(2023.6.05)
とある世界のお話です。
その世界には、ドラゴンについての伝承が存在していました。
そのドラゴンは、多数の冒険者達でないと倒せませんが、もし倒せば冒険者達は多くの経験値を得られる、しかし一方で、冒険者達に被害が発生する可能性がある、と伝承されていました。
国王は、ドラゴン討伐を願っていました。
多数の冒険者達が集まり討伐してくれることを願っていましたが、「被害が発生する可能性」があるとされているため、冒険者達に「義務を課す」ことはしませんでした。
自ら主体的に判断した結果として、多数の冒険者達が集まることを願っていました。
しかし、思うように冒険者は集まりませんでした。
情報提供が不足しているのでは?
国としてのドラゴン討伐の目的とメリット、それぞれの冒険者における「経験値を得られる」というメリットと「被害が発生する可能性」というリスク、それらについて冒険者達に正確な情報を提供することが必要なのでは?
しかし、国王には「人は必ずしも合理的には行動しない」との考えがありました。
例えば「コイントスをして、表が出たら5万円もらえる、裏が出たら5万円払う」の条件では、参加する人より参加しない人が多数となる、つまり人は「メリットよりもリスクの方が大きく感じる」ものだと考えていました。
国王は、冒険者達に正確な情報を提供したとしても、合理的な比較衡量がなされず、多数の冒険者達が集まることには繋がらないと考えていました。
よって、国王は考えました。
「主体的な判断」によって集まることになっているのではあるが、それでも、集まった冒険者に報酬を与えればよいのでは?
報酬によって比較衡量のバランスをメリットに傾ければ、「主体的な判断」によるものとして集まる冒険者が増えるのでは?
国王は「すべて冒険者は、法の下に平等」であるが、それは「合理的な根拠に基づくものでない限り、法的な差別的取扱いを禁止する」趣旨であると考えていました。
そして、国としてドラゴン討伐はメリットがあり全体的利益として冒険者達に資するものであるのだから、報酬は「合理的」な根拠に基づくものであると、説明できると考えました。
そして、その考えによる国策が実施され、集まる冒険者は増加しました。
それぞれの冒険者が主体的に判断した結果ではありましたが、マクロな視点で言えば、国王が意図して「主体的な判断」に干渉し、コントロールした結果とも言えました。
一方で、報酬が「合理的」と言えるほどに「国としてドラゴン討伐はメリットがある」との国王の考えについて、社会的な合意が十分に形成されていなかったため、冒険者達からは「平等でない」との意見もありました。
このような「利益誘導」は、冒険者の「主体的な判断」で集まることになっている仕組みの趣旨に反する、との意見もありました。
また、今後「被害が発生」した場合には、リスクについての情報提供が不十分であったことについて、冒険者達に国への不信が高まる可能性があります。
「個人の尊重」とは、一方では「利己主義」を否定し、他方では全体を個人に優先させる「全体主義」を否定することで、すべての人間を自由、平等な人格として尊重しようとするものであり、何にも勝って個人を尊重しようとする原理とされていました。
しかしこの国の「個人の尊重」は、全体的利益の名のもとに、遠く霞んでいくように見えました。
また、「個人の尊重」に由来する、「国民主権」と「基本的人権の尊重」も、同様でした。
以前には、予防接種の接種率を上げることに施策の重点を置いたことについて「個人の尊厳の確立を基本原理としている憲法秩序上、特定個人に対し生命ないしそれに比するような重大な健康被害を受忍させることはできないものである。」、「生命身体に特別の犠牲を課すとすれば、それは違憲違法な行為であって、許されないものであるというべきであり、生命身体はいかに補償を伴ってもこれを公共のために用いることはできないものである」と判示されたこともありました。
また先般は、トマホークなどを活用する他国への反撃能力について、国王答弁「国民の信頼と共感を最優先」しているとは到底言えない「国民主権」を軽視した形で決定されてしまいました。
全体主義に偏重し、国民の主体的な判断に寄与するためではなく、行動を誘導する目的で情報が提供される施策に満ちたこの国は、納得感が得づらく、不信に満ちた世界となっていきました。
なお、国王には真の目的があったのですが、できる限りそれを国民に注目されることのないよう配慮されながら、事は進められていきました。
また、国王のさまざまな判断には、国外を含む、この世界の「陰の実力者」達の意向が大きく影響していたのですが、それを公然と認めることはありませんでした。
そう。
国王の考える「全体」を、実質的に大きく占有していたのは、この世界の「陰の実力者」達だったのです。
おわり。
<備考>
○国家賠償請求事件(令和2年6月30日)東京地方裁判所(抜粋要約)
憲法14条1項は,事柄の性質に即応した合理的な根拠に基づくものでない限り,法的な差別的取扱いを禁止する趣旨であると解すべきとされており(最高裁判所昭和37年)、人は全て法の下に平等に扱われるべきであって、合理的な理由なしに異なる扱いを受けることは同項が定める平等原則に違反する。
○第211回国会 衆議院 地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会(令和5年4月25日)より抜粋要約
▽政府参考人
経費でございますけれども、マイナポイント第一弾、第二弾の予算の合計は約2兆1113億円となります。
○第40回 経済・財政一体改革推進委員会(2022年12月12日)議事要旨(抜粋要約)
▽委員
マイナンバーの活用を進めていくと、究極的には資産や所得の把握にまで及ぶと思うが、これは国民から見ると非常に緊張感の走るものであるため、注意しながら進めていただきたい。
▽内閣府
資産へのマイナンバーの付番については慎重に進めるべきとの御指摘があったが、本人同意を前提とした口座管理法の施行期限が令和6年であり、まずはアレルギーや危機感みたいなものが生じないように、慎重に施行に向けて準備を進めていくと理解。
○第211回国会 衆議院 財務金融委員会(令和5年4月26日)より抜粋要約
▽委員
民主党政権のときに、社会保障・税の一体改革というものを決めまして、そのときにマイナンバー制度の導入というものを進めました。その前提となったのは、やはり資産の把握というものをしっかりとやらなければいけないのではないかと。
このマイナンバー制度の現状と、そして資産へのひもづけと、そしてその意図については継続されて持たれているかどうか、その点を御答弁をいただきたいと思います。
▽副大臣
資産の把握を含む応能負担の在り方については、一義的には、社会保障制度や税制等の所管省庁においてその在り方や制度設計が検討されるものと考えております。これらの制度におきましてマイナンバーの利用が必要となる場合には、マイナンバー法の改正やシステム改修等が必要になることから、デジタル庁として、緊密に制度所管省庁と協力をして取り組んでまいりたいと考えております。
▽委員
財務大臣、この資産へのひもつけ、そして、応能負担、応分負担を資産を持っておられる方々にしていただく、特にシニアの方々に。そういったお考えについては、いかが財務大臣としてはお考えですか。
▽国務大臣
従来は、やはり年齢で区切って、それで負担のお願いの多寡を決めるというのが昔からのやり方でありましたが、やはり先生の御指摘のとおり、シニアであっても、不動産等を所有している方もあり、様々な金融資産を持っている方もおりまして、私は、基本的に応能負担をしていただくというのはこれは大切なことである、そういうふうに思います。そういう中で、マイナンバーの活用、これは極めて有効な手だてである、そういうふうに思います。
ただ、いろいろ、国民の皆さんのことを全部把握しているわけではありませんが、どうも自分の口座を全てひもづけをするというようなことに対する抵抗感、そういうものがあるというのも事実であると思います。
そういうことを、これから政府としても、マイナンバーの活用、それによる応能負担の推進、その重要性、必要性を十分に示して、これを活用していく、応能負担を進めていくこと、これは重要なポイントであると認識しております。
⇒マイナンバーについて、日本弁護士連合会の会長声明、意見書(抜粋要約)などには、つぎのような内容が掲載されています。
「個人番号が不正利用されれば,個人データが名寄せされデータマッチング(プロファイリング)されてしまう危険がある。番号法は,このような危険への警戒から,個人番号の秘匿性を強く求め(第12条,第20条等),不正取得等に重い罰則を課し(第48条以下),利用できる場合を厳しく限定している(第9条)。」
「リスクがあることを考慮して,番号法第17条第1項は,個々人が個人番号カードを所持することによる利便性と危険性を利益衡量して取得するか否かを決めるという申請主義(任意取得の原則)を採用した。」
「積極的普及には慎重であるべきであって,事実上の強制や一体化する必要性の低い他制度機能の取り込み,制度目的と全く関係のない利益誘導などによって,全国民に個人番号カードを普及させることを目指すような施策を行うべきではない。」
「制度目的と関係のない利益誘導によって,全国民が現行の個人番号カードを使用せざるを得ない状況に追い込むものであり,任意取得の原則に反するものであるから,速やかに中止ないし抜本的な見直しをするよう求める。」
「高額のポイント付与は、同カードを取得しない者に不合理な経済的不利益を与えるなどして、マイナ保険証に誘導し、その原則化を図るものと言える。」
「公金受取口座とマイナンバーのひも付け登録には、名義人の積極的な同意を求めるべきであり、名義人が知らないうちにひも付けされてしまうような方法をとるべきではない。」
○軽減税率制度において個人番号カードを利用することに反対する会長声明(2015年10月1日)
○個人番号カード(マイナンバーカード)普及策の抜本的な見直しを求める意見書(2021年5月7日)
○「マイナ保険証」取得の事実上の強制に反対する会長声明(2022年9月27日)
○マイナンバー(個人番号)利用促進の法改正の再検討を求める会長声明(2023年3月29日)
より抜粋要約。
⇒「安保3文書」について、以下は、複数の弁護士会の会長宣言、国会議事録などに掲載されている内容(抜粋要約)です。
「内閣は「安保3文書」を閣議決定(2022.12.16)した。」
「日本は、平和な社会を手放して、戦争当事国への道を突き進むのだろうか」
「今般の「安保3文書」の改定は、解釈改憲の手法で「反撃能力」を保有するものである」
「岸田総理は、今回の「安保3文書」の改定について、戦後政策の大転換と繰り返し発信をしている」
「それほど重大な政策判断を下したにもかかわらず、事前に国会で説明することすらなく、臨時国会閉会後に閣議決定し、通常国会での議論を待たずにアメリカのバイデン大統領と約束をし、既成事実化した」
「国会での審議や国民的な議論が全くなされずに閣議決定がされた」
「このような国家防衛戦略の大転換が国会審議もなく、閣議により決定されたことは、憲法原理の一つである立憲主義、民主主義、国民主権の原理にも反するものである」
「主権者たる国民を代表し、国権の最高機関である国会での議論すら経ないままに、単なる一内閣の閣議決定によって敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有・行使を容認し、対外的な約束までして強行しようとしていることは、立憲主義・法の支配及び民主主義を著しく破壊する行為と言わざるを得ない」
「反撃能力がひとたび行使されれば」
「結果、国民の多大な犠牲と広範な国土の荒廃をもたらしかねない」
「覚悟を持たなければならないのは国民である」
「立憲主義を堅持したなかで、いかにして戦争を抑止することができるのかの議論をまず尽くすべき」
「その上で、仮に安保法制や反撃能力の保有が不可避であるならば、それは憲法改正により最終的に国民にその覚悟を問わなければならない事柄である」
「戦争は最大の人権侵害である」
(なお、上記の宣言、議事録は以前の投稿記事『総理「国民の信頼と共感を最優先する政治姿勢」の現実』、『vol.2総理「国民の信頼と共感を最優先」の現実』に掲載したものです。)
⇒ワクチン接種履歴に対する陽性となる確率の推移と、厚労省の速やかな対応ぶりについて。
○アドバイザリーボード資料から数値を拾い計算した、12歳以上の者が陽性となる確率の推移(2022.8.28まで)
⇒つぎの順に「10万人あたり新規陽性者数」を掲載しています。
▽「期間」、「未接種」、「2回接種」の順。
(2021年)
▽4/12~4/25、48.0>3.3
▽4/26~5/9、57.4>5.8
▽5/10~5/23、59.3>3.3
⇒ここからしばらくの間のデータを省略しますが、この間に公表される資料において、「未接種」<「2回接種」となることはありませんでした。
(2022年)
▽3/21~3/27、422.5>100.4
▽3/28~4/3、492.0>197.9
▽4/4~4/10、529.4>215.4
⇒ここで接種歴の分類方法が変更されました。(4/10までのデータは接種歴が「未記入」の場合は「未接種」の新規陽性者に分類していたものを、4/11以降のデータは「未記入」の場合は「接種歴不明」の新規陽性者に分類。)
▽4/11~4/17、229.1>218.3(「未接種」における「陽性となる確率」が激減しました。)
▽4/18~4/24、197.9>196.7
▽4/25~5/1、157.7>153.8
▽5/2~5/8、158.6>151.6
▽5/9~5/15、204.3>194.9
▽5/16~5/22、168.4>167.2
▽5/23~5/29、127.7>126.7
▽5/30~6/5、96.2>94.5
▽6/6~6/12、76.4>76.2
▽6/13~6/19、68.7<71.0(初めて「未接種」<「2回接種」になりました。)
⇒以降の資料には「本データによりワクチン接種による予防効果が明らかになるものではない。」と追記されました。
▽6/20~6/26、77.2<84.6
▽6/27~7/3、92.5<110.9
▽7/4~7/10、230.3<288.2
▽7/11~7/17、198.7<247.3
▽7/18~7/24、737.8<928.5(8/3資料のデータ)
⇒8/4、当該データの情報源である「発生届出の届出項目」について、「ワクチン接種回数の項目などを削減し、最小限必要な項目のみとすることを可能とする」旨、厚労省から事務連絡されました。
▽7/25~7/31、917.8<1160.0
▽8/1~8/7、909.3<1144.1
▽8/8~8/14、764.7<966.6
▽8/15~8/21、888.8<1128.9
▽8/22~8/28、722.2<876.1
以降、厚労省は「ワクチン接種歴別の新規陽性者数」のデータを公表していません。
(なお、2022.05.19以降の資料で90歳以上の未接種者数について数値が掲載されておらず計算不能であり、よって数値の比較のため、令和4年は全ての期間において90歳以上を除いて計算しています。)
⇒心筋炎リーフレットに対する「誤魔化し」との意見について
〇医薬品等行政評価・監視委員会(令和4年3月18日)議事録
▽委員A
「説明資料(心筋炎リーフレット記載のグラフ)に、国内でのCOVID-19による入院患者における心筋炎の発生割合、比較しているのですが、まず、この比較の表自体が非常にナンセンスというか、ミスリーディングです。」
「要するに、リスクを考える場合には、COVID-19を発症して入院するリスクを掛けて比較しないと、意味をなさない比較であるということなのです。」
「この図が独り歩きして、マスコミなどでも使われていて、非常にミスリーディングです。」
「ですので、この資料に関しては削除するなり、こういう比較は適切でないとお認めいただけないかというのが一つです。」
「むしろ先ほど出していただいた、一般における心筋炎の発生率と接種後の発生割合を比較(O/E解析)するほうが非常にリーズナブルな比較であるということです。」
「とにかく、この図を使うのは明らかに誤っていると思いますが、いかがでしょうか。」
▽予防接種室ワクチン対策専門官
「御指摘のように、データにつきましては、直接的に比較できるデータがなかなかない中、制限がありながらも、あくまで参考となるデータとしてお示ししたものでございます。」
「副反応合同部会におきましても、そのデータが本質的に持つ制限も御理解いただいた上で、リスク・ベネフィットとして御評価いただけるものとして御判断いただいたところでございます。」
▽委員長
「どうしましょう。」
「多分、Aさんとしては満足しない回答かと思いますが。」
▽委員A
「時間がありませんので、私の意見として、それを申しておきます。」
▽委員長
「端的に、こういうミスリーディングな資料が独り歩きしてしまうことのリスクはありますね、ということ。」
▽委員B
「私がこれ(リーフレット)を見るとしたら、利己的な理由によって考えます。」
「利己的な理由で、私が得するのかどうかといったときに見るとすれば、これはミスリードになります。」
「A委員が言ったとおり、データについては、ちゃんと科学的に比較できるデータを出した上で、それでも打ってくださいと言うことにしないと。」
「リードするときに、利己的には損かもしれないけれども打ってね、というのと、このように打っても得をしますよというのは、ごまかしになってしまうのです。」
⇒新型コロナの重症化率の公表時期と、コロナ特例について。
基本的対処方針(令和4年11月25日変更決定)には令和4年「3~4月」のデータが掲載されており、「5~6月」のデータは反映されませんでした。
そして、令和4年12月21日、「5~6月」と「7~8月」のデータが同時に公表されました。
○アドバイザリーボード (令和4年12月21日) 資料
(60歳未満、60・70歳代、80歳以上)の順
▽季節性インフルエンザ
重症化率(0.03%、0.37%、2.17%)
致死率(0.01%、0.19%、1.73%)
▽新型コロナ:令和4年「5~6月」
重症化率(0.01%、0.34%、1.66%)
致死率(0.00%、0.14%、1.53%)
▽新型コロナ:令和4年「7~8月」
重症化率(0.01%、0.26%、1.86%)
致死率(0.00%、0.18%、1.69%)
その後、基本的対処方針(令和5年1月27日変更決定)には「3~4月」と「7~8月」のデータが掲載されることとなりました。
そして同日、つぎのとおり5類感染症に変更する方針が決定されました。
○新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけについて(令和5年1月27日)感染症部会
新型コロナウイルス感染症は、感染症法に基づく私権制限に見合った「国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれ」がある状態とは考えられないことから、新型インフルエンザ等感染症に該当しないものとし、5類感染症に位置づけるべきである。
○新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更等に関する対応方針について(令和5年1月27日)新型コロナ感染症対策本部決定
「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけについて」(令和5年1月27日感染症部会)を踏まえ、オミクロン株とは大きく病原性が異なる変異株が出現するなどの特段の事情が生じない限り、5月8日から新型コロナウイルス感染症について、感染症法上の新型インフルエンザ等感染症に該当しないものとし、5類感染症に位置づける。
そして、5月8日から、新型コロナは5類感染症に位置づけられ、対策本部/基本的対処方針(マスク推奨など)は廃止されました。
結局「5~6月」のデータが基本的対処方針に反映されることはありませんでした。
そして、つぎの資料があります。
○歴史的転機における財政(令和5年5月29日)財政制度等審議会(参考資料)より抜粋要約
当審議会において繰り返し指摘してきた、コロナ特例からの「正常化」については、最後に医療分野の特例が大きく残っている状態。
▽歴史の転換点における財政運営(令和4年5月25日)財政制度等審議会(抄)
<新型コロナにおける財政措置について>
財政支出の効果について当審議会でたびたび議論になったものが、令和2年度以来の新型コロナの中での財政支出である。
これまで医療提供体制等の強化のために主なものだけで16兆円程度の国費による支援が行われてきた結果として、地域医療の確保に当然に責任を果たすべき国公立病院で、コロナ前から一転し、好調な決算となっている事実は指摘しておかなければならない。これなどは、病床確保料などの財政支援の在り方についての問題の所在を示唆するものである。
○立憲主義の堅持と日本国憲法の基本原理の尊重を求める宣言(2005年11月11日)日本弁護士連合会(抜粋要約)
改憲論の中には(省略)憲法の「公共の福祉」概念が人権相互の調整原理と解されることを批判し、「公益や公の秩序」、「国民の責務」などの概念を導入して、国家的利益や全体的利益を優先させ、人権を制限しようとするものがある。しかし、「公益及び公の秩序」、「国民の責務」などの個々の基本的人権を超越した抽象的な概念を人権の制約根拠とすることを認めれば、基本的人権の制約は容易となり、人権制約の合憲性についての司法審査もその機能を著しく低下させることとなる。
「個人の尊重」とは、人間社会における価値の根源が個人にあるとし、何にも勝って個人を尊重しようとするものである。一方では利己主義を否定し、他方では全体主義を否定することで、すべての人間を自由・平等な人格として尊重しようとするものであり、個人主義とも言われる。日本国憲法も「すべて国民は、個人として尊重される」と規定している(憲法13条)。そして、憲法の基本原理である国民主権と基本的人権の尊重も、ともにこの「個人の尊重」に由来しており、さらに、個人の自由と生存は平和なくしては確保されないという意味において、平和主義も「個人の尊重」に由来するとともに国民主権及び基本的人権の尊重と密接に結びついている。
「国民主権」とは、国政についての最高決定権が国民にあり、国の政治のあり方を最終的に決定するのは国民である、とする考え方である。
日本国憲法は、立憲主義の理念に基づき、「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与えられる」と定め(憲法11条、97条)、憲法改正によっても変えることのできない権利として基本的人権を保障している。