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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(平成11年改正前)3条8項に基づく除去処分の合憲性(積極)

 

 

              建築物(木の根団結砦)除去処分取消等請求上告事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷/平成13年(行ツ)第45号

【判決日付】      平成15年11月20日

【判示事項】       新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(平成11年法律第160号による改正前のもの。)3条8項に基づく除去処分の合憲性(積極)

【参照条文】      憲法29-1

             憲法29-2

             憲法31

             新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(平成11年法律第160号による改正前のもの。)3-8

【掲載誌】        訟務月報50巻10号2948頁

 

 

憲法

第二十九条 財産権は、これを侵してはならない。

② 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。

③ 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

 

第三十一条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

 

 

昭和五十三年法律第四十二号

成田国際空港の安全確保に関する緊急措置法

(工作物の使用の禁止等)

第三条 国土交通大臣は、規制区域内に所在する建築物その他の工作物について、その工作物が次の各号に掲げる用に供され、又は供されるおそれがあると認めるときは、当該工作物の所有者、管理者又は占有者に対して、期限を付して、当該工作物をその用に供することを禁止することを命ずることができる。

一 多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用

二 暴力主義的破壊活動等に使用され、又は使用されるおそれがあると認められる爆発物、火炎びん等の物の製造又は保管の場所の用

三 成田国際空港又はその周辺における航空機の航行に対する暴力主義的破壊活動者による妨害の用

2 国土交通大臣は、前項の禁止命令をしようとする場合において、当該禁止を命ぜられるべき者を確知することができないとき、又は当該命令を伝達することができないときは、公告によりこれを行うことができる。

3 国土交通大臣は、第一項の禁止命令をした場合において必要があると認めるときは、当該命令の履行を確保するため必要な限度において、その職員をして、当該工作物に立ち入らせ、又は関係者に質問させることができる。

4 前項の規定により立入りをする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。

5 第三項の規定による立入り又は質問の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

6 国土交通大臣は、第一項の禁止命令に係る工作物が当該命令に違反して同項各号に掲げる用に供されていると認めるときは、当該工作物について封鎖その他その用に供させないために必要な措置を講ずることができる。

7 国土交通大臣は、前項の規定により封鎖その他の措置を講じた場合において、その必要がなくなつたときは、速やかに、当該措置を解除しなければならない。

8 国土交通大臣は、第一項の禁止命令に係る工作物が当該命令に違反して同項各号に掲げる用に供されている場合においては、当該工作物の現在又は既往の使用状況、周辺の状況その他諸般の状況から判断して、暴力主義的破壊活動等にかかわるおそれが著しいと認められ、かつ、他の手段によつては同項の禁止命令の履行を確保することができないと認められるときであつて、第一条の目的を達成するため特に必要があると認められるときに限り、当該工作物を除去することができる。

9 国土交通大臣は、第六項又は前項の措置を講じようとするときは、必要な限度において、これらの項の工作物の所在する土地並びに当該工作物及び土地以外の物件及び土地を使用し、除去その他の処分をし、又はその使用を制限することができる。

10 国土交通大臣は、第六項又は第八項の措置を講じようとする場合において必要があると認めるときは、その現場にある者を退去させることができる。

11 国土交通大臣は、第八項又は第九項の規定により工作物その他の物件を除去した場合において、当該物件の所有者、占有者その他当該物件について権原を有する者(以下「所有者等」という。)を確知することができないため所有者等に対し当該物件を返還することができないときは、当該物件を保管しなければならない。

12 国土交通大臣は、前項の規定により物件を保管したときは、当該物件の所有者等に対し当該物件を返還するため、政令で定めるところにより、政令で定める事項を公示しなければならない。

13 国土交通大臣は、第十一項の規定により保管した物件が滅失し、若しくは破損するおそれがあるとき、又はその保管に過大な費用若しくは手数を要するときは、当該物件を売却し、その売却した代金を保管することができる。

14 前三項に規定する保管、公示、売却等に要した費用は、当該物件の返還を受けるべき所有者等の負担とし、その費用の徴収については、行政代執行法(昭和二十三年法律第四十三号)第五条及び第六条の規定を準用する。

15 第十二項に規定する公示の日から起算して六月を経過してもなお第十一項の規定により保管した物件(第十三項の規定により売却した代金を含む。)を返還することができないときは、当該物件の所有権は、国に帰属する。

16 国土交通大臣は、第一項又は第六項から第八項までの規定による権限を行使する場合においては、その要件の事実につき、関係行政機関に対し、必要な資料の提供及び意見の提出を求めるものとする。

 

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人らの負担とする。

 

       理   由

 

1 上告代理人葉山岳夫,同一瀬敬一郎,同大口昭彦,同辻惠,同古川勞の上告理由のうち,新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(平成11年法律第160号による改正前のもの。以下「法」という。)3条1項1号及び2号並びに同条8項の違憲をいう点について

 法3条1項1号及び2号が憲法四条1項及び2項に違反するものではなく,憲法31条の法意に反するものでもないことは,当裁判所の判例(最高裁昭和61年(行ツ)第11号平成4年7月1日大法廷判決・民集46巻5号437頁)とするところである。法3条8項は,同条1項の禁止命令に係る工作物が当該命令に違反して同項各号に掲げる用に供されている場合においては,運輸大臣は,当該工作物の現在又は既往の使用状況,周辺の状況その他諸般の状況から判断して,暴力主義的破壊活動等にかかわるおそれが著しいと認められ,かつ,他の手段によっては同項の禁止命令の履行を確保することができないと認められるときであって,法1条の目的を達成するため特に必要があると認められるときに限り,当該工作物を除去することができる旨を規定しているものである。法3条8項に基づく工作物の除去処分は,既に同条1項に基づく禁止命令がされているにもかかわらず,これが遵守されていない場合において,上記の要件の下に,新東京国際空港の設置,管理等の安全を確保するために高度かつ緊急の必要性に基づいて行われるものであり,法4条により工作物の除去によって損失を受けた者は国から通常生ずべき損失の補償を受けることができることとされているのである。そうすると,【判示事項】 法3条8項が憲法29条1項及び2項に違反するものではなく,憲法31条の法意に反するものでもないことは,上記判例の趣旨に徴して明らかであるというべきである。

 以上と同旨の原審の判断は,正当として是認することができ,原判決に所論の違法はない。論旨は採用することができない。

2 その余の上告理由について

 論旨は,違憲をいうが,その実質は事実誤認若しくは単なる法令違反をいうもの又はその前提を欠くものであって,民訴法312条1項及び2項に規定する事由のいずれにも該当しない。

 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

被疑者の勾留請求の資料とされた告訴状及び被害者の供述調書が民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当するとされた事例

 

 

文書提出命令に対する抗告審の変更決定に対する許可抗告事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷決定/平成19年(許)第22号

【判決日付】      平成19年12月12日

【判示事項】      1 被疑者の勾留請求の資料とされた告訴状及び被害者の供述調書が民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当するとされた事例

             2 被疑者の勾留請求の資料とされた告訴状及び被害者の供述調書が民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当するとして文書提出命令が申し立てられた場合に,刑訴法47条に基づきその提出を拒否した上記各文書の所持者である国の判断が,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとされた事例

【判決要旨】      1 検察官が被疑者の勾留請求に当たって刑訴規則148条1項3号所定の資料として裁判官に提供した告訴状及び被害者の供述調書は,いずれも,上記各文書を所持する国と上記請求により勾留された者との間において,民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当する。

             2 強姦の被疑事実に基づき勾留された被疑者が,勾留請求の違法を主張して国家賠償を求める本案訴訟において,検察官が刑訴規則148条1項3号所定の資料として裁判官に提供した告訴状及び被害者の供述調書について,民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当することを理由として文書提出命令を申し立てた場合,刑訴法47条に基づきその提出を拒否した上記各文書の所持者である国の判断は,次の(1)~(3)などの判示の事情の下では,裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものというべきである。

             (1)勾留の裁判が準抗告審において取り消されており,検察官が被疑者には罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると判断するに際し最も基本的な資料となった上記各文書には,取調べの必要性がある。

             (2)被害者は,被疑事実が不法行為を構成するとして,被疑者に対する損害賠償請求訴訟を提起しており,その審理に必要な範囲でプライバシーが明らかにされることを容認していたということができ,また,国は,本案訴訟において,被害者の供述内容として被害の態様が極めて詳細かつ具体的に記載された検察官の陳述書を既に書証として提出しており,上記各文書が開示されることによって,被害者の名誉,プライバシーの侵害の弊害が生ずるおそれがあるとは認められない。

             (3)被疑事件については不起訴処分がされており,また,上記陳述書の内容はほぼ上記供述調書の記載に従ったもののようにうかがわれ,上記各文書が開示されることによって,捜査や公判に不当な影響が及ぶおそれがあるとは認められない。

             (2につき補足意見がある。)

【参照条文】      民事訴訟法220

             刑事訴訟法60

             刑事訴訟法205

             刑事訴訟法207

             刑事訴訟規則148-1

             刑事訴訟法47

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集61巻9号3400頁

 

 

民事訴訟法

(文書提出義務)

第二百二十条 次に掲げる場合には、文書の所持者は、その提出を拒むことができない。

一 当事者が訴訟において引用した文書を自ら所持するとき。

二 挙証者が文書の所持者に対しその引渡し又は閲覧を求めることができるとき。

三 文書が挙証者の利益のために作成され、又は挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成されたとき。

四 前三号に掲げる場合のほか、文書が次に掲げるもののいずれにも該当しないとき。

イ 文書の所持者又は文書の所持者と第百九十六条各号に掲げる関係を有する者についての同条に規定する事項が記載されている文書

ロ 公務員の職務上の秘密に関する文書でその提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの

ハ 第百九十七条第一項第二号に規定する事実又は同項第三号に規定する事項で、黙秘の義務が免除されていないものが記載されている文書

ニ 専ら文書の所持者の利用に供するための文書(国又は地方公共団体が所持する文書にあっては、公務員が組織的に用いるものを除く。)

ホ 刑事事件に係る訴訟に関する書類若しくは少年の保護事件の記録又はこれらの事件において押収されている文書

 

 

刑事訴訟法

第四十七条 訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。但し、公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる場合は、この限りでない。

 

第六十条 裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。

一 被告人が定まつた住居を有しないとき。

二 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

三 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

② 勾留の期間は、公訴の提起があつた日から二箇月とする。特に継続の必要がある場合においては、具体的にその理由を附した決定で、一箇月ごとにこれを更新することができる。但し、第八十九条第一号、第三号、第四号又は第六号にあたる場合を除いては、更新は、一回に限るものとする。

③ 三十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律(大正十五年法律第六十号)及び経済関係罰則の整備に関する法律(昭和十九年法律第四号)の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる事件については、被告人が定まつた住居を有しない場合に限り、第一項の規定を適用する。

 

第二百五条 検察官は、第二百三条の規定により送致された被疑者を受け取つたときは、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者を受け取つた時から二十四時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。

② 前項の時間の制限は、被疑者が身体を拘束された時から七十二時間を超えることができない。

③ 前二項の時間の制限内に公訴を提起したときは、勾留の請求をすることを要しない。

④ 第一項及び第二項の時間の制限内に勾留の請求又は公訴の提起をしないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。

 

第二百七条 前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。但し、保釈については、この限りでない。

② 前項の裁判官は、勾留を請求された被疑者に被疑事件を告げる際に、被疑者に対し、弁護人を選任することができる旨及び貧困その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは弁護人の選任を請求することができる旨を告げなければならない。ただし、被疑者に弁護人があるときは、この限りでない。

③ 前項の規定により弁護人を選任することができる旨を告げるに当たつては、勾留された被疑者は弁護士、弁護士法人又は弁護士会を指定して弁護人の選任を申し出ることができる旨及びその申出先を教示しなければならない。

④ 第二項の規定により弁護人の選任を請求することができる旨を告げるに当たつては、弁護人の選任を請求するには資力申告書を提出しなければならない旨及びその資力が基準額以上であるときは、あらかじめ、弁護士会(第三十七条の三第二項の規定により第三十一条の二第一項の申出をすべき弁護士会をいう。)に弁護人の選任の申出をしていなければならない旨を教示しなければならない。

⑤ 裁判官は、第一項の勾留の請求を受けたときは、速やかに勾留状を発しなければならない。ただし、勾留の理由がないと認めるとき、及び前条第二項の規定により勾留状を発することができないときは、勾留状を発しないで、直ちに被疑者の釈放を命じなければならない。

 

 

刑事訴訟規則

(資料の提供・法第二百四条等)

第百四十八条 被疑者の勾留を請求するには、次に掲げる資料を提供しなければならない。

一 その逮捕が逮捕状によるときは、逮捕状請求書並びに逮捕の年月日時及び場所、引致

の年月日時、送致する手続をした年月日時及び送致を受けた年月日時が記載されそれぞれ

その記載についての記名押印のある逮捕状

二 その逮捕が現行犯逮捕であるときは、前号に規定する事項を記載した調書その他の書

三 法に定める勾留の理由が存在することを認めるべき資料

2 検察官又は司法警察員がやむを得ない事情によつて法に定める時間の制限に従うこと

ができなかつたときは、これを認めるべき資料をも提供しなければならない。

 

 

 

不動産の共有者が当該不動産を単独で占有する他の共有者に対し不当利得返還請求ないし損害賠償請求をすることの可否

 

 

              建物収去土地明渡等本訴請求、土地所有権確認等反訴請求、土地持分移転登記手続等反訴請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/平成9年(オ)第1876号

【判決日付】      平成12年4月7日

【判示事項】      1 不動産の共有者が当該不動産を単独で占有する他の共有者に対し不当利得返還請求ないし損害賠償請求をすることの可否

             2 請求の一部についての予備的な請求原因となるべき相続取得の主張を原告がしていなくても裁判所は被相続人の死亡等の事実をしんしゃくすべきであるとされた事例

【判決要旨】      1 不動産の共有者は当該不動産を単独で占有することができる権原がないのにこれを単独で占有している他の共有者に対し、自己の持分割合に応じて占有部分に係る賃料相当額の不当利得金ないし損害賠償金の支払を請求することができる。

             2 原告が、夫の父が土地を夫に贈与し夫から右土地を相続取得したと主張して、右土地を占有する被告らに対し地代相当損害金等を請求する訴訟において、裁判所は、当事者の主張に基づいて右父の死亡、夫がその相続人の一人であること等の事実を確定した以上、右死亡により夫が右土地の持分を相続取得したことを原告が主張しなかったとしても、適切に釈明権を行使するなどした上でこれらの事実をしんしゃくし、夫の相続による持分の取得及び原告の相続による当該持分の取得を理由に原告の請求の一部を認容すべきであるかどうかについて審理判断すべきである。

【参照条文】      民法249

             民法703

             民法709

             民事訴訟法246

【掲載誌】        最高裁判所裁判集民事198号1頁

             裁判所時報1265号275頁

             判例タイムズ1034号98頁

             金融・商事判例1104号12頁

             判例時報1713号50頁

 

 

民法

(共有物の使用)

第二百四十九条 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。

2 共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。

3 共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければならない。

 

(不当利得の返還義務)

第七百三条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

 

(不法行為による損害賠償)

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

 

民事訴訟法

(判決事項)

第二百四十六条 裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない。

 

 

 

既存の著作物を知らないでこれと同一性のある作品を作成した場合と著作権侵害の成否

 

 

著作権不存在等確認及び著作権損害賠償請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和50年(オ)第324号

【判決日付】      昭和53年9月7日

【判示事項】      既存の著作物を知らないでこれと同一性のある作品を作成した場合と著作権侵害の成否

【判決要旨】      既存の著作物を知らないでこれと同一性のある作品を作成した場合には、これを知らなかつたことにつき過失があるかどうかを問わず、著作権侵害の責任を負わない。

【参照条文】      旧著作権法(明治32年法律第39号)29

             旧著作権法1

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集32巻6号1145頁

 

 

著作権法

(複製権)

第二十一条 著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。

 

第12章 債務者の責任財産の保全のための制度

第1節 はじめに

債務者の責任財産の保全のための制度

 

責任財産を保全する必要性

債務者が金銭債務を履行しない場合・・・

債務者が、自己の有する権利を行使しない場合(例1)

自己の財産を流出させる場合(例2)

には、債権回収が困難になるおそれ → 責任財産の保全のための方策が必要

債権者は、勝訴判決などの債務名義(強制執行の根拠となる文書)を得た上、債務者の財産(=責任財産)に対して強制執行をして、債権回収をすることができる。

請負業者(債務者)に融資している銀行は、返済がされないときは、債務者の責任財産(工場の土地建物、未収債権など)に強制執行をすることができる。

銀行(代位債権者)→請負業者(債務者)

貸金債権(被保全債権)

〈例〉

例1:債務超過に陥った請負業者(債務者)が注文者からの請負代金の回収を怠っている場合

例2:債務超過に陥った請負業者(債務者)が、所有する不動産を配偶者に無償で譲渡(贈与)し所有権移転登記をした場合

この事態に対処するため

債権者代位の制度

詐害行為取消の制度

 

第2節 債権者代位権に関する見直し

債権者代位権に関する見直し

 

問題の所在

債権者が他人である債務者の財産管理に介入する制度であるにもかかわらず、旧法423条は骨格を定めているのみ。

→具体的なルールは判例によって形成されている。

次のようなルール等を創設

改正法の内容

債権者が自己の債権を保全するために必要があるときは、債務者の第三者に対する権利を債務者に代わって行使(代位行使)することができる制度

金銭債権等を代位行使する場合には、債権者は自己への支払等を求めることができる。【新§423条の3】

債権者の権利行使後も被代位権利についての債務者の処分は妨げられない。 【新§423-5】

債権者が訴えをもって代位行使をするときは、債務者に訴訟告知をしなければならない。 【新§423条の6】

※訴訟告知:訴訟が提起されたことを利害関係のある第三者に告知する裁判上の手続をいう。

債権者代位権とは、債務超過に陥った請負業者(債務者)が注文者(第三債務者)からの請負代金の回収を怠っている場合に、その請負業者に融資している銀行(債権者)は、注文者に対する請負代金債権を代位行使することができる。 債権者代位権の行使

銀行(債権者)→請負業者(債務者)→注文者(第三債務者)

貸金債権(被保全債権)     請負代金債権(被代位権利)

債務者や第三債務者の利益保護等も考慮して、ルールの明確化・合理化を図る必要がある。

【参照条文(旧法)】

第423条 債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。

2 債権者は、その債権の期限が到来しない間は、裁判上の代位によらなければ、前項の権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。

〈例〉

銀行が、注文者を被告として、銀行に対して請負代金を支払うよう求める訴えを提起

 

問題の所在

債権者が他人(債務者)がした行為の取消し等を裁判上請求するという強力な制度であり、複雑な利害調整を要するにもかかわらず、旧法424条以下の3か条で骨格を定めているのみ。

→具体的なルールは判例によって形成されている。

 

第3節 詐害行為取消権

改正法の内容

債務者が債権者を害することを知ってした行為(詐害行為)について、債権者がその取消し等を裁判所に請求することができる制度

〈例〉

詐害行為取消権とは、債務超過に陥った請負業者(債務者)が、自己が所有する建物を配偶者に無償で譲渡し(贈与)、所有権移転登記をした場合に、請負業者に融資している銀行(債権者)は、贈与契約の取消しと所有権移転登記の抹消を裁判所に請求することができる。

詐害行為取消権の行使

建物を贈与し、登記を移転

(詐害行為)

銀行(債権者)→請負業者(債務者)

貸金債権(被保全債権)

銀行(債権者)→配偶者(受益者)

貸金債権(被保全債権)

関係当事者の利益調整も考慮しつつ、ルールの明確化・合理化を図る必要がある。

 

詐害行為取消権に関する見直し

債権者は、債務者がした行為の取消しとともに逸出財産の返還(返還が困難であるときは価額の償還)を請求することができる。 【新§424条の6】

詐害行為取消しの訴えにおいては、受益者を被告とし、債務者には訴訟告知をすることを要する。 【新§424条の7】

詐害行為取消権の要件(詐害行為性、詐害意思等)についても、類似する制度(破産法の否認権等)との整合性をとりつつ、具体的に明確化する。 【新§424条の2~ § 424条の4】

 

所有権移転請求権保全仮登記の効力

 

 

              家屋明渡請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和33年(オ)第871号

【判決日付】      昭和36年6月29日

【判示事項】      1、所有権移転請求権保全仮登記の効力

             2、仮登記ある不動産の賃貸借と本登記名義人に対する損害の発生

【判決要旨】      1、所有権移転請求権保全の仮登記後本登記をしたときは、仮登記の時以後におけるこれと相容れない中間処分の効力を否定することができるけれども、仮登記の時に所有権移転のあつた事実が擬制されるものではない。

             2、家屋賃貸借が仮登記後の中間処分として本登記名義人に対抗できない場合でも、特段の事情のないかぎり、本登記名義人において、現実に所有権を取得する以前、右賃貸借にもとづく家屋占有により損害を被つたものと認むべきではない。

【参照条文】      不動産登記法

             不動産登記法7-2

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集15巻6号1764頁

 

 

不動産登記法

(仮登記に基づく本登記の順位)

第百六条 仮登記に基づいて本登記(仮登記がされた後、これと同一の不動産についてされる同一の権利についての権利に関する登記であって、当該不動産に係る登記記録に当該仮登記に基づく登記であることが記録されているものをいう。以下同じ。)をした場合は、当該本登記の順位は、当該仮登記の順位による。

 

(仮登記に基づく本登記)

第百九条 所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者(本登記につき利害関係を有する抵当証券の所持人又は裏書人を含む。以下この条において同じ。)がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる。

2 登記官は、前項の規定による申請に基づいて登記をするときは、職権で、同項の第三者の権利に関する登記を抹消しなければならない。

 

 

手形偽造と手形法8条の類推適用

 

 

              約束手形金請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和43年(オ)第942号

【判決日付】      昭和49年6月28日

【判示事項】      手形偽造と手形法8条の類推適用

【判決要旨】      手形を偽造した者は、手形法8条の類推適用により手形上の責任を負うものと解するのが相当である。

【参照条文】      手形法

             手形法77-2

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集28巻5号655頁

 

 

手形法

第八条 代理権ヲ有セザル者ガ代理人トシテ為替手形ニ署名シタルトキハ自ラ其ノ手形ニ因リ義務ヲ負フ其ノ者ガ支払ヲ為シタルトキハ本人ト同一ノ権利ヲ有ス権限ヲ超エタル代理人ニ付亦同ジ

 

第七十七条 左ノ事項ニ関スル為替手形ニ付テノ規定ハ約束手形ノ性質ニ反セザル限リ之ヲ約束手形ニ準用ス

一 裏書(第十一条乃至第二十条)

二 満期(第三十三条乃至第三十七条)

三 支払(第三十八条乃至第四十二条)

四 支払拒絶ニ因ル遡求(第四十三条乃至第五十条、第五十二条乃至第五十四条)

五 参加支払(第五十五条、第五十九条乃至第六十三条)

六 謄本(第六十七条及第六十八条)

七 変造(第六十九条)

八 時効(第七十条及第七十一条)

九 休日、期間ノ計算及恩恵日ノ禁止(第七十二条乃至第七十四条)

② 第三者方ニテ又ハ支払人ノ住所地ニ非ザル地ニ於テ支払ヲ為スベキ為替手形(第四条及第二十七条)、利息ノ約定(第五条)、支払金額ニ関スル記載ノ差異(第六条)、第七条ニ規定スル条件ノ下ニ為サレタル署名ノ効果、権限ナクシテ又ハ之ヲ超エテ為シタル者ノ署名ノ効果(第八条)及白地為替手形(第十条)ニ関スル規定モ亦之ヲ約束手形ニ準用ス

③ 保証ニ関スル規定(第三十条乃至第三十二条)モ亦之ヲ約束手形ニ準用ス第三十一条末項ノ場合ニ於テ何人ノ為ニ保証ヲ為シタルカヲ表示セザルトキハ約束手形ノ振出人ノ為ニ之ヲ為シタルモノト看做ス

 

 

百貨店会社がトルコ共和国において出店事業を計画し、現地法人に対し事業のため二回にわたり各一五〇〇万米ドルを貸付けをした場合において、取締役には、第二の貸付けを中止し、又は確実な保全措置をとる義務、その後出店事業計画を中止し、債権を回収すべき義務に違反するところはないとされた事例

 

 

損害賠償請求権査定の決定に対する異議事件

【事件番号】      東京地方裁判所判決/平成12年(ワ)第27221号

【判決日付】      平成16年9月28日

【判示事項】      一 民事再生手続が開始された百貨店経営会社の旧取締役の善管注意義務・忠実義務違反を理由とする損害賠償査定決定が取り消された事例

             二 百貨店会社がトルコ共和国において出店事業を計画し、現地法人に対し事業のため二回にわたり各一五〇〇万米ドルを貸付けをした場合において、取締役には、第二の貸付けを中止し、又は確実な保全措置をとる義務、その後出店事業計画を中止し、債権を回収すべき義務に違反するところはないとされた事例

【参照条文】      商法266

             民事再生法143

             民事再生法145

【掲載誌】        判例時報1886号111頁

 

 

会社法

(株式会社と役員等との関係)

第三百三十条 株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。

 

(忠実義務)

第三百五十五条 取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない。

 

 

民事再生法

(損害賠償請求権の査定の申立て等)

第百四十三条 裁判所は、法人である再生債務者について再生手続開始の決定があった場合において、必要があると認めるときは、再生債務者等の申立てにより又は職権で、役員の責任に基づく損害賠償請求権の査定の裁判をすることができる。

2 前項に規定する場合において、管財人が選任されていないときは、再生債権者も、同項の申立てをすることができる。

3 第一項の申立てをするときは、その原因となる事実を疎明しなければならない。

4 裁判所は、職権で査定の手続を開始する場合には、その旨の決定をしなければならない。

5 第一項の申立てがあったとき、又は職権による査定の手続の開始決定があったときは、時効の完成猶予及び更新に関しては、裁判上の請求があったものとみなす。

6 査定の手続(第一項の査定の裁判があった後のものを除く。)は、再生手続が終了したときは、終了する。

 

(査定の裁判に対する異議の訴え)

第百四十五条 第百四十三条第一項の査定の裁判に不服がある者は、その送達を受けた日から一月の不変期間内に、異議の訴えを提起することができる。

2 前項の訴えは、再生裁判所が管轄する。

3 第一項の訴え(次項の訴えを除く。)は、これを提起する者が、役員であるときは第百四十三条第一項の申立てをした者を、同項の申立てをした者であるときは役員を、それぞれ被告としなければならない。

4 職権でされた査定の裁判に対する第一項の訴えは、これを提起する者が、役員であるときは再生債務者等を、再生債務者等であるときは役員を、それぞれ被告としなければならない。

 

岩手教組事件・地方公務員法37条1項、61条4号の合憲性

 

 

              地方公務員法違反、道路交通法違反被告事件

【事件番号】      最高裁判所大法廷判決/昭和44年(あ)第1275号

【判決日付】      昭和51年5月21日

【判示事項】      1、地方公務員法37条1項、61条4号の合憲性

             2、地方公務員法61条4号の法意

             3、昭和36年度全国中学校一せい学力調査実施のため中学校に赴こうとするテスト立会人らを道路上で阻止した行為につき道路交通法120条1項9号、76条4項2号の罪の成立を否定した原判決が刑訴法411条1号にあたるとされた事例

【判決要旨】      1、地方公務員法37条1項は憲法28条に、地方公務員法第1条4号は憲法18条、28条に違反しない。

             2、地方公務員法61条4号は、地方公務員の為議行為に違法性の強いものと弱いものとを区別して前者のみが右法条にいう争議行為にあたるものとし、また、右争議行為の遂行を共謀し、そそのかし、又はあおる等の行為のうちいわゆる争議行為に通常随伴する行為を刑事制裁の対象から除外する趣旨と解すべきではない。

             3、昭和26年度全国中学校一せい学力調査実施のため中学校に赴こうとするテスト立会人らを道路上で阻止した本件行為(判文参照)につき、道路交通法120条1項9号、76条4項2号に該当するとしながら、正当な団体行動権の行使にあたることを理由に違法性が阻却されるとした原判決は、法令の解釈適用を誤り、かつ、これを放棄しなければ著しく正義に反する場合にあたる。(1、2、につき補足意見及び意見が、3、につき反対意見がある。)

【参照条文】      憲法18

             憲法21

             憲法28

             地方公務員法37-1

             地方公務員法61

             刑法35

             道路交通法120-1

             道路交通法76-4

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集30巻5号1178頁

 

 

憲法

第十八条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

 

第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

② 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

 

第二十六条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。

② すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

 

 

地方公務員法

(争議行為等の禁止)

第三十七条 職員は、地方公共団体の機関が代表する使用者としての住民に対して同盟罷業、怠業その他の争議行為をし、又は地方公共団体の機関の活動能率を低下させる怠業的行為をしてはならない。又、何人も、このような違法な行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおつてはならない。

2 職員で前項の規定に違反する行為をしたものは、その行為の開始とともに、地方公共団体に対し、法令又は条例、地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程に基いて保有する任命上又は雇用上の権利をもつて対抗することができなくなるものとする。

 

第六十二条の二 何人たるを問わず、第三十七条第一項前段に規定する違法な行為の遂行を共謀し、唆し、若しくはあおり、又はこれらの行為を企てた者は、三年以下の禁錮又は百万円以下の罰金に処する。

 

報道のための取材活動と憲法第21条

 

 

法廷等の秩序維持に関する法律による制裁事件に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件

【事件番号】      最高裁判所大法廷決定/昭和29年(秩ち)第1号

【判決日付】      昭和33年2月17日

【判示事項】      1、報道のための取材活動と憲法第21条

             2、刑訴規則第215条は憲法第21条に違反するか

【判決要旨】      1、新聞が真実を報道することは、憲法第21条の認める表現の自由に属し、またそのための取材活動も認められなければならないことはいうまでもないが、その自由も無制限であるということはできず、たとい公判廷の状況を一般に報道するための取材活動であつても、その活動が公判廷における審判の秩序を乱し、被告人その他訴訟関係人の正当な利益を不当に害するが如きものは、もとより許されないところである。

             2、刑訴規則第215条は憲法第12条に違反しない。

【参照条文】      法廷等の秩序維持に関する法律2-1

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集12巻2号253頁

 

 

憲法

第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

② 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

 

 

法廷等の秩序維持に関する法律

(制裁)

第二条 裁判所又は裁判官(以下「裁判所」という。)が法廷又は法廷外で事件につき審判その他の手続をするに際し、その面前その他直接に知ることができる場所で、秩序を維持するため裁判所が命じた事項を行わず若しくは執つた措置に従わず、又は暴言、暴行、けヽんヽ騒その他不穏当な言動で裁判所の職務の執行を妨害し若しくは裁判の威信を著しく害した者は、二十日以下の監置若しくは三万円以下の過料に処し、又はこれを併科する。

2 監置は、監置場に留置する。

 

 

 

 

       主   文

 

 本件特別抗告を棄却する。

 

       理   由

 

 代理人弁護士上田保の特別抗告申立理由第一点について。

 所論は、申立人の所為は法廷等の秩序維持に関する法律二条に該当しないのにかかわらず、これに制裁を科した第一審決定を維持した原決定は、憲法三一条に違反するというに帰する。

 しかし所論違憲の理由とするところは、原審が法廷等の秩序維持に関する法律二条の解釈を誤つたものとし、あるいは原審に事実誤認のあることを前提とする単なる法令違反の主張に帰するので、論旨は採用することができない。

 同第二点について。

 所論は、原決定は申立人の第一審決定認定の事実が法廷等の秩序維持に関する法律の定める制裁を科せられる行為に当らないとの抗告理由について判断をしなかつたのであるから、憲法三二条に違反するというに帰する。

 しかし記録に徴するも、所論のような主張は、原審がこれを単なる事実誤認の主張と認めて適法な抗告理由とならないと判断しているのであり、その判断は正当である。従つて原審が抗告理由について判断しなかつたとの所論は、前提を欠くばかりでなく、単なる訴訟法違反の主張にほかならないので、採用することができない。

 同第三点について。

 所論は、原決定は憲法二一条の解釈を誤り新聞の報道の自由を制限したものであつて、同条に違反するというに帰する。

 およそ、新聞が真実を報道することは、憲法二一条の認める表現の自由に属し、またそのための取材活動も認められなければならないことはいうまでもない。しかし、憲法が国民に保障する自由であつても、国民はこれを濫用してはならず、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負うのであるから(憲法一二条)、その自由も無制限であるということはできない。そして、憲法が裁判の対審及び判決を公開法廷で行うことを規定しているのは、手続を一般に公開してその審判が公正に行われることを保障する趣旨にほかならないのであるから、たとい公判廷の状況を一般に報道するための取材活動であつても、その活動が公判廷における審判の秩序を乱し被告人その他訴訟関係人の正当な利益を不当に害するがごときものは、もとより許されないところであるといわなければならない。ところで、公判廷における写真の撮影等は、その行われる時、場所等のいかんによつては、前記のような好ましくない結果を生ずる恐れがあるので、刑事訴訟規則二一五条は写真撮影の許可等を裁判所の裁量に委ね、その許可に従わないかぎりこれらの行為をすることができないことを明らかにしたのであつて、右規則は憲法に違反するものではない。

 本件について第一審裁判所の確定した事実によれば、申立人AはB釧路支社報道部写真班員であり、昭和二八年一二月一〇日午前一〇時半頃釧路地方裁判所第一号法廷において被告人Cに対する強盗殺人被告事件の公判が開廷された際右事件の取材のため法廷内の新聞記者席に居合せたものであるが、公判開廷前の同日午前九時半頃同裁判所刑事部書記官室において書記官Dから「本日の公判に関する公判廷における写真の撮影は審理の都合上、裁判官が入廷し公判が開始された以後はこれを許さないから、公判開始前に撮影されたい」旨の裁判所の許可を告知されて充分これを了解していたのにかかわらず、裁判官が入廷し右被告事件の公判が開始され、人定質問のため被告人が証言台に立つや、裁判長の許可がないのに勝手に記者席を離れ、法廷内の一番高い裁判官席の設けられてある壇上に登るべく、写真機を携帯して傍聴席より向つて右側の壇上に至る階段を駈け上り始めたので、裁判長は、「写真は駄目です」と制止したのにこれに従わず右壇上に上り、被告人に向つて写真機を構え、同所において被告人の写真一枚を裁判所の許可なく、かつ裁判長の命令を無視して撮影したものであるというのである。されば、申立人の公判開廷中における右写真撮影の行為は、裁判所の許可なく、かつ裁判長の命令に反して行われたものであつて、法廷等の秩序維持に関する法律二条一項前段に該当するものであるから、これに同条の制裁を科した第一審裁判所の決定を維持した原決定は正当であり、所論憲法の規定に違反するものでないことも、明らかである。それゆえ、所論は採用することができない。

 よつて、法廷等の秩序維持に関する法律九条、法廷等の秩序維持に関する規則一九条、一八条一項に従い、裁判官一致の意見で主文のとおり決定する。

  昭和三三年二月一七日

    最高裁判所大法廷