東京国立博物館で「特集陳列・運慶とその周辺の仏像」を観た! | とんとん・にっき

東京国立博物館で「特集陳列・運慶とその周辺の仏像」を観た!

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東京国立博物館で「特集陳列・運慶とその周辺の仏像」を観てきました。といっても、まったくの偶然、「空海と密教美術」展を観た帰り道、たまたま通った本館14室で開催されていたのを見つけた、というわけです。なにしろ「運慶」といえば、東大寺南大門がよく知られていますが、運慶が直接つくったとされる仏像は、僅かに10数点だと言われています。しかし、運慶が率いた「慶派」は、鎌倉時代に写実的で迫力のある作風を創造し、造仏界をリードしたとされています。


仏像は、観るのが好きで、できるだけ観るようにしています。最近の展覧会では、「東大寺大仏 天平の至宝」展や、「奈良の古寺と仏像」展が、仏像が多く出ていました。 「白洲正子 神と仏、自然への祈り」展にも、少なからず仏像が出ていました。今年の2月には、神奈川県立金沢文庫で「運慶―中世密教と鎌倉幕府―」展を観てきました。運慶作と言われる10数点のうち、なんと7点も出されていました。


今回も出されていますが、宗教法人真如苑蔵の「大日如来坐像(重要文化財)」、 もと個人蔵で、2008年3月にクリスティーズ社のオークションに出品され、真如苑が三越に依頼して1,280万ドル(約12億5千万円)で入手したものです。現在は東京国立博物館に寄託されています。


今回の特徴は、神奈川・曹源寺と東京国立博物館の「十二神将立像」の比較できることです。チラシには次のようにあります。後者の方が繊細、華麗ですが、力強さ、動きの表現に注目すると相通ずるものです。曹源寺の子神、当館の申神の滑稽味のある表現が、運慶の孫康円の四天王南方天眷属像に受け継がれているのも見逃せません。


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康円作「四天王眷属立像」木造・彩色・玉眼 

鎌倉時代・文永4年(1267)

四天王の一体ずつに従う下級の天部像。彫刻の造像例は珍しい。東京国立博物館蔵の2躯は東方天(持国天)と南方天(増長天)の分。各像の当初の台座裏に銘があり、一具の他の2躯分から文永4年に某寺「真言堂」に安置されたことがわかる。

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「阿弥陀如来座像」木造、漆箔、玉眼

鎌倉時代・12~13世紀 静岡・願生寺

静岡県裾野市の時宗願生寺に伝来した、来迎印を結ぶ阿弥陀如来像。たっぷりした肉付き、上げ底状に像底を刳り残す肉刳りの技法などが運慶の作品に通ずる。鎌倉時代初頭に東国で活躍した運慶周辺の仏師の作とみられ、有力な武士の発願にかかるものだろう。

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「十二神将立像」木造、彩色、玉眼

鎌倉時代・12~13世紀 神奈川・曹源寺

神奈川県 横須賀市の曹源寺に伝来した像。鎌倉初期の運慶派の清新な作風をしめす。一具中の戌神像内にある鎌倉末の 修理銘中に「けんきうのころのほとけなり(建久の頃の仏なり)」の文言があって、一具が建久年(1190~99)に製作されたことを暗示する。




「十二神将立像」木造、彩色、截金、玉眼

鎌倉時代・13世紀 伝浄瑠璃寺伝来

もと京都府加茂町の浄瑠璃寺にあったと伝えられる十二神将像。現実感にとんだ表情や軽快な運動感に鎌倉時代彫刻の特色が顕著であるが、同時に洗練された趣もみえる。13世紀初頭にさかのぼる、運慶系統の仏師の作と考えられる。いずれもヒノキ材寄木造り。




運慶とその周辺の仏像
本館 14室 2011年7月12日(火) ~ 2011年10月2日(日)

ここで展示する2体の大日如来坐像は、作風、構造、像内に納入された品々(X線撮影によってわかります)の種類と納入方法などに共通するところが多く、しかも大変優れた出来ばえを示すものであるため、鎌倉時代初頭の巨匠、仏師運慶の作と推測されています。光得寺像の台座(獅子4頭を含む)、光背、厨子とその内部に付された三十七体の雲に乗る小さな仏の群像も同時期のものです。真如苑の像はそれらを失っていますが、同様の荘厳(しょうごん)がされていたのでしょう。両像ともに小さな像ですが、正面、側面、背面のどの角度から見ても頭髪、姿勢、からだの肉付き、衣の襞の写実的な表現がみごとです。

運慶が率いた慶派(仏師集団のひとつ。名前に「慶」の字のつく仏師が多いので慶派と呼ぶ)は、鎌倉時代に写実的で迫力のある作風を創造し、造仏界をリードしました。神奈川・曹源寺と当館の十二神将像は後者の方が繊細、華麗ですが、力強さ、動きの表現に注目すると相通ずるものです。曹源寺の子神、当館の申神の滑稽味のある表現が、運慶の孫康円の四天王南方天眷属像に受け継がれているのも見逃せません。


「東京国立博物館」ホームページ

「運慶」ウィキペディア


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とんとん・にっき-butuzou 「日本の仏像 飛鳥・白鳳・天平の祈りと美」

著者:長岡龍作

中公新書1988

2009年3月25日発行

発行所:中央公論新社