新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(平成11年改正前)3条8項に基づく除去処分の合憲性(積極)
建築物(木の根団結砦)除去処分取消等請求上告事件
【事件番号】 最高裁判所第1小法廷/平成13年(行ツ)第45号
【判決日付】 平成15年11月20日
【判示事項】 新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(平成11年法律第160号による改正前のもの。)3条8項に基づく除去処分の合憲性(積極)
【参照条文】 憲法29-1
憲法29-2
憲法31
新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(平成11年法律第160号による改正前のもの。)3-8
【掲載誌】 訟務月報50巻10号2948頁
憲法
第二十九条 財産権は、これを侵してはならない。
② 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
③ 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。
第三十一条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。
昭和五十三年法律第四十二号
成田国際空港の安全確保に関する緊急措置法
(工作物の使用の禁止等)
第三条 国土交通大臣は、規制区域内に所在する建築物その他の工作物について、その工作物が次の各号に掲げる用に供され、又は供されるおそれがあると認めるときは、当該工作物の所有者、管理者又は占有者に対して、期限を付して、当該工作物をその用に供することを禁止することを命ずることができる。
一 多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用
二 暴力主義的破壊活動等に使用され、又は使用されるおそれがあると認められる爆発物、火炎びん等の物の製造又は保管の場所の用
三 成田国際空港又はその周辺における航空機の航行に対する暴力主義的破壊活動者による妨害の用
2 国土交通大臣は、前項の禁止命令をしようとする場合において、当該禁止を命ぜられるべき者を確知することができないとき、又は当該命令を伝達することができないときは、公告によりこれを行うことができる。
3 国土交通大臣は、第一項の禁止命令をした場合において必要があると認めるときは、当該命令の履行を確保するため必要な限度において、その職員をして、当該工作物に立ち入らせ、又は関係者に質問させることができる。
4 前項の規定により立入りをする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。
5 第三項の規定による立入り又は質問の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
6 国土交通大臣は、第一項の禁止命令に係る工作物が当該命令に違反して同項各号に掲げる用に供されていると認めるときは、当該工作物について封鎖その他その用に供させないために必要な措置を講ずることができる。
7 国土交通大臣は、前項の規定により封鎖その他の措置を講じた場合において、その必要がなくなつたときは、速やかに、当該措置を解除しなければならない。
8 国土交通大臣は、第一項の禁止命令に係る工作物が当該命令に違反して同項各号に掲げる用に供されている場合においては、当該工作物の現在又は既往の使用状況、周辺の状況その他諸般の状況から判断して、暴力主義的破壊活動等にかかわるおそれが著しいと認められ、かつ、他の手段によつては同項の禁止命令の履行を確保することができないと認められるときであつて、第一条の目的を達成するため特に必要があると認められるときに限り、当該工作物を除去することができる。
9 国土交通大臣は、第六項又は前項の措置を講じようとするときは、必要な限度において、これらの項の工作物の所在する土地並びに当該工作物及び土地以外の物件及び土地を使用し、除去その他の処分をし、又はその使用を制限することができる。
10 国土交通大臣は、第六項又は第八項の措置を講じようとする場合において必要があると認めるときは、その現場にある者を退去させることができる。
11 国土交通大臣は、第八項又は第九項の規定により工作物その他の物件を除去した場合において、当該物件の所有者、占有者その他当該物件について権原を有する者(以下「所有者等」という。)を確知することができないため所有者等に対し当該物件を返還することができないときは、当該物件を保管しなければならない。
12 国土交通大臣は、前項の規定により物件を保管したときは、当該物件の所有者等に対し当該物件を返還するため、政令で定めるところにより、政令で定める事項を公示しなければならない。
13 国土交通大臣は、第十一項の規定により保管した物件が滅失し、若しくは破損するおそれがあるとき、又はその保管に過大な費用若しくは手数を要するときは、当該物件を売却し、その売却した代金を保管することができる。
14 前三項に規定する保管、公示、売却等に要した費用は、当該物件の返還を受けるべき所有者等の負担とし、その費用の徴収については、行政代執行法(昭和二十三年法律第四十三号)第五条及び第六条の規定を準用する。
15 第十二項に規定する公示の日から起算して六月を経過してもなお第十一項の規定により保管した物件(第十三項の規定により売却した代金を含む。)を返還することができないときは、当該物件の所有権は、国に帰属する。
16 国土交通大臣は、第一項又は第六項から第八項までの規定による権限を行使する場合においては、その要件の事実につき、関係行政機関に対し、必要な資料の提供及び意見の提出を求めるものとする。
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理 由
1 上告代理人葉山岳夫,同一瀬敬一郎,同大口昭彦,同辻惠,同古川勞の上告理由のうち,新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(平成11年法律第160号による改正前のもの。以下「法」という。)3条1項1号及び2号並びに同条8項の違憲をいう点について
法3条1項1号及び2号が憲法四条1項及び2項に違反するものではなく,憲法31条の法意に反するものでもないことは,当裁判所の判例(最高裁昭和61年(行ツ)第11号平成4年7月1日大法廷判決・民集46巻5号437頁)とするところである。法3条8項は,同条1項の禁止命令に係る工作物が当該命令に違反して同項各号に掲げる用に供されている場合においては,運輸大臣は,当該工作物の現在又は既往の使用状況,周辺の状況その他諸般の状況から判断して,暴力主義的破壊活動等にかかわるおそれが著しいと認められ,かつ,他の手段によっては同項の禁止命令の履行を確保することができないと認められるときであって,法1条の目的を達成するため特に必要があると認められるときに限り,当該工作物を除去することができる旨を規定しているものである。法3条8項に基づく工作物の除去処分は,既に同条1項に基づく禁止命令がされているにもかかわらず,これが遵守されていない場合において,上記の要件の下に,新東京国際空港の設置,管理等の安全を確保するために高度かつ緊急の必要性に基づいて行われるものであり,法4条により工作物の除去によって損失を受けた者は国から通常生ずべき損失の補償を受けることができることとされているのである。そうすると,【判示事項】 法3条8項が憲法29条1項及び2項に違反するものではなく,憲法31条の法意に反するものでもないことは,上記判例の趣旨に徴して明らかであるというべきである。
以上と同旨の原審の判断は,正当として是認することができ,原判決に所論の違法はない。論旨は採用することができない。
2 その余の上告理由について
論旨は,違憲をいうが,その実質は事実誤認若しくは単なる法令違反をいうもの又はその前提を欠くものであって,民訴法312条1項及び2項に規定する事由のいずれにも該当しない。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。