洗面器の中が鮮血でいっぱいになっていた。

ただならぬ大人たちの様子に何か大変なことが起きているのがわかった。

 

 

そこに居合わせた4歳にも満たないジュンヌにとって

あまりにも衝撃的な出来事として

強烈な映像が脳裏に焼き付いた!

 

 

当時、田舎では

家での出産があたり前で、

出産で命を落とす人もいた。

 

 

ジュンヌの下には2歳違いの妹がいる。

そして、今日が3人目の子の出産日だった。

 

 

お産婆さんが来てくれていたが、

家の中が急に慌ただしくなり

お医者さんが呼ばれた。

 

 

ただごとでない雰囲気にジュンヌは

「こっちに来てはいけないよ」と言われていたが、

妹の手を引いてカーテン越しに覗いた。

 

 

洗面器が真っ赤に染まり、

大人たちの声は逼迫していた。

 

 

不安でいっぱいになりながら覗いていると、

誰かに「外に出てなさい!」と追い出された。

 

 

あまりにもショックで、その後のことは何も覚えていない。

 

 

後に弟が生まれたことが知らされたが、

なんの感情もなかった。

 

 

聞いたところによると

 

弟は生まれたが、

後産(胎盤)が出ず、

母の様態が急変した。

 

 

弟は放置されたまま

お医者さんが呼ばれた。

 

 

  

そして、

母の意識が戻り、

放置されていた弟が泣き出した。

 

 

だいぶ立ってから

生還までの意識がなかった時の様子を母が話してくれた。

 

 

「大きな河が流れていて

その向こう側を、亡くなった人たちが歩いていたんだよ。」

「自分も向こう側へ行きたかったけど、

誰も呼んでくれなかったから戻ってきた。」

 

 

ジュンヌにとって母の臨死体験は、 

人間が生まれることと「生と死」について、

不思議な世界へと好奇心を掻き立てていった。