はじめての方、ようこそ。再来、応援してくださっている方にありがとうございます。ハクジュと申します。

集団ストーカー被害記録と、趣味のファンタジーといろんなジャンル書いてます。ご興味のある方はこちら。

ファンタジー過去作品はこちら。お時間のない方は作詞シリーズが短くてお手頃かと思います。

前回までのあらすじ。
葉月は朝成達から暴力を受け、赤ちゃんポストを利用した。その後悪魔ロットバルトと遭遇する。
日本の法律が変わり、赤ん坊を否認する権利は、男性から女性のものに移動するーーしかし、それはロットが日本の男性に見せた夢だった。

詳しくご覧になる方はこちら。
今回で完結です。


【わたん坊の友達2-3】

ロットは葉月を抱えて空中遊泳していた。
「魔界の綺麗どころに招待するよ」
「どんなところ?」
「清水が流れて、蒼穹の空が広がってーー白い花がいっぱいなんだ」
「素敵ね」
彼が雲間にさしかかると、人間が呼ぶところの“天使のはしご”が数えきれない程きらめいている。魔界は天界と分業しているだけで、どろどろした所ではない。

彼は目的地に着地すると、翼を収納して葉月を降ろした。彼女は群生する花の中で空を見上げて目を白黒した。
「ロット、暖かいのに雪が」
「雪じゃないよ。わたん坊」
「わたんぼう?」
「魔界の紋白蝶は雲の上で生まれて、綿にくるまって降ってくるのさ」
「地面に落ちたら踏まれてしまうでしょう」
「わたん坊は草木に吸い寄せられるんだ。成虫になるまで大事に大事に愛されるんだよ」
「いいなあ」
葉月は人間には夢みたいであろう話にため息をついた。彼は彼女に優しく微笑した。
「綺麗だろ。ここでは思っていること、何言っても責める人はいないよ。何せ悪魔の故郷だから」
「本当?」
「うん、遊んでおいで。思いっきり言いたいこと言って」
葉月は花の中に歩き出した。次第に笑顔になり、走り出す。最後に天使のようにはしゃいで笑い出した。
「あはははははは、産まなきゃよかった。産まなきゃよかった、産まなきゃよかったあ」
花畑の中でくるくるターンして、コロンと倒れこむ。その後は仰向け大の字になり、やっぱり笑っていた。彼女のほっぺたも指先も、絵師がほんのり色づけしたようなピンク色。
「うふふ、産まなきゃよかった」
わたん坊と一緒に暖かな風が彼女の髪とスカートの裾をさらってゆく。幸福そうな彼女は重力と別れて、風にさらわれた所から溶けていってしまいそうだった。

彼は白い花束を作って彼女の所に持って行った。彼女の脇に腰かける。
「そうだね。葉月さん悪くないよ。おれはロットバルト、社会でも世界でもない」
彼は彼女に花束を贈って、その額にキスを落とした。

「限界だ」
宗方はキーボードから手を離した。
「私はこんな女性は書きたくない」
「書いて欲しいんだ、宗方さん。源氏賞作家のあなたなら出来る」

ロットは宗方の仕事場の隅に、彼とは対称的な腰掛け方で陣取っていた。使用方法とは反対向きに椅子にまたがり、背もたれに両腕を乗せるかたち。

歴戦の源氏賞作家は髭は剃っているものの、燃え上がるような癖っ毛だった。静かなライオンのごとき四十代。ロットは彼としばしのにらみ合いになる。

最後は作家の方が折れて目線を落とした。ーーロットは時々、真剣に遊ぶ。
「女と男、どちらが醜いか読者に比べてもらおうぜ」
(終わり)


【後書き】

今回の連載はおどろいたことに、女性読者様と同じくらい男性読者様が応援してくださいました。共感してくださる男性に、大変ありがたく思っております。そして、愛を注いでくださった男性、女性、中間、全ての読者様にありがとうございます。

ロットは紗奈、千夏の事後処理もしているのですが、そこは書きません。今回の話は葉月にだけフォーカスしました。

葉月は自分の意思で子供を作ったわけではないので、『産まなきゃよかった』ではなく『産みたくなかった』が正解です。しかし、より憎悪される台詞をあえて使ってもらいました。

社会がサポートしてるだろ、子供が可哀想だろ、という外的圧力で女性の心は変わりません。彼女達は男性と同じ人間です。

私はアダルトチルドレンだらけの一家で育ちました。『産まなきゃよかった』よりもっと凄惨な言葉を日常的に聞いていたので、『産まなきゃよかった』で傷つく人の気持ちがわかりません。今回はその鈍さが武器になりました。

花畑の中の葉月を醜く描いたつもりはないし、その必要もありません。あえて美しく見せようとして、涙を流させるシーンも書きません。

全ての男性がそうとは思いません。しかし、葉月を憎んで醜く描きたくなったり、醜くないことを訴えるために涙を付け足したくなる人がいたとしたら、その人は男性ではないでしょうか。

ご覧くださった方々にありがとうございました。





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