Yoっち☆楽しくグテを綴る♡ -49ページ目

Yoっち☆楽しくグテを綴る♡

テテとグクの Me Myself写真集にインスピレーションを得て【群青と真紅】をブログ内で執筆中です️

グテ画像を探してたら見つけた

[ Goûter ]

フランス語🇫🇷でグテと読むよ😳
おやつパン屋さん🥐
本店はフランス🇫🇷のリヨンにあるんだって
リヨンといえば、18世紀は繊維の街と言われてたところ←確かね・・・ウインク

直接グテには関係ないけどさ、何かのご縁と思って行ってみた👍✨
目黒区の学芸大学店まで❗



なにかとさ、形は違うけどカッコに反応するよね😂

それもさ、こちらのお店のロゴも
 ピンクがいいでしょ❓

紙袋も可愛らしい💕



これ食べてみたくて💕
クロワッサンベリー


流血じゃないよ😅中のフランボワーズコンフィチュールだよ


クッサンルージュ
これもフランボワーズコンフィチュールたっぷり飛び出すハート


リヨンサンドフロマージュ
ゆず風味のチーズケーキをクロワッサン生地で挟んでます😍


味はね・・・・❤️
想像以上に美味しくてびっくりでした✨✨✨✨✨✨

交通費かけてもまた買いに行くと思う
知ってるよ〜〜って方もいらっしゃるかもだけど
知らなかったというお近くの方、是非行ってみてね💙💜❤️

公式HP


ちなみにGoûter・グテとは
味わうって意味みたいよ☺️



小説のイメージ画をラフスケッチで描いてみました☺️
瞳を描かなかったのは、読んで下さっている皆さんの「キム公爵チョン伯爵」の各々のイメージがあると思ったから

今後も時々イメージ画を描いていこうかなと思っています✨✨✨


前回の物語


物語の続きが始まります✨✨✨


【国王の孤独な苦悩】


国王が倒れた次の日、大公とテヒョンは午前中から宮廷に参内していた。
他の王族も顔を揃えて今後の国王の公務代行の協議が行われる。

まず国王の代行がそもそも出来ないものについては、王位継承が一番近く既に信任を受けている大公が務める事となった。それ以外の公務はテヒョンを含め他の王族と平等に振り分けられた。
「これだけの公務の数を改めて目に致しますと、いかに陛下のご負担が大きかったかが分かりますな。」
「これではまたお体に障ります。この際ですから今後も我々王族方で担うことにしてはいかがでしょう。」
王族達から色々な声が上がった。

「皆様、ありがとうございます。陛下はご自身の目や耳で直接確認なさりたいという事で、一気に引き受けてしまわれる所がございました。しかし、皆様からのご提案を頂戴し今後は振り分けて、陛下には皆様方と共に携われるということで承認下さるようお話致します。」
国王の体調が回復した頃に大公が代表して王族の総意を伝える事になった。
今までの公務の膨大な数に皆が驚きを隠せなかった。また、テヒョンは他の王族達が皆喜んで公務を引き受けようとする気持ちが嬉しかった。

協議が終わり、テヒョンは国王の私室に向かった。
控えの間で侍従長に会う。
「今、陛下は眠っておられるのか?」
「いいえ、滋養のお薬を服用なさっていらっしゃる所でございます。」
「お会いできるか?」
「はい、殿下ならば大丈夫でございます。どうぞ。」
侍従長が扉を開いてテヒョンを中に通した。

国王は投薬が終わりベッドに横たわっていた。
「テヒョンか、、」
声にいつものような張りがなく辛そうに見えた。
「・・・すまないな、、迷惑をかけて、、」
「お辛そうです、、無理にお話にならないで下さい。」
「体が物凄く重いのだ・・・」
「陛下は働き過ぎでございます。どうかご公務の事は我々に任せて、今はしっかりお休みになって下さい。」
国王は深く息を吐いた。
「もう少しお元気になられたら、父がお伺い致します。」
「うん。」
「これ以上はお体に障りますから、私は失礼致します。」
国王は目で会釈して応えた。
テヒョンは扉までくると振り返り、国王が目をつぶって眠りに入ったのを確認して部屋を出た。

「あの、、殿下、、」
部屋を出た所で侍従長に呼び止められる。
「なに?どうかしたか。」
「実は、、、」
侍従長はテヒョンを呼び止めたものの、言っていいものかどうか迷っている感じだった。
「何かあるのならきちんと申せ。」
「はい、、あの、陛下が夜中に何度もうなされているご様子で、、」
「それはお倒れになったせいであろう?」
「そうなのでございますが・・・」
先程から侍従長の言葉の歯切れの悪さが気になる。
「なんだ、どうしたのだ?いつもの侍従長らしくないではないか。」

侍従長は意を決して言った。
「うなされながら、、あのお方のお名前を呼ばれていらっしゃるのです。」
「あのお方?」
テヒョンは少し考えていたが、ハッとして思い出した。
「まさか、、マルティナ・シャルロッテ姫のことか!?」
「はい、、」
テヒョンは驚きと共に愕然とした。
マルティナ・シャルロッテ姫とは、政略結婚で東ヨーロッパにあるウェルハイム帝国の皇帝ハインツ2世の皇妃になった女性だった。

彼女はルクテンダーク公国の大公アウグスト3世の公女だった。
ルクテンダーク公国と隣接するウェルハイム帝国が臨戦態勢であった為、母である公妃の実家がある英国に、娘のマルティナ・シャルロッテ姫が避難する形で来ていた。避難して来たとはいえ公国の公女という立場であったので、王室は宮廷への出入りを歓迎した。
そこで国王と公女は知り合い、母国の行く末を案じ心を痛めている彼女の支えになったのだ。

当時宮廷では国王と公女のロマンスが噂された。
「昨夜のことは他に誰か聞いている者がおるのか?」
「私だけでございます。」
テヒョンはひとまず安心した。
既に異国の君主の后になっている人の名前を大国の王がうなされている中とはいえ、口に出すなどスキャンダルになりかねない事だ。ましてや以前にロマンスが噂された相手ともなれば、話に尾ひれが付いて最悪の場合外交問題に発展しかねない。

しかしテヒョンは国王の《心》を心配していた。
なぜならこのロマンスの噂は、噂などではなく本物であったからなのだ。国王の周辺ではテヒョンと侍従長と大公だけが知っていた。
「夜は陛下の私室から人払いせよ。仕える者達を控えの間で待機させるのだ。」
「かしこまりました。」
今夜からの対策はこれでよいだろう。
だけれど、国王がまだマルティナ姫を忘れられないでいるのだとしたら、こんないたわしい事はなかった。

国王とマルティナ姫は年が同じで、彼女の気さくさは国王の快活な性質に合って、二人はすぐに打ち解けた。
どちらも出生が君主の子息、息女であったのでお互いの気持ちの理解も出来た。
また頻繁に顔を合わせる事が多くなり、お互いが恋に落ちるまでにはそんなに時間は掛からなかった。

国王自身は彼女を后として王室に迎え入れたいと考えていたし、ルクテンダーク側も大国の国王と婚姻が結ばれれば、強い後ろ盾が出来ると密かに考えていた。
しかし、ルクテンダークとウェルハイムが更に緊張状態に陥り、どうしても戦争を回避したかった両国は、和平を結ぶ為に双方の婚姻で同盟を繋ぐ案を同時に出したのだ。
先に英国王がマルティナ姫を后にすると宣言してしまえば二人はめでたく夫婦になれたのだか、なんと彼女は自らウェルハイムの皇帝の后として輿入れする事を選んだのだ。

国王は彼女の意思を尊重した。
国の行く末を案じながら安全な土地で暮らしていた彼女が、自らの幸せの為に祖国と国民を見捨てるような事は出来ないと分かっていたからだ。
ハインツ2世からの正式な婚姻の申し入れから1年後、マルティナ姫は帰国してすぐにウェルハイムに輿入れとなった。公女の輿入れはウェルハイムの国民に平和の女神として歓迎され、この政略結婚は成功し、両国の同盟が正式に表明されると武装解除は直ぐに行われた。

それ以降国王の職務は激務へと変わっていく。確かに仕事熱心な国王ではあったが、もしかしたら最愛の人を忘れる為にも仕事に没頭していたのかもしれない。
国王という立場ゆえ誰にも何も言えない孤独の中で、どんな日々を送っていたのか、、、。
あの飄々とした笑顔の裏に隠された苦悩を思うと、テヒョンは胸が締めつけられる程苦しくなった。


国王が重い過労で公務を休むことが国の内外にも知れ渡り、国民や各国の駐在大使からお見舞いが寄せられた。
各国の王族、皇族からも見舞いが届けられたが、その中にルクテンダーク公国のアウグスト3世の名前があり、更にウェルハイム帝国の皇帝ハインツ2世とマルティナ・シャルロッテ皇妃の名前も連名で書かれてあった。


国王は2週間目にやっとベッドの中で座れるまでに回復した。
それから数日後、テヒョンは司令本部に来ていたジョングクに会うと、揃って国王の見舞いに来た。
テヒョンは事あるごとに一人で見舞いに訪れていたが、ジョングクは国王が倒れた日以来久しぶりだった。

「陛下、来ましたよ。今日はジョングクも一緒です。」
部屋の中に入ると国王は読書をしていた。
「おお。忙しいのに二人共よく来てくれたな。」
声の張りはだいぶ戻っているようだった。ただ、こちらに向けてくる笑顔が穏やか過ぎてなんとなく違和感を感じた。
「陛下、そのように沢山の本を読まれたりなさって大丈夫なのですか?」
テヒョンはワゴンに積まれた本の数があまりにも多いので心配をした。
「ずっとベッドの中で何もしないのは退屈すぎるのだ・・」
国王は言いながら目を瞑ると黙った。
そして首を振った。
「いや、違うな。」
テヒョンはベッドの脇まで来ると国王を見守った。

「私は仕事がないことが怖いのだ。」
「陛下・・・」
「どうも夜中にうなされているみたいでな、、、」
込み入った話になるのかと思いジョングクが立ち上がる。
「あの、、私は席を外しましょうか?」
「いや、いいのだ。お前ももう私の身内同然だ。一緒にいて聞いていてくれ。」
国王の言葉にテヒョンを見た。テヒョンは瞼を閉じて『いいよ』と頷いてみせた。
ジョングクが座り直したのを見て、国王は持っていた本を閉じた。

「倒れたあの日からずっと夢を見る。毎晩毎晩昔のことが夢に出てくるのだ。」
テヒョンもジョングクも黙ったまま聞いていた。
「やはり無理やり忘れようとしても無理なのだな、、」
そう言った途端、国王の左の目から一直線に涙がスーーっと落ちた。真顔な表情にあまりにも涙が合わなくてテヒョンとジョングクが動揺する。
「陛下、、」
テヒョンが国王の手を掴んだ。
「仕事をしなくなった途端、辛くて仕方がないのだ。・・・あの方がまだ私の中におるようで。」
今度は右目からも涙が流れた。
ジョングクはびっくりしてただただ聞いているだけしか出来ない。
国王が目の前で涙を流し、誰かを想い辛いとこぼしている・・・。一国の王の個人的な打ち明け話を聞くなど、それだけで恐れ多い事で衝撃的だった。

「侍従長から伺っておりました。陛下はうなされながらお名前を呼んでいらっしゃると。」
「そうか、、、」
国王の気持ちが昂ぶっていくのが分かった。
「でも、どうして忘れられよう!心から愛した人だ。頭ではもう決着はついている。だけど、、想いは消えないまま、まだずっとそばにいるのだ。もう手の届かない所へ行ってしまった人なのに、、、」
テヒョンがベッドに座り、国王の肩を抱きしめる。
「私はまだ、、愛しているのだ・・・愛しているのだ・・・!!!
絞り出すように愛しい人への想いを口にする国王に、誰も見ることが許されないような孤高と高潔さが滲み出ていた。
それを目の当たりにしているテヒョンとジョングクは、その切なくて苦しい国王の佇まいに圧倒されてしまった。

お互いに愛を見出し、心を繋いた者同士が《国家の安寧》という責任を担い《決別》を選択する。社会的に見れば尊い決断として美談になるのだろう。
しかし、一人の人の人生として見れば、これほど残酷な重責はないだろう。
争う国の双方の君主が意地を張らずストップを掛ければ済んだ事だ。しかし国を背負っているからこそ簡単には出来ない。そのせいで何世紀にも渡って同じような《犠牲的な取り引き》がされてきた。
テヒョンの目の前にいる国王は、マルティナ姫が帰国してから一切を沈黙した。
自分と彼女とのロマンスの噂についても、一言だけ否定をしただけで追求を許さない雰囲気を醸し出した。

それでも愛することは止められないのだ。テヒョンは人を想う心の強さを感じた。
「陛下、もう忘れなくてもいいではありませんか!閉じ込めようとなさるからお辛いのです。今はまだお気持ちを大事になさるべきです。」
どれほど辛い時間を過ごして来たのか。それもたった一人で、、、。君主の立場であるために、個人的な事はずっと封印しなければならなかった。これ以上何をこの方に強制できるというのか。
「フレデリック兄様、、、」
テヒョンは小さい頃に呼んでいた、国王のフレデリックという名前ごと抱きしめた。国王としてではなく、一人の人間として、友として、兄として尊厳を守るように名前を呼んだのだ。
本気で一人の人を愛していたのだから、成就しないからといって気持ちや想いが一瞬で消えるわけがない。諦めなければならないからといって、想いまでは道連れには出来ない。たとえ王であっても平民であっても老若男女誰であろうと皆それに違いなどない。《心》とはそういうものだ。

「陛下、、、打ち明けて下さりありがとうございました。でなければ人としての陛下を見失う所でございました。
陛下の尊い想いはいつか昇華され落ち着いてゆくと思います、、、。」
国王は次第に落ち着きを取り戻していった。
すると今度は泣き声が聞こえてきた。テヒョンと国王が顔を上げる。なんと、ジョングクが泣きじゃくっていた。
「何でお前が泣いているのだ?」
国王は呆れたように言う。
「申し訳、、、ありません。・・・陛下の御心を思うと、、、どうしようもなく涙が、、、」
「君の泣き上戸だけは、なかなか治らないね。」
テヒョンが笑う。
「それだけジョングクの感受性が豊かな証拠だということだな。」
国王が初めて笑顔になった。

「二人共愛しておるぞ。お前たちだけには心から話が出来る。よい重臣、よい友、よい弟達を持てて私はヨーロッパの王の中で一番の幸せ者だ。」
国王はテヒョンの頭をクシャっと撫でた。そして離れて座るジョングクに近くに来いと手招きをして呼び、同じように頭をクシャと撫でる。
国王は晴れやかな顔をしていた。
まだ癒えるところまでは程遠いのかもしれないが、心の丈を口に出して聞いてもらった事で、何かが変わったのは確かだった。

扉を叩く音がする。ジョングクが応対した。
「陛下、間もなくお食事のお時間になるそうでございます。」
「そうか。お前達も一緒に、、と言いたい所ではあるが私はまだ流動食なのだ。」
「さすがにそれはご遠慮申し上げます。」
テヒョンが即座に断った。
「おいおい、あまりにも冷たい言いようではないか。」
「その代わりお元気になられましたら、是非お忍びで街にお食事に参りましょう。」
「おお、それはいい考えだ!その日が待ち遠しいが文句を言わずに流動食を頂くぞ。」
「是非美味しくお召し上がり下さい。では陛下、また参ります。読書のし過ぎも程々になさいませ。」
「分かっておる。ではまたな。今日は本当に感謝しておる。ありがとう二人共。」
テヒョンとジョングクは笑顔で応えた。

二人は国王の部屋を出た。
廊下を歩きながら二人は感慨深く国王の話を思い出していた。人を愛するということは素晴らしいことであるが、結ばれなかった時の怖さも併せ持つ、強くて繊細な感情だとしみじみ思う。
テヒョンがふとジョングクを見ると鼻の頭が赤くなっていた。
「君が泣いていたお陰で、陛下が笑って下さった。」
「お役に立てたのでしょうか、、?」
「勿論だ。陛下のお話が重いままで終わらなくて済んだじゃないか。」
テヒョンが指でジョングクの鼻先を弾いた。

「テヒョン様、陛下がお話になっていた方とは、昔お噂がされていた方なのでしょうか。」
「うん、秘密だけどそうだよ。」
「ああ、、そうだったのですね。陛下に婚姻のお話が入って来てもなかなか進まないと聞いておりましたので、もしかしたら想い人がいらっしゃるのかと思っておりましたが、、、こういうことがあったからなのですね。」
「切ないな、、、。身分違いで結ばれない者達がいる話はよく耳にしたが、同じ身分であっても結ばれない場合もある。高貴な方々であればあるほど、尚更自分達の意向だけでは立ち行かぬことは多い。」
ジョングクは自身の宿命を思い巡らせる。テヒョンはその様子に気付いた。

「でも、、、」
ジョングクが見上げている視線に、自分の視線も合わせると言葉を続けた。
「これからは、解決の方法や打開策などいくらでもあるぞ。僕達は先人達が造り通ってきた道を歩いているだけだ。未開拓な場所は自分が足を踏み入れて道を造ればいい。」
言い終わると、にこにことジョングクを見た。
「そうだろ?」
テヒョンの明るい前向きな言葉と笑顔につられて笑う。
「はい。確かにそうですね。」
ジョングクは歩きながらそっと隣の手に触れた。テヒョンは前を見据えたまま握り返した。


【愛される国王】


何もかも話してしまった、、、。
国王はまだ少し考えていた。マルティナ姫が輿入れした後、ウェルハイムのハインツ2世の政策が変わっていったのは知っていた。対外交重視から国民へ向けての政策が多くなっていったようだ。
ただ、皇帝夫妻に世継ぎの話が出てこないので国王は複雑な思いだった。
国王とマルティナ姫は既に体の結びつきはあったのだが、彼女が輿入れの意思を固めた後は一切彼女には触れなかった。
相手の皇帝への配慮でもあったが、間違って子を身ごもってしまったら彼女の意思が台無しになってしまう。

マルティナ姫が帰国をする前夜、最後の別れの際にお互いに寄り添い唇は近づいていったが、寸での所でためらってただ抱きしめ合った。彼女の首筋に鼻を当て心地よい香りを感じることだけ自分に許した。
そして、自分の元から走り去る靴音と扉が重く閉じる音だけが国王の部屋に残った。
それから後の記憶はない。
マルティナ姫の香りだけは今でも国王の脳裏の奥深くに残っていた。
まだ愛おしく胸が高鳴る想い人ではありながら、国王は国の為に勇気を持ってたった一人で飛び込んでいった彼女が、伴侶に愛され幸せに暮らしていることを心から願っていた。



テヒョンとジョングクは宮殿から近いレストランの個室にいた。
二人だけで外出しての食事は初めてだ。
個室に通されてから、二人はずっと無言のままだった。
国王の話にかなり圧倒されていた。
人を想うことで伴う苦しみや切なさを二人は経験して知っている。
だが、国王のそれはスケールが違い過ぎる。
「陛下は強いお人だ、、。」
テヒョンが呟く。
「陛下はご自身の弱さを自覚なさっていらっしゃるからお強いのでしょうね。」
「弱さを自覚なさっているから、、、か。」
「そうでなければ、あの様に私達に苦しみや悲しみを打ち明けるなど出来ない事でございます。」

ジョングクの言葉を噛み締めてテヒョンは頷く。
「僕は陛下のあの尊い想いをお守りして差し上げたい。」
「私も同じ様に思っておりました。」
「僕達はずっと陛下のお味方でいて差し上げような。」
「はい。」
国王の悲恋がいつか美しい思い出に昇華されることを心から願った。
二人はテーブルの上で手を繋いでお互いの意思を確かめ合った。

食事が運ばれて来て昼食が始まった。
それぞれ違うメニューを注文したので、互いの料理を食べさせ合ったりして楽しんだ。日常ではなかなかそんな事は出来ない。ここは個室なので誰にも邪魔されずにマナーも気にせず二人だけの食事が楽しめた。
この幸せが何かの事情で引き離されるなど耐えられないと二人は思う。
だからずっと大切に育んでいきたいと切に願うのだった。


国王がベッドから立ち上がれるまで体力が回復した頃、大公が見舞いを兼ねて国王の私室にやってきた。
「陛下、お加減は如何ですかな。」
「叔父上。お陰様で立てるまでにはなりましたよ。」
「ははは、良うございました。しかし、無理は禁物ですぞ。」
「ええ。テヒョン達にも言われましたから、気をつけております。」
「どうぞベッドで楽になさって下さい。」
大公はそう言うとベッド横の椅子に座った。

「今日は陛下のご回復後のご公務についてお話しに上がりました。」
「そういえば皆さん方で公務を代行して下さっているんでしたね、ありがとう。特に叔父上には重要事項もやって頂いて申し訳ない。」
「そんな事は気にしないで下さい。
それよりも今後はある程度、仕事を各王族に振り分けて下さい。これは皆様方からの申し出ですよ。皆が陛下のお体を心配しております。今回、振り分けをしてその膨大な公務の数に驚いておりました。」
「叔父上、、、」
「皆さん頼りにして欲しいのですよ。陛下とご一緒にお仕事が出来ることを望んでいます。もっと親族に甘えて下さい。」
大公が国王の肩にそっと手を置いた。

「お仕事に埋もれて忘れたい事もおありだったのでしょう?」
国王は驚いて大公の顔を見た。大公は優しい笑みを見せる。
「私にも覚えがありますよ。
妻を亡くした時はその寂しさや苦しさを感じる事が怖かったので、仕事に逃げましたから、、。でも、私にはテヒョンがおりました。あの子がいてくれたから救われました。」
国王は黙って話を聞いていた。
「私にとって貴方様は兄上の息子で、私の甥ですけれど、勝手に息子だとも思っております。大したお力添えは出来ぬかもしれませんが、父と思って頼りにして頂きたいのです。愛しい思いはテヒョンと一緒でございますよ。」

「叔父上、、ありがとう。」
国王は初めて大公の肩に寄りかかった。
大公はそんな国王の肩をしっかり掴むと数回叩いて大丈夫と合図した。
国王は身内である王族達の愛情に今更ながら気付いた。国王が頼りにしてくれるのをずっと待っていた事にも気付いたのだ。
国のため、国民のため、と先頭で頑張って引っ張っていかねばと思っていたが、皆のためになることは、一人だけでは立ち行かぬ。その為には皆の力添えがなければならないのだと思った。

「テヒョンも大分役に立つ公爵になりましたぞ。充分に力を借りてやって下さい。兄の役に立てることはあの子の幸せにもなりましょう。」
「はい。もう既に充分力を借りておりますよ。私の後をちょこちょこ付いてきていた小さい弟が、しっかり私の気持ちを思いやってくれる頼もしい紳士になっておりました。」
「そうでしたか。貴方様もテヒョンも幸せであって欲しい。私の今の願いはそれだけでございます。」

大公は何かしら国王の苦悩には気付いていたようだった。付かず離れず見守ってきていたのだ。フランスに駐在中も何かと贈り物や手紙を送っていたのもその為だ。
今更ながら自分がとても愛されていたことに気付く国王だった。
体が悲鳴を上げて倒れなければ、もしかしたら精神的にボロボロになってしまったかもしれないと思うのだった。
重度の過労で倒れた事は、神か天国の父王が気付きのために降ろしてくれたものだったのかもしれないと思った。


一ヶ月が過ぎて国王はすっかり元気を取り戻した。普通食も食べられるようになり、筋力の衰えも回復させた。
そして、療養中にテヒョンとジョングクと約束をしていたお忍びでの食事をしにロンドンの街に出たのだ。
お忍びとはいっでも国王を乗せた馬車の両脇にはしっかり警護が着いている。
ただ馬車は宮廷の公用車であったので、誰が乗車しているかは分からなかった。
「随分暖かくなっていたのだな。」
国王は少しだけ窓を開けて外の風を入れた。
外はすっかり春の季節になっていた。

「しかし、テヒョンよ。」
「はい。」
「見目麗しい紳士3人がこうして一緒に街に繰り出しては、目立ち過ぎるのではないか?」
テヒョンはにこにこしながら応える。
「陛下の本領発揮でございますね。もうすっかりお元気になられて本当によかった。」
「いやいや、真面目に言っているのだぞ。」
ジョングクは国王とテヒョンのことの成り行きを黙って見ていることにした。
「ここに父上が居なくてよかった。」
「なんだ、どういうことだ?」
「父上も陛下と一緒に同じ事を申したと思いますので、収拾がつかなくなるのですよ。」
「見目麗しいのは本当の事ではないか。こらジョングク、黙ってないでお前も何か申せ。」
テヒョンが何も言うなというように首を横に振った。

ジョングクが国王とテヒョンの板挟みになって困惑しているうちに、馬車は目的地のレストランに到着した。
国王が言うように3人共に見目麗しいのは間違いなく、馬車を降りてから居合わせた街の人々から注目を浴びた。
お忍びなので目立たない服装になってはいたが、元々持っている品位は隠せない。『まぁ、どちらの殿方達かしら?』『素敵な方々ですわね。』『どこの名士の方々であろうか?』とざわつき始めた。警護の者達がこのままではまずいと、3人を早々にレストランの中へ誘導した。

中に入ると国王が、
「ほら、私の言った通りであろう?」
とウィンクをしてみせた。テヒョンとジョングクは二人で吹き出してしまった。
しかし、国王の久しぶりの明るい声に安堵した。
通されたテーブルは全く初めての一般席であった。但し目立たない奥まった場所を依頼した。
今回は国王としてではなく、フレデリックという一人の個人として、レストランでの食事を楽しんでもらうことにした。
メニューも普段食べない庶民のメニューにして、アルコールも庶民にポピュラーな物を選んだ。そしてそれらの注文は全てフレデリック国王にお任せした。

飲み物が運ばれて来て3人で乾杯をする。
「私が頼んだものがちゃんと来たな。」
初めて注文したものが、ちゃんと届いてフレデリック国王は嬉しそうだった。
すると、今度は熱々の料理が次々に運ばれてくる。かしこまった盛り付けではなく豪快な皿盛りに3人共大いに喜んだ。
人の目を気にせずテーブルマナーもうるさくなく、食べたいように食べ食事中のおしゃべりも気兼ねなく出来て、本当に有意義な食事になった。
そして本来であれば支払いは宮廷の出納部に店側が請求をして支払いが行われるのだが、今回は一般客と同様にテーブルで会計をした。何から何まで一般的な食事会にしたのだ。

帰りの馬車の中でも国王は終始ご機嫌だった。
「テヒョン、ジョングク、また街に繰り出すぞ。次も計画を立ててくれ。」
「はい。また行きましょう。」
宮殿に戻った国王はにこやかに自室に戻って行った。
後日侍従長から、その日の国王は早目にベッドに入り、途中一切目覚めることなく熟睡出来ていたと聞いた。


次の物語に続きます



こんにちは 
【群青と真紅】です🔵✨🔴

いきなりですが
恋愛感情とは頭ではコントロール出来ないものだと私は思っています
例えば、本人達は隠しているつもりでも
周囲に勘付かれるとか🤣🤣🤣
社内恋愛がすぐバレるパターン、沢山見てきませんでしたか❓(笑)www
それとか
思ってもいない事を口走ってしまったり・・・本気の恋であればあるほど〈揺さぶり〉って起こる😅

または、喜怒哀楽が予期せぬ状況で湧いてくるとか←1番厄介😅

そして、、、
コントロール出来ないということは
勿論、他者や社会からもコントロール出来ないということですよね☺️

ということで
今回はそんなテヒョンとジョングクの心の機微を書いてみました


前回の物語

物語の続きが始まります✨✨✨


【国王のアフタヌーンティー】


ニールとゲインズを見送った部屋で、テヒョンとジョングクはしばらく二人だけの時間を惜しんでいた。
次またいつ会えるか分からない、そんな事を思うと寂しさで動けなくなってしまう。
二人は何も話さず、何も求めず、ただ寄り添っているだけで他に何もいらなかった。更にこの尊い貴公子達には阻むものすら存在しない。唯一あるとすればお互い身にまとっている衣服だけだ。
それであってもお互いの情熱は、幾重にも織り廻らされた糸の繊維の隙間を簡単にくぐり抜け外に溢れ出てしまう。
しかしそれは本人達は気付いていないことだった。
呼応する魂は深い場所でお互いの情熱を燃やし続けることになる。

「そろそろ戻らないと、デイビスやハンスが探しに来るかもしれないな。」
「はい、、そうでございますね。」
とは言うものの言葉とは裏腹に、体はどちらからもなかなか離れようとはしなかった。
徐々に傾いていく陽の光が部屋に差し込んでくると、離れられないでいる二人の影を少しずつ伸ばしていった。やがて置き時計の時を打ち鳴らす音が現実に戻そうと試みる。

それが功を奏してようやく体が動いた。
だか、ジョングクは離れようとするテヒョンの手首を掴むと強く自分の胸に引き戻し、もう片方の腕は逃さないというように腰を抱き寄せた。
捕まえられて『しょうがないな・・・』というような表情で視線を向ける。でも実はドキドキして嬉しそうなテヒョンの笑みが更にジョングクを煽った。
捕らえた褒美を頂くように、こめかみに唇を当ててそのまま頬を伝って首筋まで辿ると軽く噛んだ。テヒョンは思わず吐息を漏らして天井を仰ぐと、フレスコ画に描かれた天使をぼやける視線で眺めた。

「本当にもう戻らないと・・・」
天使から目を逸らして我に返ったように言った。そしてジョングクにまた捕らえられないように素早く手首を掴んで引っ張った。
「あ!・・テヒョン様、危のうございます!」
注意の声に構わず掴んだ手首をグイグイ引いて急いで部屋から出た。
あまりにも勢いよく出たので、廊下の灯りを灯していた宮廷職員にぶつかりそうになった。
「失礼!」
テヒョンは謝りながらやり過ごした。
まさか大公子が飛び出してくるとは予想もしていなかった職員はびっくりして、走り去るテヒョンとジョングクの後ろ姿を呆然と見ていた。

「ああ、危なかった。当たり所が悪ければ火だるまになるところだ。」
立ち止まると息を弾ませて言った。
「冗談ではございませんよ、、あなた様を火だるまになぞ絶対させられません!」
ジョングクが少し怒ったように言う。
「まぁ怒るな。あのまま、、君の胸にいたままだったら、僕は逆に戻りたくないと君を困らせたはずだ。」
テヒョンの言い方があまりにもいじらしくて、気がおかしくなりそうな位胸が騒いだ。
「あーー・・でも、そんな我儘であれば耳元で囁いて頂きたいものです、、」
ジョングクが甘い顔をして言ってくるので、テヒョンはドキッとしたがこれ以上はマズイと思いまた走り出した。
「あっ!テヒョン様!ロングマントに足が引っ掛かかってしまいますよ、、」
宮殿の長い廊下に二人が走る足音と、ジョングクの声が響き渡った。


ようやく慌ただしくテヒョン達の控室に戻った。
「殿下!どちらにいらっしゃったのですか?ハンス殿と一緒にお二人を探しに行って戻って来た所でございます。」
扉を開けたらデイビスがすぐそこにいて、開口一番に尋ねられた。テヒョンはジョングクと顔を見合わせクスッと笑った。
「お二人共走っておいででしたか?息が上がっていらっしゃいます。」
「うん、、2人分の水をくれるか。」
「はい。中へお入り下さいませ。」
テヒョンとジョングクが控室に入ると、セオドラ卿も中で控えていた。
「父上もいらっしゃったのですね。」
「陛下のアフタヌーンティーに呼ばれたのだ。こちらで待機するように言われている。」
夕方の4時から国王の私室でアフタヌーンティーが振る舞われることになった。
大公とテヒョンにオルブライト、スミス、ジョングクとセオドラ卿が呼ばれている。

「テヒョン様もジョングク様も正装からお着替え直しをして下さい。その為にデイビスとハンス殿はお二人を探しておりましたからね。」
スミスがいたずらっ子達を窘めるように言った。
テヒョンとジョングクは水を飲み干すと、着替えを手に待ち構えているデイビスとハンスにそれぞれ別室に連れて行かれた。
暫くすると大公がオルブライトと共に控室に戻って来た。国王と打ち合わせがあって、王の執務室に出向いていた。
「テヒョン達は戻って来たのか?」
「はい。只今お着替えをして頂いております。」
スミスの言葉が終わるか終わらないかのうちに、それぞれ着替えている部屋からデイビスやハンスに、文句をつけているような声が聞こえてきた。

「何を騒いでいるのだ?まるで子どものようではないか。」
大公の言葉に皆笑った。
「先ほども走ってこちらに戻ってきたようです。」
セオドラ卿も笑いながら言う。
「しかし、無邪気な所は残ってはいても、あれであの二人の心はもう大人なのだろう?」
「はい。ここ数ヶ月ですっかり変わられました。」
大公の後にスミスが実感を込めて言った。
「やはり、なんとなく雰囲気で察しておりましたが、、通わせたのですね。」
セオドラ卿も加わった。
大人達は言葉を濁してはいるが、皆もう気付いていた。テヒョンとジョングクが心を通わせている仲だと。
「テヒョンは特に分かりやすいのだ。すぐ態度に出る。」
「ジョングクも同じです。隠す気すらないでしょうなぁ。」
なんとも初々しく無邪気な貴公子達に大公達は笑った。

「なんだかとても楽しそうではありませんか。父上何のお話ですか?」
着替えを終えたテヒョンが出てきた。
少し遅れてジョングクも出て来た。
「我々は成熟した真の大人の話をしておったのだ。まだまだ若いお前達には分かるまい。」
大公の言葉にセオドラ卿やオルブライト、スミスが笑った。
テヒョンは訳が分からないといった感じで首を振った。


国王とのアフタヌーンティーが始まった。皆が正装衣装から着替えてくつろいだ雰囲気でお茶を楽しんだ。
国王にとって今目の前にいる者達は、気を張る事がない落ち着ける《仲間》なので、賑やかで笑いが耐えない時間が癒しになっていた。
超過密スケジュールを熟す国王にとっては、リフレッシュが出来る貴重なひと時だ。テヒョンもジョングクも国王が顔をクシャクシャに、心から笑っている様子が見られて嬉しかった。

「テヒョン、よくニールという逸材を見付け出したな。」
「いいえ、見付けたわけではなく彼が私に食ってかかってきたのが発端ですよ。」
「おお、そうらしいな。お前、あの者の鼻先に剣の刃を向けたそうだな。」
国王は言いながらケラケラ笑った。
「もうそんな話がお耳に入っているのですか。」
テヒョンは苦笑いをした。
「警護の者達の任務報告書に上がっておったぞ。」
「あ〜〜、、、警護に口止めするのを忘れておりました。」
テヒョンは頭を抱えて唸った。警護の任務報告書は一字一句落とすことなく、《あったこと》を報告するということをすっかり忘れていた。
「テヒョンは隠すという事が苦手なのだから口止めした所で無理だな。」
大公が輪をかけてからかうと、そこにいた誰もが笑い出した。

からかわれ憮然とするテヒョンに、
「テヒョン様、私は決して笑いませんよ。」
ジョングクが慰めた。が、しかし、
「そう言う割には、口角が緩んでないか?今にも笑い出しそうな、、我慢をしていますと言っているように見えるが。」
とテヒョンに見抜かれた。
「やめて下さい、、必死なのです。」
「必死だと?ほらみろ!」
ジョングクはたまらず笑い出した。
「大丈夫でございますよ、殿下。我が息子も大概隠し事は出来ませぬ。分かりやすい者でございます。殿下が今まさに見抜かれた様に。」
「確かに!そうですね。」
テヒョンが今度は笑い出した。
「父上、、、」
ジョングクがあまりにも情けない声を出したので皆が大いに笑った。

国王は和気あいあいとした雰囲気に満足そうな顔をして、皆の顔を見回していた。
「私はしばらく笑っていなかったかもしれぬな・・・」
国王が静かに呟いた。
「ずっとご公務に付きっきりでいらっしゃいましたからね。」
そばで聞いていた大公が労う。
「昔はテヒョン達とよく笑って走り回っておったな・・・。そういえば、いたずらをして叔父上に叱られた事もありました。」
「懐かしいですな、、、。テヒョンが案外やんちゃでございましたから、どちらかというと陛下は巻き込まれた方ですな。」
「ははは、、本当にそうでした。ですが小さい者のせいには出来ません。」
「ええ、よく辛抱されていらっしゃった。君主としての素質が備わっていらした証ですな。私が不在になってからはよく面倒を見て下さったようで、誠に有り難く思っております。」

「私にとって陛下は兄のようなお方ですから、小さい頃はご衣装の裾をよく掴んでついて回っていたことを覚えております。」
国王と大公の昔話にテヒョンも加わった。
「ああ〜!覚えております。それはそれは、お二人共にお可愛らしいお姿でございました。宮廷内では名物となっていた光景でございます。」
スミスが追憶して語った。
「ご幼少の頃のテヒョン様もさぞかし可愛らしかったのでしょうね。」
ジョングクが更に加わる。
「そうだな。静かにしている時は天使のような可愛らしさがあったな。」
「陛下、静かにしている時は・・とは正直に言い過ぎではありませんか?」
先程からいじられて、テヒョンは少し拗ね気味だった。
「その頃のテヒョン様にもお会いしたかったです。」
ジョングクがしみじみ言って、皆の注目を浴びた。
「確かに、、ジョングクは分かりやすい。」
恍惚とした表情のジョングクを大公がからかう。
「そうでございましょう?」
セオドラ卿もニヤリと笑った。
「何でございますか?」
「いや、いいのだこちらの話だ。」
大公があしらった。
ジョングクはテヒョンの方を向いて目で訴えるが、テヒョンも首を傾げるだけだった。


【揺らぐ心】

敬剣の日から数週間が経過した。
テヒョンはまた通常の日々に戻った。
大公も前の年に帰国をしても忙しいのは相変わらずで、なかなか在宅する時間がなかった。
変わったことといえば、テヒョンは他の領地との共同事業が始まった為に、領主としての仕事が増えた。
今回の用水路計画は他の類似工事の規範になるとして、関係官庁の実務者が多数、測量の段階から視察に来るなど注目事業になっていた。
テヒョンのみならず、責任者のニールは当然かなり忙しくなった。プロスペクトニーの領地自体が来訪者が増えて賑やかになった。
「プロスペクトニーは今や観光地のような賑やかさだそうですよ。」
スミスがテヒョンの着替えを手伝いながら言った。
「そうらしいな。のどかさが良い地域であったが、さぞかし騒がしくなってしまったのだろうな。」

着替えを終えて執務室に向かう。
中に入るとデイビスが書類を分けていた。最近では山のように届く書類の整理の為、デイビスだけではテヒョンの身の回りの世話が追いつかなくなっていた。
それでスミスが急遽補佐としてテヒョンの日常の世話に当たることになった。
「殿下、ゲインズ殿から私信が届いております。」
「うん。」
テヒョンは机の上に置かれたゲインズからの私信を取ると、椅子に腰掛けてナイフで封を切った。
いくらか目を通すと声をあげた。
「スミス!ゲインズがニールを養子に迎え入れたぞ。」
「おお、それは良うございました!」
「ニールの実の父親のことだ、何かと息子に取り入ってくるのではないかと心配していたが、ゲインズの息子になればもう何も言えまい。」
テヒョンはめでたい報告に喜びが隠せなかった。
『この吉報をジョングクにも早く知らせたい。』

一方のジョングクの方は、新しい兵器の導入で構造やシステムの講習や、極秘での演習などでこちらも多忙を極めていた。
しかし、もう一つ厄介な事があった。
年頃の娘を持つ軍上層部の者達数名から婚姻の申し入れをされているのだ。
ジョングクの家系は自由に一般人との結婚は出来ない。だがそれを知らない者達から面会と言っては娘を呼んで、ジョングクに紹介しようという魂胆があった。
若くして早々に大佐の階級を持ち、伯爵の家督がある上に見目麗しい独身男性ともなれば、放っておかれるわけはなかった。
ジョングクも丁重に断ってはいても、自身の美貌に自信がある者は、実力行使のように色仕掛をしてきた。だからもう逃げるのに必死だった。『こんな所をテヒョン様に見られたくない!』と何度も断り抵抗した。

しかし、噂というのは良くも悪くも広がるもので、久しぶりに宮廷で顔を合わせる事があった時に、テヒョンの口から一番に出たのがその事だった。
「最近君の周りでは沢山の女性達が求婚を迫って来るらしいね。」
「テヒョン様、・・・なぜそれを?」
「嫌でも噂というのは耳に入るものだろ?」
静かな物言いだったが、不機嫌そうなのはよく分かった。
「結婚など今の私には考えられませんし無用のものです。」
「そうか、、では考えていたらその女性達の中から誰かを選んだわけだな。」
「どうしてそうなるのですか?」
理不尽な屁理屈にジョングクもムキになった。

「君が誰を選ぼうとも君の自由意志だからだ。」
「本気で仰っているのですか?せっかくお会い出来たというのに、、、」
「ああそうだよ!・・せっかく会えると思っていたのにな。」
テヒョンは少し赤く涙目になっていた。
「大公子殿下、国王陛下が執務室でお待ちでございます。」
そこに侍従がテヒョンを呼びに来た。
「チョン伯爵も同席なさいますか?」
「彼は今日は私の側近ではなく軍務で宮廷に来ておるのだ。」
「かしこまりました。では殿下少しお急ぎ下さいませ。」
「分かった。ではまたな、《チョン伯爵》。」
テヒョンはジョングクを見ようとはしなかった。

ジョングクは落胆した。喧嘩などするつもりはなかったのだ。お互いに束の間でも久しぶりに会えると、楽しみにしていたはずだった。それなのにくだらない噂がテヒョンの耳に入って、不快にさせてしまった。
あの時強気で言い返しながらも、赤く涙目になっていたテヒョンの表情を思い出して胸が締め付けられた。最後の《チョン伯爵》と久しぶりに他人行儀で呼ばれた名前が切なかった。
考えあぐねても仕方がないので、もう仕事を遂行する事に意識を集中させようと思った。気持ちを切り替える為に胸を数回叩く。そして宮殿内にある司令本部に向かって歩いて行った。

国王の執務室では久しぶりにニールの顔を見た。テヒョンの姿を見るとニールはすぐに挨拶にやって来た。
「お久しぶりでございます、大公子殿下!」
「うん。元気でやっているようだなニール。」
「はい、お陰様で。」
「そうだ、ゲインズと養子縁組を結んだそうだな、おめでとう。」
テヒョンが手を差し出して握手をした。
「ありがとうございます。今は名前もニール・ゲインズと改めております。何もかも大公子殿下のお陰でございます。」
「私は何もしてはおらぬぞ。全てはなるようにしてなった事だ。」
テヒョンはニールをよく見た。以前とは違って顔つきが変わっていた。自信に満ちた皆を引っ張るリーダーの表情になっている。テヒョンはニールに対してはもう何も心配することはないと思った。

執務室での会議は夕方までかかった。
テヒョンは国王の隣に座っていたのだが、様子がいつもと違った。水をよく飲んでいて脂汗のようなものが額に光っていた。
「陛下、汗をかかれてますが大丈夫でございますか?お顔色もよくありません。」
国王は何か返事をしようとしたが椅子からそのまま崩れ落ちた。
「陛下!!・・・誰か!陛下の主治医を呼べ!早く!」
テヒョンの叫び声に侍従が執務室から飛び出して行った。
テヒョンが意識を失った国王を抱えた。
執務室が一気に騒然となった。
宮殿内が一気に慌ただしくなる。
国王が倒れた情報は各所に次々に伝わって行き、ジョングクがいる司令本部にも伝わった。
ジョングクはすぐさま飛び出して執務室に向かった。

国王は私室のベッドに運ばれた。
駆けつけた主治医が診察をしたが、すぐに重い過労であることが分かった。
意識はすでに戻っていたが、深く眠っている。
「陛下はもう大丈夫でございます。今はこのままお休み頂いた方が宜しゅうございます。では私はまた後ほど参りますので。あとは宜しくお願い致します。」
主治医はそう言うと一礼をして国王の部屋を出ていった。
テヒョンは国王のベッドの脇で椅子に座って見守った。

国王の私室の前では会議に参加していた者達が、心配そうに診察が終わるのを待っていた。
主治医が部屋を出た後、侍従が説明をした。
「国王陛下は過労のためにお倒れあそばしました。今は落ち着いて眠っておられます。皆様にはご心配頂き有り難く存じます。今回の会議の続き日程につきましては追ってご連絡致します。今日は大変ご苦労さまでございました。」
皆が侍従の言葉に安堵の声を漏らした。そして各々帰って行く。しかし、ニールだけはそこに残りテヒョンを待った。

ジョングクが国王の私室の前に到着した。ニールがドアの横の椅子に座っている。
「久しぶりだな、ニール。」
「これはチョン伯爵、その節にはお世話をおかけ致しました。」
ニールは立ち上がり挨拶をした。
「ここで何をしているのだ?」
「会議に出席されていた他の皆様はお帰りになったのですが、私は大公子殿下をお支えする為に控えておりました。」
「・・・そうか、ありがとう。」
「チョン伯爵がいらしたのなら安心でございます。私はこれで下がらせて頂きます。」
ニールはそう言うと一礼をしてその場を離れて行った。ジョングクはニールの後ろ姿をずっと見送った。

国王の私室の扉を叩く音がした。侍従が応対するとジョングクが入って来た。
「テヒョン様。」
ジョングクがテヒョンが座る椅子の横に立った。
「ああ、ジョングクか・・・陛下がお倒れになったのだ。」
「はい。その一報がこちらにも入りまして驚いて参りました。」
「重い過労だそうだ・・・陛下の過密スケジュールはもうお体には限界だったのだ。」
テヒョンが憔悴した様子で言う。
「ずっとその事を我々も心配しておりましたからね。」
テヒョンとジョングクは敬剣の日のアフタヌーンティーでの国王の笑顔を思い出していた。

「テヒョン様、ニールがずっとこのお部屋の前におりました。」
「なんだ、あいつも忙しいのだからすぐに帰って良かったのだ。」
「私と入れ替えに帰りましたよ。」
「そうか、ならいいが。」
ジョングクは少しためらってから言う。
「あなた様をお支えする為に、ニールは部屋の外におったのです。」
「なんだ。律儀なやつだな。」
テヒョンがやっと笑う。
ジョングクは敗北感を感じた。ニールがテヒョンへ忠誠を誓った姿を思い出していた。
今日の自分はただテヒョンを不安にさせて、目を赤く涙目にさせてしまっただけだ。テヒョンと相思相愛である事に少しでも驕りの気持ちがあったのではないのか?

「殿下、チョン伯爵がいらして下さったのですから、もうお早くお休みになられて下さい。陛下はもう大丈夫でございますよ。」
侍従がそう言ってきた。
「分かった。では後は頼みます。陛下の今後のご公務については父上と協議になるな。」
「はい。大公殿下と大公子殿下にはお力添えを頂くことになりますが、宜しくお願い申し上げます。」
「うん。ではな。」
「おやすみなさいませ。」
侍従が深々と頭を下げると、テヒョンとジョングクを見送った。

二人は無言のままテヒョンの控室まで廊下を歩いていた。ジョングクは思い切って話し掛ける。
「昼間は大変申し訳ありませんでした。」
「・・・いや、僕が謝るべきだろう。君は何も悪くない。」
「でも、私の身の回りの事でテヒョン様に不快な思いをさせてしまったわけですから。」
テヒョンは少し言いづらそうな口をなんとか開けた。
「僕は嫉妬をしたんだ。僕には君に会える時間がないのに、彼女達は自由に君にまとわりついてるから。」
「テヒョン様、、、」
ジョングクの胸が少し弾む。
「・・・こんなこと位でザワザワする自分に驚いているんだ。だって僕らしくないじゃないか。」

ジョングクはテヒョンが追いつけていない感情を吐露してくれているのがいじらしかった。
「嬉しいです、、、私はとても嬉しいです。」
「なぜだ?、、こんな感情可笑しいだろ?」
「いいえ、あなた様がご自身でコントロール出来ない位、私を想って下さっているのが分かって嬉しいのです。」
以前にも似たような事があった。
テヒョンの誕生日の為のサプライズで、少し蔑ろのような状況にしてしまった時だ。しかしあの時は友情関係に関する事で今回とは違う。
ジョングクは柱の後ろにテヒョンを誘導した。そしてふわりと抱きしめた。

「もう、なんなんだよ、、、」
テヒョンは理由がわからぬというように拗ねてみせた。
「もしも、あなた様と私とが逆の立場であったなら、私も絶対に嫉妬したでしょう」
テヒョンは黙って聞き入って続きを待った。
「私があなた様への想いにオロオロしていたら、あなた様もそんな私を愛しみ(いつくしみ)下さるのでしょうか、、、?」
テヒョンはその言葉を聞いて、ジョングクの背中に手を回し強く抱きしめた。
「勿論だよ。どんなジョングクであっても、僕は君が愛おしいよ。こんな想いは初めてだよ。」
「初恋の時よりも、、、ですか?」
「え?、、そんな子どもの頃のことをまだ覚えていたのか?」
「当然でございます。私はあなた様の全てが欲しいのですから。」
「欲張りなやつだな。」
「はい。《あなた様》だからこそ何もかもが欲しいのです。私の全身全霊はあなた様だけに向いています。」

ジョングクはテヒョンの柔かい髪を優しく撫でながら、目の前にある大切なものを確かめていく。『蝋燭の暗い明かりの中でも輝いて見える瞳。その瞳の上でいたずらに弾くまつ毛の一本一本。自分を抱きしめてくれるすらりと長い指を備えた手・・・。』
並べきれないほど愛しい人の全てが宝物だった。

優しい眼差しで自分を隅々まで見つめてくれるジョングクの視線をテヒョンの視線が追う。
人を想うということは、喜怒哀楽の感情を全て感じることになるのだと二人は気付いた。その心の機微は頭では到底追いつけない領域だった。

「実は・・・先程ニールが静かにテヒョン様を待っている姿を見て、私は負けた思いが致しました。」
「なぜ君が負けるのだ?」
「こういった事は勝ち負けではございませんが、ニールの忠誠心に負けた気がしたのです。」
「忠誠心が?」
「はい。ニールのテヒョン様をお支えするという姿勢には、無償の思いがあります。私のあなた様に対する忠誠心には、その無垢な思いが無い気がするのです。」
テヒョンがそれを聞いて笑った。
「当たり前ではないか。僕達は《想い人同士》だろう?ニールとは主従の関係だ。忠誠心に違いが出るのは当然だろう?」

ジョングクは力が抜けて笑った。テヒョンの言うように単純な違いがあっただけだった。それに、テヒョンが言ってくれた《想い人同士》の言葉に胸が熱くなる。
「そもそも比べられるものじゃないじゃないか。」
更にテヒョンの言葉に想いが溢れる。ジョングクは愛しい人を強く抱き締めた。
「しかし、陛下がお倒れになった後だというのに僕達は不謹慎だな。」
「陛下のお体が大事に至らなかった事が不幸中の幸いですし、お陰で私達はこうして仲直り出来ました。」
「仲直り?喧嘩などしていないぞ。あんなのはじゃれ合いに過ぎないだろ。」
テヒョンがジョングクの両頬を掴んで言った。喧嘩だと捉えていなかったテヒョンに、やはりこの方は世界一とても素晴らしい人なのだと改めて思った。


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