Stay homeならCinemaを303 6月配信Amazon おススメ4番
1 グリーンブック本作に対して、「作品賞にふさわしいの?」て声もあったようです。正直、予告編を見て、あまり心が動きませんでした。イタリア系用心棒の粗野な運転手と黒人ピアニストが南部演奏旅行へ、映画がどこに向かい、どんな終わり方をするのかが何となく見えていたから。ロートムービとしても新味はないなって、観る前に決め付けてました。始まってまず、ビィゴ・モーテンセンの外見にびっくりします。でっぷりしたお腹、脂ギッシュでいかにも粗野なレイシストのナイトバーの用心棒。ドクターと呼ばれる 演じる天才ピアニストとの出会いや南部演奏旅行に出るまでの前半は、まだ見る前の不信感は払拭されませんでした。語り口がライトなので、とてもいい観やすいのですが、ビィゴ演じるトニーが思いのほか順応性があり、現実的対応力があり、映画としての葛藤が薄い気がしました。車内での二人の会話や意味のない行動が描写されていきます。しかし、それらが後々いくつかの布石となっていきます。→文字通り、石を置いていくのです!(笑)さて、中盤からこの作品は、一気に加速していきます。加速させた要因は二つあります。まず、一つ目は、黒人ピアニストドクター・シャーリーの変化です。私たちは、無意識にレイシストで粗野なトニーの心の成長ドラマとして本作を捉えていましたが、この旅によって変わる、成長するのは、トニーだけではなくドクターもそうだったのです。観客は、ある事件でドクター・シャーリーの内面の苦しみを目の当たりにします。それまで、どことなく近寄りがたく、芸術家のシールドをまとっていたシャーリーそんな彼が初めて見せた弱い顔。それを受け止めるトニー。このあたりウィゴ・モーテンセンとマハーシャラ・アリ、二人の演技が見事です。マハーシャラ・アリの指の動きも本物だし、同じ曲を弾いても、ドクターの置かれている状況で曲想が全く異なるのも見どころ、聴きどころです。シャーリーがなぜ差別が濃く残る南部に行くのか、彼の強さと弱さ、なぜブラックミュージックを知らないのか、弱さをさらけ出し出すシーンと、新たな音楽と出会うシーンに心打たれます。二人の立場が、その時々の相手の弱さによって変わっていきます。一方的に変えていくのではなく、お互いが変え合う関係、そこが、この映画の最も素晴らしいところなんです。後半の加速ポイント、二つ目。深化している差別の問題。差別の濃い南部なのに、シャーリーは、最初は上流社会のパーティに招かれたり、満員の観客から拍手を貰ったりと、あまり差別の姿が見えて来ません。ところが南下していくに従って、タイトルであり「グリーンブック」の意味が痛いほど現れてくるのです。最終盤、シャーリーのコンサートを開くホテルの支配人の対応に、私たち観客も憤るのですが、彼が言った言葉に、深化された差別のカタチなあります。「私自身は、反対じゃないんですけど、州のしきたりがあって、、」世間が、社会が、みんなが、この言葉は、差別の本質を隠します。違いますよね、差別をしているのは、あなた自身ですよ!それは、あなたが変えていくものです!この映画のラストは、その回答も爽やかに示してくれます。個人が変わらなくては社会や制度は変えられないのだと。手紙の使い方もオーソドックスだけど、決まっています!爽やかな感動を与えてくれる、いい〜映画ですよ!