Yoっち☆楽しくグテを綴る♡ -50ページ目

Yoっち☆楽しくグテを綴る♡

テテとグクの Me Myself写真集にインスピレーションを得て【群青と真紅】をブログ内で執筆中です️

今年のさくら🌸の開花は遅いみたいですね
でも待つのは長いけど、咲いたら咲いたであっという間に散ってしまうもの照れ
潔いいのか、儚いのか・・・

今年はお花見したいなぁ←花より団子だけどね🤣🤣


毎度お待たせしております群青と真紅でございます

前回の物語

文中注記
【頸飾~けいしょく~】
簡単に言うと「首飾り」ですが、主に国や王室での大きな行事で正装する際に
勲章などをつけたようです
Wikipediaより
頸飾の例として借りましたこの画像は、日本の最高位とされる勲章で
大勲位菊花章頸飾(だいくんいきっかしょうけいしょく)といいます

ルイ15世が身につける頸飾

この私達の物語の中での頸飾は
国王はダイヤモンド
王位継承第一位の大公はルビー
王位継承第二位の大公子はサファイア
と致しました(宝石の順位順)

また
テヒョンが着ていたロングマントのイメージはこんな感じ
このロングマントの上に頸飾をつけます
ロイヤル・アッシャーより
ウィリアム皇太子とキャサリン妃
 

物語の続きが始まります✨✨✨


【テヒョンの帰郷】

馬車は夕刻前に宮殿に到着した。
宮殿の出入口前にはデイビスとミセス・ブラウンが待っていた。
馬車が停まるとデイビスが扉を開けた。
テヒョンが降りてくると同時に、
「お帰りなさいませ、殿下。」
と迎える。
「ただいま。執事代行ご苦労だったな。皆変わりないか?」
「はい、変わりございません。」
「テヒョン様、お疲れ様でございます!」
元気な声が飛んできた。
「ただいま、ミセス・ブラウン。あなたの元気な声を聞くと安心するよ。」
「これは失礼致しました。お耳障りにはなりませんでしたでしょうか?」
「ははは、大丈夫だ。あなたのその声はエネルギーになるのだから、そのままでよいのだ。」
「まぁ、恐れ入ります。
テヒョン様もうじきにご夕食のお時間になりますが、お疲れでしたらお部屋にお運び致しますか?」
「いや、食堂に行くよ。」
ミセス・ブラウンは頷くと、旅疲れしているであろうテヒョンに早く中に入るよう促した。

「デイビス、父上はいらっしゃるか?」
「はい、大公殿下はご自身のお部屋にいらっしゃいます。」
「そうか、ではご挨拶に行ってくる。その後着替えて食堂に行くぞ。」
「かしこまりました。では私は殿下のお部屋でお着替えの準備を致しましてお待ち申し上げます。」
デイビスは一礼をしてテヒョンの部屋へ向かった。
「では私はお食事のお時間を多少ずらすように、厨房へ申し伝えて参ります。」
ミセス・ブラウンも一礼をして厨房へ向かった。
「ではスミス、参ろう。」
「はい。」
テヒョンとスミスは大公の部屋に向かった。

部屋の扉を叩くと中からオルブライトが出てきた。
「これは、お帰りなさいませテヒョン様。」
「ただいま。」
扉が大きく開かれて中に入る。
「テヒョンか?」
大公は机で書類に書き込みをしていたが顔を上げた。
「ただいま戻りました父上。」
大公は立ち上がり『お帰り。』と息子を抱きしめた。
「旅行は楽しめたか?領民達はどうであった?皆元気で暮らしていたか?」
「父上、いっぺんには無理でございますよ。」
テヒョンは笑ってしまった。

「色々募るお話はございますが、、、父上、まずご報告がございます。」
テヒョンが真剣な面持ちで話しを始めた。
「例のニールという者の件だな。まぁ座りなさい。」
ソファに座るよう勧めた。
「大公殿下、まずこちらをご覧下さいませ。ニールの監視役のゲインズから旅行中に逐一上がってきた報告書でございます。」
スミスが報告書の束を渡した。
報告書を受け取った大公は椅子に腰掛けてそれを丁寧に読み込んでいった。
「なるほど、敬剣の日にニールは謁見を申し入れたわけだな。人がかなり集まる日だ。」
「はい。何かしら決心のようなものも感じますが、彼も貴族としての教育を受けた経験者ですから、覚悟はしているのだとは思います。」

大公は頷きながらテヒョンの話を聞いていた。
「今回のニールに対する罰は勇気が要ったろう。」
「・・・はい。その権利が私に与えられているだけに、、、」
「だか私は領主として取ったお前の判断は正解だったと思うぞ。」
「父上・・・」
「国王に対しての誤った見解は、野放しにしてはならない事だったと思う。ましてやニールは土木の責任者であろう。部下がいる立場での発言に対する責任は重い。」
「はい。」
「お前の取った処置について、ニール自身がどう受け止めているのか、敬剣の日が楽しみであるな。」
大公は最後には楽しんでいるようだった。
楽観的な父の性格は分かってはいたが、その何事にもブレない強さを尊敬した。


旅行帰りの我が家での食事は、多忙を極める父との久しぶりの食事でもあった。
食事の後テヒョンは領地での農作業の体験話や焚き火を囲んで領民達と食事をした話、領民の家で小さい子どもに絵本を読んでやった話などを身振り手振りで大公に話した。
大公は楽しそうに話すテヒョンの充実した旅を思い、笑顔のままずっと話を聞いていた。
テヒョンの方は旅の思い出を父に話しながら、その楽しかった風景の中には、ジョングクの姿がすぐ隣にあった事を思い出していた。
ジョングクも今、夕食の席でセオドラ卿に旅の話をしているのだろうか。
「どうした?疲れたか?」
話の途中で物思いに黙り込んたテヒョンに大公が声を掛けた。
「馬車に長時間揺られて疲れたであろう。今夜はもう早く寝た方がよいな。」
「はい、、、失礼致しました。では部屋に戻ることに致します。」

テヒョンは部屋に戻った。デイビスが部屋の中を整えてくれていて、暖かい空気が既に出来ていた。
「デイビス、寝る前にジャスミンティーをくれるか?」
「かしこまりました。」
デイビスが部屋を出るとテヒョンは一人でパジャマに着替えて、お気に入りのあのガウンコートを羽織った。
既に窓のカーテンは全て締められていたが、庭園側の窓まで行くと少しだけカーテンを開いた。真っ暗な外は遠く市街地の方に灯りが見える。ジョングクの屋敷もその先にあるのだ。テヒョンはあの先に想いを馳せて右手の薬指の指輪に唇を当てた。
約三週間片時も離れることなく、そばにジョングクがいた。旅行前になかなか会えない時期があった時より、今の方が寂しさが深いので驚いた。数時間前までは一緒にいたというのにだ。


駅で別れて数時間。
ジョングクの方も夕食の時にセオドラ卿に旅行の話をしていた。
絶大なる信頼を受けて旅行に同行させて貰い、最後までテヒョンを守り抜いた事を労われた。
そして、一人になってからはとてつもない寂しさに襲われていた。
この三週間の間、いつも特等席でテヒョンのそばに居られた。手を伸ばして触れることも抱きしめることも許された。
その度に見せてくれた甘美な視線も、優美に上がる口角も自分のためだけだと確信し、そこが居場所なのだと実感したのだ。
テヒョンもジョングクもお互いが近くなればなるほど、離れた時の切なさが同じ分だけ押し寄せてくるのを感じた。
そんな恋慕すら愛しく思えて仕方がなかった。



【敬剣の日】

いよいよ《敬剣の日》を迎えた。
この日は〈流血を避け紳士的で尊い戦いを遂げた戦士達を敬って制定された〉国民の祝日だった。当時、陸軍を率いていた連隊の隊長が敵の総督に向かって、自らの剣を腰から下ろして献上し、言葉で説き伏せたという武勇伝が伝説となって伝わっていた。
献上された剣は後に相手国から正式に返還されて、敬剣として国宝扱いとなり宮廷が管理していた。
この日は軍祝として扱われたが、功績のあった者は軍関係者のみならず表彰される。また、それとは反対に罪を抱えたものは直々に国王へ自ら罪告をして処罰を受けることになっていた。
今で言う《自首》をするということだ。

国中の軍人、王侯貴族達が宮廷にやってくる。全員というわけにはいかないので、各々代表が数人ずつ選ばれて参内する。
この日は大公もテヒョンも正装をしベルベットのロングマントを羽織った。
ロングマントの胸元には、大公はルビー、大公子であるテヒョンはサファイアの宝石が飾られた金の頸飾が掛けられている。オルブライトもスミスもこの日は正装で参内した。
宮殿に到着した大公達は、国王の私室である王の間に通された。

「おはようございます、国王陛下。」
「おはよう。皆ご苦労だな。」
国王の出で立ちは最高司令官として軍服を着用し、ロングマントの胸元にはダイヤモンドの宝石を飾った頸飾が掛けられていた。
「そうだ、テヒョンは旅行帰りだったな。有意義な旅であったか?」
「はい。お陰様で領民達への礼をする事が出来ました。」
「関心だな。お前ほど領地を気に掛ける貴族達はなかなかおらぬからな。」
「彼等なくしては国は動きませんから。」
「全くだな。領地があって領民がいることが当たり前だという驕りは、いずれ身を滅ぼすことになるだろう。」
国王とテヒョンの話に皆が一様に頷いた。

一旦大公とテヒョン達は、専用の控室に入る。デイビスがここで控えていた。
皆呼び出しがあるまで待つことになった。
しばらくすると扉を叩く音がした。
デイビスが扉を開けると、ジョングクがセオドラ卿とハンスと共に立っていた。
「チョン伯爵、おはようございます。」
「おはよう。」
「さ、中へどうぞ。」
声に気付いたテヒョンは、
「ジョングク!」
と、思わず駆け寄った。
「おはようございます、テヒョン様。今日はまた一段と素敵です。」
「君こそ。もうすっかり軍服を着る姿が様になっている。」
二人はお互いの出で立ちにときめいた。

「ジョングクは軍服が似合う体格になったな。誰よりも秀でた様相だ。」
大公が褒めた。
「父としても鼻が高いですな。」
セオドラ卿が目を細めて応えた。
テヒョンが軍服にミリタリーコート姿のジョングクを見るのは二度目になるが、
以前より肩幅が広くなり威厳に満ちた胸厚に、スラリと伸びた脚が美しいラインを現していた。そして逞しい胸には身分章や階級章の他にも新たな勲章が増えていた。
テヒョンがあまりにも熱い眼差しで自分を見ているのでジョングクは、
「見つめ過ぎです。」
と、思わず右手でテヒョンの両目を伏せた。
「何をするんだよ。」
テヒョンはその手を掴んで離すと二人で笑った。


宮殿の会場にはかなりの数の軍人、貴族達が集まっていた。
謁見を申し出ている者達は隣の部屋に集まっている。セレモニーが見えるように可動式の仕切り壁が大きく開け放たれていた。
「国王陛下のおなりでございます。」
いよいよ号令が掛かり雑然としていた人々が整列をして静かになった。
国王を先頭に大公、テヒョンと続いて会場に入る。テヒョンのそばにはしっかりジョングクが付いていた。王族が続いて入場をして一同が揃い、来場者からのお辞儀を受ける。

セレモニーがすぐに始まって表彰式が行われた。会場内は熱気に溢れ真冬だというのに扇子で仰ぐ人が出てくるくらいだった。会場にいた係の者達が窓の上部を開けて空気の入れ替えを始めた。
表彰式が滞りなく終わると、少し時間を置いて謁見が始まる。
「もうすぐですね、テヒョン様。」
「うん。スミスが先程ゲインズに会ったそうだ。ニールも予定通り来ているようだぞ。」
テヒョンは少し緊張もしていたが、ニールがどんな様子で参内しているのか、どう国王に目通りするのか楽しみになっていた。
「そうだ、テヒョン。ニールが謁見の他に罪告の申し入れをしてきたぞ。」
「え!?」
国王の言葉に驚いた。
「聞いていなかったか?」

今回のニールの《罪》については国王への報告はしていない。わざわざ本人自ら直接国王に罪告するつもりか?それで敬剣の日を選んだのだろうか。
とにかくテヒョンは成り行きを見守ることにした。
軍人達と貴族達が会場を出て、謁見者達との入れ替えが終わった。
「それではこれから謁見を行います。名前を呼ばれたら前へ出て下さい。」
玉座の国王を中心に大公とテヒョンが両脇に立つ。そして謁見を申し入れた者達が真ん中に列を作り並んだ。予め名前が呼ばれる順番が知らされていたので、列はその順になっている。
一人づつ名前が読み上げられ国王の前に歩み寄り、挨拶をすると陳情や提言など各々の言葉で申し出た。

しばらく謁見が進んで行くとゲインズとニールの姿が目に入った。ニールは見違えるほど洗練された装いで、堂々としている様にも見える。大勢の参列者の中でもひときわ目立っていた。ニールの姿を確認したテヒョンはジョングクと目を合わせた。
いよいよニールの名前が呼ばれた。
ニールはゲインズと共に国王の前に歩み寄ると、まず国王にお辞儀をし、続いて大公に頭を下げ、最後にテヒョンに深々と頭を下げた。ニールのその立居振舞は領地で見た時の粗野な感じなどどこにも見られず、スマートな身のこなしだった。
「私はキム公爵家のご領地、プロスペクトニー領の管理責任者をしております、モーガン・ゲインズと申します。本日はここにおりますニール・アンダーソンの後見役として参りました。」
「ニール・アンダーソンでございます。先に献上致しました領内用水路計画書の発案者でございます。」
「二人共よく来たな。用水路の計画書はよく見せてもらった。」
国王が後ろを振り向いて侍従に合図を送る。

しばらくして書類の束が手渡された。
国王はそれをニールに見せて話し始める。
「なぜもっと早く謁見を申し込まなかったのだ?」
「はい、、申し訳ございません。」
ニールが慌てて応えた。その場に緊張感が漂った。テヒョンはニールをじっと見た。
「こちらもな、同じ事案をずっと抱えていたのだ。キム公爵の領地に隣接するサンドリア侯爵の領地でもアレキサンドリア湖からの用水路計画の陳情があって、地形の関係から何度も見直しがされている。私も何度か現場を見に参っていたのだ。」
ニールが顔を上げた。
「そなたがもっと早くこれを出していたなら、事業は既に進んでいただろう。」

テヒョンがニヤリと笑った。ニールはテヒョンの顔を見た。
「ニール・アンダーソンに申す。
そなたをこれよりアレキサンドリア湖用水路計画の推進責任者に任命する。よってキム公爵の領地とサンドリア侯爵の領地の土木事業を統括せよ。」
国王はそう言って侍従に書類を渡すと、代わりに任命書を受け取りそれをニールに差し出した。ニールは驚きを隠せない様子だったがゲインズに押されて両手でしっかりと受け取った。
「よく最適な計画を発案してくれたな。これからは二つの領地を見なければならないぞ。この宮殿にも参って進捗状況を報告に参れ。多忙を極める事になるが頑張って成し遂げてくれ。」
「ありがとうございます!肝に銘じまして力をふるいたく存じます。」
ニールは深々と頭を下げた。

「これはありがとうございます!国王陛下!」
いきなりニールの隣に駆け寄ってきた男が言った。ニールはその顔を見て即座に顔色が変わった。
「申し遅れました、私はこのニール・アンダーソンの父、チャールズ・アンダーソンと申します。」
国王をはじめテヒョンとジョングク、スミスが一斉にこのチャールズ・アンダーソンという男を見た。
「そなたは、、、」
国王は怪訝そうな顔を向けた。
「ち、、父、、」
ニールが父上と言い掛けた所でテヒョンが口を出した。

「待たれい!チャールズ・アンダーソン子爵!」
「はい!」
アンダーソン子爵はびっくりしてテヒョンを見た。
「あなたの御子息はまだ幼少のはずですよね。」
「は、、はい。ですがこれは私の、、」
「除籍をした息子だと言いたいのですか?」
その言葉を聞いたニールがテヒョンを見た。
徐々に会場内がざわつき始める。
「ですが、、殿下、それには理由が・・」
「その理由を今、陛下の御前と満場の人々の前で言っても宜しいのか?」
テヒョンの表情が険しくなった。
アンダーソン子爵の顔が青ざめる。
「都合の良い時だけ《息子》ですか?またその手柄に便乗しようとは。あなたは恥を知るべきだ!」
アンダーソン子爵はすっかりテヒョンの気迫におののき、逃げるようにして会場を出て行ってしまった。

「お恥ずかしい所をお見せして申し訳ありません。」
ニールが頭を下げた。ゲインズがニールの肩を抱えるように慰めた。
「そなたが謝ることではない。顔を上げなさい。」
国王が静かに言った。
「謁見はまだまだ続く。そろそろ次の者に譲ってやってくれ。それと、そなたは罪告を申し出ておるな?後で王の控えの間まで来るように。」
「はい。ありがとうございました。」
ニールは深々とお辞儀をした。
「では失礼致します。」
ゲインズは涙声になっていた。
こうしてニールの謁見は終わった。
「テヒョン様、お見事でございました。」
ジョングクは怒りの表情のままのテヒョンの背中にそっと手を添えた。


謁見が全て終わり、敬剣の日の一連の行事が一通り終わった。後はニールの罪告のみとなる。
大公とテヒョン達は国王の私室で、遅い昼食を摂ることになった。
「ニールの素性はある程度調べておったが、まさか父親がのこのこ出てくるとはな。」
国王は呆れていた。
「あの男が来た時にはどうなることかと思いました。テヒョン様が即座に対応下さりよろしゅうございました。」
スミスがやっと安心したように言った。
「誠に痛快であったな。」
大公がテヒョンの肩を叩いた。
「私もあれで怒りを抑えるのに必死でした。子どもは親の駒ではございませんから。」
「そうだな・・・。」
皆がテヒョンの言葉に大きく頷いた。

食事と少しの休憩が終わり、皆が身なりを直して最後の罪告が行われる控えの間に向かう。
ニールは既にゲインズと共に控えの間で待機していた。
扉が開くと国王とテヒョン、ジョングク、スミスが入ってきた。ニールとゲインズが起立をしてお辞儀をする。
「では早速始めるぞ。ここに居る者は全て証人として見届けよ。」
「「「はい。」」」
「ではニール、そなたが罪告をしたいものとは何だ?申してみよ。」
ニールはその場に跪くと話し始めた。

「恐れながら申し上げます。キム公爵の面前で私の誤った視点から国王陛下を愚弄致した罪にございます。」
「ふ・・・む、そうか。」
国王は少し困惑したような反応をした。
「それで、何か社会的に問題が起きたのか?」
「え?、、、いえ、あの、、」
今度はニールが困惑した。
「そなたキム公爵を怒らせて、もう罰を食らっているのであろう?」
国王は笑いながら言った。
ニールは呆気にとられてゲインズの方を向いたり、テヒョン達の方を向いたりしていた。

「ニール、私は今まで既に沢山の誹謗中傷を受けておる。それで被害を被ったり公務に支障が出たことはないのだ。
そなたが発したという愚弄についても同じだ。私は何も痛手を負ってはいない。全て私に直接伝わってはいないからだ。」
ニールは驚いた顔で国王を見た。
「確かに宮廷で直接私に暴言を吐いたのなら、そなたはその場で取り押さえられ逮捕されたであろうな。そしてそなたのその暴言が国を脅かす暴動へと扇動したのであれば重罪になろう。」
国王はそばに並ぶテヒョンとジョングクの肩に手を回すと言葉を続けた。
「しかし、私はいつも助けられている。このように頼りになる者達が私と国を思い、先手で動いてくれているからだ。」
国王とテヒョン、ジョングクが信頼の笑みで見合った。
「それとな、ニール。逆を言えば《言いたいことは本人に直接言わなければ伝わらない》ということでもあるのだぞ。」

ニールは自分が行ったことの浅はかさと愚かさを改めて恥じた。そして一連の醜態についての罰を真摯に受けようと思った。
「キム公爵、どうぞ私に罰をお与え下さい。」
テヒョンは笑った。
「ニール、謁見の時ちゃんと陛下のご命令を聞いていなかったのか?」
「え?」
「陛下はお前にこう申されたのだぞ。『アレキサンドリア湖の用水路計画の推進責任者に任命する』と。」
「はい、、、いえ、でもしかし・・・」
「それに私の領地とサンドリア侯爵の領地の土木事業の統括も任されたであろう?どういうことか分かるか?これはもう国の事業だということだ。
国王陛下から直々に公職の任命を受けた者に罰など課せるわけがなかろう。」
ゲインズが泣き出した。周囲の目もはばからず嗚咽をしながらわんわん泣いていた。

テヒョンがゲインズの前に出てしゃがみ込み両肩を掴んで言った。
「今日までニールの監視役と後見人をやり遂げてくれてありがとう。色々ご苦労であったな。」
「殿下、、私は、、私は、、」
ゲインズは言葉に出来なかった。
「ニール、ゲインズのこの涙の意味は分かるな?お前の身を思う心は父親と同じであろう?ここまで心配してくれる他人などいくら領地の責任者とはいえおらぬのだぞ。」
「はい。感謝をしても足りません。」
ニールはゲインズに寄り添うと肩を持って立ち上がらせた。
テヒョンは国王の隣に戻ると言った。
「ニール、領主として命じる。陛下より賜った職務に真摯に向き合い必ず計画を成し遂げるように。」

ニールはテヒョンの前まで進むと跪き、ロングマントの裾を持つとそこに口づけをした。
「私、ニール・アンダーソンは生涯を掛けてキム公爵にお仕えし忠誠をお誓い申し上げます!」
中世の騎士のような宣誓に皆が見入ってしまった。
「公爵、数々の無礼な振る舞い、申し訳ございませんでした。貴方様の叱責とお導きがなければ、取り返しのつかない傲慢な人間に墜ちていたかもしれません。」
「よくここまで自らを律することが出来たな。」
「今までの愚かで幼稚な思考を恥じております。」
「お前を信じて従う現場の者達を大事に、大役を務めてくれ。」
「はい!」

「しかし、昨今の敬剣の日では罪告を申し出る者が殆どおらぬというのに、ニールは奇特なやつだな。」
国王の呟きに皆が笑いを漏らした。
「それにな、私はどんな重大な罪を犯したのかと、内心緊張しておったのだぞ。」
「陛下、大罪を期待されてワクワクされては困ります。」
テヒョンの注意に皆が笑い出した。
ニールもつられて笑っていたが、国王とテヒョンの器の大きさに感服していた。
この二人の先を見越した物の捉え方、考え方は王になるべくして存在されている方々なのだと実感するのだった。

ニールとゲインズが帰る準備をする。そこへテヒョンとジョングクがやってきた。
「殿下、なんとお礼を申したらよいかわかりません。本当にありがとうございました。」
ゲインズはすっかり落ち着いたようで、テヒョンにやっと礼を言えるようになった。
「全ては国王陛下次第だったのだから、私より陛下に礼をするべきだな。」
テヒョンは笑った。
「帰りの道中も長いだろう。気を付けて帰れよ。」 
「今日は途中の宿で一泊して参ります。」
「うん。ゆっくり休むことだな。」
「キム公爵、改めまして感謝申し上げます。」
ニールがそう言うと、テヒョンの右手を取って口づけをした。
その行動にジョングクが真っ直ぐにニールを見つめたまま動かなかった。
ニールの忠誠心の口づけに他の意味までも見出したのだろうか?

ゲインズとニールは部屋を出ると帰って行った。
「やれやれ、やっと今日の行事は全て終わったな。」
テヒョンがそう言いながら部屋を出ようとした。しかし急に後ろから強く抱きしめられて動けなくなった。
「お会いしたかった・・・」
ジョングクの切ない声が耳元でして、それがテヒョンの胸を優しく締め付けた。
ちょっとの間だけ離れていただけなのに、どうしようもなく会いたいと思ってしまう気持ちが、ジョングクも同じなのだと知って嬉しくなった。

「僕も同じだ。離れた瞬間から君に会いたかったよ・・」
抱き締める腕にテヒョンの右手が触れた。ジョングクはその右手にはめてあるあの指輪を指で撫でた。ずっとはめたままでいてくれているのが嬉しい。そして今の想いを口にする。
「私がこんなにも独占欲が強くて嫉妬深いなんて自分で驚いています。」
「もしかして、ニールにやきもちを妬いたのか?」
「あなた様の手に触れて口づけをした瞬間、体中の血が熱く湧きました。」
テヒョンはふふっと笑ったが、愛しさが一気に湧いた。
大人に対してこんなにも可愛いと思えるとは、、、。それに、嫉妬したことを正直に伝えてくれた事が嬉しいのだ。
ジョングクと出会ってから色んな感情を感じさせてくれることに、この上ない幸せを思わずにはいられなかった。
 

※ 画像お借りしました





度々【群青と真紅】の物語の中で出てくる紅茶☕
想定が19世紀の架空の英国なのですが、実際と同じ様に紅茶をアイテムにバンバン出しておりますコーヒー
キム公爵とチョン伯爵の出会いも紅茶からでした☺️💕

ファンタジーなので
時代考証は必要ないんだけど、ある程度のアイテム位は史実に基づいた方がいいてへぺろ

ってことで
作者の私も色々調べてみましたよ爆笑

有名老舗紅茶ブランド 〈抜粋〉
🫖トワイニング(TWININGS)
🫖フォ゙ートナム&メイソン(F&M)
🫖メルローズ(MELROSE'S)
※ ハロッズもかな
リプトンは1890年以降なので今回は除外です(私の普段飲みはリプトンだけどね)


トワイニングは超有名ですよね
先月、明治屋で買ったトワイニングのアソートティーパックのセット✨

パッケージの中身💕💕
ロンドンの街並みが可愛らしく描かれてます✨✨


ティーバッグもオシャレ❤️

気に入ったのがあれば缶で買いたいな👍
それと紅茶の試し飲みにはサイコーだね☺️プレゼントにもいいかも



これはジャケ買い🤣
ヴィンテージ ビクトリアン(アフタヌーンティー TB)
スリランカ原産




そして😍
更にジャケ買いしてしまいそうな
メルローズのタータンチェックデザインの缶💕アッサム

メルローズ紅茶 タータンチェック リーフティー アッサム
まだ飲んだことはないんだけどね😋


実は10代の頃、既にトワイニングのオレンジペコを飲んでいた私😋
当時の推し(英国紳士のデビシル君)がオレンジペコを好んで飲んでいたから❤️
推し活はそれなりにしてたね🤣


キム公爵であり大公子でもあるテヒョンが好んで愛飲している紅茶は何でしょうかウインク
彼が一番好きなのは、ジョングクが淹れたホットココアなんですけどね😍

みなさんのお気に入りの紅茶やお茶はなんでしょうか☺️
今ではホテルや結婚式場でお洒落なアフタヌーンティーをやってる所が増えました☺️時々行って楽しんだりしてますよ

是非テヒョンとジョングクみたいに優雅な気分で本場英国のアフタヌーンティーを楽しんでみたいものです👍


それでは【群青と真紅 63】で会いましょう✨✨✨



テテの FRI(END)S 祭りで盛り上がってますね爆笑🎉🎉🎉🎉
可愛すぎる、カッコ良すぎる、妖艶すぎる✨✨✨✨テテに対しては称賛する形容詞が足りなさ過ぎて困るわ😫💦💦


さて
お待たせいたしました☺️
【群青と真紅】62でございます
テヒョン達の旅行もいよいよ終盤ですよ😄


前回の物語

物語の続きが始まります✨✨✨


【バースの温泉郷】


領地を巡る旅行も最終週を迎えた。
テヒョン達は最後の訪問地であるオールローズで盛大な歓迎を受ける。
そんな中、テヒョンとジョングクは酪農場で牛の乳搾りやチーズ作りを体験したり、放牧場では放牧した牛達を馬で追う体験をした。どれもが全て新鮮な経験だった。
農場で働く者達は、物怖じすることなくむしろ自ら進んで何でもやろうとするテヒョンに驚いた。
また、見目麗しく近寄りがたい神々しさとは違い、領民達と同じ様に屈託なく笑い、親しく近付いてきてくれる事に感激した。
テヒョンにとっては怪我への見舞いのお礼を直接する事と同時に、今回訪問した各々の領地の運営状態が、皆健全できちんと機能している事を確認出来たのが良かった。人々の健康状態も留意するべく問題が無かったので安心した。


いよいよ最後のオールローズから出発する日が来た。
スミスの指示の元、馬車に荷物が積み込まれていく。
最後の荷物を積み終え、馬車の整備などが整うとスミスはテヒョン達が待機する部屋までやってきた。
「ご準備が整いました。いつでもご出発頂けます。」
「分かった。よし、では行こうか。」
「はい。」
椅子から立ち上がると、ジョングクはテヒョンに上着を着せる。
「ありがとう。」
振り返って礼を言った。

テヒョン達が外に出てくると、沢山の領民達が見送りに集まって来ていた。
「お帰りになってしまわれるのがお名残惜しゅうございます。」
「世話になったな。また遊びに来よう。」
「是非に。お待ち申し上げております。」
テヒョンは代表の関係者達と握手を交わすと馬車に乗る前に振り返り、集まって来てくれた者達に手を振った。
『公爵様!』『殿下!』と一斉に声が上がった。

帰って行ってしまう領主であるテヒョンの姿を一目見ようと、領民達が左右に揺れて馬車に視線を向けている。
その様子を見ながら乗り込むと、シートに座るやいなや窓を開けて手を振った。
すると更に歓声が上がった。
馬車が走り出すと後を追って歓声が続いた。テヒョンはその様子が見えなくなるまで窓に張り付いていた。


馬車はロンドンに戻る前にバースに向かう。バースは古くから温泉が有名で、歴代の国王や王族、貴族達も訪れている観光地だ。
テヒョンの意向で温泉地でゆっくりしてから戻ることになっていた。
最後に訪れたオールローズからも近い場所にあったので短時間での移動で済んだ。
「温泉は本当に久しぶりです。」
「僕もだ。まだ10代の頃にスミスの家族と一緒に行ったのが最後だな。」
「ああ、そうでございましたね。懐かしゅうございます。」

テヒョンもジョングクも家督を継いでから、休みはあってもなかなかゆっくり旅行も出来ていなかった。
特にジョングクは最近ことに軍務が忙しく、気が休まることも少なかったはずだ。
テヒョンが領地巡りの最後にバース行きを入れていたのは、多忙なジョングクの為でもあったのだ。テヒョンはジョングクの肩に手を置くと、
「君は日頃大変な任務に就いている上に、旅行中も僕をサポートしてくれたのだからゆっくり疲れを癒やすといい。」
と労った。
「お気遣いありがとうございます。」
応えながら肩に乗せられた手を包み握り返した。
スミスは二人の雰囲気を察し馬車の窓に視線を向けて見ていないふりをした。


テヒョン達を乗せた馬車はバースの街に入る。古くから栄えてきた街並みは、人の往来が多く活気があった。
しばらく走ると宿泊するホテルに到着した。そのホテルは王室御用達となっている施設で、テヒョン達が滞在中は貸し切りとなった。
「お久しぶりでございます。大公子殿下。」
「うん。しばらく世話になるよ。」
「はい。精一杯お世話をさせて頂きますので、何なりとお申し付け下さいませ。」
「ありがとう、宜しくな。」
ホテルの支配人自らテヒョンを部屋まで案内する。
「いらっしゃいませ、大公子殿下。」
廊下の両側にホテルのスタッフ達が皆揃って並びテヒョン達を迎えた。

滞在する部屋として、テヒョンは貴賓室に案内され、ジョングクとスミスはそれぞれスイートルームに通された。
荷物がそれぞれの部屋に運ばれると、ジョングクとスミスはテヒョンの部屋に集まった。
「ジョングクもスミスもありがとう。残りの日程は思う存分ゆっくりしてくれ。」
「それはテヒョン様も同じでございますよ。」
スミスが紅茶を淹れたカップをテヒョンの前に置きながら言った。
「本当に。素敵な旅行にお誘い下さり感謝致しております。」
ジョングクはそう言って、オールローズから持ってきたミートパイを皿に並べてテーブルに置いた。
このパイはオールローズで育った牛の肉で作られたミートパイだ。領地の菓子職人が是非にと持たせてくれたものだった。冷めていたので到着して直ぐにホテルの厨房で温め直され、紅茶と一緒に届けられた。

テヒョンがミートパイを一口食べる。
「う〜ん・・うちの農産物は名実ともに一流なのは間違いないな。故に職人も一流ということだ。」
テヒョンが満足気に本当に美味しそうに食べるのでジョングクとスミスは見入ってしまう。テヒョンは二人の視線に気付いた。
「どうした?二人共食べないのか?貰ってしまうぞ。」
テヒョンの言葉に二人は慌ててミートパイに手を伸ばした。
三人は黙ったままミートパイと紅茶を堪能した。テヒョンは噛みしめながら見送ってくれた者達の表情を思い出していた。
領地を守る領主の立場として自身の方針に乱れがあれば、その影響があの者達の生活に直結してしまうのだと、改めて気が引き締まる思いがした。ニールの件についても同じ思いだった。やはり領地を巡って例え一部だけであっても、領民達の生活に触れ、彼等と目を合わせて語れた事は本当に良かったと思った。


部屋でしばらく休息を取った後、テヒョン達三人はホテルに隣接する大浴場施設に向かった。更衣室で入浴用の衣服に着替える。入浴とはいえ公衆の場で他人に肌を見せる事は禁じられていた。特にテヒョンは王族である為、自身の宮殿内であっても入浴用のリネンを身に着けて入浴をしている位だ。
ここでも三人は上下リネン素材の衣服を身に着けて浴室に入った。
大浴場の床は黒御影石で出来ていて、浴槽はピンクの大理石が使われていた。
ジョングクとスミスはテヒョンが浴槽に入るのを見守った。

「二人共一緒に入って。」
離れた場所から入ろうと、移動しようとしたジョングクとスミスをテヒョンが呼び止めた。
「ご一緒しても宜しいのでしょうか、、、」
ジョングクが恐る恐る訊いた。
「最初に三人だけでいる時は、なるべく上下関係の仕来たりは無しで、と言っただろう?
「ですがここは公衆の場でございますよ。入浴自体もご一緒など恐れ多くて・・・」
ジョングクは半分本心、半分照れ隠しで応える。
「公衆の場でも貸し切りで、今は我々だけだ。」
テヒョンはジョングクの手首を掴んで引っ張った。
「あ!テヒョン様!」
そのまま浴槽に引き込まれてしまった。
スミスが一部始終を見ていて笑う。
「笑ってないでスミスも。」
「はい、大丈夫でございます。」
スミスはテヒョンに捕まる前に自ら浴槽に入った。

テヒョンを真ん中にして三人は並んで寝湯の形で温泉に浸かった。
しばらくすると施設の係の者が、蜜蝋にフランキンセンスとラベンダーの精油を含ませたキャンドルを持ってやってきた。炎が点いたキャンドルは、テヒョン達が入浴を楽しんでいる浴槽の近くに、少し間を空けて3箇所に置かれた。
香りが徐々に広がってくると、穏やかに脳内がほぐされていく。
テヒョンとジョングクは湯船の中でお互いの手が触れると、そのまま絡ませて繋いだ。香りとスキンシップの両方で身も心もリラックスして満たされていく。

三人とも一様に温泉浴を満喫して湯船から上がった。すかさずジョングクがテヒョンにミネラルウォーターを持ってきて渡す。『ありがとう。』と受け取る顔は、うっすら汗ばんで頬がピンク色に火照っていた。いつもより妖艶な表情に引き込まれそうになる。
「あ、、、少しお待ち下さい。」
動揺を隠すようにその場を離れてタオルを取りに行った。
スミスはそんなジョングクの後を追った。

「ジョングク様、後はテヒョン様をお任せしても宜しいでしょうか?」
「え?はい、いいですよ。」
「ではお先にホテルに戻らせて頂きます。テヒョン様を宜しくお願い致します。」
スミスは含みを込めた笑みでジョングクにテヒョンを託した。
「ではテヒョン様、私は先に部屋へ戻らせて頂きます。夕食までジョングク様とごゆっくりなさって下さいませ。」
「うん。また後でな。」
スミスはお辞儀をして浴室から出て行った。

スミスはなるべくテヒョンとジョングクが二人で居られる時間を持てるよう、旅行中はずっと可能な限り席を外すようにしていた。
二人が特別な絆を繋いでいる事は分かっているし、それが運命に導かれているからである事も感じていた。
それに二人の関係は今までの概念を超える価値観で生まれ、誰もが介入出来ない尊い結びつきがあるとスミスは思っていた。
お互いが生まれながらに背負う《宿命》に今後翻弄されることになっても、しっかり見守って行きたいと考えているのだ。


「テヒョン様、これを、、、」
ジョングクはタオルを肩から掛けてやった。
「うん、、ありがとう。」
礼を言い終えないうちに腰に両腕を巻き付けて『座って、、、』と目で訴える。
ジョングクは隣の椅子に座った。
テヒョンは近づいた肩に頭を乗せると、
「二人きりだ、、、」
と囁いた。その声を聞いたジョングクが肩を抱く。
更にテヒョンの膝の後ろに腕を通すと、横抱きをしてヒョイと自分の上に乗せた。
「ちょっと、、ジョングク、、」
テヒョンが躊躇した声を出す。
「誰もおりませんよ。」
その言葉に目を合わせ、瞳で会話をするように見つめ合う。
「この時間が長く続けばいいのにな、、、」
テヒョンはジョングクの入浴着の襟の紐を弄びながら言った。

そんなテヒョンの額にキスをする。
「今だけ、、一緒に居られる今だけを感じて下さいテヒョン様、、」
残り少ない旅行の日々を惜しむ気持ちは、テヒョンもジョングクも同じ思いだった。だけど寂しがる顔を見ると、きっと離れたくない気持ちだけが最後まで残るだろう。それではせっかく一緒に居る時間が切ないものになってしまう。
二人で時間を共有出来る幸せを一緒に感じたい。ジョングクはそう思っていた。
「うん、そうだね。君と過ごす幸せな時間だ。」
テヒョンは抱かれていた脚の上から降りると手を取って湯船に誘った。
二人はその後、空腹に呼び戻されるまで存分に入浴を楽しんだ。


【長旅を終えて】

バースの街はテヒョンとジョングク二人のお忍びを尊重してくれているかのようだった。街中を散策したり店を見て回っても誰も過剰な接触はしてこない。
容姿がかなり目を引く二人だが、普段から近寄る事が出来る身分が限られているので、二人の事が分からない可能性もある。
それに街全体が多種多様なお客の往来に慣れているせいもあっただろう。

おかげでバースのどこに居ても、二人の周囲は静かだった。
最後の最後まで可能な限り肩を寄せ合い、指を絡ませて手を繋ぎ、お互いの話の中で世界観を共有し合った。
「こういうのが真の幸せというのだな・・」
「私と一緒にいて幸せを感じて下さっているのですか?」
「勿論だ。君はどうなの?」
テヒョンの問いに、繋いでいる手を強く握りしめて、
「勿論、この上ない幸せを感じております。」
と答えた。テヒョンも手を強く握り返すとその腕に寄り掛かかった。
腕に掛かる重みに愛情と全幅の信頼を感じて、ジョングクは深い歓びに心震えた。


出会ってしばらくの頃は、心を開いて天真爛漫に接してくるテヒョンに、どんどん惹かれて想いが大きくなってしまう事が怖かった。
でももう今では《一番大切な人》が、この手から離れていってしまう事の方が命を削られるくらい恐ろしく思えた。
ジョングクは自分というものがすっかり変わった事を実感した。テヒョンの為ならば何でも出来る気がした。
「君って、時々心がどこかに行ってしまうようだな。」
ホテルの部屋のソファで二人はくつろいでいる。隣で物思いにふけるジョングクをからかうように訊ねた。
「いいえ、あなた様のここに入り込んでおりました。お感じになりませんでしたか?」
ジョングクがテヒョンの胸の真ん中に触れた。意表を突く答えに思わずクスッとして、
「君が無断で侵入して来てからはずっと僕の中に居るみたいだぞ。」
と胸にあるジョングクの手に手を重ねる。
「あなた様の方がずっと前から無断で侵入してきておりますよ。」
テヒョンの手を取ると自分の胸に当てた。ジョングクの鼓動が手の平いっぱいに跳ね返ってくる。
「ずいぶん暴れているな・・・」
「あなた様が沢山暴れ回っております。もう、私にはどうすることも出来ません。」
ジョングクが神妙な表情に変わったのでテヒョンの胸が飛び跳ねた。

お互いの体温を感じ、呼吸する息遣いを聞いて、優しい声が心に響く。
これ以上近付けない程そばにいるのに、それでもまだ近付きたいと思うもどかしさは何なのだろう。
視線を向ければ慈しみがこもった笑みを返してくれる。手に触れれば包み込むように握ってくれた。体を寄せたらこぼれないように抱き締めてくれる。
テヒョンもジョングクもお互いは一心同体なのだと感じ、二人の理解が深まれば深まるほど悩ましく更に想いが溢れるばかりだった。
今回の旅行で心のより深い所まで近付いたと感じた。



いよいよロンドンへ帰る日となった。
馬車は東南に向けて走り出す。バースからロンドンまでの距離は155km、約1日掛けての帰路となる。
夜には馬車の中で眠った。そして途中の駅で休憩を取り馬変えをする。
最後の駅ではテヒョンの宮殿へ向かう馬車とジョングクの伯爵邸に向かう馬車と分かれてそれぞれ帰る事になっていた。
馬車が駅に到着すると、ジョングクが乗り換える馬車が待っていた。
テヒョンとジョングクとスミスは馬車の中で食事を摂り休憩を取った。その間にジョングクの荷物が待っていた馬車の方へ積み替えられていく。

「もうじきここでお別れだな。軍務にはいつ戻るのだ?」
「明後日には復帰致します。」
「そうか、、、」
テヒョンの声は名残惜しそうに小さかった。そのままふっと馬車の窓の外へ視線を向ける。しかしすぐに話題を変えた。
「ニールの計画書がどうなったのか、戻ってからの僕の仕事はそれが最初だな。」
テヒョンの表情がいつの間にか仕事モードに変わっている。
「そうでございましたね。」
ジョングクは気持ちの切り替えの速さに感心したのと同時に少し寂しさも感じた。

そばで聞いていたスミスが書類を取り出して話に加わった。
「テヒョン様、ゲインズからの最終報告書によりますと、ニールは既に計画書を書き上げて先に宮廷に提出したそうで、それと同時に謁見も申し出たそうでございます。それもテヒョン様がお帰りになる日に一番近い《敬剣の日》を希望したようですな。」
「また随分と人が多く集まる日を選んだものだな。国中の軍人や貴族達が集まるだろうに。」
「なんでもニール本人のたっての希望だったそうです。」
「何か企みがあるのでしょうか。」
ジョングクとスミスが顔を見合わせてテヒョンに訊いた。
テヒョンは少し考えていたが、
「・・・いや、悪巧みではなかろう。最終的な処罰が下るまではニールは容疑者扱いだ。私の指示で監視が付いておるから下手な事は出来まい。」
と、至って冷静だった。
続けてジョングクが訊いた。
「テヒョン様はどんな処罰をつけるおつもりですか?」
「ニールが提出した計画書を陛下がどう扱われるのか、、それ次第だな。」
テヒョンはそう言ってニヤリと笑った。

「ジョングク、君も証人だ。出られるよな?」
「その日は軍にも関わる敬剣の日ですので、元々宮廷に参内する予定になっております。」
「そうか。ならば最初から側近として隣にいてくれ。」
「はい。分かりました。」
「今年の敬剣の日はいつも以上に緊張致します。」
スミスが呟くように言った。
「ニールの件に関わる誰もが緊張を禁じ得ないであろうな。人一人の今後の人生に関わるのだから。」
他人事のように流して言っているような感じだったが、一番緊張しているのは罰を下すテヒョン本人だった。
ジョングクもスミスもテヒョンの重責をよく理解していた。
貴族として生まれ、また王族であり王位継承権を持つ身として、一般とは違う責任がついて回る。その一挙手一投足は国民や世界が常に見ているのだ。
「当日も晴れるといいな。」
テヒョンが馬車から降りて空を眺めた。

ジョングクの荷物が全て積み終わった。
いよいよ出発の頃合いだ。
「ではテヒョン様ここで失礼致します。」
「うん。道中気を付けてな。」
「宮殿までお見送り出来ずに申し訳ありません。」
「いや、気にするな。僕がそう手配を頼んだのだ。」
二人は握手をした。なかなか手を離すことが出来ずに、お互いに両手で包み込み別れを惜しんでいるようだった。
ようやくテヒョンから手を離した。そのタイミングでスミスが挨拶をする。
「ジョングク様、大変お疲れ様でございました。楽しい旅でございました。また敬剣の日に。」
「こちらこそ。公爵家のご領地に同行させて頂き、また楽しい旅をご一緒させて貰いました。」
「早く乗って。なかなか出発出来なくなる。」
テヒョンが馬車へ促す。

ジョングクが馬車に乗り込むと、テヒョンが自ら扉を閉めた。座席に座ってすぐ窓を開けて顔を出す。
「楽しい思い出をありがとうございました。テヒョン様もお気をつけて。」
両手で二人はまた手を繋ぐ。スミスが少し離れたのを見て、ジョングクはテヒョンの手にキスをした。そして二人は手を離した。
テヒョンが御者に合図をするとジョングクを乗せた馬車が動き出した。
テヒョンは馬車が見えなくなるまで見送った。ジョングクを見送って、楽しかった旅行が終わったと感じた。
「長かったようであっという間であったな。」
テヒョンが馬車が見えなくなった道の先を遠く眺めながらボソリと言った。
「さ、テヒョン様我々も参りましょう。」
スミスがテヒョンを馬車に乗せて、後に続いて乗ると扉が閉められた。
警護の馬が馬車の両脇に就くと、馬車はゆっくりと出発し最後の駅を後にした。


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