。

 被告人は無罪。

 

       理   由

 

 弁護人久保豊年の上告趣意は,憲法違反,判例違反をいう点を含め,実質は事実誤認,単なる法令違反の主張であり,被告人本人の上告趣意は,事実誤認の主張であって,いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。

 しかしながら,所論に鑑み,職権をもって調査すると,原判決及び第1審判決は,刑訴法411条3号により破棄を免れない。その理由は,次のとおりである。

 第1 本件公訴事実並びに第1審判決及び原判決の各判断

 1 本件公訴事実の要旨は,「被告人は,平成24年9月24日午前9時22分頃,広島銀行○○支店(以下「本件支店」という。)において,客の女性Aが同店内の記帳台の上に置いていた現金6万6600円及び振込用紙2枚在中の封筒1通を窃取した」というものである。

 2 第1審判決は,(1)本件前日の夜,手持ちの封筒(以下「本件封筒」という。)の中に振込用紙2枚とともに現金6万6600円を入れたとするB(Aの母親)の証言,及び,本件当日の朝,出掛ける前に,本件封筒の中に現金が入っていることを確認したとするAの証言の各信用性を肯定して,Aが本件封筒を記帳台上に置き忘れた時点でその中に現金6万6600円が在中していたとの事実を認定し,(2)本件支店に設置された防犯カメラの映像によれば,Aが本件封筒を置き忘れてから,本件支店の行員が記帳台上に置き忘れられた本件封筒(現金の在中していないもの)を発見するまでの間に,本件封筒から現金を抜き取ることが可能であったのは,Aと同じ記帳台を利用した被告人しかいないとして,公訴事実どおりの犯罪事実を認定し,被告人を懲役1年,3年間執行猶予に処した。

 3 被告人からの控訴に対し,原判決は,第1審判決の認定を是認して,控訴を棄却した。

 第2 当裁判所の判断

 1 原判決の認定及び関係証拠によれば,次の事実が明らかである。

 (1) 本件支店は,比較的小規模な店舗であり,A及び被告人が利用した記帳台(以下「本件記帳台」という。)は,行員の常駐するカウンターの目の前にある。また,本件記帳台の後方(カウンターの反対側)には来店客用の長椅子が設置されていた。さらに,本件支店内には複数の防犯カメラ(店内の様子を毎秒1コマ単位で記録するもの)が設置されており,店内における顧客等の動静は,いずれかのカメラによりほとんど漏れなく記録される仕組みとなっていた。

 (2) Aは,本件当日午前9時17分頃本件支店に来店し,本件記帳台で作業した後,午前9時20分頃本件記帳台を離れたが,その際,本件封筒を本件記帳台上に置き忘れた。

 (3) 被告人は,Aが本件記帳台を離れた直後頃本件支店に来店し,午前9時22分頃まで本件記帳台で作業した後,本件記帳台を離れ,発券機で番号票を取り,ATMコーナーで通帳に記帳し,カウンターで行員に預金の払戻手続を依頼するなどした後,午前9時24分頃本件記帳台付近に戻り,10秒間ほど,右手を本件記帳台の上に置いた状態でその側に立っていた。その後,被告人は本件記帳台を離れ,午前9時31分頃預金の払戻しを受けて本件支店を退店するまでの間,本件記帳台に近づくことはなかった。その当時,本件支店内には,相当数の行員と来店客がおり,来店客の中には,本件記帳台の後方に設置された長椅子に座っていた者もいた。また,被告人は,この間に2名の知人に出会い,会話を交わしている。

 (4) 被告人の退店後,本件支店の行員が,本件記帳台上に置かれた本件封筒を発見したが,その時点で,本件封筒内には,三つ折りにされた振込用紙2枚のみが在中しており,現金は在中していなかった。この間,本件記帳台を利用したのは,Aと被告人の2名だけであった。

 2 原判決及び第1審判決を是認できない理由

 (1) 前記のとおり,第1審判決は,A及びBの各証言に基づき,Aが本件記帳台上に本件封筒を置き忘れた時点で本件封筒の中に現金6万6600円が在中していたとの事実を認定し,これをいわば動かし難い前提として,被告人以外には現金を抜き取る機会のあった者がいなかったことを理由に被告人を有罪と判断したものであり,原判決は,その判断を是認したものである。

 (2) Aが本件封筒を置き忘れた時点で現金が在中していたことを前提とすれば,防犯カメラの記録上,本件支店の行員以外に本件封筒に触れることのできた人物は,被告人しかいないから,必然的に被告人が窃盗に及んだと認定されることになる。しかしながら,本件封筒内に現金が在中していたとの前提をひとまずおいて,他の証拠から被告人が本件封筒を窃取したと認定できるかどうかについてみると,本件では,そのような認定をちゅうちょせざるを得ない次のような事情が存在する。

 ア 本件支店内の被告人の様子は,防犯カメラによってほとんど漏れなく記録されている。被告人が1回目に本件記帳台を離れる際,本件記帳台の上面から何かを取り上げたように見えるものの,それが記入済みの払戻請求書や預金通帳ではなく,本件封筒であるとは確認できない(なお,取り上げた物が何であるかに関する被告人の供述には変遷があるが,いずれも記憶に基づく供述というよりは,防犯カメラの映像上何かを取り上げたように見えることについての弁明というべきところ,そのような弁明に変遷があるからといって,取り上げた物が本件封筒であるとの推認が可能になるわけではないし,直ちに被告人の供述全般の信用性が損なわれるわけでもない。)。また,被告人が本件封筒を持ち歩いている場面や,その中から内容物を取り出す場面も確認できない(被告人がズボンの右ポケットに手を入れたり,シャツの左胸付近に何かを接触させたりする場面は確認できるものの,それが,本件封筒やその内容物をポケット等に出し入れする動作であるとは確認できない。)。そして,被告人が,本件記帳台に本件封筒を戻す場面も確認できない。

 イ 本件封筒には,三つ折りの振込用紙2枚が在中していたところ,これを残して現金(Bの証言を前提とすれば紙幣12枚と硬貨2枚)のみを抜き取るには,複数の動作が必要であり,相応の時間を要すると考えられる。本件支店内に設置された防犯カメラは,毎秒1コマを記録する目の粗いものであり,かつ,被告人がATM機の前に立っている時間帯については,背後からの映像しかないものの,被告人がそのような動作をしているように見える場面は存在しない(原判決は,被告人がロビーとATMコーナーを往復する際の動作の一部や,ATM機を操作している際の被告人の手元等が防犯カメラの死角となっていることを指摘して,被告人には本件封筒から現金を抜き取り,これをポケット等に隠す機会があったと認められる旨説示するが,被告人がそのような動作をしているとみられる場面を具体的に指摘するものではない。なお,被告人が,本件支店内の防犯カメラの設置位置や死角を熟知していたと認めるべき事情はうかがわれないのであるから,たまたま防犯カメラの死角となる位置で現金を抜き取るなどした可能性を否定することはできないにしても,その可能性が高いなどとはいえない。)。

 ウ そもそも,銀行に防犯カメラが設置されていることは公知の事実である上,行員や来店客の視線も意識せざるを得ない状況の中,本件封筒を窃取した者がいるとしても,わざわざその店舗内で本件封筒から現金を抜き取り,封筒だけを本件記帳台に戻すような行為をするとは考えにくい。被告人は,本件記帳台を離れてから預金の払戻しを受けて退店するまで,10分近く本件支店に滞在しており,そのような危険を冒すとは一層考えにくい。

 (3) 以上は,被告人が本件封筒を窃取したとの認定を妨げる方向に強く働く客観的事情ということができる。このような事情が認められる以上,Aが本件封筒を置き忘れた時点で現金が在中していたとの前提を確実なものと考えてよいかどうかについて,特に慎重な検討を要するというべきである。本件では,A及びBの各証言の信用性評価が問題となり得るところ,以下のとおり,この点に関する第1審判決及び原判決の説示はいずれも説得的なものとはいえない。

 ア 第1審判決は,Aの証言が一貫しており,迫真性があることや,AはBの指示により市県民税の納入を行うつもりで本件支店に赴いており,本件封筒の中に現金が在中していないのに,その事実に気付かず,振込用紙だけが入った封筒を持参したとは考え難いことなどを指摘して,Aの証言の信用性を肯定し,そうすると,本件封筒に現金を入れた旨のBの証言も十分に信用できると判断した。原判決は,以上に加えて,本件封筒に市県民税2か月分合計6万6600円分の振込用紙2枚が在中していたことや,本件封筒の表面に「66,600- ⑩⑪月分」と記載されていたことを指摘し,これらの事実は本件封筒に現金6万6600円を入れたとするBの証言と整合し,その信用性を高めるものであること,本件封筒に三つ折りの振込用紙2枚に加えて,紙幣12枚と硬貨2枚が入れられていた場合には,相応の重量及び厚みになるから,Bが本件封筒に現金を入れるのを忘れるなどしていたとしても,Aがそれに気付かないまま,本件封筒に必要な現金が入っていると思い込み,これを本件支店まで持参したとは考えにくいことを指摘して,第1審判決の判断を支持した。

 イ 現金が在中しているのを確認したとの点に関するAの証言の要旨は,「本件当日の朝,処理を要する通帳等を入れていた専用のケースの中から本件封筒を取り出し,通帳や固定資産税の冊子とともに輪ゴムでくくり,巾着袋に入れた上,かばんに入れて銀行に持参した。本件封筒の表には6万6600円と書かれており,中をのぞいたところ,1万円札が数枚と,千円札と,あと硬貨が入っているのが分かった。封筒の感触からもお金が入っていることが分かった。」というものであり,本件封筒から現金を取り出して数えたというものではない上,Aは,Bの指示で日常的に銀行振込み等の用務を行っていたというのであるから,仮に本件当日の記憶がなくても,上記のような証言をすることは容易といえる。したがって,上記のようなAの証言について,迫真性があるとしてその信用性を高く評価することは相当ではない。

 ウ また,本件当日,Aが市県民税を納入する用務だけのために本件封筒のみを持ち出して外出したというのであれば,確かに現金の入っていない封筒を持参したとは考え難いし,現金が入っていないならば気付くはずであるとも考えやすい。しかし,本件では,Aは,本件支店において,市県民税を納入する用務の他に,預金を払い戻した上で固定資産税を納入する用務を予定しており,本件封筒の他に通帳や固定資産税の冊子を束ねて持参している上,預金の払戻しと固定資産税の納入については予定どおり実行する一方で,本件封筒については本件記帳台上に置き忘れ,市県民税を納入しないまま本件支店を退店し,Bからの連絡を受けて初めて本件封筒を本件支店に置き忘れたことに気付いたというのである。そうすると,市県民税等の納入を行うつもりで本件支店に赴いているのであり,かつ,現金が入れられていれば相応の重量と厚みになるのであるから,現金の在中していない,振込用紙だけが入った封筒を持参したとは考え難い,との評価も相当とはいえない。また,原判決の認定によれば,Aは,通帳及び固定資産税の冊子と一緒にされた束の中から,相応な重量と厚みのある本件封筒だけを本件記帳台に置き忘れたことになる。その可能性の方が,現金の入れられていない封筒を持参した可能性よりも高い,などとはいえないであろう。

 エ Bは,本件封筒に現金6万6600円を入れたことは間違いない旨証言するものの,入れた金種と枚数について,「いつもそうしているので,1万円札と千円札が各6枚,500円硬貨と100円硬貨が1枚であったと思う」旨述べていることから明らかなとおり,日常的にそうしているから,本件前日の夜も同じようにしたに違いないと考えて証言をしている可能性もある。また,本件封筒に入れたとする現金の出所については,個人で自由に使えるお金の中から出したと述べるのみで,それ以上に具体的な証言をしておらず,何らの裏付け立証もされていない。本件封筒に在中していた振込用紙2枚の合計金額が6万6600円であり,本件封筒の表面に「66,600- ⑩⑪月分」等と記載されている点も,6万6600円を入れようとしたことの裏付けになるとはいえても,実際に入れたことの裏付けになるわけではない。

 オ 複数名の証言が一致していることは,通常,各証言の信用性を高め合うものといえるが,A,Bの関係性,とりわけAがBの指示で日常的に銀行振込み等の用務を行っていたことや,AとBが,本件封筒に現金は在中していなかった旨行員から知らされた直後に,現金を入れたかどうかを確認する会話をしていること等に照らすと,本件においては,A,Bの証言が一致していることを過度に重視することは相当でない。A,Bにおいては,上記の会話やその後のやり取りを通じ,他日の記憶と混同するなどして,事実と異なる記憶が定着してしまった可能性も否定できないというべきである。

 (4) 以上のとおり,A及びBの各証言の信用性評価に関する第1審判決及び原判決の説示はいずれも説得的なものとはいえず,その他に各証言の信用性を高める方向に働く事情も見当たらない。要するに,A及びBの各証言は高い信用性を有するとまではいえないのであって,そのような証拠に依拠して,Aが本件記帳台上に本件封筒を置き忘れた時点で本件封筒の中に現金6万6600円が在中していたとの事実を認定し,これを動かし難い前提として,被告人以外には現金を抜き取る機会のあった者がいなかったことを理由に被告人を有罪と判断した第1審判決及びこれを是認した原判決の判断は,被告人が本件封筒を窃取したとの認定を妨げる方向に強く働く客観的事情を無視あるいは不当に軽視した点において,論理則,経験則等に照らして不合理なものといわざるを得ない。被告人が本件公訴事実記載の窃盗に及んだと断定するには,なお合理的な疑いが残るというべきである。

 3 結論

そうすると,被告人に窃盗罪の成立を認めた第1審判決及びこれを是認した原判決には,判決に影響を及ぼすべき重大な事実誤認があり,これを破棄しなければ著しく正義に反すると認められる。

 そして,既に検察官による立証は尽くされているので,当審で自判するのが相当であるところ,前記のとおり,本件公訴事実については犯罪の証明が十分でないから,被告人に無罪の言渡しをすべきである。

 よって,刑訴法411条3号により原判決及び第1審判決を破棄し,同法413条ただし書,414条,404条,336条により,裁判官小貫芳信の反対意見があるほか,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

 

 

 

 

抵当権設定登記抹消登記手続請求訴訟の応訴と被担保債権の消滅時効の中断

 

 

              根抵当権設定登記抹消登記請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和44年(オ)第491号

【判決日付】      昭和44年11月27日

【判示事項】      抵当権設定登記抹消登記手続請求訴訟の応訴と被担保債権の消滅時効の中断

【判決要旨】      債務者兼抵当権設定者が債務の不存在を理由として提起した抵当権設定登記抹消登記手続請求訴訟において、債権者兼抵当権者が請求棄却の判決を求め被担保債権の存在を主張したときは、右主張は、裁判上の請求に準ずるものとして、被担保債権につき消滅時効中断の効力を生ずる。

【参照条文】      民法147

             民法149

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集23巻11号2251頁

 

 

民法

(裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新)

第百四十七条 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。

一 裁判上の請求

二 支払督促

三 民事訴訟法第二百七十五条第一項の和解又は民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)若しくは家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)による調停

四 破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加

2 前項の場合において、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。

(強制執行等による時効の完成猶予及び更新)

第百四十八条 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。

一 強制執行

二 担保権の実行

三 民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第百九十五条に規定する担保権の実行としての競売の例による競売

四 民事執行法第百九十六条に規定する財産開示手続又は同法第二百四条に規定する第三者からの情報取得手続

2 前項の場合には、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。ただし、申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合は、この限りでない。

 

 

 

障がい未遂と認むべき1事例

 

              尊属殺人未遂被告事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷決定/昭和30年(あ)第1418号

【判決日付】      昭和32年9月10日

【判示事項】      障がい未遂と認むべき1事例

【判決要旨】      被告人の犯行完成の意力を抑圧した事情原因が、本件のように、犯罪の完成を妨害するに足る性質の障がいに基くものと認められる場合は、いわゆる中止未遂ではなく、障がい未遂にあたると解するを相当とする。

【参照条文】      刑法43

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集11巻9号2202頁

 

 

刑法

(未遂減免)

第四十三条 犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。

 

 

障害未遂

[しょうがいみすい]

定義

犯人の意思によらない外的障害によって犯罪が未遂に終わること。対義語は中止未遂

 

(1)障害未遂の場合

刑法第43条は「犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる」としています。

そのうち、外部的要因により犯罪の結果が生じなかった場合を「障害未遂」といいます。

たとえば、犯行におよぼうとしたが人が来たのでできなかった、相手に強く抵抗されたので諦めて逃亡したといったケースが考えられます。

 

「刑を減軽することができる」とあるように、障害未遂は刑の任意的減軽事由となります。「任意的減軽」とは、裁判官の裁量によって刑を減軽される場合があることをいいます。

 

減軽の方法は刑法第68条に定められています。たとえば有期の懲役または禁錮を減軽する場合、刑の長期と短期をそれぞれ2分の1にすることができます。

 

(2)中止未遂の場合

刑法第43条はただし書きで「ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、または免除する」とあります。必要的減軽。

中止未遂といい、障害未遂のような外部的要因ではなく、自分の意思によって犯罪を中止した場合を指します。もっとも、「自己の意思」については、単に自分の意思で中止しただけでなく、反省や後悔、同情などの感情にもとづき中止したことが要求されるケースが多くなっています。

 

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 

       理   由

 

 弁護人高見沢博の上告趣意について。

 論旨中事実誤認、法令違反、量刑不当を主張する点は、刑訴四〇五条の上告理由に当らないし、判例違反を主張する点は、所論引用の判例も原判決もともに障がい未遂となるとの判断を示したものであり、原判決が右判例に相反する判断を示していないことが明白であるからその前提において失当であつて上告適法の理由とならない。(なお、原判決の認定するところとその挙示する証拠によれば、本件の事実関係は、被告人はかねて賭博等に耽つて借財が嵩んだ結果、実母Aや姉B等にも一方ならず心配をかけているので苦悩の末、服毒自殺を決意すると共に、自己の亡き後に悲歎しながら生き残るであらう母親の行末が不憫であるからむしろ同時に母をも殺害して同女の現世の苦悩を除いてやるに如かずと考え、昭和二八年一〇月一八日午前零時頃自宅六畳間において電燈を消して就寝中の同女の頭部を野球用バツトで力強く一回殴打したところ、同女がう―んと呻き声をあげたので早くも死亡したものと思い、バツトをその場に置いたまゝ自己が就寝していた隣室三畳間に入つたが、間もなく同女がCCと自己の名を呼ぶ声を聞き再び右六畳間に戻り、同女の頭部を手探ぐりし電燈をつけて見ると、母が頭部より血を流し痛苦していたので、その姿を見て俄かに驚愕恐怖し、その後の殺害行為を続行することができず、所期の殺害の目的を遂げなかつたというのである。右によれば、被告人は母に対し何ら怨恨等の害悪的感情をいだいていたものではなく、いわば憐憫の情から自殺の道伴れとして殺害しようとしたものであり、従つてその殺害方法も実母にできるだけ痛苦の念を感ぜしめないようにと意図し、その熟睡中を見計い前記のように強打したものであると認められる。しかるに、母は右打撃のため間もなく眠りからさめ意識も判然として被告人の名を続けて呼び、被告人はその母の流血痛苦している姿を眼前に目撃したのであつて、このような事態は被告人の全く予期しなかつたところであり、いわんや、これ以上更に殺害行為を続行し母に痛苦を与えることは自己当初の意図にも反するところであるから、所論のように被告人において更に殺害行為を継続するのがむしろ一般の通例であるというわけにはいかない。すなわち被告人は、原判決認定のように、前記母の流血痛苦の様子を見て今さらの如く事の重大性に驚愕恐怖するとともに、自己当初の意図どおりに実母殺害の実行完遂ができないことを知り、これらのため殺害行為続行の意力を抑圧せられ、他面事態をそのまゝにしておけば、当然犯人は自己であることが直に発覚することを怖れ、原判示のように、ことさらに便所の戸や高窓を開いたり等して外部からの侵入者の犯行であるかのように偽装することに努めたものと認めるのが相当である。右意力の抑圧が論旨主張のように被告人の良心の回復又は悔悟の念に出でたものであることは原判決の認定しないところであるのみならず、前記のような被告人の偽装行為に徴しても首肯し難い。そして右のような事情原因の下に被告人が犯行完成の意力を抑圧せしめられて本件犯行を中止した場合は、犯罪の完成を妨害するに足る性質の障がいに基くものと認むべきであつて、刑法四三条但書にいわゆる自己の意思により犯行を止めたる場合に当らないものと解するを相当とする。されば、原判決が本件被告人の所為を中止未遂ではなく障がい未遂であるとしたのは、以上と理由を異にするが、結論においては正当である。)また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。よつて同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

  昭和三二年九月一〇日

     最高裁判所第三小法廷

被告の所有する土地が建築基準法42条2項所定の道路(いわゆるみなし道路)に当たるとして人格権的権利に基づき同土地上の工作物の撤去を求める訴訟において被告が同土地がみなし道路であることを否定することは信義則上許されないとされた事例

 

 

工作物撤去等請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/平成15年(受)第1886号

【判決日付】      平成18年3月23日

【判示事項】      被告の所有する土地が建築基準法42条2項所定の道路(いわゆるみなし道路)に当たるとして人格権的権利に基づき同土地上の工作物の撤去を求める訴訟において被告が同土地がみなし道路であることを否定することは信義則上許されないとされた事例

【判決要旨】      被告の所有する土地が建築基準法42条2項所定の道路(いわゆるみなし道路)に当たるとして同土地周辺の建物所有者である原告らが提起した人格権的権利に基づき同土地上の工作物の撤去を求める訴訟において,被告が同土地がみなし道路であることを否定することは,被告が,建物を建築するに際し,同土地がみなし道路であることを前提に建築確認を得,同土地に幅員4mの道路を開設し,その後5年以上同土地がみなし道路であることを前提に建物を所有してきた上,同土地は公衆用道路として非課税とされているという事実関係の下では,信義則上許されない。

【参照条文】      民法1-2

             民法2

             民法198

             民事訴訟法

             建築基準法42-2

             憲法13

【掲載誌】        最高裁判所裁判集民事219号967頁

             裁判所時報1408号167頁

             判例タイムズ1209号72頁

             判例時報1932号85頁

 

 

民法

(基本原則)

第一条 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。

2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。

3 権利の濫用は、これを許さない。

(解釈の基準)

第二条 この法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等を旨として、解釈しなければならない。

 

(占有保持の訴え)

第百九十八条 占有者がその占有を妨害されたときは、占有保持の訴えにより、その妨害の停止及び損害の賠償を請求することができる。

 

 

民事訴訟法

(裁判所及び当事者の責務)

第二条 裁判所は、民事訴訟が公正かつ迅速に行われるように努め、当事者は、信義に従い誠実に民事訴訟を追行しなければならない。

 

 

建築基準法

(道路の定義)

第四十二条 この章の規定において「道路」とは、次の各号のいずれかに該当する幅員四メートル(特定行政庁がその地方の気候若しくは風土の特殊性又は土地の状況により必要と認めて都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域内においては、六メートル。次項及び第三項において同じ。)以上のもの(地下におけるものを除く。)をいう。

一 道路法(昭和二十七年法律第百八十号)による道路

二 都市計画法、土地区画整理法(昭和二十九年法律第百十九号)、旧住宅地造成事業に関する法律(昭和三十九年法律第百六十号)、都市再開発法(昭和四十四年法律第三十八号)、新都市基盤整備法(昭和四十七年法律第八十六号)、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法(昭和五十年法律第六十七号)又は密集市街地整備法(第六章に限る。以下この項において同じ。)による道路

三 都市計画区域若しくは準都市計画区域の指定若しくは変更又は第六十八条の九第一項の規定に基づく条例の制定若しくは改正によりこの章の規定が適用されるに至つた際現に存在する道

四 道路法、都市計画法、土地区画整理法、都市再開発法、新都市基盤整備法、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法又は密集市街地整備法による新設又は変更の事業計画のある道路で、二年以内にその事業が執行される予定のものとして特定行政庁が指定したもの

五 土地を建築物の敷地として利用するため、道路法、都市計画法、土地区画整理法、都市再開発法、新都市基盤整備法、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法又は密集市街地整備法によらないで築造する政令で定める基準に適合する道で、これを築造しようとする者が特定行政庁からその位置の指定を受けたもの

2 都市計画区域若しくは準都市計画区域の指定若しくは変更又は第六十八条の九第一項の規定に基づく条例の制定若しくは改正によりこの章の規定が適用されるに至つた際現に建築物が立ち並んでいる幅員四メートル未満の道で、特定行政庁の指定したものは、前項の規定にかかわらず、同項の道路とみなし、その中心線からの水平距離二メートル(同項の規定により指定された区域内においては、三メートル(特定行政庁が周囲の状況により避難及び通行の安全上支障がないと認める場合は、二メートル)。以下この項及び次項において同じ。)の線をその道路の境界線とみなす。ただし、当該道がその中心線からの水平距離二メートル未満で崖地、川、線路敷地その他これらに類するものに沿う場合においては、当該崖地等の道の側の境界線及びその境界線から道の側に水平距離四メートルの線をその道路の境界線とみなす。

3 特定行政庁は、土地の状況に因りやむを得ない場合においては、前項の規定にかかわらず、同項に規定する中心線からの水平距離については二メートル未満一・三五メートル以上の範囲内において、同項に規定するがけ地等の境界線からの水平距離については四メートル未満二・七メートル以上の範囲内において、別にその水平距離を指定することができる。

4 第一項の区域内の幅員六メートル未満の道(第一号又は第二号に該当する道にあつては、幅員四メートル以上のものに限る。)で、特定行政庁が次の各号の一に該当すると認めて指定したものは、同項の規定にかかわらず、同項の道路とみなす。

一 周囲の状況により避難及び通行の安全上支障がないと認められる道

二 地区計画等に定められた道の配置及び規模又はその区域に即して築造される道

三 第一項の区域が指定された際現に道路とされていた道

5 前項第三号に該当すると認めて特定行政庁が指定した幅員四メートル未満の道については、第二項の規定にかかわらず、第一項の区域が指定された際道路の境界線とみなされていた線をその道路の境界線とみなす。

6 特定行政庁は、第二項の規定により幅員一・八メートル未満の道を指定する場合又は第三項の規定により別に水平距離を指定する場合においては、あらかじめ、建築審査会の同意を得なければならない。

 

 

憲法

第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

 

 

公売取消処分に基く所有権の復帰と対抗力

 

 

              登記抹消請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和30年(オ)第548号

【判決日付】      昭和32年6月7日

【判示事項】      公売取消処分に基く所有権の復帰と対抗力

【判決要旨】      甲所有の不動産につき、一旦、国税滞納処分による公売に基づき落札者乙のため所有権取得の登記がなされた後、右公売を取消す処分があつた結果甲に所有権が復帰した場合であつても、その登記がないときは、甲は、前記落札者乙から公売取消後その不動産を譲受けた丙に対し、右所有権の復帰を対抗することを得ない。

【参照条文】      民法177

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集11巻6号999頁

             判例タイムズ72号59頁

             金融法務事情161号27頁

【評釈論文】      別冊ジュリスト17号202頁

             別冊ジュリスト79号194頁

             別冊ジュリスト120号184頁

             民商法雑誌36巻6号80頁

 

 

民法

(不動産に関する物権の変動の対抗要件)

第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

 

 

 

民訴法二二〇条四号ハ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たる場合

 

 

文書提出命令に対する許可抗告事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷決定/平成11年(許)第2号

【判決日付】      平成11年11月12日

【判示事項】      一 民訴法二二〇条四号ハ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たる場合

             二 銀行の貸出稟議書と民訴法二二〇条四号ハ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」

【判決要旨】      一 ある文書が、その作成目的、記載内容、これを現在の所持者が所持するに至るまでの経緯、その他の事情から判断して、専ら内部の者の利用に供する目的で作成され、外部の者に開示することが予定されていない文書であって、開示されると個人のプライバシーが侵害されたり個人ないし団体の自由な意思形成が阻害されたりするなど、開示によって所持者の側に看過し難い不利益が生ずるおそれがあると認められる場合には、特段の事情がない限り、当該文書は民訴法二二〇条四号ハ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たる。

             二 銀行において支店長等の決裁限度を超える規模、内容の融資案件について本部の決裁を求めるために作成され、融資の内容に加えて、銀行にとっての収益の見込み、融資の相手方の信用状況、融資の相手方に対する評価、融資についての担当者の意見、審査を行った決裁権者が表明した意見などが記載される文書である貸出稟議書は、特段の事情がない限り、民訴法二二〇条四号ハ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たる。

【参照条文】      民事訴訟法220

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集53巻8号1787頁

 

 

民事訴訟法

(文書提出義務)

第二百二十条 次に掲げる場合には、文書の所持者は、その提出を拒むことができない。

一 当事者が訴訟において引用した文書を自ら所持するとき。

二 挙証者が文書の所持者に対しその引渡し又は閲覧を求めることができるとき。

三 文書が挙証者の利益のために作成され、又は挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成されたとき。

四 前三号に掲げる場合のほか、文書が次に掲げるもののいずれにも該当しないとき。

イ 文書の所持者又は文書の所持者と第百九十六条各号に掲げる関係を有する者についての同条に規定する事項が記載されている文書

ロ 公務員の職務上の秘密に関する文書でその提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの

ハ 第百九十七条第一項第二号に規定する事実又は同項第三号に規定する事項で、黙秘の義務が免除されていないものが記載されている文書

ニ 専ら文書の所持者の利用に供するための文書(国又は地方公共団体が所持する文書にあっては、公務員が組織的に用いるものを除く。)

ホ 刑事事件に係る訴訟に関する書類若しくは少年の保護事件の記録又はこれらの事件において押収されている文書

 

他の者を搭乗させる意図を秘し,航空会社の搭乗業務を担当する係員に外国行きの自己に対する搭乗券の交付を請求してその交付を受けた行為が,詐欺罪に当たるとされた事例

 

 

              詐欺被告事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷決定/平成20年(あ)第720号

【判決日付】      平成22年7月29日

【判示事項】      他の者を搭乗させる意図を秘し,航空会社の搭乗業務を担当する係員に外国行きの自己に対する搭乗券の交付を請求してその交付を受けた行為が,詐欺罪に当たるとされた事例

【判決要旨】      外国行きの自己に対する搭乗券を他の者に渡してその者を搭乗させる意図であるのにこれを秘し,航空会社の搭乗業務を担当する係員に対し乗客として自己の氏名が記載された航空券を呈示して搭乗券の交付を請求し,その交付を受けた行為は,搭乗券の交付を請求する者が航空券記載の乗客本人であることについて厳重な確認が行われていたなどの本件事実関係の下では,刑法246条1項の詐欺罪に当たる。

【参照条文】      刑法246-1

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集64巻5号829頁

 

 

刑法

(詐欺)

第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

 

追徴税と罰金を併科することが憲法三九条に違反するとの主張を刑訴法四〇八条で処理した事例

 

 

所得税法違反

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/昭和52年(あ)第1240号

【判決日付】      昭和53年6月6日

【判示事項】      いわゆる追徴税と罰金を併科することが憲法三九条に違反するとの主張を刑訴法四〇八条で処理した事例

【参照条文】      国税通則法68

             所得税法238

             憲法39

             刑事訴訟法408

【掲載誌】        最高裁判所裁判集刑事210号231頁

             税務訴訟資料107号905頁

 

 

国税通則法

(重加算税)

第六十八条 第六十五条第一項(過少申告加算税)の規定に該当する場合(修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合を除く。)において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠蔽し、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の三十五の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。

2 第六十六条第一項(無申告加算税)の規定に該当する場合(同項ただし書若しくは同条第七項の規定の適用がある場合又は納税申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正又は決定があるべきことを予知してされたものでない場合を除く。)において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき法定申告期限までに納税申告書を提出せず、又は法定申告期限後に納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、無申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠蔽し、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る無申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の四十の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。

3 前条第一項の規定に該当する場合(同項ただし書又は同条第二項若しくは第三項の規定の適用がある場合を除く。)において、納税者が事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づきその国税をその法定納期限までに納付しなかつたときは、税務署長又は税関長は、当該納税者から、不納付加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠蔽し、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る不納付加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の三十五の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を徴収する。

4 前三項の規定に該当する場合において、これらの規定に規定する税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されたものに基づき期限後申告書若しくは修正申告書の提出、更正若しくは第二十五条(決定)の規定による決定又は納税の告知(第三十六条第一項(納税の告知)の規定による納税の告知(同項第二号に係るものに限る。)をいう。以下この項において同じ。)若しくは納税の告知を受けることなくされた納付があつた日の前日から起算して五年前の日までの間に、その申告、更正若しくは決定又は告知若しくは納付に係る国税の属する税目について、無申告加算税等を課され、又は徴収されたことがあるときは、前三項の重加算税の額は、これらの規定にかかわらず、これらの規定により計算した金額に、これらの規定に規定する基礎となるべき税額に百分の十の割合を乗じて計算した金額を加算した金額とする。

 

 

所得税法

第六編 罰則

第二百三十八条 偽りその他不正の行為により、第百二十条第一項第三号(確定所得申告)(第百六十六条(申告、納付及び還付)において準用する場合を含む。)に規定する所得税の額(第九十五条(外国税額控除)又は第百六十五条の六(非居住者に係る外国税額の控除)の規定により控除をされるべき金額がある場合には、同号の規定による計算をこれらの規定を適用しないでした所得税の額)若しくは第百七十二条第一項第一号若しくは第二項第一号(給与等につき源泉徴収を受けない場合の申告)に規定する所得税の額につき所得税を免れ、又は第百四十二条第二項(純損失の繰戻しによる還付)(第百六十六条において準用する場合を含む。)の規定による所得税の還付を受けた者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

2 前項の免れた所得税の額又は同項の還付を受けた所得税の額が千万円を超えるときは、情状により、同項の罰金は、千万円を超えその免れた所得税の額又は還付を受けた所得税の額に相当する金額以下とすることができる。

3 第一項に規定するもののほか、第百二十条第一項、第百二十五条第一項(年の中途で死亡した場合の確定申告)、第百二十七条第一項(年の中途で出国をする場合の確定申告)、第百五十一条の四第一項若しくは第二項(相続により取得した有価証券等の取得費の額に変更があつた場合等の修正申告の特例)、第百五十一条の五第一項(遺産分割等があつた場合の期限後申告等の特例)若しくは第百五十一条の六第一項(遺産分割等があつた場合の修正申告の特例)(これらの規定を第百六十六条において準用する場合を含む。)又は第百七十二条第一項の規定による申告書をその提出期限までに提出しないことにより、第百二十条第一項第三号(第百六十六条において準用する場合を含む。)に規定する所得税の額(第九十五条又は第百六十五条の六の規定により控除をされるべき金額がある場合には、同号の規定による計算をこれらの規定を適用しないでした所得税の額)又は第百七十二条第一項第一号若しくは第二項第一号に規定する所得税の額につき所得税を免れた者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

4 前項の免れた所得税の額が五百万円を超えるときは、情状により、同項の罰金は、五百万円を超えその免れた所得税の額に相当する金額以下とすることができる。

 

 

憲法

第三十九条 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。

 

刑事訴訟法

第四百八条 上告裁判所は、上告趣意書その他の書類によつて、上告の申立の理由がないことが明らかであると認めるときは、弁論を経ないで、判決で上告を棄却することができる。

     

    主   文

 

 本件上告を棄却する。

 

       理   由

 

 弁護人柴田政雄、同鹿児嶋康雄、同浅田千秋の上告趣意第一点について

 同一の租税逋脱行為につきいわゆる追徴税と罰金を併科しても憲法三九条に違反しないことは、当裁判所大法廷判決の趣旨とするところであり(昭和二九年(オ)第二三六号同三三年四月三〇日大法廷判決・民集一二巻六号九三八頁、なお、同四三年(あ)第七一二号同四五年九月一一日第二小法廷判決・刑集二四巻一〇号一三三三頁参照。)、これを変更すべきものとは認められないから、所論は、理由のないことが明らかである。

 同第二点について

 所論は、量刑不当の主張であつて、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。よつて、同法四〇八条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

  昭和五三年六月六日

    最高裁判所第三小法廷

証券取引法(平成18年改正前)167条2項にいう「公開買付け等を行うことについての決定」の意義

 

 

証券取引法違反被告事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷決定/平成21年(あ)第375号

【判決日付】      平成23年6月6日

【判示事項】      証券取引法(平成18年法律第65号による改正前のもの)167条2項にいう「公開買付け等を行うことについての決定」の意義

【判決要旨】      証券取引法(平成18年法律第65号による改正前のもの)167条2項にいう「公開買付け等を行うことについての決定」をしたというためには、同項にいう「業務執行を決定する機関」において、公開買付け等の実現を意図して、公開買付け等またはそれに向けた作業等を会社の業務として行う旨の決定がされれば足り、公開買付け等の実現可能性があることが具体的に認められることは要しない。

【参照条文】      証券取引法(平成16年法律第97号による改正前のもの)167-1

             証券取引法(平成18年法律第65号による改正前のもの)167-2

             証券取引法(平成18年法律第65号による改正前のもの)167-3

             証券取引法施行令(平成17年政令第19号による改正前のもの)31

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集65巻4号385頁

 

 

金融商品取引法

(公開買付者等関係者の禁止行為)

第百六十七条 次の各号に掲げる者(以下この条において「公開買付者等関係者」という。)であつて、第二十七条の二第一項に規定する株券等で金融商品取引所に上場されているもの、店頭売買有価証券若しくは取扱有価証券に該当するもの(以下この条において「上場等株券等」という。)の同項に規定する公開買付け(同項本文の規定の適用を受ける場合に限る。)若しくはこれに準ずる行為として政令で定めるもの又は上場株券等の第二十七条の二十二の二第一項に規定する公開買付け(以下この条において「公開買付け等」という。)をする者(以下この条及び次条第二項において「公開買付者等」という。)の公開買付け等の実施に関する事実又は公開買付け等の中止に関する事実を当該各号に定めるところにより知つたものは、当該公開買付け等の実施に関する事実又は公開買付け等の中止に関する事実の公表がされた後でなければ、公開買付け等の実施に関する事実に係る場合にあつては当該公開買付け等に係る上場等株券等又は上場株券等の発行者である会社の発行する株券若しくは新株予約権付社債券その他の政令で定める有価証券(以下この条において「特定株券等」という。)又は当該特定株券等に係るオプションを表示する第二条第一項第十九号に掲げる有価証券その他の政令で定める有価証券(以下この項において「関連株券等」という。)に係る買付け等(特定株券等又は関連株券等(以下この条、次条第二項、第百七十五条の二及び第百九十七条の二第十五号において「株券等」という。)の買付けその他の取引で政令で定めるものをいう。以下この条、次条第二項、第百七十五条の二第二項及び第百九十七条の二第十五号において同じ。)をしてはならず、公開買付け等の中止に関する事実に係る場合にあつては当該公開買付け等に係る株券等に係る売付け等(株券等の売付けその他の取引で政令で定めるものをいう。以下この条、次条第二項、第百七十五条の二第二項及び第百九十七条の二第十五号において同じ。)をしてはならない。当該公開買付け等の実施に関する事実又は公開買付け等の中止に関する事実を次の各号に定めるところにより知つた公開買付者等関係者であつて、当該各号に掲げる公開買付者等関係者でなくなつた後六月以内のものについても、同様とする。

一 当該公開買付者等(その者が法人であるときは、その親会社を含む。以下この項において同じ。)の役員等(当該公開買付者等が法人以外の者であるときは、その代理人又は使用人) その者の職務に関し知つたとき。

二 当該公開買付者等の会社法第四百三十三条第一項に定める権利を有する株主又は同条第三項に定める権利を有する社員(当該株主又は社員が法人であるときはその役員等を、当該株主又は社員が法人以外の者であるときはその代理人又は使用人を含む。) 当該権利の行使に関し知つたとき。

三 当該公開買付者等に対する法令に基づく権限を有する者 当該権限の行使に関し知つたとき。

四 当該公開買付者等と契約を締結している者又は締結の交渉をしている者(その者が法人であるときはその役員等を、その者が法人以外の者であるときはその代理人又は使用人を含む。)であつて、当該公開買付者等が法人であるときはその役員等以外のもの、その者が法人以外の者であるときはその代理人又は使用人以外のもの 当該契約の締結若しくはその交渉又は履行に関し知つたとき。

五 当該公開買付け等(上場株券等の第二十七条の二十二の二第一項に規定する公開買付けを除く。)に係る上場等株券等の発行者(その役員等を含む。) 当該公開買付者等からの伝達により知つたとき(当該役員等にあつては、その者の職務に関し当該公開買付者等からの伝達により知つたとき。)。

六 第二号、第四号又は前号に掲げる者であつて法人であるものの役員等(その者が役員等である当該法人の他の役員等が、それぞれ第二号、第四号又は前号に定めるところにより当該公開買付者等の公開買付け等の実施に関する事実又は公開買付け等の中止に関する事実を知つた場合におけるその者に限る。) その者の職務に関し知つたとき。

2 前項に規定する公開買付け等の実施に関する事実又は公開買付け等の中止に関する事実とは、公開買付者等(当該公開買付者等が法人であるときは、その業務執行を決定する機関をいう。以下この項において同じ。)が、それぞれ公開買付け等を行うことについての決定をしたこと又は公開買付者等が当該決定(公表がされたものに限る。)に係る公開買付け等を行わないことを決定したことをいう。ただし、投資者の投資判断に及ぼす影響が軽微なものとして内閣府令で定める基準に該当するものを除く。

3 公開買付者等関係者(第一項後段に規定する者を含む。以下この項及び第五項において同じ。)から当該公開買付者等関係者が第一項各号に定めるところにより知つた同項に規定する公開買付け等の実施に関する事実又は公開買付け等の中止に関する事実(以下この条、次条第二項、第百七十五条の二第二項及び第百九十七条の二第十五号において「公開買付け等事実」という。)の伝達を受けた者(第一項各号に掲げる者であつて、当該各号に定めるところにより当該公開買付け等事実を知つたものを除く。)又は職務上当該伝達を受けた者が所属する法人の他の役員等であつて、その者の職務に関し当該公開買付け等事実を知つたものは、当該公開買付け等事実の公表がされた後でなければ、同項に規定する公開買付け等の実施に関する事実に係る場合にあつては当該公開買付け等に係る株券等に係る買付け等をしてはならず、同項に規定する公開買付け等の中止に関する事実に係る場合にあつては当該公開買付け等に係る株券等に係る売付け等をしてはならない。

4 第一項から前項までにおける公表がされたとは、公開買付け等事実について、当該公開買付者等により多数の者の知り得る状態に置く措置として政令で定める措置がとられたこと、第二十七条の三第一項(第二十七条の二十二の二第二項において準用する場合を含む。次項第八号において同じ。)の規定による公告若しくは第二十七条の十一第二項(第二十七条の二十二の二第二項において準用する場合を含む。)の規定による公告若しくは公表がされたこと又は第二十七条の十四第一項(第二十七条の二十二の二第二項において準用する場合を含む。同号において同じ。)の規定により第二十七条の三第二項(第二十七条の二十二の二第二項において準用する場合を含む。同号において同じ。)の公開買付届出書若しくは第二十七条の十一第三項(第二十七条の二十二の二第二項において準用する場合を含む。)の公開買付撤回届出書が公衆の縦覧に供されたことをいう。

5 第一項及び第三項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。

一 会社法第二百二条第一項第一号に規定する権利を有する者が当該権利を行使することにより株券を取得する場合

二 新株予約権(これに準ずるものとして政令で定める権利を含む。)を有する者が当該新株予約権を行使することにより株券(これに準ずるものとして政令で定める有価証券を含む。)を取得する場合

二の二 株券等に係るオプションを取得している者が当該オプションを行使することにより株券等に係る買付け等又は売付け等をする場合

三 会社法第百十六条第一項、第百八十二条の四第一項、第四百六十九条第一項、第七百八十五条第一項、第七百九十七条第一項、第八百六条第一項若しくは第八百十六条の六第一項の規定による株式の買取りの請求(これらに相当する他の法令の規定による請求として政令で定めるものを含む。)又は法令上の義務に基づき株券等に係る買付け等又は売付け等をする場合

四 公開買付者等の要請(当該公開買付者等が会社である場合には、その取締役会が決定したもの(監査等委員会設置会社にあつては会社法第三百九十九条の十三第五項の規定による取締役会の決議による委任又は同条第六項の規定による定款の定めに基づく取締役会の決議による委任に基づいて取締役の決定したものを含み、指名委員会等設置会社にあつては同法第四百十六条第四項の規定による取締役会の決議による委任に基づいて執行役の決定したものを含む。)に限る。)に基づいて当該公開買付け等に係る上場等株券等(上場等株券等の売買に係るオプションを含む。以下この号において同じ。)の買付け等をする場合(当該公開買付者等に当該上場等株券等の売付け等をする目的をもつて当該上場等株券等の買付け等をする場合に限る。)

五 公開買付け等に対抗するため当該公開買付け等に係る上場等株券等の発行者の取締役会が決定した要請(監査等委員会設置会社にあつては会社法第三百九十九条の十三第五項の規定による取締役会の決議による委任又は同条第六項の規定による定款の定めに基づく取締役会の決議による委任に基づいて取締役の決定した要請を含み、指名委員会等設置会社にあつては同法第四百十六条第四項の規定による取締役会の決議による委任に基づいて執行役の決定した要請を含む。)に基づいて当該上場等株券等(上場等株券等の売買に係るオプションを含む。)の買付け等をする場合

六 第百五十九条第三項の政令で定めるところにより株券等に係る買付け等又は売付け等をする場合

七 第一項に規定する公開買付け等の実施に関する事実を知つた者が当該公開買付け等の実施に関する事実を知つている者から買付け等を取引所金融商品市場若しくは店頭売買有価証券市場によらないでする場合又は同項に規定する公開買付け等の中止に関する事実を知つた者が当該公開買付け等の中止に関する事実を知つている者に売付け等を取引所金融商品市場若しくは店頭売買有価証券市場によらないでする場合(当該売付け等に係る者の双方において、当該売付け等に係る株券等について、更に同項又は第三項の規定に違反して売付け等が行われることとなることを知つている場合を除く。)

八 特定公開買付者等関係者(公開買付者等関係者であつて第一項各号に定めるところにより同項に規定する公開買付け等の実施に関する事実を知つたものをいう。次号において同じ。)から当該公開買付け等の実施に関する事実の伝達を受けた者(その者が法人であるときはその役員等を、その者が法人以外の者であるときはその代理人又は使用人を含む。)が株券等に係る買付け等をする場合(当該伝達を受けた者が第二十七条の三第一項の規定により行う公告において次に掲げる事項が明示され、かつ、これらの事項が記載された当該伝達を受けた者の提出した同条第二項の公開買付届出書が第二十七条の十四第一項の規定により公衆の縦覧に供された場合に限る。)

イ 当該伝達を行つた者の氏名又は名称

ロ 当該伝達を受けた時期

ハ 当該伝達を受けた公開買付け等の実施に関する事実の内容として内閣府令で定める事項

九 特定公開買付者等関係者であつて第一項第一号に掲げる者以外のもの又は特定公開買付者等関係者から同項に規定する公開買付け等の実施に関する事実の伝達を受けた者(特定公開買付者等関係者を除き、その者が法人であるときはその役員等を、その者が法人以外の者であるときはその代理人又は使用人を含む。)が株券等に係る買付け等をする場合(特定公開買付者等関係者にあつては同項各号に定めるところにより同項に規定する公開買付け等の実施に関する事実を知つた日から、当該伝達を受けた者にあつては当該伝達を受けた日から六月が経過している場合に限る。)

十 合併等により株券等を承継し、又は承継させる場合であつて、当該株券等の帳簿価額の当該合併等により承継される資産の帳簿価額の合計額に占める割合が特に低い割合として内閣府令で定める割合未満であるとき。

十一 合併等の契約(新設分割にあつては、新設分割計画)の内容の決定についての取締役会の決議が公開買付者等の公開買付け等事実を知る前にされた場合において、当該決議に基づいて当該合併等により当該公開買付け等に係る株券等を承継し、又は承継させるとき。

十二 新設分割(他の会社と共同してするものを除く。)により新設分割設立会社に株券等を承継させる場合

十三 合併等、株式交換又は株式交付に際して当該合併等、株式交換又は株式交付の当事者であつて公開買付け等に係る上場等株券等又は上場株券等の発行者である会社が有する当該会社の株券等の交付を受け、又は当該株券等を交付する場合

十四 公開買付者等の公開買付け等事実を知る前に締結された当該公開買付け等に係る株券等に係る買付け等若しくは売付け等に関する契約の履行又は公開買付者等の公開買付け等事実を知る前に決定された当該公開買付け等に係る株券等に係る買付け等若しくは売付け等の計画の実行として買付け等又は売付け等をする場合その他これに準ずる特別の事情に基づく買付け等又は売付け等であることが明らかな買付け等又は売付け等をする場合(内閣府令で定める場合に限る。)

 

商法265条所定の取引につき取締役会の承認を要しないとされた事例

 

 

              所有権移転登記手続等請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和43年(オ)第335号

【判決日付】      昭和45年8月20日

【判示事項】      商法265条所定の取引につき取締役会の承認を要しないとされた事例

【判決要旨】      会社と取締役間に商法265条所定の取引がなされる場合でも、右取締役が会社の全株式を所有し、会社の営業が実質上右取締役の個人経営のものにすぎないときは、右取引によつて両者の間に実質的に利害相反する関係を生ずるものでなく、右取引については、同条所定の取締役会の承認を必要としない。

【参照条文】      商法265

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集24巻9号1305頁

 

 

会社法

(競業及び利益相反取引の制限)
第三百五十六条 取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
一 取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。
二 取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。
三 株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。
2 民法第百八条の規定は、前項の承認を受けた同項第二号又は第三号の取引については、適用しない。

 

(競業及び取締役会設置会社との取引等の制限)

第三百六十五条 取締役会設置会社における第三百五十六条の規定の適用については、同条第一項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。

2 取締役会設置会社においては、第三百五十六条第一項各号の取引をした取締役は、当該取引後、遅滞なく、当該取引についての重要な事実を取締役会に報告しなければならない。