2015年7月15日、集団的自衛権を認める安保法案が衆院の委員会で可決されました。さらに翌16日には衆院本会議で可決され、法案は参議院へ送られました。
この歴史的な分岐点にある日本社会において、非常に印象的なのは、賛成派・反対派の間での徹底的な相互不理解です。互いに相手の見えている風景・状況・心情を、考慮しようとせず、頭から対話を拒んでいるように感じます。あるいは、「自分は拒んではいないが、相手側が拒絶している」と思っているようです。
もっとも、「互いに自分が絶対に正しいと信じており、相手は間違えていると信じている」のですから、これは一種の宗教戦争のようなものです。つまり、「互いに相手の方が悪い宗教にはまっていると考えている」わけで、これでは対話になるはずがありません。
では、いったいどちらの側が、真にカルト宗教的なのでしょうか?
以下の賛成派・反対派の白熱する議論を読み解く中で、どちらの側の人々が歪んでいるのか、凝り固まっているのか、偏向しているのか、反知性的(*)なのかを考えて見て欲しいと思います。では、始めましょう。

*反知性的➡安倍政権を批判する用語として、「反知性主義」という言葉が使用されています。もともとは、「硬直した既存の知的権威に対する反逆」という意味で、肯定的に使用されていた言葉です。それが、いつの頃からか「知性そのものを否定する愚かな了見」というマイナスの意味で用いられるようになりました。そして、最終的には「国民を無知で無教養な状態においておくことで、権力者・権威者が国民を操りやすく従わせやすくする策略」という意味で用いられるようになったのです。
「安倍政権の特徴のひとつは、反知性主義である」という場合は、この最後の意味で用いられています。ということは、安保法案反対派は、「賛成派は、安倍に操られている野卑で無知で無教養な愚民の衆である」と考えているわけです。この彼らの思い込みが果たして本当に正しいのか、ということについても、ぜひ読みながら考えてみてください。



反対派
日本を守るのには個別的自衛権さえあれば十分なのに、敢えて唐突に集団的自衛権を認めるという。しかも、憲法改正の正規の手続きも踏まずに、内閣が勝手にこれを行使する法案を提出し、国会が決議するというのは、憲法9条をないがしろにする、政治家としてあるまじき行為だ。平和を愛する国民の一人として、断じて許せない。
ほとんどの憲法学者が、今回の法案を憲法違反と断じている中で、こうした安易な憲法解釈の変更をするのは、憲法の「法的安定性」そのものを揺るがせる亡国の行為でもある。さらに、この法案が成立すれば、アメリカのおこす戦争に、日本はすすんで参加するようになるだろう。恐ろしいことだ。
70年間平和に生きてきた私たちを、再び戦争へと引きずり込もうとするこの〝戦争法案〟を、何としても廃案にしなければならない。私たち国民の多くは、安倍首相と違って、この日本を、戦争のできる〝普通の国〟などにしたくない。この悪魔の法案を撤回させるため、今こそ、国民の力を結集する必要がある。さもないと、安倍は日本に戦争をもたらすだろう。

賛成派
ちょっと待って。世界の警察という意識の薄れている今のアメリカが、わざわざ他国に対して本格的な侵略戦争を起こすとは、とても思えないんだけど。そんなことは、アメリカ国民も望んでいないだろうに。むしろ、アメリカは、アジアの平和維持のために犠牲を払いたくないと後ずさりしているんだよ。
そもそも、集団的自衛権というものは、戦争を起こすためではなくて、この国の安全を脅かす脅威に対抗するため、あくまでも自衛のためにあるんだ。だから、日本を除く世界中の国がこの権利を自国に認めている。
勢力圏拡大を続ける中国、プーチンのロシア、不安定な北朝鮮、反日が国是の韓国に囲まれた日本が、単独での自国防衛を図るのは難しい。だから、アメリカを同盟国として引き寄せておくために、日本も相応の義務を負おうということだ。事態は切迫している。この際、法的安定性は揺るがせるとしても、この法案の早期可決は必要なことだよ。ほぼ不可能な両院で総議員の3/2以上の可決による憲法改正の発議の発動を待っている余裕はない。それに、解釈改憲がいけないと言うなら、そもそも自衛隊の存在を許し、個別的自衛権を認めた時点ですでに解釈改憲が行われていたのだ。

反対派
いつの時代も、権力者は「自衛のため、自衛のため」と言って、侵略戦争を始める。太平洋戦争も、ベトナム戦争も、イラク戦争も、みんなそうだ。アメリカ政府も日本政府も、この点に関しては、まったく信用できない。
これまでの70年間、日本が戦争に巻き込まれずにすんだのは、ひとえに『憲法9条という重石があったから』だ。その9条を形骸化してしまったら、もう後へは戻れない。いつか来た道だ。個別的自衛権そのものも憲法違反の疑いはあるが、だからと言って、なし崩し的に集団的自衛権まで認めてしまって良いはずはない。
しかも、もし本当に9条を変えたいのであれば、衆参両院でそれぞれ総議員の3/2以上の賛成を得て、国民投票にかければよい。憲法に定まっている正式な手続きを踏めばよいのだ。それを、正式な法的手続きを踏んでいる余裕がないなどと言って、国の最高法規である憲法を完全に無視して、むやみに戦争法案成立に突き進もうとしているのでは話にならない。これはもう、ヒトラーと同じ、軍事独裁国家への道ではないか。

賛成派
どうしてそんな話になるんだ。今の日本のどこに、軍事独裁国家へ向う兆しが見えるというのか。民主的選挙の存在しない北朝鮮や中国じゃないんだ。安倍政権は、きちんと国民の信任を得ている。もしも、本当に国民が安倍政権の行く末を恐れているなら、選挙で過半数の支持を得ることなどできないだろう。みんな、共産党に入れるのじゃないか。
それに、「9条があったから戦争に巻き込まれなかった」というのは、本当だろうか。それは、「日本が常に攻める側に立つ」という前提での考え方だ。日本人はそんなに好戦的だろうか。
むしろ、「日本がなぜ70年間攻められずにすんだか」を考えるべきではないか。『日本が攻められなかったのは、世界最強国アメリカとの同盟があったからだ。その同盟関係を強化したい』と言っているだけなのだが。
それとも、日米同盟など、ない方がいいというのか。自衛隊も本当はいらないというのか。だとしたら、我々の間の見解の相違は、あまりに大きすぎる。

反対派
現政権の右傾化は、本当に甚だしいものがある。実際、安倍首相の支持者や側近には、百田氏のように、大日本帝国に郷愁の念を抱く軍国主義者たちが多い。さらに安倍支持派の右翼団体は、ナチスに対する親和性も高い。つまり、安倍政権自体が、ナチス・ドイツのような軍事独裁国家を目指していく可能性もあるということだ。本当は私たちの国に軍隊などまったく必要ないんだ。
それから、日米同盟に関して言えば、『米軍基地は絶対にない方がいいし、日米安保条約もいずれはなくなった方がいい』に決まっている。安倍政権は、「日米安保体制を強化することが日本のためだ」と言いたいようだが、むしろ、極東にいらぬ緊張を生み出し、紛争の危険性を増すだけだ。日本の軍事的強化を歓迎する近隣諸国などない。アメリカ一辺倒の外交では、かえって日本は孤立するだろう。
繰り返すが、今回の法案について、ほとんどの憲法学者が違憲と断じている。日本は憲法9条を遵守する平和国家だから、世界に尊敬されてきた。今回の安保法案の可決は、この戦後70年の平和国家としての歩みの成果を、丸ごとドブに投げ捨てるような愚行だ。なんとしても阻止しなければ。
この際、朝日新聞の冨永編集委員が世界に向けて、安倍=ナチスと広めたことは、〝戦争〟内閣阻止の手段として許されるべきだろう。

賛成派
大新聞の編集委員をしている新聞記者が、自国の首相の名誉毀損にあたるデマを世界に広めてどうするんだ。何をもって許されるべきと言っているのか、わからない。
根本的に、世界の現実がわかっていないようだ。日本は、アメリカの核の守りによって、周囲の核武装国家(中国・ロシア・北朝鮮)を、さしたる脅威と感じずにすんでいる。日米同盟を解消するというなら、自衛隊が核武装するのか。それとも、周辺国に対して、丸腰で向き合い、いざとなったら迷わず白旗を揚げるということか。そうしてチベットやウイグルはどうなった。ウクライナはどうだ。抑止力を持たない国は本当に惨めなものだ。
経済力、歴史、文化、社会の安定、日米同盟、そのすべてがあって、日本は世界から尊敬されている。すべて9条のおかげなどと、短絡的に考えてはいけない。それに、今回の法案を違憲と言っている憲法学者の過半数は、自衛隊自体の存在も違憲としている。そもそも学者というのは、実社会から遊離して、浮世離れしているところがあるんだ。
安倍首相の支持者の多くは、時代錯誤の軍国主義者などではなく、国際政治の現実をみつめようとするリアリストなのだと思う。日本国民は、戦争をもたらす野蛮な軍国主義者を支持するような馬鹿ではない。一方で、愛国心と国防意識の欠如が国を滅ぼすというのも、歴史の真実であり、リアルな現実なのだ。

反対派
「核の傘」とか、「安保タダ乗り論」とか、すべてアメリカにとって都合のいい勝手な論理にすぎない。日本は、これまで、十分過ぎるだけの代価を払ってきた。思いやり予算も、基地の提供も、地位協定への忍耐もそうだ。決して〝タダ乗り〟はしていない。
それに、アメリカは、日本を利用して、中国に圧力をかけようとしているようにも思える。下手をすると、日本が対中代理戦争を戦う羽目に陥るかもしれない。台湾海峡あたり舞台に、日中紛争勃発の可能性は大いにある。このままでは、非常に危ない。
ともかく、平和憲法をないがしろにして、「軍事力を強化することで、平和を維持しよう」という政府の考えが、根本的に間違っている。日本の軍備強化は、東アジアに不毛な軍拡競争を招くだけだ。軍事力は、抑止力などにはならないのだ。
アメリカとの悪い絆(すなわちアメリカへの軍事的同化の方向性)は、むしろ、今のうちに断ち切ってしまった方がいい。そして、武力による威嚇抜きで、友好的な話し合いの姿勢で、近隣平和外交に心を砕くべきだ。

賛成派
近隣平和外交というが、北朝鮮はもちろんだが、中国の論理も、韓国の論理も、アメリカ以上に、自分本位で身勝手で都合のいいものだ。こちらが到底納得できない無理な論理で、ためらわずゴリ押ししてくる。領土問題や歴史解釈がいい例で、穏便な話し合いですむはずがない。「千年でも万年でも許さない」と言うのだから、状況が許せば、彼らはためらわず実力行使に踏み切るだろう。つまり、日本に報復するだろう。彼らは、自分たちは犠牲者であるという言い訳があるから、日本攻撃にも良心が痛むことはないだろう。それどころか、可能であれば、日本を滅ぼすのが夢だという人もいる。
それなのに、日本はこれまでずっと、中国にも韓国にも、常に妥協的態度をとり、いいように利用されてきた。アメリカからは恩恵もあったが、中国・韓国相手には、むしられるばかりだ。昨今の中国人の爆買いなんて、ほんの一時的なものだよ。長期的な利益には繋がらない。
それに、今やGDPで二倍の規模を持つ中国に、日本一国で対抗するのは、かなり厳しい。やはり、実質的な効力を有した日米同盟を背景に、近隣バランス外交を心がけるべきだ。確固とした軍事力の支えのない外交は、どうにも無力に思える。それでは、相手側から一方的に威嚇されてしまう。9条や非核三原則では、国は守れないということだ。

反対派
千年でも万年でも許してもらえるまで謝罪を続けるのが人の道ではないか。子どもや孫の世代はもう関係ないと言うのは、それこそ都合のいい勝手な論理だ。たとえ非現実的と言われようと、戦後70年掲げ続けてきた憲法の理想を、安易に一政権の都合で下ろすべきではない。そんなことは許されない。大変な横暴だ。
結局のところ、戦争にかりだされる自衛隊員やその家族は、声をあげられない犠牲者ではないか。彼ら隊員の命を犠牲にして、何が平和だ。明らかに増大するリスクについて、正直に国民に伝えないのは、安倍首相は本当に不誠実だと思う。
安保法案の早期可決に反対する世論は、今や圧倒的だ。連日のデモの悲痛な叫びを聞いてほしい。「わたしたちは戦争で殺されたくない!」この声を、国民の利己的な叫びであると聴くのだろうか。それこそ軍国主義だ。安倍首相は、国会議事堂を包囲する国民の声に、真摯に耳を傾けるべきだ。

賛成派
いや、この法案は、一政権の都合や観念的な主義の産物などではなく、中国の台頭とアメリカの影響力低下という激動する世界情勢の中で、日本の安全保障をどうするか、という切実な要請に応えたものだ。
国民の一部が平和ボケしすぎて、日本の置かれている状況をリアルに考えきれず、国防の切実な必要性をまったく感じきれていないからと言って、世界は容赦してはくれない。冷戦終結後の激動の中で、日本の安全保障について、本気で思いを巡らせねばならない時代がきているのだ。
自衛隊の方たちは、むしろ、それを切実に感じていらっしゃるようだ。沖縄県でも、宮古・石垣では、安保法案を歓迎する声が多いのは、やはり、地元にとって、中国船の脅威が切実な問題だからだろう。
それに、中国や韓国が謝罪を要求するのは、日本と和解するためではなく、外交的に優位にことを進める手段であり、同時に日本叩きの道具として利用しているだけだ。反対派の行動は、結果として、そういう彼らを利している。

反対派
賛成派は、盛んに中国を口実にする。しかし、もし中国が攻めてきたとしても、その場合は個別的自衛権で十分に対応できるのだ。にもかかわらず、政府が集団的自衛権にしつこくこだわるのは、利権やら何やらのために、アメリカの戦争に加担したいからだろう。そして、最終的には、自衛隊の海外派兵を既成事実化したいのだ。海外へ軍隊も武器もどんどん出して、戦争で儲けようというのだ。安倍は文字通りの「死の商人」だ。
それに対して、国民の思いは「戦争に行きたくない」「誰も戦場に送りたくない」ということだ。それは、連日のデモ行動や、各社の世論調査の結果が示している。
この法案が成立したら、自衛隊が戦争に関与したり巻き込まれるリスクが、飛躍的に高くなる。しかも、目的があいまいだ。第一、わざわざ戦地に行って、危険な戦闘地域で機雷除去をするという意図がわからない。自衛隊員には、まったく過酷極まる迷惑な話だ。
それに、実際に本格的な戦争になったら、徴兵制だってしかれるかもしれない。自分の意志に反して、無理やりアメリカ兵と共に戦わされるなんて、悪夢のような話だ。どう考えても、この法案が成立したら、日本がより戦争に近づくのは明白だ。間違いなく『戦争法案』なのだ。
そういう悪魔の法案を強行採決で通そうというのだから、世界中から「安倍首相は戦争が好きなんだろう」と言われるのは当然だ。われわれは命を冒涜する安倍政権を絶対に許さない。こんな法案を通したら、日本は本当におしまいだ。そうなる前に、反対運動をさらにすすめて、国民の力で安倍を権力の座から引きずりおろすしかない。

賛成派
口実ではなく、実際に脅威なのだ。中国のGDPが、1980年代までのように、日本の1/10程度だったら、自衛隊単独の個別的自衛権で十分対処できると思うけどね。しかし、現状はそうではない。中国のGDPは、今や日本の2倍以上で、その差はこれからますます広がっていくだろう。早急にアメリカとの共同防衛システムを構築しないと。今となっては、集団的自衛権は、絶対に必要なんだよ。
結果として、確かに自衛隊員のリスクは高くなると思うが、その代わりに、日米同盟はより強固になり、敵の侵攻を思いとどめる抑止力が高まる。つまり、この法案は、隊員にリスクを負ってもらうことで、国全体の安全保障のレベルをあげるものであり、それがすなわち、結果としては戦争を遠ざけることになる。
戦争したくないのは、誰だって当たり前だ。安倍首相だって同じだ。ところが反対派は、「日本が他国を攻撃する」心配は人一倍するが、「日本が他国から攻撃を受ける」心配はまったくしない。日本が何もしなければ、周辺国も日本に対して何もしないと思っている。国際的な政治力学に関する現実感覚があまりに希薄だ。だから、抑止力の必要性を感じない。
不思議なことに、彼らは「日本政府は信頼しない」が、人権派を徹底して弾圧するような「外国政府は信頼する」んだよね。そこが、どうしても納得がいかない。そんなに日本が嫌いなのだろうか。日本政府は邪悪で、他国の政府は邪悪ではないのか。「世界中の国々が持っているもの(集団的自衛権)を日本だけが持ってはならない」という意味がわからない。

反対派
外国政府のことなど、よくわからない。それに、ウクライナとかチベットとか、他国の複雑な事情に関して、専門的知識もなしに安易に判断すべきじゃない。そして、私は一人の日本人として、この日本という国を人並みに大切に思っているし、日本人を信頼していないわけでもない。
敢えて言うなら、国民(自衛隊員)を死地に追いやるような法案を無理やり通そうとする政府(安倍政権)を信頼していないのだ。根本的には、権力というものを信頼しないだけだ。誰でも、権力を握ると、がらりと人が変わってしまう。だからこそ、憲法9条という歯止めが必要なのだ。
その9条をないがしろにする安倍晋三という政治家は、何かに取り憑かれているようにさえ見える。戦後レジームの解体とか何とか、自分だけの妄想の中に生きているキチガイだ。

賛成派
自国の政府すら信頼できないなら、他国の政府はなおさらだろう。安倍首相がキチガイだと言うのなら、習近平や金正恩やパククネはどうなんだ。国の存亡がかかっている状況に関して、外国のことを、よくわからない(けど信頼する?)ではすまされない話だ。そんないい加減な姿勢で、「話し合いでなんとか」などと、甘い展望で外交を進められたらたまったものじゃない。
ここでの議論がかみ合わないように、国内ですら互いに理解し合えないのに、国際間のより深刻な相互不信と利害対立の中で、軍事力の後ろ盾のない話し合いだけで、平和外交など成り立つわけがない。それとも、相手から威嚇されたら、何でも言うことを聞くのか。

反対派
意地を張らないで、相手の言うことを聞いてあげればいい。極論をいえば、竹島なんて、韓国にあげてしまえばいいし、尖閣が欲しいというなら、中国にくれてやりゃいいじゃないか。天然ガスやメタンハイグレードが欲しけりゃいくらでも掘らせばいいし、サンゴや貝が欲しけりゃ好きなだけ取らせばいい。
その程度のことは、たいした問題じゃない。いたずらに相手を挑発して、軍事的緊張をつくりだし、ついには戦争になるよりは、はるかにマシだ。
大切なことは、絶対に戦争にならないようにすることだ。それなのに、安倍首相は着々と中国との戦争の準備をしているようにしか思えない。安保法案の可決は、東アジアに対立と緊張を生み出す。安倍は、まさに、この国を滅ぼそうとしている極悪人だ!

賛成派
なんだって。じゃあ、中国が欲しいと言ったら、東シナ海も沖縄もくれてやるのか。韓国は「対馬を取り戻せ」と言っているが、そっちはどうするんだ。中国・韓国に奴隷になれと言われたら、素直に服従するのか。日本全体が他国の奴隷になっても、本当に戦争するよりはましなのか。草場の陰で、吉田松陰先生(**)が泣いているわ。あなたのように、日本が大嫌いな人に言っても通じないだろうけどね。
単に戦争になるよりももっと悲惨なことが、世の中にはあるんだよ。それは、互角に戦う力がなくて、一方的に踏みにじられることだ。人体実験目的でアメリカに原爆を二発も落とされて、何の報復もできなかった、かつての日本がそうだ。同様に、パレスチナ自治区の住民やチベット・ウイグルの住民の悲惨さ、それにチェチェンやウクライナの人々の無力感や希望のなさも、そこにあるんだ。

**身はたとえ武蔵の野辺に朽ちぬとも、とどめおかまし大和魂➡たとえこの身は関東の野辺に埋められ、朽ち果てるといえども、私の日本を思う心は、いつまでも貴方たちの心の中に留めておいてください/吉田松陰の辞世の句~安政の大獄で処刑される直前に、松下村塾の塾生たち(久坂・桂・高杉ら)に遺したお別れの一句。当時、日本は欧米列強諸国に取り囲まれ、国内は分裂し、いつ植民地(奴隷国)にされてもおかしくない危機的な状況にあった。




さあ、どう感じられたでしょうか。反対派、賛成派のそれぞれの意見について、どこがどう食い違っているのか、少しは鮮明になったでしょうか。どちらの人々も、『戦争にならないようにしたい、平和な日本を守りたい』という気持ちはいっしょのように思えます。ただ、そのために、どうすればいいのか、という方向性が正反対なのです。
反対派は、「平和を守るために、日本に軍隊(核・米軍・自衛軍)はいらない」と考えているけれど、賛成派は、「平和を維持するためには、軍事力の後ろ盾が〝抑止力〟として必要だ」と考えています。ここに根本的な食い違いがあり、そして、それには、双方にもっともな理由があるのです。
まず、反対派は、主に日本が〝アメリカの戦争〟に巻き込まれることを心配していて、世界のどこの国よりもアメリカが恐いと考えています。また、日米両政府を、まったく信頼していない一方で、中国・韓国政府に対しては、「武力を持たない国に攻めてきたりはしないだろう」と、かなり楽観的な信頼を寄せています。さらに、中国・韓国・北朝鮮という近隣東アジア諸国が、安保法案に危惧を抱いていることを「世界が安保法案に反対している!」と表現します。つまり、反対派は、日本政府及びアメリカ政府の動向に深い憂慮を感じており、周辺諸国(特に中韓)に対しては、激しい身びいきがあり、思い入れが強い傾向があります。
それに対して賛成派は、日本が〝中国の侵略〟を受けることを一番に心配していて、アメリカより中国の方がはるかに怖いと思っています。また、安倍政権に対しては、ある程度の信頼をおいていますが、中国政府(習近平政権)に関しては、日本を敵視する極端な覇権主義国家と見ていて、まったく信用していません。〝反日〟韓国については、政府も社会も民衆も、一切信頼しません。さらに、アメリカ・欧州・オセアニア・東南アジア諸国・インドなど、世界の7~8割の国々が安保法案を歓迎していることを、「世界が安保法案に賛成している!」と表現します。つまり、賛成派は、中韓に強い警戒心を抱いていて、日本(及びアメリカ)びいきの傾向があります。
この反対派、賛成派の性向・嗜好・価値観の違いが、両者の議論が延々と平行線をたどる背景にあるのです。ですから「安倍首相は本当に戦争をしたがっているのか?」という論題についても、それぞれの見解は真っ二つに別れます。
賛成派は、ロシア・中国・韓国・北朝鮮など周辺国との戦争をしたがっているか、と問われれば、そんなことは絶対にあり得ないと断言するでしょう。まず、韓国は、最大の反日国とは言え、アメリカを介して、間接的な日本の同盟国ですから、日本から戦争を仕掛けるなどあるはずがありません。また、ロシア・中国・北朝鮮については、それぞれ独自の核戦力を保有する核武装国家です。日本の首相が誰であっても、こうした核保有諸国と戦争したがるということは、絶対にないでしょう。これは、反対派と言えども、およそまともな思考力を有している人であれば、容易に判断できることです。
では、にもかかわらず、反対派の多くが、なぜ「安保法案は戦争法案だ!」「安倍は戦争をしたがっている!」と叫ぶのでしょうか。それは、自衛隊の海外派遣時に、隊員が局地戦や紛争などの戦闘に巻き込まれることを、主として〝戦争〟と考えているためです。そうしたリスクの増大は、当然あるはずで、これについては賛成派も認めなければならないでしょう。
また、反対派は、中国など周辺国との軋轢については、「日本側が軍備を持ちさえしなければ、対立は自然と解消される」と、かなり非現実的なことを、非常に安易に考える傾向があります。つまり「武装するから攻撃される」「武器を捨てれば平和になる」と言うのです。日本が他国を攻撃することは恐れても、日本が攻撃を受けることはまったく心配しません。「平和を愛する諸国民の正義と公正に信頼して軍備を放棄する」という憲法前文の精神ですね。賛成派からすれば、これはまったくナンセンスです。
今回の論争で思うのは、まるで中国の南宋時代の岳飛と秦檜の政治闘争(***)のようだということです。当時、無謀な理想に殉じた岳飛は、現実の政治闘争には敗れましたが、1000年後の世まで愛国者として褒め称えられています。逆に、国を維持するために現実的な正しい政治を行った秦檜の方は、売国奴として非難されており、1000年経っても国中の人たちに憎まれ、彼らの像には唾がはきかけられ続けています。
今の日本で言うと、安保法案反対派の人であれば、村山元首相の方が秦檜(信念を貫いたが非難されている人)で、安倍首相が岳飛(好戦的な誇大妄想狂)だと考えるでしょう。逆に賛成派にとっては、安倍首相が秦檜(現実的・実際的で信念を持った有能な政治家)で村山元首相が岳飛(非現実的な理想主義者で無能な政治家)ということになります。
さて、2015.7.20現在、安保法案は、世論調査でも反対が賛成を大きく上回り、反対派はどんどん勢いづいています。賛成派の声は、ほとんどマスコミでも取り上げられず、安倍政権の支持率も落ちる一方です。文化人、学者など、学識者のほとんどが、反対に回っている印象もあります。さらに、女性の反対の割合が高いとも言われます。
賛成派の勢いが弱いのは、やはり、戦後民主主義の呪縛が強すぎて、人々が自由にものを考えるということが出来ていないせいかもしれません。国防について、リアルに危機意識を持って考えるには、この国の中にいては、どうも実感が伴わないという感じです。安全保障に関しては、これまであまりにも他人(米国)頼みでやってきたので、そのツケが回ってきている気もします。
それにしても、反対派支持一辺倒のマスコミの偏向ぶりは、凄まじいものがあります。自分自身の意見はどうあれ、もう少し中立的な報道を望みたいものですが。

***岳飛と秦檜の政治闘争➡北方遊牧民の遼に華北を奪われ、江南に朝廷を移した南宋の時代、華北奪回を叫ぶ「主戦派」の岳飛は、遼との和平をすすめようとする「和平派」の秦檜によって処刑されました。以来、岳飛は愛国者とされ、秦檜は売国奴とされてきましたが、現代の史家は、当時の遼と南宋の力関係を考えれば、岳飛の主戦論は非現実的で無謀なもので、むしろ、秦檜の和平論が正しかったというのが定説です。いつの時代にも、現実には暴挙であっても、人の心には訴える政策を叫ぶ人(岳飛)がおり、逆に現実には必要な政策であっても、それを実行して人の非難・中傷・誹謗を受ける人(秦檜)がいるものです。






最後に、日本社会の現状について、私的な感想を述べておきます。わたしは『今の日本の様子は、ちょうどローマの台頭に直面した時の、カルタゴのようだ』と感じています。このたとえで、ローマにあたる国は、もちろん中国ですが、この場合、中国がローマに似ているということではありませんよ。あくまでも、日本社会の平和ボケの有様が、当時のカルタゴに似ている(****)ように思えるということです。
やはり、どうしても首をひねらざるを得ないのは、この国の国民の国防意識は、どうなっているのか、ということです。現代日本人は、なぜこれほどまでに、世界の現実に対して無関心でいられるのでしょう。南シナ海や尖閣の事態から考えても、あまりに危機意識が欠如しています。この日本の現状から、わたしは、かつてのカルタゴの末路を連想させられずにはいられません。
「安保法案反対デモの中心となっている人々は、若者も年寄りも、『甘やかされて育った世間知らず』レベルの人たちだ」と言う人がいます(*****)が、本当にその通りだと思います。高度経済成長期以降に、何不自由なくわがままに育ったおぼっちゃま、お嬢さまたちが、どうにも肝心の物事が理解できていないように思えるのです。
例えば、もしも東チモールが憲法9条を掲げていたら、インドネシアの侵攻を防げたでしょうか。また、ビアフラが平和憲法を掲げて独立したなら、ナイジェリア軍の侵攻を食い止められたでしょうか。あるいは、カレン族が〝戦争放棄〟を宣言して独立していたら、ミャンマー軍に殲滅させられずにすんだでしょうか。そんなことはあり得ません。
9条を掲げた国が、戦争に巻き込まれずにすむのだったら、世界中の弱小国はみんな9条を掲げるでしょう。そして、今頃、地球は完全に平和な世界になっていることでしょう。
日本が70年間、他国の侵攻によって平和を脅かされることがなかったのは、9条や非核三原則があったからではなく、主として日米同盟のおかげです。つまり、「世界最強国家の同盟国に、敢えて無謀な侵攻をする国はどこにもない」という単純な理由で、平和が維持されてきたのです。
その日米同盟の強化に、中国・韓国が猛反発するのは、彼らが日本の弱体化を望んでいるからです。「日本が落ちぶれるのを(滅びるのを)見たい」というのが、その動機です。相手を突き落とし破滅させて楽しめる人々が、世の中にどれほどたくさんいるか、それが実感として理解できないというのは、本当に〝世間知らず〟としか言いようがありません。
戦後70年の太平の夢から覚めきれず、国際情勢の急激な変化に対応できず、未だに1960年代の左翼の夢に浸っている闘争の権化たち。その多くは、学生や公務員です。国や親に手厚く保護されながら、国会前でデモに興じ、警官隊ともみあい、路上に寝転んでいる人々。自国の防衛力を引き上げようという法案に、勝手な理屈を振りかざしてヒステリックに反対する人々。真摯に自己を省みる感性もない彼らこそが、反知性主義に冒されているように、わたしには思えてなりません。
同時に、その左翼の扇動する一億総反日無責任自己中カルト化への傾倒を、無批判に手放しで翼賛する(一部?)マスコミの姿は、あまりと言えばあまりに情けないものがあります。どうしても「安保法案賛成派は、無知で無教養な馬鹿」ということにしてしまいたいようです。その際立った偏向報道の姿勢には、残念ながら健全な知性のかけらも感じられません。

****カルタゴ帝国➡地中海貿易を支配していた経済大国カルタゴは、新興のローマに地中海の覇権を賭けて武力闘争をしかけられ、3度のポエニ戦争に敗北して滅亡しました。当初、カルタゴは、ローマよりもはるかに繁栄しており強大でした。けれども、あまりにも裕福で怠惰だったカルタゴ人は、ローマに対抗する気概に欠けていました。長く繁栄を謳歌していたために、自国防衛の危機意識も皆無でした。戦争に負けるたびに、莫大な賠償金をさっさと簡単に払ってしまい、広大な領土も惜しげも無く割譲し、それで事を済ませていました。豊かさの中でスポイルされていたカルタゴ人には、負けて悔しがる闘志もなく、再起をかけて努力する根性もありませんでした。
国のために私財を投じて立ち上がったハンニバル親子は、孤立無援で奮闘しましたが、誰からも顧みられず、なんの援助もないままに、力尽きて倒れました。カルタゴ人は、英雄ハンニバルに頼るばかりで、誰も彼を支えようとはしなかったのです。
こうして、いたずらにチャンスを見過ごし、領土も富も数十年かけて徐々に削り取られ、最後は首都を除いて領土と権益のすべてを失い、完全に丸裸にされて、虫けらのように惨めに踏みつぶされたのです。カルタゴは蹂躙され、壊滅し、その後、再建されることはありませんでした。
国を守るために戦う気概を持たない国(愛国心の乏しい国)は、どれほど裕福で強勢を誇っていても、早晩滅ぼされてしまう。それがカルタゴの遺した教訓です。『歴史に学ばない民族に明日はない』という言葉は、こういう時に使いたいものです。この国もまた、徐々に滅びの方向へと向かいつつあるのかもしれません。

*****「みずきの女子知韓宣言」で翻訳されている韓国のネット論客バンダービルド氏の言葉です。安保法案についての彼の論説から引用しました。2015年7月20日12:00の知韓宣言の記事で、〝【韓国の反応】韓国人「一部の日本人は、平和憲法のおかげで日本が平和だったと勘違いしているようだ。甘やかされて育った世間知らずレベル」〟からの抜粋です。



🌠9月17日、参院委員会で安保法案可決。さらに18日参院本会議で可決。少しホッとしました。
海外の反応は、9:1の割合で、やはり圧倒的に法案成立を歓迎する声が大きいようです。英米政府、豪州政府、ドイツ・イタリア・インド・モンゴル・フィリピン・ベトナム・ミャンマー・マレーシア政府など、欧米とアジアの多くの国が、法案成立を歓迎するコメントを出している一方で、案の定、中国と韓国は「日本の軍国主義化」と猛批判しています。特に韓国政府は「今後、日本を仮想敵国とすることを暗に言及」し、韓国メディアでは「日本共産党頑張れ!」というコメントさえもあるようです。
今回、ともかく国内のメディアでは、反対の声が圧倒的でした。しかし、わたしは、参院本会議の各党の最後の演説をじっくり聴いて、法案に反対する議員たちの発言の軽さといい加減さに呆れはててしまいました。もともと「安倍政権が戦前への回帰を目論んでいる」という誇大妄想に生きる共産党の独善性と無責任さは、今に始まったことではないのでそう驚きはしませんが、仮にも一度は政権をにない、国防の重大さを痛感したはずの民主党が、これほど無責任な態度で〝左翼の妄想〟におもねり、旧社会党並に迷走するとは何としたことでしょう。どうやら二大政党制への道は完全に絶たれましたね。国会前のどこか子どもっぽい危ういデモに安易に迎合した民主党は、次回の選挙で解党的大敗をきっする気がしてなりません。
もし、次の選挙で、自民が議席を減らし、民主党が議席を増やすようであれば、この国は本格的に危ういです。カルタゴの二の舞ですね。そうなった場合、朝日新聞・毎日新聞・共同通信・東京新聞・北海道新聞・県内二紙(タイムス・新報)などの左派マスコミの責任も大きいと思います。
興味深いのは産経の世論調査(19・20日)です。統計の中でも興味を引いたのは、デモ参加者の41%は共産党支持、15%は社民党支持、11%は民主党支持、5%は生活の党支持で、計72%が法案反対政党支持者であり、当然ながら自民・公明・次世代など安保法案賛成政党の支持者は28%に過ぎないということです。共産・社民の支持者だけでデモ参加者の過半数(56%)ですから、やはり、予測されたことではありますが、左翼運動の中心母体である「9条の会」関係者や協賛者が非常に多いということですね。
そして、もう一つ、注目すべきは、「安保法案反対デモに共感しない」という右派の世論が統計の50%にのぼり、「デモに共感する」という左派世論の43%を若干上回ったことです。さて、このフジサンケイ・ネットワークのデータは正しいのか。毎日新聞などは、さっそくこの調査結果をまったく信用できないとこきおろしていますが、調査方法の精度はともかく、よりサンプルを増やして精度の高い調査をした場合、現実にはどうなのか、興味深いのところです。この結果が正しければ、まだ多少は国民の良識が生きていると言えそうです。
それから意外なのは、NHK及び朝日新聞の世論調査で、ともに自民党の支持率が微増していることです。さらに、NHK調査では、民主党・共産党の支持が減少しています。可決前14日の調査ではありますが。
「あなたは安保法案に賛成ですか反対ですか?」という直球ストレートの世論調査について、各社の世論調査の数字は、賛成が31~38%、反対が51~58%とのことです。およそ、5対3の割合で反対が多いということですね。国民の半数が反対で、3人に1人が賛成ということです。

🌠2016.3.29、安保法案が施行されました。相変わらず、賛否両論があり、国民の間での意見の対立があるようです。
ところで最近、アメリカの共和党でダントツの人気を誇る大統領候補トランプ氏が、「日米安全保障条約はアメリカに何の利益もない」「なぜ、アメリカが日本を守らなきゃいけないんだ」「日本は核武装して自力で自国防衛を果たすべきだ」と発言して、拍手喝采を浴びています。もしも、トランプ氏が大統領になったら、アメリカは日米安全保障条約を解消するのでしょうか。そして、日本は核武装するのでしょうか。