群青と真紅 61【領地巡りの旅行⑤】 | Yoっち☆楽しくお気楽な終活ガイド

Yoっち☆楽しくお気楽な終活ガイド

アラフィフの生活や周辺で起きたことを書いています☆
そしてときどき
終活のガイドをさせていただきます

現在、BTSの底なし沼にハマり浸かっております
ガチガチのグテペンです
現在、テヒョンとジョングクをモデルに小説を執筆中☆

昨日テテがウィバスに来てくれてましたね❤️
会いたい想いが一方通行だなんて、そんなわけないのにね🤭アミを煽るの上手いわ👍✨✨

さて、ピザに見えるけど、たまたま見つけたキッシュです飛び出すハート
キッシュの事を物語に書き込んでいたら食べたくなっちゃって😂
今日、近所のスーパーで見つけました
なかなか並んでいないのでラッキーだったな



前回の物語

物語の続きが始まります✨✨✨


【養鶏場の見学】

次の日の朝、テヒョンとジョングは採卵鶏を養鶏する農場にいた。
そこで朝一番に産まれた卵を見せてもらうことになっている。
二人は鶏舎に入るためのズボンと長靴を履いて前かけを着けた。ジョングクはテヒョンの見慣れない姿を見て思わず微笑んだ。
「意外と作業の装いがお似合いで驚きました。テヒョン様は何でも着こなしてしまわれるのですね。」
本当はとても可愛らしいと思ったのだが、この場では失礼になると思い言葉を選んで言ったのだ。
「そう言ってる君もよく似合っているじゃないか。」
「そうですか?」
「うん。やんちゃな少年みたいだ。」
二人でお互いの姿を見せ合った。
「公爵と伯爵はとても仲がよろしいのでございますね。」
責任者が気心が知れた二人のやり取りを微笑ましく見て言った。
「ジョングクは公私共にとても信頼の置ける私の側近であるからな。」
テヒョンが自慢するように言うと、ジョングクに向かって素早くウィンクをした。テヒョンは最近このようないたずらっぽい仕草をするので、ジョングクは度々公の場にいても無防備に胸を射抜かれてしまった。



テヒョン達の支度が整うと採卵小屋に案内された。
「公爵、卵を採ってみませんか?」
「え?私がやってみてもよいのか?」
「勿論でございます!どうぞこちらをお使い下さいませ。」
採卵小屋の小屋長から、籐籠と新しい手袋がテヒョンに差し出された。
「うん。でも籠だけで大丈夫だ。君達も作業は素手だろう?」
そう言って籐籠だけ受け取って、気を使って用意をしてくれたであろう手袋は返した。責任者と小屋長はびっくりしたが笑顔で従った。

産卵棚の前まで案内されると、目の前の藁の上に沢山の産まれたての卵があった。
「おお、沢山産んでいるな。」
テヒョンが一つ取ってみた。
「ああ、まだ温かいぞ!」
テヒョンはジョングクに振り向いて卵を見せた。ジョングクも一つ取ってみる。
「確かに温かいです。本当に産まれたてなんですね。」
テヒョンとジョングクは二人で産卵棚を見ていきながら、テヒョンが持つ籐籠に丁寧に卵を入れていった。
回って行くうちにいつの間にか籐籠の卵が一杯になった。
「公爵、お預かり致します。」
責任者が山積みになった籐籠をそっとテヒョンから受け取った。

鶏舎で作業をしていた者が洗面器に温かいお湯を用意して持って来てくれた。テヒョンとジョングクはそれで手を洗った。
「形も大きさもキレイに揃った卵ばかりだな。」
「ありがとうございます。飼育方法を変えて鶏舎に放牧場を造ってからその効果が出てきているようです。」
「なるほど、運動量が増えてストレスも緩和されたか?」
「はい。そのように思われます。」
「見舞いで貰った卵もとても美味しかったものな。」
「ああ、そうでございました。公爵の事故の知らせを伺って、ここにいる者達が皆で朝一番の卵を採って、ご療養中のプチ・パレスにお届けに上がったのでございます。」
「私もシェフもそばに居た者たちが皆喜んでいたぞ。有り難かった。」
「公爵がお元気になられて皆安心致しました。今お採りになったこの卵も、後で朝食としてお召し上がり頂きますので。」
「うん。すごく楽しみだ。」
籐籠の卵は公爵自らの御手で採られた物として、採卵小屋に来ていた食堂の料理人にうやうやしく手渡された。

「ではお次は食肉用の鶏舎にご案内致します。」
朝食までまだ時間があったので、テヒョンとジョングクは先に次の養鶏場まで案内された。
二人は散策がてら放牧された鶏と共に歩き、元気よく餌を食べる様子を見て回った。
栄養豊富な飼料をバランスよく与えられ、清潔に管理されているため鶏の羽の艶もよく、体格も均等に育っていて状態が頗るよかった。
「テヒョン様、後ろを鶏か付いてきておりますよ。」
ジョングクが笑いながら言った。
テヒョンが振り返ると放射状に鶏がトコトコ付いてきていた。
「本当だ。いや、僕だけじゃないぞ。君の後ろにもピッタリ付いてくるのがいるじゃないか。」
よく見るとそのうちの何羽かはジョングクの後を追ってきていた。
二人はお互いの姿が可笑しくて大笑いをした。そしてそのまま鶏達を先導しながら鶏舎に戻って来た。鶏舎で作業をしていた者達がその様子を見て驚いた。

「公爵、こんなに後に従って付いてくる鶏達を初めて見ました。人だけでなく動物までもお導き下さるとは流石でございます。」
皆が笑いながら二人の元に駆け寄り鶏達を鶏舎の中へ誘導していった。養鶏場の中が一気に和んだ。
テヒョンとジョングクは、鶏舎でしばらく作業をしている者達と、振舞われた紅茶を飲みながら養鶏について意見交換を交え話をした。

話がだいぶ盛り上がったところで、鶏舎で働く者達の朝食の時間になった。テヒョンもジョングクもかなり空腹になっていることに気付いて館に戻ることにした。
館の玄関前にはスミスが待っていた。
「お帰りなさいませ。朝食の準備が整ってございます。」
「うん、すぐ行くよ。」
そのまま部屋へ戻り、着替えをして身支度を整えて食堂へ向かう。
「ジョングク、パイの香りがしないか?」
「ええ、先程から気付いておりました。」
食堂に向かう廊下に香ばしい香りが漂っていて、二人の空腹具合に更に拍車を掛けた。

この日の朝食は、テヒョンとジョングクが採った卵で作った《キッシュ》だった。フランスのロレーヌ地方の郷土料理だが、キム公爵家の所領する領地にはフランスの郷土料理を出す店が多く、キッシュは定番料理になっていた。
パイ生地を型に敷いて、解いた卵液に生クリームと炒めた玉ねぎ、じゃがいも、ほうれん草、ベーコン、チーズを入れ窯で焼き上げる。
テーブルに着いたテヒョンとジョングクはキッシュがカットされて運ばれてくると、早速フォークで一口を口に運んだ。
「うん!今朝の食事はまた格別だな、ジョングク。」
「ええ。本当に。」
「お二人が一つ一つご自身の手で採って下さった卵だそうですね。まことに絶品でございますな。」
スミスが嬉しそうに言うと、パクパクとテヒョンやジョングクの視線をはばかることなく頬張って食べた。

「マナーにうるさいスミスとは思えないな。」
テヒョンはフォークを止めてスミスの豪快に食べる様を見ていた。
「テヒョン様、このままスミス殿を見ていたら我々の次の分が無くなってしまいますよ。」
「お、それは駄目だ!」
テヒョンはフォークを置いてスミスに負けじと、手掴みでキッシュを頬張った。
ジョングクはその姿を見て驚いたがすぐに真似た。
「あ!テヒョン様もジョングク様も、それはあまりにもお行儀が悪すぎますよ。」
スミスが二人に注意をしたが、結局主人に従えというように自分も手掴みに変えた。
食事に同席していた養鶏場の関係者達は、テヒョン達の一部始終を呆気にとられて見ていたが、一人、また一人と手掴みで食べ始めた。そして最後には皆一様に手掴みで食べ始めてしまった。
「爽快な景色だな。」
テヒョンが皆が思い思いに、食べたいように食べれているテーブルを眺めて呟いた。テヒョンが旅行に望んでいた非日常と身分を越えた景色がそこにはあった。


【公園デート】

朝食後の午前中にテヒョンは領地の関係者達と、少しだけ打ち合わせをするなどの仕事をした。旅行中の公爵に仕事の話を持ち出すのはナンセンスだと、気を使っている事にテヒョン自身が気付いて、わざわざ時間を設けたのだ。
普段から忙しく動き回っている領民達の為に、少しでも早く承認事項に許可を下ろして、スムーズに事を運ばせてやりたいと思った。
事務的手続きはスミスが行うので、この時もテヒョンの隣に座っていたが、そこに使いの者がやってきてスミスに封書を渡した。スミスはタイミングをみてそれをテヒョンに渡した。
テヒョンは中を確認するとサインをして直ぐにスミスに返した。スミスは元通りに折り畳んで直すとテヒョンのイニシャルの封蝋をした。

テヒョンの元に届けられた封書はプロスペクト二ーのゲインズからで、ニールに課した罰についての中間報告が書かれていた。
「ニールに課した罰は順調に進んでるそうだ。」
隣にいるスミスに耳打ちする。
「ひとまずは安心ということでございますね?」
「そうだな。」
テヒョンは答えたあとに安堵のため息をついた。



その後、仕事モードの頭からプライベートに戻ったテヒョンはジョングクを誘って近くの公園まで歩いて行った。
まだまだ寒さが厳しい冬の午前の空気。あと1時間もすれば午後に入るというのに、吐く息は白く舞い上がる。
公園に着くとテヒョンは自然に指を絡ませてきて、そのまま手繋ぎをして歩き始める。ジョングクは喜んでされるままになった。
園内のプロムナードには落葉の時期に積もった枯れ葉が、うっすら霜を被って敷き詰められていた。二人は寄り添うようにしてその上を歩いていく。
旅行も中盤に入り、一緒にいられる時間も先が見えて来る頃だ。お互いに一歩一歩大事に踏みしめるように歩いた。
「テヒョン様、あの小高い芝の上でお茶にしませんか?あそこからですと丁度目の前にポセイドン像の噴水がよく見えますよ。」
「じゃあそうする。」
テヒョンが応えるとジョングクは、すぐさま先に走って行って芝の上にシート代わりのブランケットを敷いた。

テヒョンが追いつくとブランケットの上に腰を下ろした。ジョングクも隣に座ると持ってきたバスケットを二人の間に置いて広げた。
バスケットの中には紅茶が入ったポットが巾着袋にの中にあって、マグカップが2つあった。
「あ、僕がやるよ。」
支度をしようとしたジョングクの手をそっと押さえて、テヒョンが紅茶を淹れる準備をした。
こういう時は遠慮なくやってもらうことにする。ジョングクはテヒョンが二人の親密さを実感したい時がある事を分かっていた。
《王族》という高貴な身分であることで仕えられることが殆どだ。そこの主従関係には相手が誰であろうと必ず一線が引かれている。
ましてや公ではチョン伯爵として大公子の《側近》を務めている。
だがジョングクに対しては心の繋がりを大事にしたいと考えているテヒョンは、線引がされないひと時がどうしても必要だった。特に二人きりでいられる時は。

テヒョンは嬉しそうにマグカップにまだ充分温かい紅茶を注いでジョングクに渡した。
もう一つの方に自分の分も注いでポットを置いた。
「テヒョン様、私のマグカップを持っていて下さいますか。」
ジョングクはマグカップをテヒョンに渡すと、残った紅茶が冷めないようにポットを巾着袋に入れた。
「ありがとう。」
礼を言われて両手にマグカップを持って待っているテヒョンに視線を移した。その姿があまりにも可愛らしくて、マグカップを持たせたままテヒョンの手ごと両手で掴むと紅茶を飲んだ。
ジョングクは飲み口に唇をつけたままテヒョンを見た。愛おしそうにジョングクを見つめている。

「その視線は反則ですよ・・・・」
堪らずそっと腕を回してテヒョンの肩を抱いた。ここでやっと自分のマグカップを受け取る。テヒョンがジョングクの腕の中で紅茶を飲むと、そのまま肩に寄り掛かった。
「やっぱり随分と逞しくなったな。肩が大きくなっている。」
「はい。每日兵士達と共に鍛えておりますからね。軍服の肩幅が合わなくなってきて、いくつか新調致しました。」
「そうか。まだまだ君は成長期であるのだな。」
二人は笑った。だが次に発する言葉は低く重くなる。
「鍛え上げた君の力が戦争で使われることがなければいいのだがな。」
肩を抱くジョングクの腕に力が入った。テヒョンは顔を見上げた。
「私は毎日、あなた様をお支えし、お守りする為に鍛えているのだと、自分に言い聞かせております。」

その言葉にテヒョンは切なくなった。一気に紅茶を飲み干すと、逞しくなった肩に抱きついて哀願する。
「どこにも行かないでくれ。僕のそばにずっといて欲しい・・・」
テヒョンの手からマグカップが落ちた。
ジョングクはテヒョンを強く抱き締めた。
「あなた様のおそば以外に、私が行く所など、どこにございましょうか。」
二人の脳裏に浮かぶ厳しい予感を振り払うように、お互いの言葉は祈りとなって発せられた。二人は心の中で呼び合う。

愛しい者よ....
愛しい人よ....

テヒョンを抱きしめるジョングクの目の前に海神ポセイドンの像が見えていた。冬場は噴水が止められているので、カラカラに乾いていて、心なしかトライデントを持つ姿に哀愁が漂う。ポセイドンは水があってこその海神だ。ジョングクはあのポセイドン像に我が身を重ねた。
ジョングクにとっての水はテヒョンの存在そのものなのだ。いつでも心に潤いを与えてくれて、力を行き渡らせてくれる。
二人にとって一番安心できる場所がお互いであることは今まで何度も確認してきた。
静かに寄り添っているだけで幸せを感じるし、お互いの息づかいを耳にするだけで二人だけの世界が築けた。

テヒョンは今回の旅行にジョングクを誘って本当に良かったと心から思っていた。いつも気にかけてくれて、それでいてもさり気なくそばに付いてくれている距離は安心感をくれた。
そして何よりもいつでも情熱の炎を灯してくれる唯一の存在だった。
今この一瞬一瞬を逃さないように、残りの日程も楽しんでいきたいと二人は同時に思っていた。


公園内に立ち並ぶ木々の枝の間を風が通り抜けていく。テヒョンとジョングクの元にも降りてくるが、二人の間を通り抜けることは出来ない。
それどころが風が運ぶ冷気からお互いを守ろうと、更に近く寄り添って誰も介入出来ない程のオーラが作られ二人を包んだ。

※ 一部画像お借りしました