母乳とアルコール
授乳中のお母さんが摂取したアルコールがどのような影響を及ぼすか、についての解説を、とリクエストしてくださった方が何人もいらっしゃいますので、今回は「母乳とアルコールについて」です。
米国小児科学会は、アルコールは(カフェインと同様に)母乳育児が可能な物質として分類しています。だったらアルコールは全面的にOK、という訳ではありません。
お母さんがアルコールを摂取した場合の影響として、1日1g/kg(体重)以上のアルコール摂取で母乳の射乳反射(乳首を吸うと反射的に母乳が出ること)が阻害されることが示されています。
(5%アルコール濃度のビールでは、100g中5gのアルコールを含有。体重が50kgの人だと、1日にこのビールを500ml飲むと1g/kgに相当する。20%濃度の焼酎なら25ml相当になる。)
また、アルコール摂取は、赤ちゃんが乳首を吸う刺激によって起こるプロラクチン(乳汁分泌刺激ホルモン)の分泌量を低下させ、母乳分泌量が減少し、その結果赤ちゃんの成長が抑制されたという報告もあります。
赤ちゃんに対する影響としては、飲酒後1時間以内に母体血中の90~95%の濃度でアルコールが母乳中に検出され、母乳を通じてお母さんが飲酒した量の2%くらいが赤ちゃんに移行します。
(お母さんがビール500ml缶を1本飲むと、赤ちゃんは10ml飲んだことになります)
動物実験のデーターですが、1日当たりのアルコール摂取量が同じであっても、短時間に大量摂取し血中濃度の最高値が高いほど(早く飲むとアルコール濃度はより高くなる)、児の脳重量増加に抑制がみられ、飲酒のパターンの違いによって、児への影響が変わることが示唆されています。
また母親の過剰な飲酒による子どもの脳重量増加抑制や、母親の大量飲酒によって赤ちゃんにアルコールの中毒症状が見られたという報告や、子どもの肥満を引き起こしたという報告もあります。
以上のことから、お母さんがアルコールを飲めば乳汁から赤ちゃんにアルコールを与えることになると考えられます。
従って、母乳を与えている期間はアルコール摂取はできるだけ控えるべきだと考えます。
どうしてもという場合には、授乳後に適量摂取にとどめなければなりません。具体的な量としては、1日にビールはコップ1杯、ワインは小さなグラスに1杯くらいにしておきましょう。しかも、一気に飲まないで、ゆっくり飲むことが肝要です。