ドイツでメルケル政権の続行が決定した。超長期政権の誕生である。

 

 メルケルは、東ドイツ出身であるが、戦後民主主義的思想を前面に打ち出しているため、比較的リベラル陣営から好意的に見られている。移民に対する政策でも明確なように、保守的傾向はほとんどない。

 

 しかしながら、ドイツの地方都市ではメルケル政権による無計画な移民受け入れ政策に対する怒りは強い。マスメディアが左翼的なのはアメリカや日本、フランスなどとドイツでも同じなので、そうした地方のナショナリズムに基づく怒りの声はあまり広められないが、実際には厳として存在する。

 

 そんなメルケル政権は実は欧州連合加盟の貧しい国にとってはとんでもない人物であることはあまり日本では知られていない。簡単に言ってしまうと、ドイツは欧州連合加盟国の中で少数派の勝ち組である。EUという組織がドイツに利するためにあるのではないかと思えてならないほど、ドイツはこの枠組みの中で利益を得てきたし今も得ている。通常であれば為替の変動で伸びるはずのない輸出が、統一通貨というまやかしのため歯止めがかからない。そのため、実際のキャパシティを超える量の輸入をする国が増え、結果財政破綻につながる。

 

 さらに悪いことに、そうした国々には統一通貨ゆえ、金融政策が不可能であり、市場のマネーの調整をできない。その上、財政政策では、欧州中央政府(実質的にドイツ主導)により極端な緊縮財政を半ば強制されており、逆らうことはできない。結果、景気を回復するための両手両足を縛られてボコボコに殴られる(ドイツなどの少数の勝ち組国により)という事態が延々と続いているのである。

 

 それがいいか悪いかは「立場による」ので、別にここで結論を出す気はない(出すこともできない)が、今回のメルケル政権の継続により、多くの欧州の貧しい国が、これからも失業率の高さ、景気の悪さに苦しめられる現実が続くであろうことは、容易に予想されるのである。

 

 読者の方々はどのように感じられるか。

 

 今回もお読みいただき、ありがとうございます。

 

 

初めての方は、このブログを通して貫く基本概念である主観と客観との違いについての説明をしている以下の記事をご覧ください。

 

 主観と客観

 客観についての補足

 外国人には思い遣りがガチでないという事実

 優しさ(主観的)と思いやり(客観的)

 二種類の「正しさ」

 日本の常識は世界の非常識、日本の非常識は世界の常識

 

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