(2024.7.2)

 

 

⇒まず、日本の「税制の基礎」について。

○財務省HP(抜粋要約)

 アメリカの影響下にあった第二次世界大戦後、直接税を中心とする恒久的・安定的な税体系を目指すシャウプ勧告(連合国軍最高司令官の要請により来日したカール・シャウプ博士を中心とする使節団により作成され、昭和24年9月に日本の税制の包括的な改革案として発表された。)に基づいた税制が昭和25年に施行され、現在の我が国の税制の基礎となりました。

 

⇒タイトルについての内容(抜粋要約、時系列)は、つぎのとおりです。

⇒最初に、「保険料」と「保険税」について。

○(昭和24年10月7日)第5回国会 衆議院 厚生委員会

▽説明員

 保険関係のシヤウプの今度の勧告につきまして、勧告の意のある所を申し上げます。これは保険だけの問題でございますが、御承知のように社会保障税という項がございまして、それを見ますと、現在厚生省でとつております保険料と、労働省がとつております保険料があるわけであります。そういうふうに徴収事務が個々にわかれておりますことは非常に不便でございますので、これを大蔵省に委託しまして、一本に徴税官署で、つまり税務署でまとめて源泉課税式にとるべきであるという勧告がございました。

 

○(昭和24年12月23日)第7回国会 衆議院 厚生委員会

▽政府委員

 保險料という形ですと、町村としても税金の方を先に納め、保險料はどうしてもあとになる実情でございますので、実質においては、ほとんど税金と変わらないので、この際これを国民保險税にしたらどうだろうか、こういうような話も進めておるのであります。大体地方財政委員会の方は了承してくれておりまして、今関係方面と折衝しておるようなわけであります。

 

○(昭和25年2月8日)第7回国会 参議院 厚生委員会

▽政府委員

 国民健康保險を税にしたらどうか、これは今までの市町村長の要望でもありますし、各国民健康保險組合の連合会における年来の主張なんであります。そこで国民健康保險税という新らしい税を起すという案を作つて、折角今までうまく行つておつたのでありますが、引かかつて落ちておるような恰好でありまして、善後策を講じております。

 

○(昭和25年2月13日)第7回国会 参議院 地方行政委員会

▽政府委員

 昭和25年度地方予算推計概算額というのによりまして概略御説明を申上げたいと思います。

 それでは歳入の方から申上げますと、地方税でありますが、(省略)119億という数字は、これは国民健康保険税というものを目的税として新らしく起しまして、税収入の中に考えたいということであつたのでございますが、これは司令部との折衝過程におきまして、そのような税を起しますことが困難のようなことになつておりまするので、この数字は御考慮に入れて頂かないでよかろうと思います。

 

○(昭和25年2月14日)第7回国会 参議院 厚生委員会

▽委員

 保險税というものは厚生省としてはおやりになる考えであるのか、その点をもう一度お伺い申上げたいと思います。

▽政府委員

 国民保險の問題は、私共は飽くまで税でやる方がいいというふうに今でも思つておりますけれども、恐らく今度の国会では御審議願えないのじやないか、こういうふうに考えております。

 

○(昭和25年3月28日)第7回国会 参議院 地方行政委員会

▽委員

 最初政府から我々に提示された地方税の改正案の中には、国民健康保険税ということが、目的税の税目の中に加えられておつたんでありますが、何故に政府はそれを削除せられたのであるか。

▽政府委員

 国民健康保険税を設けようとする考のありましたその理由は、一つは昨年から市町村が国民健康保険事業を行うことになつたわけであります。ところがその費用というものを保険料で賄つて行く。保険料という恰好ではなかなか徴収が困難でありますので、いろいろな他の理由もあるわけでありますけれども、予定の収入が得られないために、殆んどの市町村では国民健康保険事業を行いながら、その運営に非常な困難を来たしているわけであります。そこでもう少しこの収入を確実に得て行くようにして行きたいというふうな考えが一つあつたわけであります。もう一つは又国民健康保険料というふうなものが多くの租税と別な姿において存在しながら、而も実費は租税と全く同じである、こういうことでありますと、住民の租税負担を合理化する場合には合理的に把握できない。これが又そういう意味で非常な支障を起しておりますので、やはり税の形は実質に従つて切替えて行くべきであるというふうな考え方もあつたわけであります。ところが半面、国民健康保険税として、国民健康保険事業の費用を賄つて行くとするなら、その国民健康保険税というものは、むしろ市町村税として設けるよりも、国民全体が連帯してその仕事の運営を助くべきである。従つて市町村税としては国民健康保険料の形において徴収することは穏当ではないという考え方があります。或いは又国民健康保険税とされた場合には、国民健康保険料として徴収されるよりも、なかなか強い力を以て住民に臨むような姿になつて参るわけであります。その場合にその市町村が国民健康保険事業をやるかやらないかということが、単にその市町村の議会の多数決によつて決められ、それだけで以て住民全体が、好むと好まざるとに拘らず、国民健康保険税を或る程度の能力において課せられて来るということは穏当ではないのであつて、むしろ国民健康保健税の形において徴収して行こうとするなら、国民健康保険事業を市町村がやるかやらんかということ自体を、自分の議会の議決ではなしに、市町村の住民投票によつて決すべきである。こういうふうな意見もあつたわけであります。そういうまあいろいろな意見がありまして、遂にこの問題を解決するに時間がありませんので、遺憾ながら新しい地方税法案の中に国民健康保険税を採上げることができなくなつたわけであります。

 

○(昭和26年2月2日)第10回国会 参議院 厚生委員会

▽説明員

 国民健康保険法の一部を改正する法律案、これは御承知の、例の国民健康保険税目的税をこしらえるということでございます。御承知のように国民健康保険組合が非常に運営に難澁いたしております大きな原因でありますところのものは、保険料の徴収が困難であることである。その辺のところの救済の措置として目的税をこしらえる。そのための一連の改正でございます。

 

○(昭和26年2月27日)第10回国会 衆議院 地方行政委員会

▽国務大臣

 地方税法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

(省略)改正の第五は、国民健康保険税の創設であります。従来、国民健康保険事業を行う市町村は、保険料を徴収していたのでありますが、この保険料の徴収成績が必ずしも良好でなく、ために国民健康保険財政は、その運営に困難の度を加え、ひいては市町村の一般財政に重大な圧力を加えているのであります。この点にかんがみまして、保健料にかえて国民健康保険税を市町村の目的税として創設し、もつて国民健康保険事業の有します相互扶助の精神の徹底化をはかりますとともに、国民健康保険財政の確立をはかることにいたしたのであります。このことは国民健康保険事業を行う市町村年来の要望でありますし、かつはまた社会保障制度の確立のためにも、大なる貢献をなすべきことが期待されるのであります。この国民健康保険税は、新税ではありますが、従来の保険料にかえて創設されるものでありますがゆえに、住民の負担としては、何ら増減するものではないのであります。

 

○(昭和26年3月8日)第10回国会 衆議院 地方行政委員会

▽政府委員

(地方税法の一部を改正する法律案について)

「国民健康保険を行う市町村は、国民健康保険に要する費用に充てるため、国民健康保険の被保険者である世帯主に対し、国民健康保険税を課することができる。」(省略)課すか課さないかは、当該市町村の選択によつて決まることであります。

 

○(昭和26年3月26日)第10回国会 参議院 地方行政委員会

▽政府委員

 国民健康保険法によつて特別会計を設定しなければならない、こういうことになつて参りますので、従つて目的税たる国民健康保険税によつて得ました財源特別会計としてこれを運用して行くと、こういうことになるわけであります。

 

○(昭和26年3月27日)第10回国会 参議院 地方行政委員会

▽政府委員

 今度の改正案におきましては、保険料を保険税にすることによつて、従来大体7割くらいしか入らないものが大体1割以上はたくさん入るのじやないかという見込を立つております。それによりまして、保険の収入を確保したいというのが狙いでございます。

 

○(昭和26年3月31日)地方税法の一部を改正する法律が成立
 

保険料にあわせて徴収をする老人保健法における拠出金が「保険料」なのか「税金」なのか、などについて。

○(昭和56年10月22日)第95回国会 衆議院 社会労働委員会

▽委員

 税金の中においては生計費に課税をしないという最低課税の原則があるわけです。保険料は受益者負担ですからそれ以下にもかかってくるわけです。パートにも全部かかるわけです。年金生活者にもかかってくるわけだ、頭割りの負担が中心ですから。ですから、これに負担の限界というものがある。負担の不公平というものがある。

 この拠出金というものは保険料であるのか、賦課金であるとすれば一方的な税金に類するものであるのか、どっちであるのか。

▽政府委員

 この老人保健法におきまする拠出金というものを一体どういう性格のものとして考えるかというのはいろいろむずかしい議論があろうかと思いますけれども、老人医療費を国民みんなで公平に分担をしていこう、そのための国民の負担金であり、拠出金である。従来そういった制度はございませんでした。こういった制度の仕組み自体が今までにない仕組みでございますので、この拠出金というものの法的な性格をどう考えるかということについてはまたいろいろ議論があろうかと思いますが、ただ、その拠出金は、従来の保険料と同時にそれにあわせて徴収をする、その一部を老人保健基金に拠出していただく、こういう仕組みをとっております。

 そういったことから考えまして、これまでの保険料と実際上本質的に全く別なものだというふうには私は考えておりません税金ということでもございませんどちらかというと、むしろ従来の保険料に近い性格を持った賦課金ではないかというふうに思っております。

▽委員

 法制局はどう思うか。

(省略)

▽政府委員

(拠出金につきましては)社会保険料的要素のあることは否定できないと思いますけれども、しかしながら、本法によります医療の実施の仕組み全体を考えますと、医療保険各法で現在取っております社会保険料と同一の性格のものである、ここまでは言い切れないだろうということでございます。

▽委員

 それならそれは何ですか。社会保険でもない、同一のものではないと。何ですか。

▽政府委員

 先ほど審議官からもお答えがございましたように、新しい仕組みということでございますので、それに相応した性格のものであろう、こういうことでございます。

▽委員

 そんなものは答弁じゃないですよ。

 委員長に要求します。あんな答弁なんかないですよ。社会保険料のようでもあるがそれではないんだというような答弁があるか。

▽委員長代理

 つけ加えて御答弁はないのですか。信ずるとおりを答弁しなさい。

▽政府委員

 今回の法案で徴収されます保険料、老人保健の拠出金の性格でございますけれども、これを一概に社会保険料であるとかあるいは税金であるとか、こういうふうにきわめて明確にといいますか、割り切るような性格のものではない、こういうふうなことを申し上げたわけであります。

 

○(昭和57年4月27日)第96回国会 参議院 社会労働委員会

▽委員

 昨年、内閣法制局は次のように答弁をしているわけですね。「社会保険料的要素があることは否定できない」と思いますけれども、しかしながら、本法案によります「医療の実施の仕組み全体」を考えますと、医療保険各法で従来取っております社会保険料と同一性格のものである、ここまでは言い切れぬだろうということでございます。こう答弁しているんですね。社会保険料と同一でないものを健康保険各法で徴収すること、このことは法理論的におかしいんではないかと、私はこう考えるんです。

(省略)

▽政府委員

 昨年の10月のときのお尋ねが拠出金についてのお尋ねでございました。拠出金に重点をしぼりましてお答え申し上げたわけでございますが、老人保健法案におきましては、仕組みとして、拠出金と老人保険料と二段階の法律の仕組みをとっておるわけでございます。したがいまして、拠出金につきまして申し上げれば、社会保険の診料報酬支払い基金、これと各保険者との間の公的な債権債務関係である。で、現在のいわゆる現行医療保険各制度の場合には各保険者とその被保険者との間の公的な債権債務者関係である。こういった意味で、拠出金はいまの保険料と法的には全く同一のものとは言い切れない、こういう趣旨で申し上げたわけでございまして、私どもも決してこれが全然無関係のものであるとか、同一でないということを申し上げるつもりはございません

(省略)

▽委員

 新しい制度のこの老人保険料も、憲法八十四条で定める「あらたに租税を課し、又は現行の租税を變更するには、法律又は法律の定める條件によることを必要とする。」、こういう憲法八十四条ですけれども、租税法定主義の広義、広い意味ですね、この租税と理解していいのかどうかですね。この点はどうでしょう。

▽政府委員

 老人保健制度におきます老人保険料、これは憲法八十四条に言う租税ではない。したがって、その規定の直接の適用はない。かように考えておりますけれども、強制的な賦課金であると、こういうことを考えますと、当然租税法定主義の精神にのっとりまして、法律に基づいて必要な定めをする、こういうことは当然であろうかと思います。

(省略)

▽政府委員

 先ほど、租税法定主義の直接の適用はないと申し上げましたけれども、また同時に、租税法定主義の精神にのっとって当然これは進めていくべきものと、かように考えているというふうにお答え申し上げました。その場合の租税法定主義というものの考え方でございますけれども、率あるいは額そのものを法律に規定していくという考え方以外にも、あるいは率、金額、そういうものの算定方法を明定していく、こういうことも許されると一般には解されております。したがって、いま、この法案にございますようないわゆる保険料率の定め方、これも租税法定主義の精神に反するものではないと、かように考えております。

 

○(昭和60年11月28日)第103回国会 衆議院 大蔵委員会地方行政委員会文教委員会農林水産委員会社会労働委員会運輸委員会連合審査会

▽中曽根内閣総理大臣

 税というものに対する感覚と保険金というものに対する感覚が非常に違うわけでございます。私は違うと思うのです。そういう意味において、税と言うと、ややもすると何となしに官僚的な、取られてしまうという印象を持っておる。保険金の場合は、自分に返ってくるものを安全保障のために今出しておくんだ、そういうふうな自助努力的な印象があると思うのです。

▽委員

 老人保健法の問題にいたしましても、保険料の上に拠出金を取るわけですよ。自分が納めた保険料で相互扶助をするという考え方を出て、税金化して拠出金をどんどん取っているんだよ。

 

○(昭和61年9月18日)第107回国会 参議院 本会議

▽議員

 老人医療費の各制度が負担している拠出金に関する改正でありますが、(省略)この案分率改正による被用者側拠出金の増額分は、62年度約4000億円、料率にして千分の五にも相当すると試算され、サラリーマンに対する事実上の増税とも言い得るのであります。

 

○(昭和61年10月30日)第107回国会 衆議院 社会労働委員会

▽委員

 老人保健制度を設けるのはいいとしても、その費用について被用者保険から保険料で出していく、こういう考え方は、一方では税金を減す、だけれども、これが保険料に転嫁されれば、保険料を払うサラリーマンとか事業主は実際に増税になるわけですよ。

 

○(昭和61年11月27日)第107回国会 衆議院 内閣委員会

▽委員

 一方では所得税減税、所得税減税と言いながら、片っ方では拠出金制度を変えて保険料を増やしていく、青天井でふえていく。

 今度の拠出金の取り方というのは、社会保険制度のメリット、自主性、保険料を出した者がお互いに給付を出して支え合っていくというコンビネーションを崩してしまう(省略)実質上の増税であって、「増税なき財政再建」という行政改革の趣旨に全く反するということを、断言して演説をしておりました。

 

○(平成18年3月1日)最高裁判所大法廷(旭川市国民健康保険料賦課処分取消等請求事件)

▽裁判要旨

 1 市町村が行う国民健康保険の保険料については,これに憲法84条の規定が直接に適用されることはないが,同条の趣旨が及ぶと解すべきであるところ,国民健康保険法81条の委任に基づき条例において賦課要件がどの程度明確に定められるべきかは,賦課徴収の強制の度合いのほか,社会保険としての国民健康保険の目的,特質等をも総合考慮して判断する必要がある。

2 旭川市国民健康保険条例が,8条において,国民健康保険の保険料率の算定の基礎となる賦課総額の算定基準を定めた上で,12条3項において,旭川市長に対し,保険料率を同基準に基づいて決定して告示の方式により公示することを委任したことは,国民健康保険法81条に違反せず,憲法84条の趣旨に反しない

3 旭川市長が旭川市国民健康保険条例12条3項の規定に基づき平成6年度から同8年度までの各年度の国民健康保険の保険料率を各年度の賦課期日後に告示したことは,憲法84条の趣旨に反しない

▽裁判官滝井繁男の補足意見。

 保険料は,疾病等という個人の自助では対応することが困難なリスクを集団として引き受けることによって,医療という社会生活において不可欠なサービスを国民が等しく受けることができるように作られた制度の下で,それを維持するためその利益を受ける者にその対価として支払うものとして定められているものである。

 市町村が行う国民健康保険においては,これを税として徴収することが選択的に認められているが,そのことによって保険料として支払われているもののもつ性格自体が変わるものではない

 

⇒「老人保健拠出金が後期高齢者支援金に変わる」との説明について。

○(平成20年3月26日)第169回国会 衆議院 厚生労働委員会

▽委員

 この4月から後期高齢者医療制度がスタートいたします。(省略)後期高齢者医療制度というものが国保の財政、国民健康保険の財政にどのような影響を与えるのか、この点について簡単に説明いただきたいと思います。

▽政府参考人

 まず一つは、老人保健拠出金が後期高齢者支援金に変わるということがございます。この場合、老健拠出金の方は高齢者に係る医療給付費の5割であるのに対しまして、高齢者支援金の方は4割でございますので、拠出額が減少するということがございます。

 

⇒改めて、「保険料」と「税金」について。

○(令和5年3月14日)第211回国会 参議院 財政金融委員会

▽委員

 支払に法的な義務がある税と社会保険料ではどういうふうに異なるのかということについて、どちらも法的には払わなければいけないということでありますが、そのことについて、まず厚生労働政務官、そして財務省に伺いたいと思います。

▽政府参考人

 まず、社会保険料との違いも踏まえて、税の方の性格について御説明申し上げますと、講学上、租税に関しましては、国又は地方公共団体が特別の給付に対する反対給付としてではなく公共サービスを提供するための資金を調達する目的で、法律の定めに基づいて私人に課する金銭給付であるというふうに定義されているものと承知をいたしております。

▽政府参考人

 続きまして、社会保険料についてお答えをさせていただきます。

 社会保険制度は、傷病等のリスクに備えましてあらかじめ保険料を負担することで、保険事故に対して必要な給付を受ける仕組みでございまして、社会保険料につきましてはその拠出と保険給付が対価的な関係にあるというふうに考えてございます。

▽委員

 そういう説明になるんだろうと思います。

 一方で、ちょっといろいろ調べてみたら、国民健康保険料という名目で国民健康保険のお金を徴収する場合と、国民健康保険税という形で徴収する場合がそれぞれの自治体に委ねられているというふうに思いますが、そうした理解でよろしいでしょうか。

▽政府参考人

 市町村が国民健康保険料として徴収するか国民健康保険税として徴収するかにつきましては、市町村の判断により、条例においていずれかを選択することとされております。

▽委員

 そこの中身は、保険に加入している人からするとどっちも国民健康保険に加入しているんですが、取られる名目が税か保険料かで名前が違うというだけかなと思ったら、実は国民健康保険税の方が、税なので先取特権があるとかですね、いろんな面で徴収がしやすいということになっております。

 

○(令和5年11月13日)第212回国会 参議院 行政監視委員会

▽委員

 名目上税金ではないけれど実質税金である負担についての質問です。

 子ども・子育て拠出金は、税という名前は付いておりませんが、国の制度として企業が徴収されているものです。つまり、税金と言って過言ではないと思います。

 このように、名目上税金ではないけれど実質税金である代表例として社会保険料が挙げられます。この社会保険料、アメリカでは給与明細税と呼ばれており、名実共に立派な税金です。なぜ日本では税金ではないのか、国民の皆様にいま一度考えていただきたいと思います。

 直近では、先日、こども政策担当大臣が、少子化対策の財源として、支援金制度を創設する旨を提示しました。このように、これも名前に税と書いておりませんが、実質税金ではないかと思われます。

▽大臣政務官

 講学上、税とは、国又は地方公共団体が、特別の給付に対する反対給付としてではなく公共サービスを提供するための資金を調達する目的で、法律の定めに基づいて私人に課す金銭給付と定義付けられているものと承知しております。

 それに対して、例えば、御指摘のありました子ども・子育て拠出金であれば、特定の事業目的のために連帯して費用を負担し合う仕組みと位置付けられておりまして、税とは性格が異なるものとされていると承知をしております。

 したがって、拠出金や負担金などについては、支払が義務付けられていることをもって税と呼称することは適切ではなく、その在り方は各拠出金などの所管官庁において検討されるべきものと考えております。

▽委員

 北朝鮮は、全ての税金を何とか料、何とか収入金と呼ぶことにして、1974年に税金を廃止したということです。例えば、法人税は国家企業利益金、企業団体利益金など、消費税は取引収入金、サービス料金です。

 

⇒「こども・子育て支援金制度」と、タイトルの「何でもアリ」について。

○(令和5年12月22日)こども未来戦略(閣議決定)

 歳出改革と賃上げによって実質的な社会保険負担軽減の効果を生じさせ、その範囲内で、2026年度から段階的に 2028年度にかけて支援金制度を構築することとし、2028年度に1.0兆円程度の確保を図る。

 

○(令和6年1月31日)第213回国会 衆議院 本会議

▽内閣総理大臣(岸田文雄君)

 子ども・子育て支援金制度についてお尋ねがありました。

 支援金制度は、歳出改革と賃上げによって実質的な社会保険負担軽減の効果を生じさせ、その範囲内で構築することにより、全体として実質的な負担が生じないこととしております。

 

○(令和6年2月6日)第213回国会 衆議院 予算委員会

▽岸田内閣総理大臣

 社会保険制度は社会連帯の理念を基盤として共に支え合う仕組みです。支援金は医療保険料と併せて拠出いただくものでありますが、これも、こうした連帯によって、将来を担う子供たちや子育て世帯を全世代、全経済主体で支える仕組みとして検討中であり、支援金は保険料として整理されるものであると考えています。

 

○(令和6年2月26日)第213回国会 衆議院 予算委員会

▽委員

 政府のおっしゃっている、国民に実質的な負担は生じないとは、社会保障に係る国民負担率が上がらないことなんです。国民負担率が上がらないことをもって、実質的な負担は生じないと言っているんですね。

 国民が毎月支払う社会保険料が上がることは国民にとっての実質的な負担ではないと政府も総理もおっしゃっているんです。

▽岸田内閣総理大臣

 今の御質問の中で、国民負担率が上がらないというのが、実質的な負担を生じないという点、これはそのとおりだと思います。

 ただ、保険料が上がる、上がらないの部分については、歳出改革によって社会保険の負担を軽減する、この効果を生じさせると申し上げております。その軽減の範囲内で支援金を創設するということでありますので、一人一人の負担ということを考えた場合に、毎月の支払いが増えるということについては当たらないと思います。

 ただ、もちろん、収入によって、あるいは加入している保険の種類によって具体的な数字の凸凹は当然生じますが、全体として、今申し上げた形で、国民負担率は増えないということを説明させていただいております。

▽委員

 つまり、国民が毎月支払う社会保険料が上がることは国民にとっての実質的な負担ではないと、政府も総理も認識しているんです。まずはこれを確認させていただきたいと思います。

 

○(令和6年2月27日)第213回国会 衆議院 予算委員会第五分科会

▽分科員

 実質負担なしと総理は言うけれども、負担金じゃないですか、実質負担は増えるじゃないですか。給料が上がらない人、給料をもらっていない人、年金受給者とか、実質負担増だけじゃないですか。言い方をごまかすのは、本当にちょっとやめていただいた方がいいと思いますよ。

(省略)

▽国務大臣

 健康保険制度の中では、疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関する給付を中心としつつも、国民の生活の安定と福祉の向上を目的として、予防的かつ広範な事業も含んでおりまして、後期高齢者支援金や出産一時支援金など、世代を超えた支え合いの仕組みが組み込まれております。

 このため、将来の健康保険制度の担い手の育成を支援をして、健康保険制度の持続可能性を確保するという観点から、今般、子供、子育て支援金に関わる料率の設定をして、その支援金の徴収は制度の目的の範囲の中であるというふうに私どもは考えております。

 今後とも、社会保険料については、各社会保険制度の目的に沿った形で、それぞれ制度において徴収されるものでございまして、この考え方にのっとって、引き続き適切に対応していきたいと思います。

▽分科員

 今、驚くべき答弁ですよ、厚生労働大臣。そんなことを言っていたら、何でも流用できちゃうじゃないですか。今のロジックでいったら、年金保険料だって将来の年金の払い手を確保するためにとか、雇用保険だって言えちゃいますよ。今のようなロジックでやるんだったら、全部流用できちゃいますよ

 今後、同じような形で、健康保険のみならず、年金保険、介護保険、雇用保険、こういった保険も今のような形で、それぞれ、年金の担い手、雇用の担い手、介護のまさに支え手、こういった方々を確保するためには流用することはあり得るんですか

▽国務大臣

 私は今、今後のことを申しているわけではなくて、この支援金というものの性格について申し上げているわけであります。

 したがって、今後のことについては、将来どういう形のものが改めて検討されるか、今ここの場で申し上げることはできないと思います。

 

○(令和6年2月29日)第213回国会 衆議院 予算委員会公聴会

▽公述人

 支援金制度を導入しても国民負担率は上がらないというのは何事ですかということで、これは詭弁としか言いようがないですね。

 私は別に、負担が上がることはいいと思うんですね。ちゃんとした制度をつくるのであれば、負担をお願いしますというのはありだと思うんですが、上がらないという説明をされると、これは何か非常に不誠実極まりないというか。

 まず、首相がそういうことを言った理由としては、賃金が上がります、それから歳出削減しますということなんですが、賃金上昇というのは支援金と関係ないですね。賃金上昇は賃金上昇でそれは結構なので、支援金と合わせる必要はないわけでございまして、賃金上昇で支援金の負担がないと言うんだったら、国防費増もウクライナの支援も何でもありになってしまいますので、これは関係ないということを言わなきゃいけません。

(省略)それから、医療保険に上乗せという制度なんですが、これは我が国が社会保障を営々と築いてきたこの社会保険制度という仕組みをぶち壊そうというようなそういう制度で、本当にこれでいいのか考え直した方がいいというのが私の意見でございます。

 言わずもがなですけれども、社会保険というのは目的を定めてあるわけですね。医療なら医療、介護なら介護と定めていて、そこで必要な受益に対する負担があるから取りますと、受益と負担がリンクしているというのが原則でございます。余分なことをやろうと思うと負担が上がるから、それはちょっと待ってくれとか、緊張感が働く。財政を健全化するためには、目的があって、そのために費用を取るんだというのがリンクしているのが、非常にそこがキーである制度なんですが、そこに全く違う子育て支援みたいなものを入れるということは、社会保険の受益と負担のリンクを外すということだけじゃなくて、そこにいろいろなし崩しになる、経営の健全化という観点から、何か根本の制度をぶち壊しかねない制度であるということですね。

 

○(令和6年3月6日)第213回国会 参議院 予算委員会

▽内閣総理大臣(岸田文雄君)

 この医療保険料そのものを別に使ったならば、これは流用ということなんでしょう。しかし、先ほどから申し上げておりますように、この医療保険とは、これ支援金、これは全く別のものであり、併せて徴収するということであって、医療保険料を流用するというものではない、これはしっかり確認しておかなければなりません。

 

○(令和6年3月8日)子ども・子育て支援金と租税の関係に関する質問主意書(衆議院議員)

 国民健康保険料賦課処分取消等請求事件における、平成18年3月1日最高裁判決では、以下のとおり判示されている。

「国又は地方公共団体が、課税権に基づき、その経費に充てるための資金を調達する目的をもって、特別の給付に対する反対給付としてでなく、一定の要件に該当するすべての者に対して課する金銭給付は、その形式のいかんにかかわらず、憲法84条に規定する租税に当たるというべきである。」

 これを踏まえ、今国会に提出されている「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案」において創設が検討されている「子ども・子育て支援金」租税ではないのか。最高裁判決との関係を明確にした上で答弁ありたい。

▽上記質問に対する答弁書

 内閣総理大臣 岸田文雄

 子ども・子育て支援法に規定する子ども・子育て支援納付金は健康保険者等から、同法第七十一条の三第一項各号に掲げる費用に充てるため徴収するものであり、当該健康保険者等は子ども・子育て支援納付金の納付に要する費用を含む健康保険の事業に要する費用に充てるため、保険料を徴収するものである。

 平成18年3月1日最高裁判所大法廷判決においては、国民健康保険の保険料について、「憲法84条の規定が直接に適用されることはないというべきである」と判示されている

 

○第213回国会 衆議院 地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会(令和6年3月26日)

▽国務大臣

 給付と負担の関係性ということでありますが、支援金制度のそもそもの趣旨になりますけれども、支援金制度は、児童手当の拡充等を始め、子育て世帯をしっかりと社会全体で支えていく制度でございます。

 子供、子育て世帯をしっかり支えて少子化の対策を図っていくことによって社会保険制度全体を持続可能なものにしていくということは、我が国の喫緊の大変重要な課題になってございます。

 これをしっかりと手当てをして子育て世帯を支えていくということが、ひいては高齢者の方々も含め社会全体の受益にかなう、このように関係性を整理してございます。

▽委員

 今の御答弁をある意味しんしゃくして読み取ると、健康保険制度の持続可能性のためだとか、少子化対策が何とか解決されて人口減少が解決されてとかということをおっしゃっているんだと思いますけれども、余りに遠いですよ、その関係は。普通は直接の給付でしょう。直接の給付との関係ですよ。それが、今回の話ですと、すごくその関係性が遠いんですよ。

 そんなことを言ったら、じゃ、賃金を上げるために何かいろいろなことを出したら、全て回り回って全部これは何かプラスなんだと言って、それを受益なんだと言ったら、もう何でもありになっちゃいますよ。

(省略)

▽委員

 子ども・子育て支援金を充当する事業というのは健康保険事業なんでしょうか。健康保険法の第百五十五条を見ますと、健康保険事業に要する費用として保険料を徴収するというのが定められているんですね。つまり、保険料として徴収をされたお金というのは基本的に健康保険事業に使わなければいけないという法のたてつけになっていますが、子ども・子育て支援金は健康保険事業なのか、教えてください。

▽政府参考人

 まず、結論的に申し上げまして、この支援金を充てる事業というものは、概念上、健康保険事業の範疇に含まれるものと考えております。

 御指摘のとおり、現在、健康保険法第百五十五条におきましては、「健康保険事業に要する費用に充てるため、保険料を徴収する。」というふうに書いてございます。この中で、健康保険事業に要する費用は、幾つか、介護納付金ですとか、後期高齢者支援金ですとか、そういったものが含まれるというふうに書いてございます。

 今回、子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案におきまして、健康保険法を改正させていただきます。この改正部分におきまして、今申し上げましたような介護納付金等々と同様に、この健康保険事業に要する費用の中に、子ども・子育て支援納付金に要する、支援金の納付に要する費用、これを含ませる改正案を入れてございます。

▽委員

 続いて、ちょっと角度を変えて大臣にもお伺いしたいと思います。

 これは、百五十五条ではなくて、健康保険法の第一条。この第一条の中では、この健康保険法という法律は、労働者又はその被扶養者の業務災害以外の疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関して保険給付を行うものだというふうに書いてあるんですね。

 今回、この第一条は改正される予定がありません。ということは、つまり、子ども・子育て支援金というのは、労働者又はその被扶養者の業務災害以外の疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関して保険給付を行うためのものなんだということになるわけですけれども、その理解でいいんでしょうか。

▽国務大臣

 委員の御指摘は、支援金制度が健康保険法の目的の範囲内であるかとのお尋ねと理解をいたしますが、健康保険法の目的には、先ほど委員が挙げられた文言の後に、「もって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。」という文言があるのですが、健康保険法の目的には国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することが含まれていることや、支援金制度は、将来の健康保険制度の担い手の育成を支援し、健康保険制度の持続可能性を高めるという観点から、同法の目的の範囲内であると考えております。(発言する者あり)

▽委員

 今、無理があるんじゃないかという声も出ましたが、今大臣が答弁された第一条の前段には、業務災害以外の疾病、負傷、死亡、出産に関する保険給付を行うということ、そして、それをもって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的としているということで、これは前段が手段後半は目的なんですね。

 ですから、手段の部分を変えずに、目的に合致しているからいいんだということにしてしまうと、では、条文の前半部分が何でもいいということになってしまうので、それはちょっと法律の拡大解釈なのではないかなというふうに思うわけです。

 ですから、私としては、第一条も併せて改正しないとおかしいんじゃないかと。具体的に申し上げれば、現状、業務災害以外の疾病、負傷若しくは死亡又は出産。これに加えて、子育てに関する記述を追記をしないと、健康保険法第一条の手段を規定している部分、子育てに対する保険給付を行うというふうに書いておかないと、法律の条文に書いてあるものが形骸化してしまって、何でもありというふうになってしまいかねない懸念があるんですが、そういう改正をすべきではないでしょうか。

▽国務大臣

 支援金制度は、社会連帯の理念を基盤に、子供や子育て世帯を少子化対策で受益がある全世代、全経済主体で支える仕組み、これは繰り返し申し上げてございます。

 そして、現行の医療保険制度におきましても、病気やけがに限らず、出産や死亡に関する給付など幅広い給付のほか、保険給付ではない疾病予防等の広範な事業、これが行われておりまして、またさらに、後期高齢者支援金など世代を超えた支え合いの仕組みが組み込まれているなど、給付と負担の関係は様々であると承知をしております。

 さらに、少子化、人口減少に歯止めをかけることは、将来の健康保険制度の担い手の育成を支援し、その持続可能性の確保に資するものであることから、支援金は健康保険法の目的の範囲内であり、改正は不要であると考えております。

 

○(令和6年3月26日)子ども・子育て支援納付金を医療保険者から徴収することに関する質問主意書(衆議院議員)

一 健康保険法は、労働者又はその被扶養者の業務災害以外の疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関して保険給付を行うもの(同法第一条)であり、給付の内容及び費用の負担の適正化並びに国民が受ける医療の質の向上を総合的に図りつつ、実施されなければならない(同法第二条)と規定しているところ、医療保険者から子ども・子育て支援納付金を徴収することは健康保険法の立法目的と異なると考えるが、政府の見解は如何に。

二 国民健康保険料賦課処分取消等請求事件に係る平成十八年三月一日最高裁判所大法廷判決においては、「国又は地方公共団体が、課税権に基づき、その経費に充てるための資金を調達する目的をもって、特別の給付に対する反対給付としてでなく、一定の要件に該当するすべての者に対して課する金銭給付は、その形式のいかんにかかわらず、憲法八十四条に規定する租税に当たるというべきである」と判示しつつも、当該事件における国民健康保険の保険料について、「憲法八十四条の規定が直接に適用されることはないというべきである」と判示したのは、「被保険者において保険給付を受け得ることに対する反対給付として徴収されるものである」との理由である。一方で、子ども・子育て支援納付金は、健康保険の被保険者が反対給付として徴収されるものではない。したがって、医療保険者が被保険者等から徴収する保険料のうち当該納付に要する費用については憲法八十四条に規定する租税に当たるというべきと考えるが、政府の見解は如何に。

▽上記質問に対する答弁書

 内閣総理大臣 岸田文雄

一について

 健康保険制度は、健康保険法第五十二条等に規定する保険給付のほか、被保険者等の健康の保持増進のために必要な事業その他の法律の規定に基づく事業を行うことにより、健康保険法第一条等に規定する目的を達成しようとするものである。

二について

 子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案第二条の規定による改正後の健康保険法第百五十五条第一項の保険料は、「健康保険事業に要する費用に充てるため」、一体として徴収するものであり、当該保険料のうち子ども・子育て支援納付金の納付に要する費用に係る部分を取り出して憲法第八十四条に規定する租税に当たるか否かを論ずることはできないと考える。

 

○(令和6年4月3日)第213回国会 衆議院 厚生労働委員会

▽政府参考人

 子ども・子育て支援金につきましては、医療保険制度における保険料として各保険者が賦課徴収するものでございますけれども、他の社会保険制度に比べて賦課対象が広いからという理由で医療保険の賦課徴収ルートを活用するとした経緯がございます。
 それから、支援金は医療保険料と併せて拠出いただくものですが、あくまでも医療保険料とは別物であり、医療給付の対価として徴収されるという位置づけではない、こういう性格がございます。
 

○(令和6年4月3日)第213回国会 衆議院 地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会

▽委員

 社会保険制度というのは、まさに給付と負担、受益と負担の対応関係が明確だからつくってきているわけです。だから、あのような負担構造で上限もある。ある程度逆進性が強いといろいろ批判されている。そのとおりですよ、逆進性が高いわけです。なぜ逆進性が高い負担構造が許容されてきたかというと、受益が明確だからですよ。

 でも、今あったように、少子化対策は受益が明確じゃないんです。受益が明確じゃないのに、なぜ、このような社会保険料という形でその財源を確保することが正当化されるのか。やはりそこは拙速ではないかと思いますが、大臣、いかがですか。

▽国務大臣

 まさに、我が国は今危機的な状況にあるということだと考えております。その危機的な状況にある少子化に対して、加速化プランを決定し、速やかに実行することこそが必要であり、その際、制度が安定的に維持される枠組みを構築する、そのことが、これから結婚、出産を考える若い世代が将来のライフプランを考える上で重要であると考えております。

 したがって、昨日総理からもお答えしたとおり、拙速であるというふうには考えておりません。

▽委員

 昨日、大臣に再三これは本会議場で聞きました。今あったように、とにかく、支援金について、受益と拠出との対応関係が不明確という御指摘は当たらない、拙速ではない、結論は総理は明確におっしゃいます。理由は書いていないんですよ。

 だから、もし少子化対策に社会保険料を使えるというんだったら、(産業政策も社会保障の枠内だとして)熊本の半導体工場にだって使えますよ。それぐらい、受益と負担の関係、受益が本当にあるのかということは分からないと私は思うわけです。

 

○(令和6年4月5日)緊急声明 「子育て支援金」制度の撤回を求める(制度・規制改革学会)

 政府は、少子化対策の財源として「子育て支援金」の新設を提案し、今国会に関連法案を提出した。健康保険料に上乗せして国民と産業界から徴収するとの案だが、根本的な欠陥がある

▽健康保険から取ることは根本的に間違い

・そもそも健康保険は、疾病のリスクに備える社会保険である。少子化対策への流用は、その本来の目的から外れる。

・何ら合理的理由がないにもかかわらず、こうした提案がなされるのは、「取りやすいところから取る」ということにほかならない。

・少子化対策は医療保険にとっての受益であるというのはもはや屁理屈である。これを認めれば、観光振興も環境対策も健康にプラスの効果を与え、医療保険の受益となるなどもはや何でもありとなる。将来の各種施策の財源確保にも禍根を残す大失策になりかねない

▽負担は生じる

・政府は「実質的な追加負担は生じない」と主張するが、この政策で保険料負担が増える以上、詭弁である

・上乗せ分は世代一律ではなく、現役世代に偏って負担が増す。高齢世代の負担がわずかであることは不公平であり、かつ、子どもを産み育てる世代の支援という少子化対策と逆行する。

 

○(令和6年4月9日)第213回国会 衆議院 地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会
▽参考人
 本当は子ども・子育て支援金というのは税ですよ、税だけれども、社会保険料だと言い繕う、そして、家計と企業に負担が生じるけれども、実質的な負担はないと言う全てが詭弁になってくるわけです。

 

○(令和6年4月11日)第213回国会 衆議院 地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会厚生労働委員会連合審査会
▽委員
 社会保険制度の持続可能性を高めるためとか、子育て世帯を支えることがひいては高齢者を含む社会全体の利益になるなんて言い出したら、それこそ何でもありですよ。これでは風が吹けばおけ屋がもうかると同じです。
 例えば、住宅政策だって、防衛政策だって、何でも子育て支援にひっかければ、ひいては社会全体のためになるんだ、だから保険料で出してもいいんだ、こういうことになっちゃうんじゃないですか。大臣、いかがですか。
▽国務大臣

 現行の医療保険制度におきましては、保険料が充てられている費用として、子育てを終えた方は支給の対象とならない出産育児一時金や保険給付に該当しない保健事業があるほか、後期高齢者支援金や出産育児支援金はそれぞれ、それによる直接的な給付のない現役世代、後期高齢者の保険料を充ててございますし、また、介護納付金は、社会連帯等の観点から、医療保険とは異なる制度への拠出に充てているところでありまして、給付と負担の関係は様々、今、現時点でも様々あります。
 平成十八年の最高裁判決におきましては、保険料が出産育児一時金や後期高齢者支援金の前身である老人保健拠出金にも充てられていた中で、国民健康保険の保険料全体について反対給付性があるとして、憲法第八十四条の直接的な適用はない、つまり、税ではないと判示されているものと承知をしてございます。
 したがいまして、保険料の反対給付性につきましては、健康保険上の保険給付や各事業等との個別の一対一対応で判断されるものではなく、全体として判断されるものでございます。
▽委員

 さっきも言いましたけれども、ひいては社会全体の利益になるなんて言ったら、何でもありになっちゃうんですよ。
 

○(令和6年4月16日)第213回国会 衆議院 地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会

▽政府参考人

 子育てに対して社会保険の活用をするということはこれまでしておりませんでした。したがって、今回は新しい提案でございます。

 

○(令和6年6月5日)「支援金制度」 子ども・子育て支援法などの改正法 成立(NHK)
 子ども・子育て支援法などの改正法が、参議院本会議で賛成多数で可決・成立しました。

 

 

 以上です。