「あぁ…彼女はいない。」

少し笑いながら答えると、彼女は大きな瞳をパチクリさせながら話し出した。

「絶対、彼女いると思ってた。
でも、モテるでしょ♪」

俺はタバコを揉み消しながら…

「こんなオッサンもてる訳ないだろ?もし、キミがフリーなら俺に惚れるか?」

このセリフも100点だな。なぜなら、彼女がいない事と、彼女がフリーなのかを聞き出せる!という高等テクニックだ。
俺は、やはり天才なのか…

俺は、恥ずかしがり屋さんで格好つけの巨乳フェチで、なおかつ亭主関白のナルシストなのだ。

どうだ?並大抵の女なら間違いなく敬遠するだろう。


……
辛い…辛すぎる。
このアホな性格…何とかならんのか?

そんな事を考えてると、彼女が俺の知りたい部分を話し出した。

「そんな事ないよ。凄く男前と思うし…
それより、私も彼氏いないし。」

彼女は苦笑いをしながら、グラスに唇をつけた。

少し、この話題を続けてみるとするか…

「彼氏ができないと思わないけどな。
綺麗な顔をしてるし、スタイルもいいしな…」

少し真面目な顔をして話すと、彼女は嬉しそうな顔をして話し出した。

「お世辞でも嬉しい♪
でも、顔に自信がないからスタイルだけは気をつかってるの♪」

そう言いながら突然立ち上がった。

「一応、藤原紀香と同じスリーサイズ♪」

なるほど…いいねぇ♪
何とか口説けないものか…

……
次に生まれ変わったら、男前であります様に!

俺は神など信じない人間だが、本気で祈った。

「あっ!?何て呼んだらいい?私は呼び捨てでユカって呼んで欲しいな。」

呼び捨てで呼ぶのか?
俺の女みたいじゃねぇか。

……
惚れたのか?俺に…
待てまてマテ!!
そんなに美味しい話がある訳ないだろ。
この不況の日本で、いい女と金は選ばれたヤツの懐にしか行かないんだよ。
勘違いしちゃならねぇ!!

俺は冷静になって話を続けた。

「呼び方は何でもいい。
好きにすればいいよ。」

どうせ、あと数時間のハッピータイムだからな。

「ん~ じゃあ、勝幸♪
決定♪
もう一度、乾杯♪」

嬉しそうな笑顔…

友香の顔を少し見つめていた……その時

『…いいのか?

それで いいのか?

背負いし者よ

手遅れ…になるぞ

全ては……計画の…』


まただ!
何なんだ、この声は?
心に直接入り込んできやがる。
「名前?
俺は、勝雪…
勝負の勝に、粉雪の雪。」


「えっ!?マジで?
雪…って珍しいね♪」

確かに珍しいだろう。
一応、理由を言っておくか…

「皆にそう言われるよ。だって、嘘の漢字だからな。
名刺の名前も変えてあるんだよ。」

俺は少しだけ本当の話を彼女に話した。
この[少しだけ]と言うのが後々の展開に役立つ時がくるのだ。

人間を騙す時は、全てを嘘で堅めるより、少し本当の話を入れた方がよい…と、何かの本に書いてあった。
友香は少し笑いながら…

「本当はどう書くの?
で、何で雪にしたの?」

矢継ぎ早に質問してきた。
理由はない!…が、何かそれらしい理由をつけてやるか。
酒が入っているせいか、頭の回転が早い。
コンマ2秒で答えが浮かんだ。

「本当は幸と書いて勝幸なんだが、幸せじゃないしな…仕事で皆に勝って、雪の様に儚く消えて死んでいく……
でも、彼女ができたら幸せになるから、雪から幸に戻すつもりだ。」

本日2度目のB級恋愛映画のセリフ…
だが…それがいい。
彼女がいない…ってキーワードを自然に、なおかつ名前を変えてまでの本気度を彼女の心に放り込める。

俺はこう思った…

天才!

さて、俺の計算なら必ず食い付いてくるはずだ。

「えっ!?彼女いないの?」

友香は少し驚いた顔をして食い付いてきた。

なっ!完璧だろ(笑)
さて、どうしてこの場を楽しもうか?
どうせ、俺の女にならないんだから、この場だけ楽しんで帰ろう。

普段は、お金を払って綺麗な女性に話してもらってるんだから、今日くらい無料で楽しんでもいいだろ。


……
………
無料…じゃねぇ!
ここの支払い…俺だ!
俺は財布として呼ばれてるんだ。

その事を思い出した途端、あちらで宜しくしてる後輩御一行様を、その場で正座させたくなった。

フゥ…やれやれだ。

さて、どうしてくれてやろうか…