ズドーン!ズドーン!
部屋の中で、何かを落とす大きな音が響いている。
同室の先輩は、アイロンを洋服の上に落としていた。
テーラージャケットを作っていた先輩は、
毛芯を張ってハ刺しをした襟に
きれいに丸みをつけるために
アイロンをかけていた。
女性の力では足りないため、
上から落として圧を加えていたのである。
「焦げているところがあるけどいいの?」
「焦げてはいけないけど、
これくらい強くかけないと襟がきれいにかえらないから」
「洋服作るって力仕事なんだ~」
初めて見る先輩たちの洋服作りに興味津々だったジュンヌは、
質問を投げかけながら見入っていた。
新しく始まるファッションデザイナーへの夢の一歩に
ワクワクしていた。
(写真資料:文化服装学院オープンキャンパス)
念願がかなって専門学校の寮に入ったジュンヌは、
先輩と同室の4人部屋にいた。
2年間働いてきたジュンヌにとって、
仕事が終わった後、絵を描く仲間と過ごす時間も楽しかったが、
自分の好きなことのためだけに自由に使える24時間があることが、
嬉しくってたまらなかった。
今まで母に教わりながら自己流で作っていたジュンヌにとって
授業で教わることの一つ一つが新鮮で、
「なるほど!こうすればうまくできるのか~!」と、
疑問だった問題が解けていくようだった。
課題のスカート制作も
1枚作れば良いところ、
嬉しくって2枚も作ってしまう。
自分が好きなことを学べるありがたさを噛み締めていた。
そして1年の初級課程を終わり
いよいよファッションデザイン科(2年間)への
進級試験が待っていた。
これに受からなければ3年で卒業することができない。
真剣だった。
ファッションデザイン科への進級試験にも
無事に受かったジュンヌは、
いよいよファッションデザイナーへの
道に歩を進めることになる。
コシノジュンコや高田賢三を輩出したファッションデザイン科って
どんなところだろうと期待でいっぱいだった。
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第1章:生い立ちから人生の目標へ
第1章-2【生と死の狭間で】
第1章-3【パンツ丸見えの自己表現】
