2009年度・劇場公開作品の総まとめ:邦画編 | 忍之閻魔帳

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昨年もやった2009年度公開作品の総まとめを今年もやってみる。
今回は邦画。公開順に好印象を持った作品を並べてみた。
別記事で紹介していない作品のみコメントを追加。

2008年度のまとめは以下の通り。

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01月24日公開:「誰も守ってくれない」豪華版通常版
*ある残虐事件を引き起こした「加害者の家族」と、
 加害者の妹を護衛することになった警官の姿を描いた社会派ドラマ。
 マイナスの方向で異常な結束力を見せるネット住民達はやや誇張し過ぎだし、
 人の心に土足で踏み込んでくるマスコミを叩いているのがフジテレビというのは
 どうしても引っかかるが、作品自体はかなり良い。
 佐藤浩市ですら圧倒する志田未来の演技力も見どころだ。
 フジテレビはこの後に「アマルフィ」を製作するなど、
 ドラマの延長線ではないオリジナル作品の製作にも意欲的だったのだが、
 やはり「ROOKIES」(TBS)や「20世紀少年」(日テレ)の
 ヒットに触発されたのか、年末に「のだめカンタービレ 最終楽章」、
 3月からは「ライアーゲーム ザ・ファイナルステージ」を公開。
 さらに7月には、実写邦画としては歴代No.1の興収記録を持っている
 「踊る大捜査線」シリーズの最新作「踊る大捜査線 THE MOVIE3」を投入する。
 数字では他社を圧倒するだろうが、この流れは少し残念でもある。
01月31日公開:「愛のむきだし」
*「自殺サークル」「エクステ」の園子温監督の最新作は、
 和製タランティーノとも言うべき、パワー溢れる作品。
 鬱屈した青春を送りながら歪んだ性を開花させる若き男女を
 西島隆弘(AAA)と満島ひかりが好演。
 4時間近い大作だが、スピード感もしっかりあるので間延びはしない。
 満島ひかりが女優に開眼したターニングポイントとして、後々まで語り種になるはず。


02月07日公開:「ヘブンズ・ドア」
*【紹介記事】実写版「鉄コン」的な仕上がり。映画「ヘブンズドア」
02月14日公開:「少年メリケンサック」Blu-ray版DVD版
*【紹介記事】好きじゃないのにカッコイイ。映画「少年メリケンサック」



03月07日公開:「ヤッターマン」Blu-ray版DVD版
*【紹介記事】大人のエロス満載、ドロンジョ最高。映画「ヤッターマン」
03月07日公開:「ジェネラル・ルージュの凱旋」
*海堂尊のベストセラー小説で映画化もされた
 「チーム・バチスタの栄光」の続編にあたる作品。
 前作とは別物と言って良いほど良作に仕上がっている。
 監督は「アヒルと鴨のコインロッカー」「フィッシュストーリー」の中村義洋。
 最新作「ゴールデンスランバー」の下地はこの作品でほぼ固まっている。
 救急医療の現場をリアルに描きながら、安定感のあるキャスト達が
 「釣りバカ」シリーズのような掛け合いで楽しませてくれる秀作。
03月20日公開:「フィッシュストーリー」
*伊坂幸太郎原作×中村義洋監督の2作目。
 逆鱗という名のパンクバンドが発表した「FISH STORY」という曲が
 長い長い時を超えて、やがて地球滅亡の危機を救ってしまうというトンデモストーリー。
 大海原に流すメッセージ入りのボトルのように
 「誰かに伝わりますように」と思いながらメッセージを放った経験があるなら
 逆鱗のメンバーが呟く「この歌、誰かに届いてんのかよ」に共感するはず。


04月11日公開:「クローズZERO II」Blu-ray版DVD版
*【紹介記事】最凶の続編。映画「クローズZERO II」
04月18日公開:「鴨川ホルモー」
*【紹介記事】闘う阿呆は京大生。映画「鴨川ホルモー」



05月23日公開:「重力ピエロ」
*【紹介記事】原作ファンも納得。映画「重力ピエロ」
05月23日公開:「インスタント沼」
05月30日公開:「ROOKIES 卒業」Blu-ray版DVD版
*【紹介記事】文句なしの完結編。映画「ROOKIES 卒業」



06月06日公開:「映画 ハゲタカ」Blu-ray版DVD版
06月20日公開:「劔岳 点の記」Blu-ray版DVD版
*【紹介記事】映画作りの原点を見た。映画「劔岳 点の記」
06月27日公開:「ディア・ドクター」豪華版DVD版
*【紹介記事】うそとほんと。映画「ディア・ドクター」



08月08日公開:「南極料理人」豪華版通常版
*【紹介記事】男だらけの「かもめ食堂」。映画「南極料理人」
09月26日公開:「空気人形」豪華版通常版
*【紹介記事】是枝裕和監督が描く、大人向け童話。映画「空気人形」



10月10日公開:「ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ」
10月10日公開:「パンドラの匣」
*太宰治の生誕100周年を記念して次々に公開されている
 関連作品の中でも、私が特に印象に残ったのが「パンドラの匣」。
 親友であった相米慎二監督がお亡くなりになってからというもの、
 以前にも増して正統派な日本映画を撮るようになった
 根岸吉太郎監督の「ヴィヨンの妻」も悪くはないのだが、
 「パンドラの匣」の初々しさは「ヴィヨン」を圧倒していたように思う。
 演出も音楽もキャストも皆フレッシュで、太宰作品の中でも
 唯一「陽」の魅力を持っている「パンドラの匣」の世界が上手く描かれていた。
 今月公開の「人間失格」も楽しみ。
10月10日公開:「カイジ 人生逆転ゲーム」Blu-ray版DVD版
*【紹介記事】13000ペリカで。映画「カイジ 人生逆転ゲーム」
10月10日公開:「クヒオ大佐」
*一昨年に続き昨年も大活躍だった堺雅人主演作品。
 実在する結婚詐欺師の話。
 コメディだと勘違いしたのか、世間では「笑えなかった」というコメントと共に
 あまり評価が高くない本作だが、私はかなり好みだったりする。
 この作品は、絶対に気付かれるバレバレの女装をして街頭に立つおじさんのような
 「笑うに笑えない、情けない男」の話であって、ゲラゲラ笑えるはずがないのだ。
 やっていることはいちいち胡散臭いし、しかもカッコ悪い。
 騙されている女性が何故気付かないのか不思議で仕方がない。
 それでも、世の中には似たような事件が山のように転がっている。
 見え透いた批判も、おそらく意図的にやっているのだと思う。
 何しろ監督は「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」の吉田大八だ。

10月24日公開:「僕の初恋をキミに捧ぐ」
10月24日公開:「沈まぬ太陽」

10月31日公開:「風が強く吹いている」Blu-ray版DVD版
*昨年観た邦画の中で、最後に泣けた作品がこれ。
 脚本家として様々な作品を手掛けてきた大森寿美男氏の初監督作品で、
 主演は「僕の彼女はサイボーグ」の小出恵介、「バッテリー」「DIVE!!」の林遣都。
 スポ根モノの多くが、競技そのものよりも
 そこで培われた友情や恋愛に比重を置いているのに対し
 本作は真っ向から「箱根駅伝の魅力」「走ることの楽しさ」を伝えるために
 ストレートボールを観客の胸に投げ込んでくる。
 チームメイトひとりひとりにドラマを持たせ、
 その全てが箱根駅伝のゴールに向かって集約されていく後半の展開は圧巻。
 林遣都の走る姿が本物の選手のように美しく、未だに脳裏に焼き付いている。
 ベタではあるが、「ROOKIES 卒業」のベタとは全く違う、流行に迎合しない感動作。

11月14日公開:「ゼロの焦点」
*【紹介記事】昭和を再現することの難しさ。映画「ゼロの焦点」



さらに10作品に絞り込むとしたら・・・

1位:ディア・ドクター
2位:空気人形
3位:風が強く吹いている
4位:パンドラの匣
5位:愛のむきだし
6位:フィッシュストーリー
7位:ジェネラル・ルージュの凱旋
8位:重力ピエロ
9位:南極料理人
10位:ROOKIES 卒業


「空気人形」や「ROOKIES」に違和感を感じる方も多いかも知れないが、
まぁ、あくまでも私の好みということで。




2009年の邦画界で印象に残った役者をつらつらと挙げてみる。

・松坂慶子「大阪ハムレット」「ホノカアボーイ」
・満島ひかり「愛のむきだし」「クヒオ大佐」「プライド」
・福田麻由子「ヘブンズ・ドア」「マイマイ新子と千年の魔法」
・深田恭子「ヤッターマン」
・堺雅人「ジェネラル・ルージュの凱旋」「南極料理人」「クヒオ大佐」
・高良健吾「フィッシュストーリー 」「南極料理人」「BANDAGE バンデイジ」
・山田孝之「クローズZERO II」「鴨川ホルモー」「MW ムウ」
・岡田将生「重力ピエロ」「ホノカアボーイ」「僕の初恋をキミに捧ぐ」
・浅野忠信「劔岳 点の記」「鈍獣」「ヴィヨンの妻」
・井川遥「ディア・ドクター」
・笑福亭鶴瓶「ディア・ドクター」
・八千草薫「ディア・ドクター」
・きたろう「南極料理人」
・ペ・ドゥナ「空気人形」
・川上未映子「パンドラの匣」
・染谷将太「パンドラの匣」
・仲里依紗「パンドラの匣」
・窪塚洋介「パンドラの匣」
・松雪泰子「余命」「クヒオ大佐」「沈まぬ太陽」
・林遣都「風が強く吹いている」
・小出恵介「ROOKIES 卒業」「風が強く吹いている」
・中谷美紀「ゼロの焦点」

若手女優では、満島ひかり、川上未映子、仲里依紗が素晴らしかった。
「パンドラの匣」の成功は、川上未映子を起用したことが大きい。
ベテランでは、「大阪ハムレット」で肝っ玉母さんを、
「ホノカアボーイ」では食いしん坊な女主人を演じた松坂慶子と、
「ゼロの焦点」で広末涼子の存在感をすっかり消してしまった中谷美紀の怪演で決まり。
ドロンジョを演じた深田恭子も忘れられない。
私的なMVPは、「空気人形」で心を持った人形という難役に挑戦したペ・ドゥナ。

若手俳優では、「フィッシュストーリー」でバンドのボーカル役を好演し、
続く「南極料理人」では下っ端でお調子者の観測隊員を演じた高良健吾が印象に残った。
今年も宮﨑あおいとの共演による「ソラニン」が控えており、さらなる活躍が期待出来る。
次点で「重力ピエロ」の岡田将生、「風が強く吹いている」の林遣都。
岡田の次回作は「嫌われ松子の一生」「パコと魔法の絵本」の中島哲也監督の「告白」、
林の次回作は「今度は愛妻家」も公開中の行定勲監督の「パレード」。
ベテランでは、昨年あたりから憑き物が落ちたように芝居が良くなった
浅野忠信が光っていた。チャラとの離婚が正解だったのかも知れない。
「ゴールデンスランバー」も公開中の堺雅人も引き続き大活躍の1年だったが
「ジェネラル・ルージュの凱旋」以外はさらっと演じたような感じで
「クライマーズ・ハイ」ほどの決定打になる作品は無かったように思う。
私的なMVPは、「ディア・ドクター」の笑福亭鶴瓶。
助演では、「南極料理人」で最年長の隊員を演じていたきたろうと
「パンドラの匣」の窪塚洋介が素晴らしかった。




ついでに去年観た邦画の中で、私的にトホホだった作品も紹介。

01月17日公開:「感染列島」
*【紹介記事】有名女優だけ手加減するスケベウィルス。映画「感染列島」

03月14日公開:「ホノカアボーイ」
*「重力ピエロ」「僕の初恋をキミに捧ぐ」の岡田将生主演。
 「かもめ食堂」以降に量産されているスローライフ推奨ムービーだが、
 女性の視点がすっぽり抜け落ちているためか、
 ハワイを舞台にしていながらどうにも湿度が高い。
 岡田に恋心を抱く倍賞千恵子が、少年隊のヒガシに色目を使う
 森光子のような妖怪に見えてしまうのも、
 倍賞演じる「ビー」というキャラクターに共感していない、
 どちらかというと「良い歳してよくやるよ」な目線を持った
 男達が作ったからではないかと思う。
 だから、密かに若作りをして気付いて欲しそうな目をしてみたり、
 若い女性に焼きもちを妬いたりするビーの姿が全く可愛らしく見えず
 ヒガシの熱愛報道にガックリと力を落とした森光子のように見えてしまうのだ。
 全体的に、女性にウケそうな映画を、女心を理解していない男が作った映画という感じ。
 素材もキャストも良いので、スタッフ総入れ替えで作り直して欲しい。

05月01日公開:「GOEMON」
*【紹介記事】王様(紀里谷和明)は裸だ。映画「GOEMON」

06月06日公開:「ウルトラミラクルラブストーリー」
*【紹介記事】荒削りと斬新を履き違えている。映画「ウルトラミラクルラブストーリー」

07月04日公開:「MW ムウ」
*【紹介記事】原作ファンは時間の無駄。映画「MW ムウ」

09月05日公開:「BALLAD 名もなき恋のうた」
*【紹介記事】「青空侍」とは別物と割り切るべし。映画「BALLAD 名もなき恋のうた」

09月12日公開:「しんぼる」
*製作費の捻出が困難だったのか、「大日本人」よりも
 ずっとミニマムな世界で作られたワンシチュエーション・コメディ。
 やっていることは「ひとりごっつ」などに通じる松本節のコントと
 閉塞された世界で展開する「CUBE」タイプのミステリーだが、
 離れた場所で同時進行している物語と、松本の演じるコント部分が
 最後まで上手く繋がらないまま終わってしまった
 (一応、ストーリー上は上手く繋がったことになっている)のは残念。
 コント部分も、ショートコントを無理矢理引き伸したような作りでテンポが悪く、
 時折クスッとは出来るものの、それだけで1800円徴収する映画になるとは思えない。
 最後のメッセージも驚くほど陳腐で幼稚。
 松本はお笑い芸人としては天才だが、映画監督にはやはり向いてないのでは。

09月12日公開:「プール」
*【紹介記事】惰性で作った3作目。映画「プール」

09月19日公開:「カムイ外伝」
*崔洋一監督が一体何を考えて撮ったのか最後まで良くわからなかった作品。
 松山ケンイチは上手い役者なのだが、
 「ウルトラミラクルラブストーリー」といい、昨年は受難続き。
 作品選びをもう少し慎重にすべき。

10月17日公開:「戦慄迷宮3D THE SHOCK LABYRINTH」
*【紹介記事】こけ脅しでいいじゃないか。映画「戦慄迷宮3D」