王様(紀里谷和明)は裸だ。映画「GOEMON」 | 忍之閻魔帳

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GOEMON
(C)「GOEMON」パートナーズ
2009年10月09日発売■BD:「GOEMON Ultimate BOX」
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2009年10月09日発売■DVD:「GOEMON Ultimate BOX」
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思いきって言わせていただく。

紀里谷和明は裸だ。
誰か服を着せてやれ。

今回は「CASSHERN」の紀里谷和明監督が手掛ける
劇場用作品の第2弾「GOEMON」を紹介。

1582年。
天下統一を目前にした織田信長(中村橋之助)が
明智光秀(紀里谷和明)の謀反により命を落とした。
後を継いだ豊臣秀吉(奥田瑛二)は敵の光秀を討ち、
天下統一を達成、世は平安を取り戻したかに見えたが、
庶民の生活は一向に良くはならず貧民街が広がりつつあった。
そんな庶民の希望は、金持ちだけを狙って盗みを働く大泥棒・石川五右衛門(江口洋介)。
ある日の晩、紀伊国屋文左衛門(六平直政)の屋敷に忍び込んだ五右衛門は、
蔵の中で南蛮製の箱を発見する。
箱の中身は空っぽで、特に高そうにも見えなかったため放り捨ててしまった五右衛門だったが、
実はその箱こそ、石田三成(要潤)が血眼になって探している物だった。
五右衛門が盗み出したと知った光成は、霧隠才蔵(大沢たかお)を使って
五右衛門の行方を追い始めたが・・・。

主人公・石川五右衛門には「闇の子供たち」の江口洋介。
五右衛門の幼馴染みであり、ライバルでもある霧隠才蔵に大沢たかお。
織田信長に中村橋之助、豊臣秀吉に奥田瑛二、徳川家康に伊武雅刀、
浅井茶々に広末涼子、少女時代の茶々に福田麻由子、
石田三成に要潤、千利休に平幹二朗、服部半蔵に寺島進、
青年時代の才蔵に佐藤健、怪力を誇る我王にチェ・ホンマン、
五右衛門の相棒である猿飛佐助にガレッジセールのゴリなど。
明智光秀役で、紀里谷監督本人も出演している。




紀里谷監督には前作の評判が耳に入っていないのであろうか。
入っていて敢えて聞こえないフリをしたのか、
いつかこのスタイルが認められると頑に信じているのかは知らないが、
本作でも「CASSHERN」の抱えていた問題点はほとんど改善されていない。
むしろ、全く同じ過ちを犯すことで、紀里谷氏が映画監督に向かないことを
よりはっきりと世間に知らしめてしまった気がする。

映画というのは静止画をパラパラマンガのように重ねていけば出来上がるというものではない。
「この絵が撮りたかったのだろう」と分かるシーンは山ほどあったが、
肝心の「どんな映画が撮りたかったのか」が全く見えて来ないのはどうしたことか。
ぶつ切れの欲望を、居眠りしながら書いたような甘ったるい脚本で繋ぎ合わせ、
安っぽい特撮で化粧して一丁上がり、である。
キャストに対しての愛情は鍋用の餅の如く薄い割に自己顕示欲だけはやたらと強く、
プロデュース・原案・脚本・撮影監督・編集・監督・そして明智光秀役での出演と
「紀里谷和明」の名がクレジットされることにかけては異様なほどの執着を見せている。
それで全てが上手く回っていれば何の問題もないのだが
残念ながらそうなっていないので、「裸の王様」状態が際立ってしまっているのだ。
ひとりでも信頼のおけるアドバイザーがいれば、こんなことにはならなかったのでは。

ここ数年の間に観た映画で、本作と同じ感想を持ったのが、蜷川実花監督の「さくらん」と
樋口真嗣監督の「ローレライ」「日本沈没」「隠し砦の三悪人」。
お三方とも映画監督以外の分野では高く評価されているし、
デザインを庵野秀明氏、撮影を紀里谷氏が手掛けた「ローレライ」のポスターなどは
(映画の内容はさておき)良く出来ていると思う。
ただ、お三方の才能が発揮される場は、残念ながら映画ではない。

GOEMON
(C)「GOEMON」パートナーズ
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紀里谷氏の作り出す映像は、人目を惹き付けることにかけては長けているが、
あくまでも「掴み」にしかならない。
これがゲームのデモムービーならば話は分かるのである。
ゲームにおけるデモムービーは「掴み」や「ご褒美」としての役回りであり
最大の楽しみはゲーム本編にある。
「GOEMON」は、デモムービーだけを延々と見せられるゲームのようなもので、
デモを際立たせるための土台があまりにも脆弱過ぎる。
これではほとんど「ヴァリス ビジュアル集」ではないか。
(と書いて分かる方が果たしてどのぐらいいるのか)

・時代劇口調と現代劇口調が入り交じるストーリー以前の日本語。
・人物像が全く描けていないので誰にも感情移入出来ない。
・数分で次々に使い捨てられていく有名キャスト達に思わず涙。
 (玉山鉄二、りょう、鶴田真由、佐藤健、田辺季正など)
・くすぐり役を与えられながら、脚本のせいでことごとくスベっていたゴリにも涙。
・中途半端な反戦メッセージ。
・大人の鑑賞には耐えられず、しかし子供には残虐過ぎる。
・全編を覆い尽くす、猛烈な自己満足臭。

とにかく挙げ始めればキリがない。
「マンガっぽい」or「ゲームっぽい」映画として割り切るなら、
ゲージュツ作品面はせずに、開き直ってそっち方面に突き抜けて欲しい。

「CASSHERN」を上回っている点もある。
「CASSHERN」よりは目が疲れなくなったことと
やたらと張り切っていた要潤の石田三成。以上。

もうどこかが声をかけているかも知れないが、
紀里谷氏はゲームとの相性は良さそうなので、
カプコンかSCEかスクエニあたり、新作のデモを依頼してみてはどうか。
デモだけなら私も見たい。デモだけなら。

▼関連商品


■DVD:「CASSHERN」
■DVD:「フローズン・タイム」

紀里谷氏の監督デビュー作「CASSHERN」と、
お勧めの「フローズン・タイム」という映画。
「フローズン・タイム」は、ファッション・フォトグラファーとして人気を得た
ショーン・エリスが撮った初めての長編作品。
静止画にこだわってきた人間が映画を手掛け、成功した例として挙げてみた。
もちろん、デビュー作なので満点ではないが、次回作への期待が膨らむ1本だ。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
  タイトル:GOEMON
    配給:松竹
   公開日:2009年5月1日
    監督:紀里谷和明
  キャスト:江口洋介、広末涼子、ゴリ、大沢たかお、他
 公式サイト:http://www.goemonmovie.com/index.html
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