俺の心の中でいろんな思惑が交差する。

口説く=彼女にしたい!

警戒する=名前すら適当に答える。

適度にあしらう=面倒くさい。

………
……………まてよ!?

安全策を取りながら、口説く…って方法は無いのか?

あるじゃない♪

本当は彼女なんかいらないが、仕方ないから付き合ってやるよ!…って感じのトークが!!


……
…………

確かにドラマかマンガで見たことがあるが、その男は男前だったよな;
俺の顔で使えるのか?

無理だ…

満場一致で無理だ。

そんな意味のわからない事を考えている時

また、聞こえてくる…

『………

…のか…それで。

忘れているだろ?

お前の……罪…とバツ』


何なんだ…この声は?

頭に響く重い声

間違いなく、天使の囁きではない

悪魔の呟きでもない

最後の審判………

そんな感じがする

…………
………………

「どうしたの?」

彼女の声で我に還った。

「すまない…あまりに綺麗な顔だから見とれてた。」

B級映画の臭いセリフを吐き出すのが精一杯だった。

「嘘つき♪」

彼女は少し頬を膨らませて笑った。

それよりも質問に答えなければ、話の出来ないつまらない男と思われてしまうではないか!

さっきの声の事を考える暇もない。

フゥ…やれやれだ。彼女のペースで進んでいるではないか。

少し気に入らない!

俺は、恥ずかしがり屋さんで格好つけの巨乳フェチで、なおかつ亭主関白なのだ。

まずは、この状況をひっくり返すことに専念しよう。

頭の中にいるミクロの俺の分身を総動員させるのだ!

何なら、今回に限り臨時社員を雇ってもかまわない。
勿論、時給の安くつく外人さんがベストだ。

ん!?まてよ!
頭脳戦になるのなら、時給の安い外人さんは使えないな…
だって言葉が通じないんだもの!!

…て言うか、そんな事を考えてる暇はない。

仕方ない…
久しぶりに仕事以外で本気で頭を使うとするか。
フゥ…やれやれだ。

それにしても、タバコがうまい。
消えゆく煙を見ながら小さく呟いた。

少し胸元が開いた黒のノースリーブ…

グラスを持つ彼女が近づいてきた。

身長は、160㎝以上はあるな…
何より、胸が大きい。

素晴らしい!!

スタイルは完全に俺の好みだ。

そう…

俺は、恥ずかしいがり屋さんで格好つけの巨乳フェチなのだ。

「お待たせ♪」

そう言いながら、俺の横に座り込んだ。

俺は料金が発生しなくて、女性が隣に座るシステムが、この日本にある事を忘れていた。

いつもは高い料金を払って、聞いた事もないワインを飲まされて…

これ以上、その事について語るのは止めておこう。

自分のアホさ加減が悲しくなる。

「はい…乾杯しよ♪」

魔王のロックが入ったグラスを渡された。

「乾杯…」

俺がそう言うと、彼女は少し驚いた顔をして…

「初めて自分から喋った♪
普段から無口な方なの?」

そんな事はない。
むしろ、よく喋る方だ。
今日は恥ずかしいのと、後輩の前で格好つけてるのが本当の自分を隠しているのだ。

本当は、いっぱい話をして彼女攻略の鍵を引き出したいところだが…
万が一、失敗したら…
そう考えると恐ろしすぎる。

最悪のケースは、彼女が後輩に頼まれて、無理矢理に俺の相手を頼まれている場合もある。

いや…地獄のパターンは、後輩の女っていう笑えないケースだ。

あとからベッドの中で、
アイツどんな感じで口説いてきた?

なんか胸の谷間ばっかり見てきてキモいんですけど!みたいな事を言いながら笑われたら…

間違いなく二人を地獄に速達で郵送しなければならなくなる。

そんな意味のわからない事を考えてる俺に彼女が話しかけてきた。

「名前…聞いていい?
わたしは、友香♪
友達の友に…香りって書いて友香♪」

嬉しそうに話す顔が綺麗に見えた。

俺…惚れてしまうのか?
さて…どうしたものか?
髪の長い女性は気になるが、あまりマジマジと顔を見るのも趣味じゃないし…

だからと言って、タヌキの置物みたいに座っていても仕方ない。

いい頃合いを見計らって帰るか…

3杯目のブラックルシアンを飲み干すところだった。

「次は何を飲むの?」

不意を突かれた俺は、恥ずかしながら少し酒をこぼした。

「あぁ…何にしようか…」

焦っている姿を隠すのが精一杯の俺は、間違いなくテンパっている。

「私は焼酎にしようかな…」

髪の長い女性はそう言いながら、俺の空になったグラスを取り上げた。

「焼酎は飲めます?」

俺は、ヒラメの刺身の次か…いや、それを凌ぐくらいの焼酎好きだ。

「あぁ…好きだな。」

初めて髪の長い女性の顔をじっくりと確認した。

このタイミングだと、女を必死になって探しているとは思われまい。

なんせ俺は格好から入るからな。
まぁ、分かりやすく言うと、恥ずかしいがり屋で格好つけなのだ。

「好きな銘柄を、同時に言おうよ♪」

『せーの!』

『魔王!!』

「凄い♪一緒だね♪♪」

彼女は驚いた顔をしながらはしゃいでいる。

「……笑えるな。簡単に合うものなのか?」

俺はそう言いながら、頭をかいた。

「じゃあ、注文してくるね。あっ!?あそこの席に移らない?
皆、盛り上がって少しうるさいし♪」

小悪魔ぎみに笑う彼女が指を指した所には、白いラブソファーがあった。

「先に行って座ってて♪」

そう言いながらカウンターへと歩き出した。

フゥ…やれやれだ。

俺の意見は無いのか?
と、言いたいところだが、悪い気はしない。

カウンターへと向かう彼女の背中にむけて

「わかった…待ってるぞ。」

言葉少なめに言い放ち、俺も席を立った。

……
………
待ってるぞ。

何を待っている?

酒?

まさか、彼女を?

ふん…馬鹿馬鹿しい!
何を期待しているんだ。
何度も痛い目をみてきただろ…
俺は男前か?
違うだろ…
大人しく酒を待って、1~2杯飲んで帰ればいい。

そう自分に言い聞かせ、ソファーに座り込んだ。

今日、3箱目のタバコを開けながら気付いたのだが…
凄く貧乏揺すりをしてるではないか。

早く彼女と話がしたい!出来れば、口説いて抱きたいんですけど!!

……みたいな感じになっているではないか。

俺は焦って辺りを見渡した。
こんな姿を後輩に見られた日にゃ、明日以降に会うのが怖くなってしまう。

俺は頑張って冷静なフリをしてタバコに火をつけた。