原作ファンも納得。映画「重力ピエロ」岡田将生 加瀬亮 伊坂幸太郎 | 忍之閻魔帳

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重力ピエロ
(C)2009「重力ピエロ」製作委員会
2009年10月23日発売■DVD:「重力ピエロ 特別版」

結論から言うと、5月末の時点で私的な2009年度邦画のNo.1である。
ちなみに本作を観るまでのNo.1は「フィッシュストーリー」だったので、
今年は洋画はクリント・イーストウッド作品が、
邦画は伊坂幸太郎原作の作品がワンツーという偏ったことになってしまった。
だが仕方ない。それほどこの作品は良く出来ている。
今回は「重力ピエロ」を紹介しよう。


2009年10月23日発売■DVD:「重力ピエロ 特別版」

彼等は一見、何の変哲もない家族だ。
不慮の事故で亡くなってしまった美しい母と、実直さを絵に描いたような優しい父。
そんな両親から、溢れんばかりの愛情を受けて育った兄と弟。
兄の泉水は大学院で遺伝子の研究をし、弟の春はグラフィティアートと呼ばれる
街中の落書きを消す仕事をして暮している。
ある日、仙台を騒がせている連続放火事件について、春が奇妙な法則を発見した。
火災現場の近くには、必ずグラフィティアートがあるというのだ。
新たなグラフィティアートを発見したら、その近所で張り込んでいればいい。
そうすればきっと犯人を捕まえることが出来る。
春は泉水に協力を依頼し、事件解決に乗り出すのだが・・・。
原作は伊坂幸太郎の同名ベストセラー。
主演は「それでもボクはやってない」「パコと魔法の絵本」の加瀬亮と
「天然コケッコー」「ハルフウェイ」「ホノカアボーイ」の岡田将生。
父親役は小日向文世、母親役は鈴木京香。
監督は「Laundry ランドリー」の森淳一。


「陽気なギャングが地球を回す」(2006年)
「アヒルと鴨のコインロッカー」(2007年)
「Sweet Rain 死神の精度」(2008年)
「フィッシュストーリー」(2009年)

そして今回の「重力ピエロ」と、伊坂幸太郎の作品は次々に映画化されているが
映画化された作品のクオリティが総じて高いことには驚かされる。
(お世辞にも全てが傑作とは言わない。あくまでも確率の話)
「嫁ぎ先」を選ぶのが上手いのか、原作に惚れ込んだ人間しかオファーして来ないのか、
いずれにせよ、落胆する確率が低いことは原作者のファンとしては喜ばしい限りだ。

この「重力ピエロ」では、連続放火事件や犯人像の追求という
ミステリーの部分には大きなウエイトは割かれていない。
平凡な一家を襲ったある不幸な事件と、その傷跡に対して、
それぞれの立場から家族がどう向き合って来たかを丁寧に描いた作品である。
兄の眼鏡姿は父親にそっくりで、
弟の美しい容姿は、昔モデルをやっていた母から受け継いだものだろう。
血の繋がりは何よりも強い。強いからこそ、時にやっかいなこともある。
けれどこの家族は知っている。
親と子を結びつけるものが、決して血だけではないということを。
父は決意し、母は信じ、兄は気遣い、弟は受け入れた。
楽しそうに笑ってさえいれば、いつか地球の重力など消してしまえると信じて。

重力ピエロ
(C)2009「重力ピエロ」製作委員会
2009年10月23日発売■DVD:「重力ピエロ 特別版」

兄の泉水が会社員ではなく、遺伝子研究をしている大学院生になっていること以外に
原作からの大きな変更点はない。
エピソードの取捨選択が上手く、原作でやや気になっていた
テンポの悪さが大幅に改善され、しかも言葉足らずなところもないという理想的な脚本。
「春が二階から落ちてきた」を含む印象的な台詞の数々も、ほぼ残らず採用されている。
本作の企画・脚本を担当した相沢友子氏は、万城目学の原作を玉木宏の主演で
連続ドラマ化した「鹿男あをによし」の脚本も手掛けており、
いわゆる原作モノからエッセンスを抜き出すことに長けている印象を受ける。
本作でも、原作の雰囲気を壊さない程度にヒントを挿入し、
テーマをより明確にするための細かな追加・変更が盛り込まれている。
特に後半、重要なシーンの舞台を学校からある場所に変えたのは大賛成。
原作に惚れ込んで企画したという話だが、この変更だけで充分頷ける。

重力ピエロ
(C)2009「重力ピエロ」製作委員会
2009年10月23日発売■DVD:「重力ピエロ 特別版」

キャストも皆素晴らしい。
キャスティングが判明した時点で原作は読んでいたのだが、
葛城役の渡部篤郎に多少違和感を感じた以外は全員納得で、
実際の芝居を観てしまうと、もう泉水は加瀬亮で、春は岡田将生にしか見えない。
父親役の小日向文世も、夏子さん役の吉高由里子も文句なし。
「天然コケッコー」で都会からの転校生・大沢を演じていた岡田将生は
ここ最近はグラビアドラマ的な作品への出演が多かったので、
今回の春役で若手実力派へとシフトするチャンスを掴んだように思う。

「歩いても 歩いても」とはまた違う家族の形を見せてくれる逸品。
邦画好きなら是非とも劇場で観ておくべし。

▼映画に関連する本、DVD、CD


■CD:「Sometimes / S.R.S」

主題歌の「Sometimes」を手掛けたのは、S.R.Sというギターロックバンド。
メンバー全員が1989年生まれというから驚き。
映画では英語版が採用されているのだが、YouTubeで公開されているPVは日本語版。
春役の岡田将生も出演している。期待したflumpoolのファーストアルバムが
私的には今ひとつだったので今後は彼等にも注目していきたい。
トイズファクトリー所属ならば、「Mステ」のヤングガンに出演して
一気にブレイクというパターンもあるかも。


■Book:「重力ピエロ / 伊坂幸太郎(新潮文庫)」
■CD:「a circus troupe Music inspired from The Motion Picture」

原作小説とサウンドトラック。


■DVD:「アヒルと鴨のコインロッカー」
■DVD:「大停電の夜に スペシャル・エディション」

「アヒルと鴨のコインロッカー」は、伊坂幸太郎の同名小説を
「チーム・バチスタの栄光」で監督に大抜擢された中村義洋が映画化した作品。
主演は「プロポーズ大作戦」「鴨川ホルモー」の濱田岳と
「余命1ヶ月の花嫁」「ディア・ドクター」の瑛太。
大学進学をきっかけに仙台に越して来た椎名(濱田)と
同じアパートの隣に住む河崎(瑛太)が起こす本屋襲撃事件と、
その裏に隠された真実を描いたミステリー。
タイトルに込められた意味や余韻を残すエンディングなど、
青春映画としてもミステリーとしても良く出来ている。

【紹介記事】日本人らしい”寸止めファンタジー”「大停電の夜に」

「大停電の夜に」は相沢友子氏が脚本を担当したお気に入り作品。
公開中に単独記事で紹介済みなので、詳しくはそちらで。

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  タイトル:重力ピエロ
    配給:アスミック・エース
   公開日:2009年5月23日
    監督:森淳一
  キャスト:加瀬亮、岡田将生、小日向文世、鈴木京香、他
 公式サイト:http://jyuryoku-p.com/
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