重要です。
これはもう結論に近い。もう自死と抗うつ剤の関連性の論争は必要ない。
参考文献
日精協誌、第31巻・第4号2012年4月号
『大うつ病の薬物療法のエビデンスアップデート:無効、増量、自殺性』
京都大学大学院 医学研究科健康増進・行動学分野教授 古川壽亮
ここに示された事実を列挙してみる。
FDAで最近認可された抗うつ剤について、FDAに登録された全ての臨床試験データを入手したメタアナリシスの結果。
・74本のプラセボ対照無作為割り付け比較試験(RCT)のうち24本がプラセボと有意差が示せなかった。有意差を示せたポジティブな研究は38本。
・その有意差のない24本の内、論文化されているのはわずか3本。ポジティブな38本は37本が論文化されている。
・この数字を別の見方をすると、通常プラセボで2か月後の反応率(重症度が半分になる)が半分になる率、寛解率は、それぞれ40%、20%程度と考えられるが、抗うつ剤の使用でそれが52%、30%に増えるという意味に置き換えられる。
・抗うつ剤の増量は、効果は若干増加するが、副作用(脱落率)はそれにまして増加する。
・年齢別自殺リスクの増加は40歳を境にして、40歳以下は増加、40歳以上は減少する。
これは以前示した年代別自殺率増減のグラフとピッタリ符合します。
・児童青年における抗うつ剤のベネフィット
大うつ病 児童:効果なし 青年:8
強迫性障害(OCD) 児童:5 青年:6
不安障害(OCD以外) 児童:4 青年:3
*数字はNNT、プラセボに対して効果が得られる症例数、つまり大うつ病で効果がでるのは8人に1人ということ。
・自殺性は、抗うつ剤投与で、60人から100人に1人が希死念慮、自殺準備、自殺企図が現れる。
この論文の著者は、次のように解説している。
児童青年における自殺性のNNHはうつ病でも不安障害でも60~100程度、つまり抗うつ剤を投与すれば、投与しなければ見られなかった希死念慮、自殺準備行為あるいは自殺企図が60人~100人に1人、余分に生じると言われているので、このリスクと上記のベネフィットを天秤にかけなさい、それも患者ごとに、と添付文書は説いているのである。
少なくとも12歳以下の鬱病に対してベネフィットがリスクを上回る場合はかなり珍しいと考えられるであろう。大人に効くから子供にも効くだろう。あるいは、こどもは別なので大人に効いても子供には効かないだろう。あるいは、子供で自殺性が増えるから大人でも増えるだろう、という推論は全て裏切られた。
皆さん、これを読んでどう思いますか?
現時点での、最高のエビデンスから導かれた結果です。
これ以上のエビデンスはこの世に存在しません。
もう一度重要な事実を整理します。
これは現時点でのほぼ結論です。
・子供のうつに抗うつ剤を使うベネフィットは無い。
・抗うつ剤は、うつで8人に1人、強迫性障害、不安は3~6人に1人にしか効かない。
・抗うつ剤は60~100人に1人に自殺性リスクを高める。
・若年層には、2倍から3倍の自殺性リスクがある。
これを別の表現に変えると、
抗うつ剤は、若年層のうつには8人中7人は効果が無く、副作用のみが出現する。
抗うつ剤を投与された若年層の20人~50人に1人は自殺性リスクにさらされる。
さらに言い換えれば、
若年層で、うつと診断された8人中7人は、何の効果もないにも関わらず、20人~50人に1人は自殺性リスクにさらされるという事である。
30万人の児童/青年が抗うつ剤を投与されているとすると6千人~1.5万人が自殺リスクにさらされていることになる。
さらにこれは製薬会社による治験データであり、バイアスの存在は否定できない。
これはほぼ単剤でのテスト結果であり、意味不明な抗精神薬病薬との併用や、多剤大量処方によりさらにリスクは増加している。
抗うつ剤と自死の関連性は、正式なデータでもこれほど明確なのです。
FDAはポジティブな研究が2本あれば原則としてその薬を認可する。日本のPMDAは、ポジティブな研究が1本でも認可する。
例えば、ジプレキサの双極性障害のうつ適用は、うつ症状の睡眠の増加、食欲の増加の有効性だけで認可されている。元気が出るとか、気分が上がるとかという効果はない。
ジプレキサは、うつに効くらしい。
その単なる噂レベル、ラベルのうつに効くという効能書きだけ見て、うつにジプレキサを処方する馬鹿が山のように存在する。
また、この論文の筆者は、次の様に述べている。
もちろん、ネガティブな研究が出版されていない、だから実はTurnerの研究が出るまで(2008年)世界中の誰も抗うつ剤の本当の効果を知らなかったという非難は正しい。そしてこの非難は、現在、大うつ病に対する抗うつ剤以外の、精神医学のみならず身体医学を含めた全ての医学的介入について当てはまる非難であることは、医学・医療を一生の生業として選んだ人間にとって、悲しいという形容を超えた実態であろう。
パキシルの医薬品添付文書から、若年層への投与禁忌を外すのは、児童精神科医達によって推進され、家族会などが後押しした。その方々はこうした事実を理解して行ったのであろうか?そうだとしたら、これはもう犯罪である。
近く、その児童精神科医の権威のデタラメな処方を解説したい。
薬には、罪はない。
抗うつ剤は、これ以上でもこれ以下の存在でもない。
眠れないのは鬱の初期症状だからとりあえずこれ飲んどいてなどとこんなものを処方されてはたまらない。
抗うつ剤を処方する医師に、8人に1人を見分ける能力でもあれば別だが。
この研究が示すベネフィットとリスクの兼ね合いは、我々国民が植えつけられた抗うつ剤、いやうつ病治療に対する期待とはあまりにもかけ離れたものである。
では、不幸にも自殺の副作用で亡くなった方にはどう詫びるのか?
いつまで、関係ないとしらを切るのか?
これ以上の悪あがきは、さらに罪を重ねるだけである。
それとも、もう裁きは閻魔様に任せてあるとでもいうのだろうか。
これはもう結論に近い。もう自死と抗うつ剤の関連性の論争は必要ない。
参考文献
日精協誌、第31巻・第4号2012年4月号
『大うつ病の薬物療法のエビデンスアップデート:無効、増量、自殺性』
京都大学大学院 医学研究科健康増進・行動学分野教授 古川壽亮
ここに示された事実を列挙してみる。
FDAで最近認可された抗うつ剤について、FDAに登録された全ての臨床試験データを入手したメタアナリシスの結果。
・74本のプラセボ対照無作為割り付け比較試験(RCT)のうち24本がプラセボと有意差が示せなかった。有意差を示せたポジティブな研究は38本。
・その有意差のない24本の内、論文化されているのはわずか3本。ポジティブな38本は37本が論文化されている。
・この数字を別の見方をすると、通常プラセボで2か月後の反応率(重症度が半分になる)が半分になる率、寛解率は、それぞれ40%、20%程度と考えられるが、抗うつ剤の使用でそれが52%、30%に増えるという意味に置き換えられる。
・抗うつ剤の増量は、効果は若干増加するが、副作用(脱落率)はそれにまして増加する。
・年齢別自殺リスクの増加は40歳を境にして、40歳以下は増加、40歳以上は減少する。
これは以前示した年代別自殺率増減のグラフとピッタリ符合します。
・児童青年における抗うつ剤のベネフィット
大うつ病 児童:効果なし 青年:8
強迫性障害(OCD) 児童:5 青年:6
不安障害(OCD以外) 児童:4 青年:3
*数字はNNT、プラセボに対して効果が得られる症例数、つまり大うつ病で効果がでるのは8人に1人ということ。
・自殺性は、抗うつ剤投与で、60人から100人に1人が希死念慮、自殺準備、自殺企図が現れる。
この論文の著者は、次のように解説している。
児童青年における自殺性のNNHはうつ病でも不安障害でも60~100程度、つまり抗うつ剤を投与すれば、投与しなければ見られなかった希死念慮、自殺準備行為あるいは自殺企図が60人~100人に1人、余分に生じると言われているので、このリスクと上記のベネフィットを天秤にかけなさい、それも患者ごとに、と添付文書は説いているのである。
少なくとも12歳以下の鬱病に対してベネフィットがリスクを上回る場合はかなり珍しいと考えられるであろう。大人に効くから子供にも効くだろう。あるいは、こどもは別なので大人に効いても子供には効かないだろう。あるいは、子供で自殺性が増えるから大人でも増えるだろう、という推論は全て裏切られた。
皆さん、これを読んでどう思いますか?
現時点での、最高のエビデンスから導かれた結果です。
これ以上のエビデンスはこの世に存在しません。
もう一度重要な事実を整理します。
これは現時点でのほぼ結論です。
・子供のうつに抗うつ剤を使うベネフィットは無い。
・抗うつ剤は、うつで8人に1人、強迫性障害、不安は3~6人に1人にしか効かない。
・抗うつ剤は60~100人に1人に自殺性リスクを高める。
・若年層には、2倍から3倍の自殺性リスクがある。
これを別の表現に変えると、
抗うつ剤は、若年層のうつには8人中7人は効果が無く、副作用のみが出現する。
抗うつ剤を投与された若年層の20人~50人に1人は自殺性リスクにさらされる。
さらに言い換えれば、
若年層で、うつと診断された8人中7人は、何の効果もないにも関わらず、20人~50人に1人は自殺性リスクにさらされるという事である。
30万人の児童/青年が抗うつ剤を投与されているとすると6千人~1.5万人が自殺リスクにさらされていることになる。
さらにこれは製薬会社による治験データであり、バイアスの存在は否定できない。
これはほぼ単剤でのテスト結果であり、意味不明な抗精神薬病薬との併用や、多剤大量処方によりさらにリスクは増加している。
抗うつ剤と自死の関連性は、正式なデータでもこれほど明確なのです。
FDAはポジティブな研究が2本あれば原則としてその薬を認可する。日本のPMDAは、ポジティブな研究が1本でも認可する。
例えば、ジプレキサの双極性障害のうつ適用は、うつ症状の睡眠の増加、食欲の増加の有効性だけで認可されている。元気が出るとか、気分が上がるとかという効果はない。
ジプレキサは、うつに効くらしい。
その単なる噂レベル、ラベルのうつに効くという効能書きだけ見て、うつにジプレキサを処方する馬鹿が山のように存在する。
また、この論文の筆者は、次の様に述べている。
もちろん、ネガティブな研究が出版されていない、だから実はTurnerの研究が出るまで(2008年)世界中の誰も抗うつ剤の本当の効果を知らなかったという非難は正しい。そしてこの非難は、現在、大うつ病に対する抗うつ剤以外の、精神医学のみならず身体医学を含めた全ての医学的介入について当てはまる非難であることは、医学・医療を一生の生業として選んだ人間にとって、悲しいという形容を超えた実態であろう。
パキシルの医薬品添付文書から、若年層への投与禁忌を外すのは、児童精神科医達によって推進され、家族会などが後押しした。その方々はこうした事実を理解して行ったのであろうか?そうだとしたら、これはもう犯罪である。
近く、その児童精神科医の権威のデタラメな処方を解説したい。
薬には、罪はない。
抗うつ剤は、これ以上でもこれ以下の存在でもない。
眠れないのは鬱の初期症状だからとりあえずこれ飲んどいてなどとこんなものを処方されてはたまらない。
抗うつ剤を処方する医師に、8人に1人を見分ける能力でもあれば別だが。
この研究が示すベネフィットとリスクの兼ね合いは、我々国民が植えつけられた抗うつ剤、いやうつ病治療に対する期待とはあまりにもかけ離れたものである。
では、不幸にも自殺の副作用で亡くなった方にはどう詫びるのか?
いつまで、関係ないとしらを切るのか?
これ以上の悪あがきは、さらに罪を重ねるだけである。
それとも、もう裁きは閻魔様に任せてあるとでもいうのだろうか。