Amazonで観るべき映画8
6 真実
まず抑えおかないといけないと思う。
カトリーヌ・ドヌーブとジュリエット・ピノシュ、イーサン・ホーク級を使って新作を撮れる監督は今、
日本には是枝裕和しかいない。
世界に売りに出せる作品がそもそも少ない日本映画界。
ハリウッドや欧州からオファーを受けれる映画監督なんかほとんどいない。
だからこそ、是枝さんの偉業をもっとしっかり伝えて広めて欲しいのです。
さて、激しくハードルの上がったパルムドール直後作、しかも、初の海外メガホン。
期待値はおそらく、是枝作史上マックスだっただろう。
その期待値の高さ故に、評価の低さにもなっている気もするが、
僕はいろんなハンディを考えた時に、是枝さんがご自分の得意な分野の話を
確実に作り上げた手堅い作品と感じた。
聞くところによると、長年温めていた本だったらしい。
手堅いと言っても、誰にでもできることではなく、世界に呼ばれる高レベルができる手堅さとではあるのだが。
予告編で流れている「大女優の自伝は実は、、」。
ニューヨークから来た娘が「何よ、この本、嘘ばっかりじゃないの!何が『真実』よ!」
って、自伝の嘘が暴かれていく話、
実はそれは話全体のきっかけ、序章に過ぎない。
カトリーヌ・ドヌーブが撮っているSF映画の母娘の年齢の逆転と、
彼女のライバルが永遠に歳をとらないのに、彼女には老いが襲ってくること
カメラの前で演じることと実在
隠していた過去、
でも、それさえ、記憶という実に曖昧なものに頼っていること、
母という役割、娘という役割
演技論やジュリエット・ビノシュが脚本家であること、
などなど
様々な虚と実が幾重にも交錯し、
一体何が「真実」なのか、
いや、果たして「真実」て、意味があるものなのか?ということまで問いかけてくる。
娘と母は互いに激しく相手を攻撃し合う。
それはどうしようもないない過去へも遡り、果たせなかった相手の家族としての役割を批判し合う。
そんな中で、一見、何の役にも立っていないかのようなお気楽なテレビ俳優を
している娘の婿、イーサン・ホークが実にいい味を出している。
同じ役者ながら、彼にはカトリーヌ・ドヌーブ演じるファビエンヌの苦悩の本質は
判らないんだろう。役者として大成しないだろう。
でも、主役をするまでの禁酒を破り、義母と酔っ払うかわいい奴。だからいい夫、いい父親でいられるんだと思う。
ファビエンヌが演技の為に壊した家庭。
娘はそれだけは絶対しない!つまり、仕事で家庭を壊さない、
自分がこんないい家庭を持ちました!という連鎖の切断が成されている。
ファビエンヌ渾身の演技がテイク2になるところや、
完成後に「あ!こう演じれば良かった!」と悔しがる場面など、
役者魂をここぞ!という時に出すカトリーヌ・ドヌーブは、
まさに大女優ファビエンヌそのものである。
ラストとファーストシーンが同じ風景ながら、秋が深まっている感じ。
物語が屋内中心なので、その色彩が余計に美しく感じられた。
これはカルチャーギャップなのだろうが、
ファビエンヌの新旧の彼氏が共に過ごしたり、激しい口喧嘩のあと、また翌日には関係が戻ったり、
監督はフランススタッフに確認しながら、
フランスならどうかをリアルに出していったようだ。
しかし、是枝さんのこのリアリティへの誠実さが、日本人の是枝ファンには、
やや違和感として感じられたのも皮肉なのだ。
是枝作品の脇役の凄さ、例えば「海街〜」のリリーさんや風吹ジュンなど、
細部のひとつひとつのパーツがぴったりハマっていくのに対して、
ややハマらないと感じたキャラもあった
→面白いけど、稲川淳二似の元夫必要だったか、、、
ラストの鮮やかさに比べて、そこらへんで中だるみに感じる人も出てくるかもしれないと思ったが。
次回作はどこで撮るんだろう、日本で撮ってもらいたいし、この経験を広げてもらいたい気もするし、、、